「漢字は生活の反映だ」はこのサイトの基本的な概念だ。
それを最もよく現わしているものの一つに、住まいに関する漢字の起源と変化である。1万年前ごろは、氷河期も終わりになり、人間はまだ穴の中に住んでいた。この穴は自然発生的には崖の淵に出来た洞穴だったろう。このことは、日本でも、鍾乳洞に古代人が棲息し、生活を営んでいた土器や矢じりなどが発見されることでも明らかであろう。
そこで生活する期間が過ぎると、人間は平地に出て群れをなし部落を構成するようになる。初めのうちは非常に原始的な住まいで地面に穴を掘り、穴の上には覆いをかぶせて、雨露をしのいだ時期が長く続いたであろう。
そして7,8千年前ぐらいになると、その穴も次第に浅くなり、いわゆる住居として外見も整っていくようになる。ここで取り上げる漢字はいわば今日日本の遺跡でも見られる「竪穴式住居」と言われる住居を表現した「宅」という漢字である。
引用 「汉字密码」(P716, 唐汉,学林出版社)
穴から出て新しい建物「宅」への飛躍
”宅のzhai”は、元来1個の指事字である。甲骨文の”宅”の字は、まさに屋内に柱を立てることで、即ち”はらい”を1本を増やして、覆い屋根を建てた家を強調している。上古時期は、人々は穴を掘ったのち、最も重要なのは穴中央に柱を立てて、屋根を造ったことである。
「宅」は建築過程の直観的なデッサン
”宅”はちょうどこの浅い穴式の建築過程の直観的なデッサンである。金文の”宅”の字は、指示符号の一つのはらいが、いわば横になっていて、建てた橋の梁木の格好になっている、概ねこの時期の建築が既に地面建築に発展し、柱梁一体化になったためである。小篆の”宅”の字はいわば形声字に変化している。《説文》それゆえ”宅“を解釈して、人の居也。ウ冠と発声を表す屯(zhe)からなっている。”楷書”は小篆を受けて、従って”宅”と書く。
「宅」の字の発展過程
”宅”の字の発展過程は、華夏民族の建築の様式の発展による。”宅”字に対した分析は、我が国古代の木造建築の源ともいえる。これから、どのように産着の時代から一歩一歩、最終の大きな気勢を体現し、周密な建築構造体系を実現したかを見ることが出来る
”宅”は古代に元来”造営”の意味であった。それが後で”名詞化“し、”住所”の意味に取って代わった。現代の漢語中の”家屋敷、住宅、大邸宅”は、全部ここから拡張されたものだ。「漢字の世界の起源と源流を探る」のホームページに戻ります。