2019年10月18日金曜日

皇帝・天皇の「皇」:照り輝くの意、光り輝く王という意味が体現された漢字


漢字「皇」の起源と由来
 皇帝・天皇の「皇」:照り輝くの意、光り輝く王という意味が体現された漢字であった。その原点は以下にあったのではないだろうか。

 「夏」の時代王は自らを権威付けるために、必ず高いところにたち、日の光を背に、金色に輝く杯を手にして大衆の前に現れたという。皇帝も鉞頭に光り輝く玉をちりばめ火の光を最大限に利用したであろう。漢字の中に王の中の王を示そうという意図がこめられている。

引用:「汉字密码」(P482、唐汉著,学林出版社)

   「皇」の字は会意文字である。早期の金文の「皇」の字は上部の構造は太陽光が放射してススキの穂のようにきらきら輝く、下部は斧の頭部の形「王」の字で大きな太陽が東の地平線を上がって来て、青銅の斧に反映しにわかに輝く模様を示している。このため「皇」の字の本意は照り輝くの意味である。

 これが現代でも、皇帝・天皇の「皇」として使われ、照り輝くの意、光り輝く王という意味を込めて、権威付けられた漢字になっている。


 「詩・小雅・皇皇者華」では、「皇皇者華、 」 この事は光り輝く,煌びやかで美しい花、野原や人の知らない場所に咲くことをいう。太陽が出て煌びやかな様をいうことから、盛大、偉大という意味となった。

 《诗•大雅•皇矣》の如く「皇矣上帝が煌びやかなことに臨ぞんだ様」をいう。ここの皇上帝は青銅銘文中の皇考、皇祖、皇君などをいい、みな偉大の形容詞である。まさに彼らと彼らの祖先はキラキラ輝く太陽と比べ一種の敬意もふくんでいる。君主の権力の拡大につれ、戦国時代に至って、皇の字は帝王の比喩に常用されるようになった。

 この時皇の下部の斧の頭の形は王の字に変わった。字形で君王の身分を表すのに使うようになった。秦王は東方六国を滅ぼして中国を統一して後、自分のことを秦の始皇帝と名乗っている。この時は小篆の上部は自という字を使っている。下部は王の字で変化はなく、壁と書いており、自の本意は鼻という意味で、顔の真ん中にあり出っ張っているから、はじめという意味が引き出されており、始皇帝が自らを皇帝と名乗ったことと相符合する。楷書の皇という字は金文を引き継いでいるが、但し自の横線が一本少なくなり、白となり、会意文字を作っている。



漢字「皇」の字統の解釈
 王の上部に玉飾りを加えている形。王は鉞頭の形で、王位を表す玉座の儀器。王にその玉光の放射する形を加えたものが「皇」



漢字「皇」の漢字源の解釈
会意兼形声。王とは偉大なもののこと。「皇」は「自(はな→はじめ)+音符王」で、鼻祖(一番初めの王)のこと。



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2019年10月16日水曜日

漢字「只」の旧字「隻」は「隹(鳥の意)+又(手の意)」の会意文字


漢字「隻(只)」の起源と由来


 現代中国は、隻の簡体字として「只」が使われている。しかし、これは「只」という本来の意味で使われたものではない。古文でも助詞として使われているが、「只」には、もともとの字の意味になるものが見つかっていない。



「字統」の解釈
 「「□」と八に従う。□はサイでで祝いの言葉を収める器、八は神気に象るものであろう」としている。
 説文では「「語已む時の詞なり」とあり、詩句の終助詞に用いられている。白川博士は、これは仮借であろうとしているが、原義と考えられる使い方がないが「神の楽しむさまを言う語であったろうと結論付けている。

「只」の繁体字「隻」

 「只」の繁体字。「隻」の原義は、鳥一羽の意味。「二つで一組になったものの片割れ」をいい、「双」と対を成す言葉。

 「隻」の甲骨文字は実によくできた文字で、見ていて面白くもあり、笑いを禁じえない。飛び立とうとする鳥一羽を手で捕まえている様がよくわかる。本当に、これで、「只一つ」という意味を表現したのであろうか。古代人の豊かな表現力に恐れ入る。

 漢字文化の中で、単位量詞になりうる鳥類の文字に「只(隻)」と「双」がある。図に示す通り、甲骨文字、金文、小篆共にみな手を用いて一羽の鳥を捕まえている意味である。「只」の本義は説文では「鸟一枚也。」と解釈している。(説文の時代は鳥を「一枚。二枚」と数えていたのか)即ち一只の意味である。

 後に拡張されて、単と双の相対する言葉になった。「孤身只影」の中の「只」(ここでは一つということか)の字である。




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2019年10月9日水曜日

漢字の成り立ちから見えて来るもの:熱とはあぶり焼けるように感じるのは熱という


漢字・熱 の成り立ちは現代に何と伝えるのか:トーチを持つとき感じるのは「熱」、気温の高いのを感じるのは「暑」
 古代中国でオリンピックはなかっただろうが、何かの儀式でトーチの受け渡しや神への捧げものとして、聖なる火が受け継がれただろうし、奉納もされただろう。それは古代文字・甲骨文字の中に埋め込まれていた。古代の人々はトーチに掲げる聖火から受ける熱を「熱い」と感じ、漢字「熱」の中に記録していた。

 甲骨文字では、熱の意味は一目瞭然
熱 の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。

 トーチを手にするという意味です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。

 一方これに対し「暑」について、字統では、説文を引用し、『形声文字:声符は者(シャ)。説文に「熱きなり」とあって暑熱をいう。』としている。
熱・甲骨文字


 


引用:「汉字密码」(P451、唐汉著,学林出版社)

   「热」は「熱」の簡略化された言葉です。 甲骨文字の「熱」という言葉は、まるで人が燃盛るトーチを手に持っているよう見えます。小篆の「熱」の言葉は、火と執るの音からなり、会文字と形声文字になっています。楷書はこの関係から、「熱」と書かれており、簡略化されて「热」になっています。

 「熱」の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。

 《诗•大雅•桑柔》:"谁能执热,逝不以理?"にあるように、ここでの执热の意味はトーチを手にするという意味です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。焙煎と発熱の意味があります。

 説文はこれを解釈し熱は温なりとしています。殷商人の甲骨文字に"杞侯热,弗其祸风有病の記載の、「杞侯热」は即ち発熱を言います。即ち体温が高いことを意味し、「祸风有病」とは、即ち傷風は疾病を重くすることをいいます。この記録は、人間の風邪の最も古い記録かもしれません。


漢字源の解釈
  形声文字。園芸の古字(人が座って植物を上育てる意味)から音を借りてきて作ったのが「熱」の字で、「火が燃えて熱いこと」をいう。唐漢氏とほぼ同様の解釈を取る。



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