2024年6月18日火曜日

漢字 家の起源と由来:漢字・家の起源は地鎮祭にあり!


漢字「家」の起源と由来 「家」の起源は地鎮祭にあり!

 現在の漢字「家」は、はるか昔、今から約3500年前には、地鎮祭で生贄となった犬を表していた。
 やがて、「犬」は「支」さらに豚へと変化し、現在の「家」は宀+豕から構成される。
 どうして犬から、豚となったのか?

 なぜ犬から豕への変化したのか、変化しなければならなかったのか、ここで明らかになる。

このページは以前にアップした
「漢字「家」:起源と由来 「家」の中になぜ豚がいるのか 太古の昔の生活習俗に基づいていた」
に全面的に手を加えたものです。

導入

このページから分かること
 漢字「家」は宀(ウ冠)に豕(ぶた)と書かれる。なぜ屋根の下に豚と書かれて「家」を表すのか。太古の昔の生活習慣が、3500年の年月を経て今ここに蘇る。

前書き

目次




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漢字「家」の今

漢字「家」の解体新書

 
漢字「家」の楷書で、常用漢字です。
家・楷書



  

 

漢字「家」の変化を明らかにするために、家の甲骨と金文のそれぞれ一款を、例として掲げてみた。甲骨文は家の中に犬がいる字で、これは生贄の犬が屋根のある矢代に埋められている状態を示したものという。

 金文の1款は、家の中に犬がいる状態であるが、この犬は、いわゆる「支える」という意味を示している。このことは、この家の中にいる、屋根の下にいる犬は、人間の生活を何らか「支える」役割を担っているのではないだろうか。そして、生活の発展の中で、「犬」から「豚」の登場になったと考えられる。

  
家・甲骨文字


家・金文


 




「家」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   カ、ケ
  • 訓読み   いえ、うち

意味
  • 家屋
  •  
  • 家族
  •  
  • グループ

同じ部首を持つ漢字     家、嫁、蒙、
漢字「家」を持つ熟語    家、家族、家庭、一家


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漢字「家」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

「漢字の暗号」の解釈

 雲南省のナシ族に伝わる結婚の習俗の中に、人々は「家の中に雄豚がいる」という謎を解くカギを見出すことができる。

 ナシ族の婚姻の習俗は、母系制社会の部外婚のステージを残している。女の子は成長しても家族の父や母と共に住み彼女は屋根付きの部屋をあてがわれる。
 彼女に一人で住まわせることによって、その他の氏族の男子が夜彼女を訪ねて一緒に過ごすことができる。明け方この男は起き上がって自分の家族の労働をしに帰っていく。飯を食べ休息の後、この男は新しい選択をすることができる。昨晩の女性の所に行って泊まるか、昨晩のとは違う別の女性の所に泊まりに行くかである。当然女性の方も、たとえかの男が彼女の家に幾晩泊まっておろうとも、男子の来訪を受け一緒に過ごすか拒絶するかの権利を持っている。

 家の所有者であるこの女性が妊娠し、その後子供を産んだ場合、子供は「母親は認識しますが、その父親は知らない」。お互いを愛し、彼(または彼女)とお互い愛するとしても、経済的一体になるのは、おじ、おば、おばあちゃん、そしておそらくおばあちゃんの母親、つまり母系家族全体のメンバー全員である。もしこの男の子が、成長したら、他の男性と同じように、自分の実の子供を残して、外族の女性と一夜を過ごすことになるだろう。彼は、たとえどのようなもてなしを受けようと彼をもてなした女性が彼の事実上の母親であっても、経済的な関係は持たないのである。

 この結婚の習慣は、殷王朝末期や殷王朝時代にも長い間存在してきたし、殷の中流階級と下層階級の間で依然として人気があった。西周初期の周公の摂政もこの種の結婚習慣に関係していた。秦の始皇帝が中国を統一した後、この「卑猥な」現象を止めるために、会稽を巡回した際に石に明確な命令発出した。

 この背景には、中国社会に極めて重要な変化が起こっていたと考えられる。すなわち、それまで連綿と続いてきた母系制社会が崩壊し、父系制社会に大変換を遂げていたことである。すなわち農耕が発達し、人口が急増し、より多くの生産の担い手を必要としていた。結果として、それまで機能していた、母系制に根差した氏姓制度が崩壊し、より中央集権的な社会システムに変貌していたことである。


漢字「家」の字統の解釈

 古くは 犬牲に従う字で、家の奠基のために犬を犠牲とした。卜文•金 文の字形は明らかに 犬牲に従っている。

 説文に「居なり。」に從ひ、豭の省聲」という。この省声説は、家を形声の字とするために、強いて声の近い字を求めたものにすぎない。「按ずるに、 この字は一大疑案たり」というが、ト文・金文はも とより、〔魏石経」の字も犬の形に従うており、「犬牲を埋めて奠基とする建物」の意である。その構造は、同じく犬牲を用いる冢 (塚)や墜(地)と似まっ ている。いずれも神霊を祀るところで、家もト辞に 「上甲の家」とあるように、先王の祀所を家というのが古義であった。屋は殯のための板屋、室は太室・玄室で、みな祀所をいう字である。のち家屋という。 家族・家系·家格・家名など、氏族の単位を家をもっていう。

 甲骨文字の成り立ちと文字の形成は白川博士の説の通りであろう。しかし、その後の文字の発展は、唐汉が説く過程も見逃せない。文字はその壮大な経済的背景を吸収し、ある意味緩やかに変貌を遂げてきたのである。したがって、犬牲の余韻は薄れ、いつの間にか実態を反映した「家」という字に代わってしまっている。


漢字「家」の変遷の史観

文字学上の解釈

 犬の墓から家になぜ変化した?
 白川博士によれば、家という文字は、当初は「家」ではなく、「犬牲を埋めたいわば墓」だとしている。
 しかし、「後に 家族・家系·家格・家名など、氏族の単位を家をもっていう。」に変化している。この変化はなぜ起きたのだろうか。自然発生的に起きたのではなく、歴史的必然性をもって起こるべくして起きたと考える。

古代人は犬をどう表現していたか?
 羊や牛のように体の一部を描くのではなく、全身を使って直立させて描いている。
 このように全身の特徴をとらえて描くことにより、より正確に生贄となった犬を描写することができたのであろうと考える。



犬の墓から「家」への変化はなぜ起きた?
 古代人たちは建物を建てる時に今日でも我々が行っていると同様の儀式である「地鎮祭」を行っていたのではないだろうか。そして神に「犬」を生贄としてささげ、その建物の安全を祈願して祈りをささげていたであろう。
 そして権力者の為だけに行われていた「地鎮祭」が、一般大衆の間にも普及し、地鎮祭のための犬の墳墓が、いつの間にか家そのものに取って代わられたのではないだろうか。

 長い年月を経て、地鎮祭は形骸化すると同時に、家父長制の実施に伴う生活様式の変化が、犬の代わりに豕というより経済的変化を反映させた「家」という文字を作り出したと考える。

まとめ

 家という文字が甲骨文字から小篆へと変化する過程を見てきた。そこに当初行われてきた呪術的風習から、実際の生活様式を反映させた文字へと変化する過程を目の当たりにすることができた。こうして文字を丁寧にたどることによって、数千年前までさかのぼった歴史的変化を垣間見ることができるようになる。今後もこの探求は続けられ行くだろう。

  


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2024年6月7日金曜日

漢字「翔」の成り立ち:羽+羊(音符)ならなる。 羽を大きく広げて、飛び舞う。


「翔」の意味するもの: 羽を大きく広げ飛び舞う様。鳥が羽をのばすように両肘を広げる

 実に雄大な字ではないか!
 羊は太古の昔から、吉祥のシンボルとして親しまれてきた。
 その羊に、羽根を持たせ、大きな鳥のようにその大きな翼を広げ、ゆっくりと大空を回遊するさまを重ね見て、太古の人々は、幸せの到来を信じたであろう。
  4000年の年月を経て、現代人は「大谷翔平」にその大きな鳥の回遊を重ねているのかもしれない。
 さて、「翔」には年月を経ても色褪せぬ情景を響きを我々に繋いでいるのかもしれない。


導入

このページから分かること

漢字「翔」の成り立ちと由来、漢字「翔」の生れた背景、漢字「翔」の現在:どのように使われているか
漢字「翔」と名づけのヒント

前書き

目次




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漢字「翔」の今

漢字「翔」の解体新書

羽根を大きく広げ飛び舞うこと
漢字「翔」の楷書で、常用漢字である。
 この漢字には甲骨文字はない。つまり殷の時代からかなり下って、社会に氏族制度が行き渡り、人間の行き来もそこそこの規模になったのちに生まれた字であるようだ。
 人々が獲物を求めて右往左往している世情ではなく、人々の暮らしも豊かになり、即物的な幸せを求めるではなく、精神的なゆとりも求めるような安定した世の中でしかこういった漢字は生まれないような気がする。

 右に「翔」によく似た漢字「祥」を掲げる。
 羊は古代から、めでたいことの象徴のように扱われており、度々祝い事の席上にも生贄として登場した。このめでたいことを表す「祥」から後に「翔」は誕生している。

 長く続いた春秋戦国の戦乱が平定され、始皇帝による統一国家が誕生した世情をそのまま反映した字ではないだろうか。
キザシ:神の意向や運勢が現れたもの
翔・楷書



祥・楷書





 

「翔」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ショウ
  • 訓読み   かけ(る)、と(ぶ)

意味
  • 鳥が空高く飛び回る
  • 広い
  • くわしい
  •  

同じ部首を持つ漢字     祥、洋
漢字「翔」を持つ熟語    翔、飛翔、回翔


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漢字「翔」成立ちと由来


漢字「翔」の字統の解釈

翔・小篆+楷書

 声符は羊。羊に庠・祥の声が ある。〔説文〕に「回飛するなり」 とあり、鳥が羽をひろげて、ゆるくとびめぐるのをいう。〔論語、郷党〕に「趨進すること翼如たり」 とあり、その進みかたをまた翔歩ともいう。

 [礼記、 曲、礼、上〕に「室中には黙らず」とあり、翔は堂上の儀礼のときの歩きかたである。





漢字「翔」の漢字源の解釈

 形声:「羽+音符羊」 羽を大きく広げて、飛び舞う。鳥が羽をのばすように両肘を広げていく。



漢字「翔」の変遷の史観

文字学上の解釈

  羊の性格は温順でおとなしく、食に群がり人と争わず、さらに人を傷つけることも出来ない。羊はまた肉として食に貢献し、皮は衣になり、即腹がふくれ、暖にもなる。よって古人はその実用性から、功利から羊を大吉、大利のいいことの兆しとみなしたのだ。
 このように羊は昔から扱いやすく、食用にも生贄用に珍重されてきた。この背景のもとに羊の字は吉祥の代名詞として用いられてきた。
翔の字もまた然りである。
 堂上の儀礼のときの歩きかた等にも用いられている。





最近の名づけの「翔」

 名前でいうと、そもそも、「羊」は神様に近く縁起の動物と考えられてきた上に、「翔」は羽根までも持ち世界に羽ばたくイメージがあり、「自由に力強く飛翔する、実力と可能性を秘めた人に!」という願いを込められ、最近では一種のトレンドになっている。
  特に、男の子の名前に使われる漢字のなかでも、5本の指に入る「翔」

 男子: 翔太(しょうた)、美翔(みしょう)、翔平(しょうへい)、翔陽(しょうよう)

 女子: 翔子(しょうこ)、翔和(とわ)


まとめ

 昔から、象形文字は、文字ができる基本とされてきた。人間の認識から言えばその通りである。しかし、象形文字は最初に見たそのままの形を表し、即物的である。しかし、世の中が進んでくると、そういった即物的なものだけではなく、抽象的、観念的な漢字も見られるようになる。ここで取り上げた「翔」は正にその典型例ではないだろうか。

  


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2024年6月5日水曜日

漢字「鼓」の成り立ちと由来:人類がこの地上に生まれてから最も早く出現した道具ではなかったろうか。


漢字「鼓」の成り立ちと由来:人類がこの地上に生まれてから最も早く出現した道具ではなかったろうか。


 太鼓の音は、昔から人の体に宿る情感を無条件に呼び覚ますものがある。
 従って祭りや祀りなどで神々の降臨を人々に告げたり、人々の体に宿る或る種の野生を呼び起こす。これは人間の性である。

導入

このページから分かること:
「漢字『鼓』の意味、使い方、語源、関連熟語について詳しい解説。」
  漢字の意味と成り立ち: 「鼓」という漢字の基本的な意味、
     使い方と例文: 現代日本語での使用例、典型的な文脈での使い方、例文。
  関連熟語:
  文化的・歴史的背景: 漢字の歴史的な背景や文化的な意味について

前書き

目次




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漢字「鼓」の今

漢字「鼓」の解体新書


 
漢字「鼓」の楷書で、常用漢字
 両側に皮などを張った楽器または楽器を打ち鳴らすこと。
鼓・楷書


  
鼓・甲骨文字
鼓・金文
鼓・小篆


 

「鼓」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   コ 訓読み  つづみ、つづむ

意味
  • つづみ(太鼓。楽器の1つ。木または土の胴の両面に革を張り、打ち鳴らすもの
  •  
  • つづみ打つ(太鼓をたたく)」
  • 打ち鳴らす、たたく
  • 励ます、元気づける

同じ部首を持つ漢字     喜、
漢字「鼓」を持つ熟語    鼓、太鼓、鼓舞、


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漢字「鼓」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P805、唐汉著,学林出版社)

「汉字密码」の解釈

 「鼓」会意文字である。甲骨文字の鼓の字は左辺は古代の立鼓の象形デッサンで右辺は鼓のばちを持つ手。まさに鼓をたたいているかのようだ。金文の鼓の字は甲骨とよく似ていて、形態はさらに美しく滑らかになっている。小篆と楷書は一脈相通じており鼓全体の形象が分かれて分体の文字に成って象形持ち味が少し少なくなっている。


漢字「鼓」の字統の解釈

鼓 字統P276
 会意 の象形。鼓は直を 正字は鼓に作り、壷と攴とに従う。壺は鼓の象形。






漢字「鼓」の変遷の史観

文字学上の解釈


太鼓は非常に古くから使われてきた打楽器であろう。恐らく人類の誕生とともに生れ、使われてきたのではないだろうか。
 左の画像は、楽器ではなく、南太平洋の島で比較的最近まで通信手段として使われていたものである。このトーテム像は島のおあちこちに作られている。この像の下部は空洞になっており叩くとわりに高い乾いた音がする。恐らくリズムやばちで音を変え、敵の襲撃や、通信、指令に使っていたのであろう。電気も何もないところでは有効な手段だったろう。





太鼓の起源
太鼓の起源は、明確には分かっていない。しかし、考古学的な調査から、数千年前から太鼓のような楽器が存在していたことが分かっている。初期の太鼓は、動物の皮や木をくり抜いたものなどで作られていたと考えられている。 太鼓の伝播 太鼓は、交易や文化交流を通じて世界各地に伝播した。特に、シルクロードは太鼓の伝播において重要な役割を果たした。

太鼓の文化
太鼓は、世界各地の文化の中で様々な役割を果たしてきた。宗教儀式、祭り、音楽、戦争など、様々な場面で太鼓が使われてきた。 ま 太鼓は、人々を鼓舞し、勇気づける力を持っている。これからも、太鼓は世界中の人々を魅了し続けることだろう。



世界の太鼓
      アフリカ大陸
    1.  ジャンベ: 西アフリカ発祥の両面太鼓です。皮膜の素材や形状によって様々な種類があり、力強い低音から高音まで幅広い音色を奏でることができます 
    2.  ドゥンドゥン: 西アフリカのガーナなどに伝わる太鼓です。ジャンベよりも大きく、低音を担当することが多いです。 
    3. タブラ: インド北西部やパキスタンなどで使われる両面太鼓です。皮膜には動物の皮が使われ、金属製のディスクを打ち付けることで独特な音色を奏でます。

    ヨーロッパ大陸:華麗な音色を奏でる太鼓
    1.  ティンパニ: オーケストラでよく使われる大型の両面太鼓です。ペダルで皮膜の張りを調整することで、音程を変えることができます。 
    2.  ドラムセット: スネアードラム、バスドラム、シンバルなどを組み合わせた打楽器セットです。ロックやジャズなど様々なジャンルの音楽で演奏されます。



    アジア・大陸:多彩な音色で彩る太鼓 
    1. 和太鼓: 日本で広く親しまれている太鼓です。様々な大きさや形状の太鼓があり、力強い音色から繊細な音色まで幅広い表現が可能です。 
    2.  ダマル: チベットで使われる太鼓です。宗教儀式などで使われることが多く、低く深い音色が特徴です。 
    3.  コンガ: キューバ発祥の両面太鼓です。様々な音楽ジャンルで演奏され、特にラテン音楽では欠かせない楽器です。 

まとめ

太鼓は、世界中で人々を魅了してきた打楽器です。その種類、歴史、文化は実に奥深く、興味深いものです。太鼓の音色に耳を傾け、その力強さや繊細さに触れることで、私たちは世界各地の文化をより深く理解することができます。



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