2021年3月28日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「戸」と「門」から考える古代の家と村のセキリティー


漢字「戸と門」の成り立ちの意味するもの:漢字「戸と門」から考える古代の家と村の成り立ち
「戸」と「門」の甲骨文字を左に示しました。恐らく集落の入り口に、最初に立派な門ができ、それから時代がある程度下って、集落の中の倉庫の出入り口に片開きの扉ができ、各家族が住む家にが出入り口のような扉ができたのは、更に時代が下ってからのことではなかったかと思われます。
戸・甲骨文字門・甲骨文字  


  太古の時代には人々はおそらく同じ氏族が共同で生活していたでしょう。この時には、生産力が非常に低く、各家族には富の蓄積は殆どなかったと思われます。富の蓄積は、氏族全体で管理する食糧倉庫の類のものだったと思われます。

 従って、各家族が住む家はおそらく竪穴式の住居だったでしょうし、家には財産もなく、入り口には蓆をぶら下げる程度のもので充分だったと考えられます。

 しかし、その一方で、集落には食糧倉庫などが共同で管理されていたでしょうから、集落には恐らくきちんとした門があり、門にはしっかりした両扉が付けられていたことでしょう。集落の入り口に付けられた門と扉は甲骨文字にあるそのものではなかったかと思います。門の両脇の支柱に扉が付けられ、その支柱はきちんと固定するために横木でしっかりと結びつけられていたのではないでしょうか。


  
関・金文
 リングと無垢材の形をしたドアのような漢字であり、ラッチを挿入してドアを閉じる有様
「閉」・金文 
門の中に「出入り禁止を示す立て札「才」を示している
開・金文
門の中のかんぬきを手で開けることを示している


    


「戸」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コ  
  • 訓読み と  へ

意味
  • と。とびら。出入り口。とぐち。「門戸」
  • 家。部屋。「戸主」 「戸建て」
  • 酒を飲む量を表す語。「下戸」

部首などにつかられている漢字
  • 所 扇 扉 扁 房 戻

熟語   戸籍、戸主、戸口、戸棚、戸板、下戸




引用:「汉字密码」(P734、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「戸」は象形文字である。甲骨文と金文の「戸」はちょうど片開の門の形状である。その本義は門扉を指す。即ち片開きの門のことである。小篆の戸の字は門扉の象形の持ち味を失っている。楷書はこの流れで「戸」と書く。戸の字の変化は、書く上での便利さと美観のため、それによって符号化に向かう発展の典型例です。

 「戸」は説文では、戸、保護と解釈する。片開きの戸である。このことは「戸」ないし、単扇のことです。

 

漢字「戸」の字統の解釈
 一扇のとをいう。両扉を門という。「説文」に「護」。半門を戸という」とある。


まとめ
 漢字はその時々の社会の認識、生活様式を反映したものになっている。漢字が生まれたころと今では大きく変化しているから、漢字の成り立ちだけで、今の社会を論じることは難しい。しかし、人間の基本的な認識を漢字を通して探ることは意義が深いと思う。



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2021年3月24日水曜日

漢字・厚の成り立ちの意味するもの:「厚」の原義は「深」って本当?


漢字の成り立ちと由来:誰が「厚」という漢字から「深」という意味を考えることができただろうか?
 このところ厚労省職員による23名の深夜宴会問題で、国民の怒りが沸騰している。
 もともと厚労省の前身は、厚生省という名前だったのだが、この名前は、「書経」の「正徳利用、厚生惟和(徳を正しくして用を利し、生を厚くしてこれ和す)」から厚生省と名付けられたということだ。
 しかし、昨今の役人の振る舞いからいうと、この名前は「厚かましく生きる」という解釈がピッタリではないのかと思われてくる。

 漢字「厚」の楷書で、常用漢字です。意味は、今では「厚さ」を表すものとされていますが、元々は、「深い」という意味で、元の字は「深」だったということです。
成り立ちまで遡らなければ、真実に迫れない!
まさに青天の霹靂で、なんで?という気持ちを禁じ得ません。いったい昔の人は、どうしてこのような考えに至ったのでしょう。今から探ってみましょう。
厚・楷書   




甲骨文字の「厚」金文小篆




 このように、甲骨文字から金文そして小篆までの文字の変化を跡付けしてみると人間の認識の発展が良く分かる。
 甲骨文字の「厂」(ガンダレという)の下部には高い建物の影がひっくり返っている様が見て取れる。
 金文はその塔のような像が明確になり、小篆では、太陽の日差しの下で実像の子供という意味で、子という字に変化している。





「厚」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   あつ(い)

意味
  • ぶあつい
  • ゆたかにする。
  • 心づかいがてあつい

使い方
  • 「ぶあつい」  分厚い本、厚かましい(面の皮がぶ厚いからきたという)
  • 「心づかい」・・手厚くもてなす
  • 「ずっしりしている」・・軽々しくない。ちょっとのことで動かない

熟語   厚紙 肉厚 厚着 厚手 厚遇 厚情 温厚 重厚 濃厚




引用:「汉字密码」(P744、唐汉著,学林出版社)

漢字「厚」の漢字源の解釈
会意文字。「厚」の原字は、高の字を逆さにした形。それに厂(がけ、つち)を加えたものが「厚」の字。土が分厚くたまった崖を表す。上にできたのを「高」といい、下に分厚くたまったものを「厚」という。



唐漢氏の解釈
 「厚」の字の甲骨文字は、「高」の字を逆さまにしたもので、上に見れば「高』の意味であるが、これを逆さまに書いているということは、「厚」の字は元々深いという意味を表していたのだと主張する。確かに市の主張するように、がけや渓谷に行って土地の厚さ(深さ)が分かるという説も頷ける。
 

まとめ
 「厂」の字の中に「高」を逆さまに書いて、これで「深」を表すとは、なんという発想の転換だろうか。このような逆転の発想ができる柔軟な思考方法を持っているとは驚きだ。実に素晴らしいと唸るより他はない。



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2021年3月22日月曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「守」は守ること、保護すること、保持すること等を表現する


漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「守」は宀(家・廟屋)+寸(手、肘)で、守ること、守備すること、保護すること、保持すること等を表現する
「守」甲骨文と金文の「守」の字は会意文字です。上部は家の形で、下部は「寸」で、肘を表示し、両形の会意で、腕とひじを使って、家の前をブロックする、つまりガードすることを表している。小篆と楷書はこの関係から守と書くが、基本形に変化はない。守の本義は守護、護衛という意味だ。

 「守る」の字義から発展拡張され、様々な意味を生み出している。「職務」、守護の意味はまた保持の意味。さらに、保守「従う」「・・に照らして」という意味になる。「待ち受ける」にもなり、離れない、傍らに寄り添うの意味にもなる。
守・楷書




  
宀・甲骨文字 家を表す「寸」・甲骨文字
手首から少し肘の上がったところを指す
守・甲骨文字
以上2文字の会意で、家を防護する意味を示す


    


「守」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シュ  ス
  • 訓読み   まも(る) もり  かみ

意味
  • 守る、防御する、防衛する 
  • お守り  子守
  • 日本の昔の地方長官、地位

使い方
  • 防衛する  管理する
  • 世話をする   子守
  • 武士の位 摂津守

熟語   守備、専守、厳守、保守、 攻守、御守り、子守、肥後守、守護




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

漢字「引」の漢字源の解釈
会意文字。「宀(屋根)+寸(手)」で、手で屋根の下をかかえこんで守る様を示す。






まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年3月21日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:「馬」の歴史は、人の歴史そのものだ


漢字の成り立ち:「馬」の歴史は、人の歴史そのものだった

前書き

 馬は昔から、人間の生活になくてはならないものであった。というわけで馬にまつわる話にはことを欠かない。馬は起源は北米だという説もあり、またウクライナ地方で5000年前だという説もあり、また紀元前2000年ごろバビロニアの遊牧民が最初に飼い始めたという説もある。このバビロニアの馬は足が速く、今のアラブ馬の祖先だという説もある。
 人間と馬の関わりは、歴史的に非常に深いものです。馬は古代から現代まで、人類の移動手段や農耕、戦争、交流などさまざまな面で重要な役割を果たしてきました。

 最初の馬の家畜化は、紀元前4000年ごろの中央アジアで始まったと考えられています。この時期、野生の馬は狩猟の対象であり、人々は馬の肉や皮を利用していました。しかし、やがて人々は馬を乗り物や荷物の運搬手段として使うようになり、農耕や交易の発展に貢献しました。


漢字「馬」の由来と成り立ち


引用 「汉字密码」(P50,唐汉,学林出版社)

 馬は典型的な象形文字である。甲骨の字の馬は一匹の頭足身体尾っぽ全部そろったものを横から見た馬の形をしている。



漢字の変遷 甲骨文字から金文、楷書へ

 馬は典型的な象形文字である。甲骨の字の馬は一匹の頭足身体尾っぽ全部そろったものを横から見た馬の形をしている。上古の先民は天才画家に称号にも耐えうる。彼らは馬の形体に対し、眼と耳際の毛はの正確な描写はまさに分析が深く、大きく扁平で長い眼、長く突出した頭部の両側、上に直立して立った鬣、遠くみても一目で、馬とその他の動物間の特性と差別するのにできる。

金文の馬

  • 早期の金文の「馬」の字は甲骨文字の持つ象形の特徴は小篆にいたるころには却って似て非なるものとなっている。
  • 図の示すところ小篆の馬の字は下部は5画で今の4本の足と尾を表し、二本の足と尾っぽの変化したものだ。上部の3本の横棒は馬の首の上の鬣毛が変化したものだ。
  • 楷書の繁体字の「馬」は9画あり、書くのには十分不便で、このため漢字の簡略化の案は行書中の手書きタイを参照に今日のわれわれがまさに使用している「马」字を創造したものだ。  人類が飼育している家畜の中の体型は最も大きいもので、このために古人は大きいものの修飾語として馬を使うのは外形の大きいところを形容している。同類のかつ大きいものの比較で、馬蜂(スズメバチ)、马勺(杓子)、马明、马蚁(蟻)などである。また山東人の習慣で大きな棗を称して「馬棗」という。広東人はまさに大豆のことを馬豆と称している。
  •  古代、中国の華北平原と内蒙古の地区では、野馬が生息していた。この種の野馬の頭の高さは高くなく、長くて頭をつけ、鬣と耳は立っており、短い足と長い尾っぽは下向きに垂れていた。専門家はまさにこの種の野馬は新石器時代にアジアの土着の居住民によって、われわれの祖先たちが養育に成功し6畜のひとつになったという。



歴史の中での人間と馬の係わり(特に戦場における馬との係わり)

古代ギリシアでは歩兵による密集戦術が主流で、馬は指揮官が使う補助的な役割でしかなかった。近年の研究では既に地中海世界では大型の鞍が発明されており、旧説で言われているほどには騎乗は困難でなかったとは言われるが、鐙(あぶみ)が発明されるまでは馬上で武器を扱うのは困難であり、幼い頃からの鍛練が必要な特殊技能であった。中国やイラク、シリア、ギリシャなどの農耕地域では馬を育てる事に費用が嵩むため、所有出来るのは金持ちや有力者に限られていたようである。

   アジアでは、紀元前20世紀頃から中国のオルドスや華北へ遊牧民の北狄が進出し、周囲の農耕民との交流や戦争による生産技術の長足の進歩が見られ馬具や兵器が発達、後に満州からウクライナまで広く拡散する遊牧文化や馬具等が発展した。



 

騎馬遊牧民の出現

匈奴・スキタイ・キンメリア等の遊牧民(騎馬遊牧民)は、騎兵の育成に優れ、騎馬の機動力を活かした広い行動範囲と強力な攻撃力で、しばしば中国北部やインド北西部、イラン、アナトリア、欧州の農耕地帯を脅かした。遊牧民は騎射の技術に優れており、パルティア・匈奴・スキタイ等の遊牧民の優れた騎乗技術は農耕民に伝わっていったが、遊牧民は通常の生活と同様、集団の騎馬兵として戦ったのに対し、農耕民では車を馬に引かせた戦車を使うことが多かった。

事実紀元前2000年ー1500年ごろに栄えた殷王朝の安陽の遺跡からは、騎馬戦車が数多く発掘されている。 そして、漢民族が戦車ではなく、馬に跨り戦場を疾走するようになるのは、時代が1000年ほど下った戦国時代に起こった戦術上の大変換になるまで待たなければならない。(下記のページを参照ください)


中国に起こった騎馬がかかわる戦術上の大変換

 戦国時代は、中国の歴史上の時代のひとつで、紀元前5世紀から紀元前3世紀にかけて続きました。この時代には、多くの国家が争い、統一を目指して戦いました。

 初期の戦国時代では、戦闘は主に歩兵中心で行われていました。しかし、騎馬戦術の重要性が次第に認識されるようになり、騎馬兵の使用が増えました。騎馬兵は、偵察や奇襲、迅速な移動などに優れた能力を持ち、戦闘の効果を高めることができました。
 また、戦国時代の中盤から後半にかけて、騎馬戦術は進化しました。その中でも特に有名なのが、騎射戦術(きしゃせんじゅつ)です。これは、馬上から弓を射ることによって戦う戦術で、強力な騎馬アーチャーが敵に対して威力を発揮しました。
 さらに、騎馬戦術の発展に伴い、騎兵隊の組織化も進みました。騎兵隊は独自の指揮系統を持ち、連携して戦うことができました。また、騎兵隊は槍や剣を使用することもあり、接近戦においても優位に立つことができました。

 ただし、戦国時代の騎馬戦術は、あくまで限定的な存在でした。地形や戦場の条件によっては、騎馬兵の運用が制約されることもありました。また、他の戦術や兵種との組み合わせも重要であり、騎馬戦術の単独の優位性だけで戦局を決めることは難しかったです。

 以上が、中国の戦国時代における騎馬戦術の変遷についての概要です。この時代の戦争は非常に複雑であり、各国が様々な戦術を駆使して争いました。

漢字に反映された馬

漢字「騎」には戦国時代の戦術の大変換の痕跡が反映されている


「馬」を含む故事・成語

「馬を含む故事・成語 5選」に触れられているので、紹介しておこう



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2021年3月19日金曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「婦」は女性差別という「差別」に抗う

漢字の成り立ちの意味するもの:「婦」と女の違いってなんだ!

 漢字「婦」は太古の女性が社会的に主体的役割を果たしていたことを明示したものだ。

 漢字「婦」は、太古の社会では女性は主体的でることを明示しており、女性が従属的な存在であることを決して意味していない。


 「婦人」という字が、日本の歴史に登場して久しい。婦人参政権、婦人会、主婦、看護婦など等である。しかしこれらは今では少し古い感覚で受け止められるようになっている。
 少し前、「婦」という字は「女が箒を持っている」ことを表している字などを社会的用語として用いるのは「女を家に縛り付ける封建的遺制である。という議論まで飛び出して結果的には、婦人という用語は社会からある意味で抹殺され、いまではその代わり、「女性」という語が表舞台に登場した。

 こうなると婦人という言葉もいわれなき差別の末社会から放逐され、いささかかわいそうな気がする。
 物事は俗説や風評・感覚だけで判断してはならない!

 さて、ここではこの漢字の男女シリーズでこの「婦」という漢字を取り上げてみる。本当に昔から虐げられた女性の象徴であったのか。もちろん勝手ながら、唐漢さんに登場願うこととする。


引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)
 妇は「婦」簡体字である。甲骨文字の婦の字の左上方は黍の穂を突き刺して作った箒で、右側は跪いた女性である。両者の会意で手に箒を持った人即ち「婦」を表している。小篆の婦の字はへんとつくりが整えられ、女の字は箒の左に移った。箒の形はすでに象形からの離脱があるようだ。簡単化され「婦」とかかれるようになった。


婦:甲骨文字
婦:小篆



   「婦」の字は一個の会意字で構造上女性が部屋を清掃する特徴が強調されている。しかし確かに言えることは殷商の時代は、女性は本当の意味で家の主であって、母系家族の中で個人に割り当てられて部屋を使用していただけなのだ。決して自分で生んだ個人の子供のための使用ではない。





漢字「婦」は家を持ち自立して生活できる女性をさす
 この構成の中で、家では却って男と交わりはなく無関係であった。男は小さいときは母親のひざ元で暮らし、成年後は男子専用の集合住宅である「公宮」にすんだ。男子に家はなく、女のところで客として寝泊りしていたに過ぎない。女性は家をもち居室は清掃をし家事をする。  

 「婦」という字はまさに現実の反映なのである。だから「婦」の本義は個人の居室を指し、男子を留めまたは留めることのできる女性をさすのである。父権制が確立して以降は結婚した後の女性を指すようになった。

 後世になって、言葉の意味の拡大で「婦」もまた婦女の通称となった。

 但し古代にあっては、婦はもっぱら既婚の女を指し「女」は一般的な意味の女性を指し、2者は混用することはなかった。ただ近代にあっては、婦女と女性の通称になった。

キーワード:婦人


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漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「寮」は家と多くの部屋のある家で火を使う、大勢の人間がそこで居住する場所を示している


漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「寮」は家と多くの部屋のある家で火を使うとすれば、大勢の人間がそこで居住することを示している
漢字「寮」は会意文字です。甲骨文字の「寮」の字は建屋の中で火が燃えている様を表現しています
宀+尞の会意文字廟屋を表す宀明るくすると続いて
燃える火を表し、燎の原字。




  
甲骨文字[寮」屋根を示す記号の下で、燎をしている様を示している。火が単純に燃えている様子が窺えて面白い寮「金文」
屋根を示す符合は甲骨を引き継いでいるものの、火を燃やす装置が複雑化している。
漢字「寮」_小篆
甲骨文字と金文を引き継いでいるが、その間情報は整備され、文字として整ってきている。甲骨から小篆までの間の、人間の認識の発達の過程が見えて、貴重な情報だ。


    


「寮」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   リョウ
  • 訓読み   つかさ

意味
  • 神事を執り行う人 僚友
  • 行政組織   行政組織の建屋を同じくするもの 同僚

要素を同じくする漢字   尞 遼 療 燎 瞭




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「寮」は会意文字である。甲骨文字の「寮」の字は建屋の中で火が燃えている様を表現している。上部の尖頂は茅の屋根で下部のUは囲炉裏である。中間の木の柴が燃えている状態である。そばの小さな点は目に見えるはねた火の粉である。

金文の寨の字は上部の構造は甲骨文と相似であり下部の囲炉裏は2個の円形に変化している。説明にあったように、上古の囲炉裏から発展して火鉢になっている。
 因みに唐漢氏は漢字「宮」の解釈で、同様な二つの〇を建屋の中にある部屋だとし、このような多くの部屋を持つ建屋は「宮殿」と解釈している。私には氏の宮の解釈が正しいよう思える。
 その下部に一つの火の字が追加されて、火の意味を強調している。

 小篆の寮の字もこの関係で、ただ火鉢の2個の円形が合併され、「日」になっている。まさに屋根の頂部がいわゆる変化をして穴になり楷書ではまさに穴の形から屋根に回帰して「寮」と書く。



漢字「引」の漢字源の解釈
 「会意文字 芝を燃やす形+火」 明るくすると続いて燃える火を表し、燎の原字。寮、遼、僚、瞭などの構成要素になる。




まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。
 漢字「寮」は家と多くの部屋のある家で竈を表して、賄いを表現しているとも考えられる

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2021年3月16日火曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「即」食事を山盛りにした食器の前に坐る象形 


漢字「即」の成り立ちと由来:食事を山盛りにした食器の前に坐ること、節分の「節」を構成する要素になっている(修正版)
漢字「即」の楷書で、常用漢字です。左側は、飯を山盛りにした食器を表す記号で、単独の漢字はありません。ここで分かりやすく説明するだけのものです。
 右側は「卩」で語義は、跪くひとを表すということです。
即・楷書




  
甲骨文字でご飯を山盛りにした状態を表す文字。現在これに相当する漢字はない「卩」・甲骨文字
跪いた状態を表している漢字
即・甲骨文字
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する


    


「学」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ソク
  • 訓読み   すなわ(ち)

意味
  • すなわち、ただちに 
  • つく   位につく。地位に就く。(例)即位

使い方
  • 「すなわち」  つまり、ただちに
  • 「つく」・・位につく

熟語   即位、即席、即座、即答




引用:「汉字密码」(P661、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  「即」は会意文字である。
 甲骨文字の「即」の左辺は食器で、右辺は一人の人が跪いている。まるでまさに頭を低くしてご馳走になろうとしているようである。金文の左辺は簡単化しているが、未だ食器を見出すことができていない様子だ。右辺の人は半腰で立っているようだ。小篆の「即」の字は、発生した変化を説明すると線状は滑らかになり、形は美しくなり、但し却って食事に入っていないように見える。楷書は小篆を継承し、身を乗り出して食べるというイメージはありません。

 「即」の本義は身をかがめて食事することである。食べたいのなら、食べ物の近くにいる必要があるので、「近づく」という意味に拡張されます。

 

漢字「即」の字統の解釈
 食事を山盛りにした器の前に坐ること。席に着くことをいう。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年3月7日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「教」は「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)からなる。神聖な建物で、子弟に氏族の規範を教える。


漢字の成り立ちと由来:漢字「教」は「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)からなる。神聖な建物で、子弟に氏族の規範を教えること
 孟子は、「暖かい服に満足し、教育を受けずに暮らしているのは、獣にちかいということだ。」と教育の重要性を訴えている。

 教育が行き渡ってきているといわれる現代社会においても、デマにたやすく踊らされたり、いかがわしい宗教にはまり込んで自分自身をなくす人々が後を絶たない風潮を見ていると教育のむつかしさを痛感せざるを得ない。

 ここで取り上げた漢字「教」には古代の人々が教育に如何に力を入れ、氏族の存立を計ってきたかを窺い知ることができる。


読み
  • 音読み: キョウ 
  • 訓読み: おし(える)、おそ(わる)

意味
  • 「おしえる」、「さとす」・・言って聞かせる、「導く」、「告げる」
  • 「おしえ」・・教義、「いましめ」・・・禁止的、「さとし」(例:宗教、布教) 
  • 「おおせ(命令)」、
  • 「言いつけ」(例:教令) 「おそわる」・・学習する、「おしえられる」 
漢字「教」の使い方
  教育 教員 教化 教戒 教学 教官 教訓 教護 教材 教師 教旨 教示 教室
  教授 教習 教職 教則


   
爻(コウ)甲骨文「子」攵(ボク)
   


引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「教」は会意兼形声文字です。甲骨文の「教」の字は、天と子と支からなり、木の棒取ることと計算に使う数字カードで、演算を示しています。「子」は児童の象形で、「支」は即ち手に鞭を持っている図です。三つの図形の会意で大人が手に鞭を持って子供たちに勉強や算数を教えている意味です。金文の「教」は甲骨を引き継いで、同じ構造で、上辺の3つの字が交錯しています。小篆は金文を受け継ぎ、楷書は隷書化の過程で、まさに爻の字が少しずつ変化し、「教」の字になりました。

 上古社会は生存環境は劣悪で、外に出れば、狼やトラ、豹などがおり、道の上でも沼沢にはまり込むこともあり、何時つかまって殺される可能性もありました。何が起こるかわからない、当時は経験と知識によって成人前の教育が必ず必要だったのです。文字の中の「爻」も八卦の記号でまた障害があれば、どんなこともすることができないという意味しています。)

 孟子は《滕文公上》の中で、「暖かい服に満足し、教育を受けずに暮らしているのは、獣にちかいということだ。」さらに、巷では、「子供を犬のように教えずに育て、女の子を豚のように教えず育てる」こともあるといっています。


字統の解釈
 会意文字: 旧字は教に作り、「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)とに従う。爻(コウは古代のメンズハウス的な神聖な形式を持つ建物で、ここに一定年齢の子弟を集めて氏族の教育を行った。指導者は氏族の長老たちで、氏族の伝統や生活の規範を教える。



結び
 上古の人々は、今とは教育のやり方はずいぶん異なるのでしょうが、子供たちを危険から守るために、彼らは彼らなりに一生懸命子供たちに教育を施していたことがこの漢字「教」からも窺い知ることができます。今よりも純粋だったのかも知れません。

 

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漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「望」は月を背伸びして待ち望む風情が面白い


漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「望」は月を背伸びして待ち望む風情が面白い
 漢字「望」の成り立ちを、甲骨文、金文、小篆のそれぞれの時代区分で、下記に列挙した。
「望」の本義は、「人が足をそばだてて遠く望む形」を表現したものですが、古代人が物事を特徴的に如何に捉え表現していたかのその巧みさに驚くばかりです。夫々に目を大きく見開いて(目をむいて)遠くを眺める様が実に闊達に表現されています。本当に3000年前に描かれたものだろうか。現代の漫画でも通用する抜群のセンス。

古代から今日まで、「希望」とは眼を大きく見開いて、前方をみつめること!


望・甲骨文字望・金文望・小篆




「望」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ボウ モウ
  • 訓読み   のぞ(む)・もち

意味  遠方を見渡す。,まちのぞむ。願う。のぞみ。,人々に期待されること。よい評判。名声。,満月。

成り立ち   背伸びをして遠くの月をのぞみ見ることを表す。

願い
  • 人気や評判という意味もあることから、人望のある人になるように願って。
  • ロマンに満ちて、努力して望みをかなえる強い意志を期待して。
  • 多くの可能性を力に、夢をかなえる人になるように。

熟語   望遠 望外 望郷 望月 望見 望日 望楼 一望 遠望 渇望 希望 願望 仰望 失望 志望 嘱望 所望


引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「望」は甲骨文字は人が土の上に立って、眺めている状態です。金文では眼の目に変貌しています。小篆の「望」の字は望む対象として月が追加されています。明らかに人るのまるい月で、夜空にかかる時、人々は不自由なく月あかりを望んで頭を上げてゆくことができます。小篆には別の一款の「望」があります。ここで望の中の臣が亡に置換されたあと、形声字が作られました。説文は「望」を「出亡在外,望其还,从亡,望省声。」(出て居なくなって、かえって来るを望む:字統)としている。望の原本は旧暦の15日を指す。


字統の解釈
 形声。卜文は大きな目を上げて先方を仰ぎ見る人の形で、元象形。望の字はそれに声符として、亡を加えた形声字である。
 卜文の望は人が足をそばだてて遠く望む形の象形字。



結び
 古代から人間は希望に自分の将来を託してきた。

「希望」とは眼を大きく見開いて、将来に望みを託すこと!


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2021年3月4日木曜日

漢字の成り立ちと由来:木に関係する漢字「林」の意味するもの


漢字の成り立ちと由来:木に関係する漢字「林」の意味するもの
「林」は直感的に理解できる文字である。木が2本で多くあることを示し、さらにもっと集まれば森となる。

漢字の読み
  • 音読み  リン   
  • 訓読み  はやし
漢字の成り立ちと構成:   会意 木木

「林」を構成要素とする漢字:
  禁・・林と示に従う。そこを神を祀る聖所とする意
  惏・・音読み リン 訓読み むさぼる
  麻・・旁に「林」となっているが、原字は林ではなく、麻の皮の象形文字

引用:「汉字密码」(P147、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「林」は同体会意文字である。甲骨文字の字形はちょうど2本の樹木が並立している模様である。

 金文、小篆及び楷書は、甲骨文と形体は同形である。2本の果樹が並立していることで樹木が多くあることを示している。樹木が林立していることから拡張され、人或いは事物が集まっていることを示す


字統の解釈
 二木に従う。《説文》に「平土に木が多く集まっていることを林という。



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