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2011年11月7日月曜日

漢字「姓」の起源と由来:古代が母系制社会で、女性を始祖とする社会を示している。

会意文字であり、母系制氏族社会で、一人の女性を始祖とし後代まで広がる社会を示している。

「姓」という漢字は古代が
母系制社会であった証左
 甲骨文字の「姓」の字の左辺は女という字で、旁は草木の発芽成長の記号から出来ている。両形とも会意文字であり、母系制氏族社会で、一人の女性を始祖とし後代まで広がる社会を示している。

 金文の「姓」という字では、右辺の字の符号の中の短い横棒と左辺の女偏が人偏に代わっている。このことは、この時期に社会が既に男性の権力の時代に入り、母系制氏族制度が転覆していたことを表明している。小篆の「姓」という字は女と生に回復しているが、これは社会が母系制に回帰したことを示すものではない。

  古代社会では平民と奴隷は皆姓を持ってなかった。ただ貴族のみが姓を持っており、姓の権利が独占されていた。この為にこの時代、「百姓」という言葉は百官を指していたが【即ち百(多く)の姓で代表される貴族という意味】、平民でも姓氏を持つ様になって、「百姓」という言葉は一般庶民を表示するのに用いられるように変化した。
 

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2011年11月4日金曜日

漢字「魚」の起源と由来:象形文字、魚そのもの

秋は何と言っても秋刀魚の季節。秋刀魚の塩焼きは素朴ながらも絶品だ。日本の落語でも、「サンマは目黒」という御題でおなじみである。

 さてサンマは中国語で秋刀鱼と書く。因みに我々におなじみの魚は下のようになる。日本語のように一字でその名前を表すものは少ないようで、大体が鯛、竹荚、金枪のような修飾語が付き、全体で魚の名前を表すようである。その点獣の名前には牛、猪など一字でその動物を表すものが多いようで、その点からいっても中国では魚文化は日本ほど発達していない証拠かも知れない。

秋刀魚    秋刀鱼
鯛        鱼
鯵       竹荚鱼
鮪       金枪鱼

さて魚の漢字はどのようにしてできたのか。その由来を探ってみよう。


「魚」の変遷
甲骨文字の魚はちょうど絵の中の大きな魚である。頭と尾と背部にひれを持っている。小篆の尾鰭のわきの二つの点は水滴を表す。よく魚の形を表している。楷書は完全に4つの点になっている。簡体字ではこの4点は横棒一になっている。 

金文中の魚を表す味のある文字    "魚”の字は部首で漢字の中では「魚」と組み合わせて、全て魚と関係を持っている物を表す。



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2011年10月20日木曜日

秋は収穫の季節 「米」と「糠」の漢字の由来と起源

秋は収穫の季節。稲の穂がたわわに実り、田畑が黄金の絨毯の様を呈する時、古人(今も)神に感謝し、収穫の喜びを感じる。

  稲作が日本に伝わってから日本の文化は大きく変わり、縄文式文化から弥生式文化へと変貌を遂げる。今から約2千年前の出来事である。そして米を作り続けて、今日本社会は大きな問題に直面している。

今「米」作りを根本から見直す時期に来ているのかもしれない。

甲骨文字の下半分は
横棒一と3つの点で「雨」を表す
「米」の字は象形文字である。甲骨文字は上下6つの点は米の顆粒を表し、中の横線は風が吹きすぎたさまを表し、米と米ガラの分離を示している。

 また水の組成の(雨)をいう記号を用いることにより、区別する符号を当てている。小篆の米の字はまさに中間が上下に貫通し楷書の米の字に似たものに代わっている。

 糠の字は会意文字である。古文字の中で康と書く。康の字は借用されて、安康、健康の康に用いられる。

(本来殻の付いた穀物は腐りにくく、比較的保存しやすい所から来ている)

 
糠の漢字の由来は「康」
甲骨文字の康という字は中間部分は篩の類の工具である。上部の「子」は上に上げる意味を持つ。下の4つの点は扇ぎ出された米糠を表す。金文は大体甲骨の形に似ている。ただ篩の形に少し変形している。小篆の字形は篩が二分割され、上に上げた両手に代わっている。中の糠は米に代わっている。隷書を経て、楷書は只一つの字形を留保している。


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2010年6月14日月曜日

漢字「幸」の由来:古代中国では「手枷」のこと。手枷が何故「幸せ」になるのか


漢字「幸」の起源と由来
 古代中国では「幸」の字は、手枷のことを表していた。甲骨文字から古代中国の社会が見えてくる。
 民主党の菅直人新首相は「最少不幸社会の建設を!」と国民に対し呼びかけた。それに対し自民党の小泉進次郎氏は「自民党は最大幸福社会の建設を」と訴えた。この場合、キャッチフレーズだけからいうと、菅直人氏に軍配上がる。
小泉氏のは耳障りはいいが、中身のない云わば戯言である。何故か?「幸福」という価値観は人により千差万別である。その曖昧な概念を政策とする時、その政策も曖昧になってしまう。

これが政策じゃなく、女性に対する囁きならば、話は別だが・・。

 さて、ここで幸、不幸とは一体なんであろう。漢字のルーツから、その中身に迫りたい。唐漢氏の「漢字の暗号」を参照して、進めたい。


引用:「汉字密码」(P627、唐汉著,学林出版社)
幸は手枷の意味
「幸」の字の成り立ち」

 「幸」の甲骨文字は、古代社会で捕虜や奴隷をつなぎ止める一種の刑具を表している。いわば手枷、足枷であった。
有史以前はこの種の刑具は簡単に作れた。木を切り取って、腕をその木の中に閉じ込め、両手の間に木の棍棒を差し込み細い枝ででくくった。このように、「幸」の本義は手錠である。この「不幸の象徴」がなぜ今日のような意味を持つようになったのか。上古の社会にあっては、捕虜の命は豚や犬よりも卑しく、殺されずに命を取り留めて生きていることは、本当に幸運な出来事なのである。よって「幸」はまた「幸いにも」という意味を持つ様になったといわれる。

さて、件の菅氏が「幸、不幸」の意味を使うのに中国の古代社会の概念を用いてなければいいのだが・・・。つまり、「君たち死ぬよりはましですよ」じゃないんでしょうね・・。




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2010年6月12日土曜日

漢字の「美」はなぜ羊を頭に被っているのか

 今まで、男と女に係わる漢字を見てきたが、ここで特に女性にとっては、関心事の主要な部分を占めるであろう(失礼?)「美」という漢字の由来について触れてみたい。

 女性で美と来ればやはり「美女」を避けて通らぬわけには行かない。中国の4大美女といえば、西施、王昭君、貂蝉と楊貴妃といわれている。最近では、映画レッドクリフでも有名になった、呉の将軍周瑜の妻小乔もその中に加えるべきなのかもしれない。小乔についてはよく知らないが、西施、王昭君、貂蝉と楊貴妃の4人については、「月は閉じ、花は恥じらい、魚は溺れ、雁は落つ」とたとえられるほどの美人だというからすごい。

 西施は、彼女がある時水辺で魚を見ていたら、魚が彼女の美しさに虜になってしまい、ついには泳ぐことを忘れ、海底に沈んでしまったという逸話があるほどの美人だということである。私の見た中国映画では、越が呉の夫差に戦いで敗れた時、越の王から呉の夫差に貢物として差し出され呉の夫差の心をとりこにしたという筋書きになっていたが、これは作り話であるかも知れない。というのは、中国ではこんな話は五万とある。また彼女に纏わる成語で「東施效颦」というのがあるが、これは後日紹介をしよう。

 王昭君は後漢の人で、匈奴の単于という王に嫁入りをするが、彼女は「その北の国を渡っていく雁が彼女の美しさに見とれ落ちてしまった」と喩えられた。これも面白い話があるが、別の機会にしよう。

 貂蝉については、その美しさには月もその前には自らその顔を閉じてしまうという様に例えられた。

 楊貴妃については余りに有名なので、ここでいうまでもないかもしれないが、「花も恥じらう」と云う言葉で表現されるが、この言葉は今でも生きている。

 さて、本題に入る。
 
甲骨文字 「美
 唐漢氏によると、 「美」は「羊」と「大」の2文字で構成される会意文字である。「大」はここでは健康で強壮な男子のことを表している。又羊の大なること美しいという意味も含んでいる。ところが日本の白川博士によると、これは羊の全体形を現す象形文字であるという。白川博士は羊はそもそも神にささげられる生贄と使われていた。神にささげられる際に全身が無欠の完璧なものでないと困る。何処にも欠陥のない羊を美しいとしたとの説をとっておられる。

甲骨文字「羊」

 しかしこの議論の前にそもそも「美」という文字は、今日使われるような「美しい」という概念を表していたのであろうか。




「美」の字は上古の先民はその意識の中に4種の感覚を持っていた。

  •  視覚上、羊の体が太って強壮な姿態から受けた感じ
  •  味覚の上から羊の肉が脂の多い感覚
  •  触覚上、羊の毛皮から防寒の必需品とすることを期待し、そしてその生産品の心地よい暖かさの感覚
  • 経済的観点から、羊の交換価値を思い、それ故に生産を持つ喜び
この4つの感覚が入り混じって、間違いなく、かすかに打ち震えるような心の中の「美」の感覚をもっただろう。しかしこの「美」の感覚は今日とは異なっていたのではないだろうか。

 北方人の美意識の中には、「大きいことは美しいこと」という観念が根深い。部屋から陵墓から工芸品に至るまでである。南方人は精緻、細かく且つ複雑であることを求める。しかし北方に行けばいくほど、粗く雄大で且つ大きい。それから段々審美意識中のたましいになった。  「美」の字は羊と大が合わさった会意文字で、「羊は大きければ美しい」「人は羊のごとく壮健なれ」という理解もできる。但し両者の解釈は皆「美しいことはいいこと」という基本概念の帰結である。文字学の角度から言うと、「美」の字の本義なのだ。

これ以外にも、「美」下の部分の「大」は男を表し、古代では立派な男は頭にりっぱな羊の頭の被り物をしていて、これが「美しい」という感覚になったという話もある。

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2010年6月8日火曜日

漢字「合」の由来と起源

  近頃、ニュースなどでよく聞く言葉は「日米合意」である。合意というのは双方がお互いの利益を認め合う成文もしくは不文の了解事項である。そこでは条約と違って、お互いの平等互恵という側面が重視されるのかもしれない。「不平等条約」はあっても、「不平等合意」というのは聞いたことがない。どんな国でも、不平等なことをわざわざ「合意」しない。

 さて、前置きが長くなったが、今回は合意の「合」の漢字に焦点を当ててみたい。
 これは会意文字である。甲骨文字、金文、小篆でも、構造的には同じで、上部の「A」の形は男性の生殖器の省略形であり、下部は女性生殖器▽の異形の口である。

両形の意味が合わさって、男女の性のつながりを表し、性交、合歓を表す。

それから拡張され、一般事物の符合、集合、会合など物体間のくっつき合うことを表すように用いられて来た。
唐漢氏によれば、「合」のもともとの意味は性交そのものであることになる。

これに対し、日本の白川静先生などは「合」の下部の口の記号は「サイ」を意味し、神のお告げを入れる入れ物だと解釈されているので、「合」全体の解釈も自ずと変わってくるだろう。

  ここで映画「ダビンチ・コード」を見られた方は思い出すだろうが、主人公が聖杯の秘密を解明するくだりで、「山の形は男を現し、V字形のものは女性を表すのが世の中の一般的な表記法だ」という箇所がある。この解釈は万国共通のようにも思えるが・・。文字や符号が生活実態を反映したものか、抽象的な概念である「宗教・神」を反映したものか、さらなる議論が必要だろう。

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2010年6月2日水曜日

「男」という漢字の起源と由来は

今回は引き続き男と女の問題について上古の昔に戻ってみよう。

甲骨文字_男
男という字は会意文字である。甲骨文字の字の左は「田」である。この意は農耕のことである。

右側は「力」。これは「加」や「幼」の中の記号と同様である。元々は男の生殖器を指しており、ここでは男性を示す記号である。


小篆_男
 金文の男の記号は田の下に来ている。小篆の形体は基本的には金文と同じである。ただ「力」という字が完全に「田」の下に来ており形体もまた少しごちゃごちゃしている。楷書の「男」は小篆を引きついているが、「田」と「力」で簡単明快である。

殷商の初期、農耕はまさに土地を焼き、木の先を尖らして地上に穴を掘り、種をまいた後土をかぶせて、農作業を終えるといういわゆる焼き畑農業が行われていた。この種の簡単な労働は主として女が受け持った。しかしながらたとえ農耕の主力が女としても、氏族の集団で狩をしたり、狩猟は男の担当であった。このようにして甲骨文字の中の「男」の字は、商王国の中でもっぱら農耕部落の首領をさすようになった。


史書に記載している周の時代の「公候伯子男」爵の中の男爵は常々農事に功のあった臣に授けられる爵位である。この種の制度は殷商の時代の「男服」に源を発している。即ち「男服」とは常々農耕に従事しさらに王に農産物を貢ぐ部落の首領あるいは小規模の候国の王のことである。
周が滅んで後、華夏民族にとって民族的歴史に真の農耕時代をもたらされた。このときから狩猟活動は減少し、農業産出物が食物の本源的な主体となった。更に体力の強壮化によって、男子は農耕の生産の主体を担った。これに反し女子はその生理的条件と社会的地位の制限により、農耕領域では二次的な生産者の位置に下がってしまった。そうして家務を切り盛りし、桑や麻をつむぐことを主要な職務となった。
農耕と男子のこの種の関係は、「男」の字に新しい意味を付け加えることになった。農耕即ち男子のことである。「説文」(漢字の集大成された古文書)で「男は主人である。田と力から、力を持って田をなすことを男という。」
男の性別の意味が氏族の首領の意味に取って代わって以降、畑の中で労働する男を指し、さらに拡大して一般に成年男子のことを言うようになった。もちろん限定された使い方で、男の子を意味したり、息子を意味する場合もあるが・・。




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