2025年5月18日日曜日

漢字「負」:漢字考古学の道|『負』の字源と文化 ― 古代から現代への多層的解説

漢字「負」:漢字考古学の道|『負』の字源と文化 ― 古代から現代への多層的解説


古代甲骨文字から儒・仏・道思想、さらには経済やSNSまで―『負』が示す歴史と現代の意義
 「負」の精神は、単に勝ち負けの問題ととらえてはいけない。これは「日本人の精神構造の背骨をなすものとなっている! 」


     

目次

  1. 漢字「負」の変遷の歴史
  2. 語義と用例
      漢字「負」の今
      現代中国語と日本語における使われ方の違い
      ポジティブな使われ方とネガティブな使われ方
  3. 文化的・哲学的側面
  4. 現代社会における「負」

  5. まとめ



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1. 漢字「負」の変遷の歴史

「負」の字源と歴史

  1. 甲骨文字・金文の形と古代の意味
    「負」は古代中国の甲骨文・金文に見られ、象形文字としての起源を持ちます。 甲骨文字では、「人が何かを背に負っている」形で描かれ、物を背負う行為を示していました。これは「背負う」「担ぐ」といった意味の原型となります。 金文では、甲骨文字よりも構造が明確になり、「貝」と「人」に分かれる形が確認できます。古代中国では「貝」は財貨を意味するため、「負」は財を背負う、つまり負担や責任を持つという意味へと発展しました。

  2. 戦国時代や漢代の辞書での説明
    『説文解字』(後漢・許慎) 許慎の『説文解字』では、「負」は「背也。从人、貝聲」と説明されています。つまり、「背負うことを意味し、人と貝を組み合わせた形」と解釈されています。 「貝」は財物や価値を象徴し、「人」はそれを担う存在として描かれたのです。 その他の辞書(戦国・漢代) 戦国時代の『爾雅』などでも、「負」は「責任を担う」「敗れる」といった意味が強調されていきます。これは社会的・道徳的な概念として「負担」「責務」という意味へと発展したことを示しています。

  3. 「負」の意味の発展
    古代では「負」は単に「背負う」ことを表していましたが、時代を経るにつれて以下のような意味が加わりました: 責任を持つ(責任を負う):「負担」「負荷」「負債」などの言葉にみられる社会的責任の概念。 敗北する(勝負の負):「勝負」の「負ける」に繋がり、競争や戦の文脈で用いられるようになった。 陰の意味(負のイメージ):「負の遺産」「負の感情」など、ネガティブな意味が派生。
  4. こうした意味の広がりは、漢字が単なる象形の記号から、思想や価値観を表すシンボルへと進化したことを示しています。

2. 語義と用例

  1. 現代中国語と日本語における使われ方の違い
    「負」は中国語と日本語の両方で広く使われていますが、ニュアンスや用法に違いがあります。 中国語では「负」の簡体字が一般的で、「负担 (fùdān)」「负责任 (fù zérèn, 責任を負う)」「失败 (shībài, 失敗)」などに使われます。また、「负面 (fùmiàn, ネガティブ)」のように「悪い・マイナスの要素」という意味も強調されます。 日本語では「負」の使い方は広く、物理的な「背負う」から精神的・社会的な「責任を負う」まで多様な意味を持ちます。また、「勝負」のように「勝ち・負け」の概念が強く出る点も特徴的です。 日本語では「負」は比較的ネガティブな意味合いが多く、中国語では「負」の使い方がより実務的・一般的な印象があります。
  2.  代表的な熟語「負」を含む熟語は、日常生活や専門分野で頻繁に使われます。 以下にいくつか例を挙げます。
    熟語  読み方    意味
    負担  ふたん    責任・義務・費用などを負うこと
    負荷  ふか      物理的・心理的な負担、エネルギーのかかり方
    勝負  しょうぶ    戦いや競争で勝敗を決めること
    負傷  ふしょう    傷を負うこと(けが)
    負債  ふさい    借金や財政上の負担
    自負  じふ      自分に自信を持つこと
    背負う せおう     責任を持つ、物を背に載せる


  3. ポジティブな使い方とネガティブな使い方「負」は一般的に「ネガティブな意味」が強いですが、ポジティブな使い方もあります。
    ポジティブな使い方
    自負(じふ):「自身の能力や誇りを持つ」という積極的な意味を含む。
    勝負(しょうぶ):「真剣に取り組み、挑戦する」という前向きな意識。
    負けるが勝ち:時に敗北が次の成功につながるという考え方。

    ネガティブな使い方
    負債(ふさい):「借金」の意味で、経済的に困難な状況を示す。
    負傷(ふしょう):「怪我をする」という否定的な状況。
    負担(ふたん):「重い責任」「苦労」というストレスのある表現。

    このように、「負」は状況によって肯定的にも否定的にも使われます。 特に「勝負」のように、ネガティブな「負け」が必ずしも悪いものではなく、「挑戦」「努力」という文脈で使われることも面白いですね。

漢字「負」の今

漢字「負」の成立ちの解明

漢字考古学「負」_楷書
負・楷書
漢字「負」の楷書で、常用漢字です。
 



漢字考古学「負」_金文
漢字考古学「負」_小篆
 金文では買いを背負うことになっている。
 小篆では上下が逆転し、貝の上に人が乗った形で、財の助けで人があるような構造になっている。  
負・金文
負・小篆



 

「負」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み: フ   
  • 訓読み : ま(け)  

意味

同じ部首を持つ漢字     貝、貧、
漢字「負」を持つ熟語    負、負担、負荷、勝負、負傷


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漢字「負」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

漢字「負」の三款
漢字・負の3款

漢字の主たる説明
 「貝」は財貨を意味するため、「負」は財を背負う、つまり負担や責任を持つという意味を持つとされる。その後、社会の発展とともに責任を持つ(責任を負う)、敗北する(勝負の負)、「勝負」の「負ける」に繋がり、競争や戦の文脈で用いられるようになった。

唐漢氏の解釈


「負」は『説文』で「負」は頼るという意味で、人(人)が貝を守ることから、何かに所持する」と説明されています。つまり、「負」は「人」と「貝」という文字を組み合わせた象形文字であり、「負」は何かに頼ることを意味します。




漢字「負」の字統の解釈

会意文字: 人と貝とに従う。貝を負う形。古い字形がなく戦国期の字形が存するのみで、その初形が確かめがたいが、貝を負う形とみていい。




3. 文化的・哲学的側面

3.1 東洋思想における「負」の概念
「負」は単なる物理的な「背負う」という行為から、哲学的な概念へと発展し、儒教・仏教・道教において異なる解釈をされています。
  • 儒教(責任と義務) 儒教では「負う」という概念が、「責任を担う」ことと深く結びついています。孔子は「仁」を重んじ、人間関係における義務を強調しました。ここで「負」は、自らの役割を受け入れ、社会に貢献する姿勢を示すものとなります。 例: 「負責(責任を負う)」という言葉は、リーダーや親がその役割を果たす義務を持つことを示す。
  • 仏教(業と苦しみ) 仏教では、「負」は「業(カルマ)」や「苦しみ」と関連付けられます。人が背負う因果の重みは、過去の行動に由来し、輪廻の中で課された試練とも考えられます。 例: 「負業(ふごう)」という概念では、人が前世の行いによって苦しみを負うとされる。
  • 道教(自然な流れへの適応) 道教では、「負」の概念が少し異なります。道家思想では「無為自然」を重んじ、強く何かを背負うことよりも、流れに任せることを推奨します。「負」とは必ずしも悪いものではなく、時に受け入れることで道が開けると考えられています。 例: 「負陰抱陽(陰を負い陽を抱く)」は、バランスを取ることで調和が生まれることを示す。

3.2 日本文学と漢詩における「負」
  • 「負」は日本文学や漢詩において、さまざまな象徴的な意味を持っています。 日本文学(運命の重み) 日本文学では、「負」はしばしば「運命を背負う」「宿命としての試練」などの形で描かれます。 例: 『平家物語』では、武士が「敗北」を受け入れる姿勢が「負」の美学として表現されています。「驕れる者久しからず」とあり、勝者もいずれ敗者となることを示唆しています。 漢詩(英雄の悲哀)
  • 中国の漢詩では、「負」は敗北や責任を象徴しますが、詩的な美しさも伴います。 例: 李白の詩では、「人生如夢(人生は夢のようなもの)」とされ、「負うこと」への虚しさや運命の儚さが表現されています。

3.3 負けることの美学(日本の武士道)
  • 日本の武士道では、「負けること」が単なる敗北ではなく、美学へと昇華されました。 潔い敗北の精神 武士道では、「負けるが勝ち」という精神が存在し、戦いにおいて誇りを持ちつつも、時には潔く敗北を受け入れることが重要視されました。 例: 宮本武蔵の「五輪書」では、「時に退くことが最善の勝利につながる」と述べられています。これは、「負」の哲学的な側面を示しています。
  • 忠臣蔵の「負」 忠臣蔵の物語において、赤穂浪士たちは「主君の仇討ち」という使命を背負いながら、最後には切腹する運命を迎えます。この「負」は、単なる敗北ではなく、武士道の美学として高く評価されました。


4. 現代社会における「負」


 現代社会において「負」という概念は、さまざまな分野で異なる意味合いを帯びています。
 ここでは、経済、スポーツ、心理学の三つの視点から「負う」ことの意味を探り、さらに「負けるが勝ち」という考え方やSNS・ネット文化における「負」の捉え方について詳しく述べます。

4.1 経済・スポーツ・心理学で「負う」ことの意味
  • 経済 経済の分野では、「負」は主に「負債」や「負担」という形で現れます。企業や個人が資金調達や投資、ローンなどを通して財政的なリスクや責任を負うことは、安定性や成長のための大切な要素と同時に、失敗や倒産のリスクを伴います。たとえば、経営戦略においては、将来の利益を期待して一時的に大きな負債を負うケースや、国家が財政赤字という形で社会全体の負担を抱える状況が見られます。経済活動の中で「負う」という行為は、責任の所在やリスク管理として不可欠な側面を持ちながら、その継続性や持続可能性に対する鋭い検証を必要とするものです。

  • スポーツ スポーツの世界では、「負う」はしばしば競技や試合における敗北、つまり「負ける」という結果として捉えられます。しかし、単なる敗北としての「負」だけではなく、敗北から学ぶことやその経験を乗り越える成長の機会としても評価されます。敗北の経験を通じて選手やチームは次への戦略を練り、技術や精神面での向上を図るため、まさに「負う」ことが次なる成功へのステップとなります。たとえば、試合後の反省会やトレーニングプログラムでも、過去の敗北を見つめ、そこから得た教訓を今後に活かすという姿勢が重視されます。

  • 心理学 心理学においては、「負う」という表現は、ストレスや責任、感情的な重荷を指すことが多いです。個人が仕事や人間関係、生活の中で感じる精神的な「負担」は、時として内省や自己成長の契機となることもあります。たとえば、心理カウンセリングやメンタルトレーニングでは、自身の負の感情や過去の失敗と向き合い、それを乗り越えるためのプロセスが重要視されます。負の感情を認め、適切に対処することで、自己肯定感の向上や新たなチャレンジへの意欲が芽生えることが、心理学的な視点から評価されています。

4.2 「負けるが勝ち」の考え方
「負けるが勝ち」という言葉は、日本社会に根付いた哲学的な思考を象徴しています。これは、単に勝敗を競うのではなく、敗北によって得られる知見や経験が、後の成功への礎となるという考え方です。たとえば、ビジネスシーンでは、一時的な失敗を受け入れ、その失敗から学び、戦略を再構築することで、結果的に大きな成果を上げるケースが多々あります。また、スポーツや学業においても、敗北経験が個人の精神力を鍛え、「次の勝利」へのモチベーションとなることが強調されています。つまり、「負けるが勝ち」とは、形式上の敗北に終わらず、その後の成長や革新につながるポジティブな転換を示唆する理念なのです。


4.3 SNSやネット文化における「負」の捉え方
近年、SNSやネット文化の発展により、「負」という概念も新たな側面を持つようになりました。
インターネット上では、人々が自らの失敗談や悔しい経験を共有することで、共感や連帯感を生み出す動きが見られます。
  • 自虐ネタとしての採用 自らの「負け」や失敗をネタにすることで、ユーモアや共感を呼び、逆にポジティブなブランディングにつなげる事例が増えています。ハッシュタグやミーム(例:#負け犬)を通じて、自虐的な投稿がコミュニティ内で受け入れられ、自己表現の一形態として機能しています。
  • 批判と反省の風潮 一方で、SNS上では過剰な批判や炎上が起こり、個人が精神的に大きな負荷を「負う」ケースも存在します。匿名性が高い環境下では、建設的な批判だけでなく、感情的な非難が拡散しやすく、これがネット上のストレスや自己評価の低下に繋がることが指摘されています。
  • 失敗談の共有と学び しかし、失敗談や挫折経験の共有は、同じ境遇にある他者への励ましや、自己改善のヒントを提供するポジティブな側面も持っています。ネット上のコミュニティでは、失敗を正直に語ることが奨励され、そこから得られる「リアルな学び」が多くの人々に支持されています。


現代社会における「負」は、経済的・社会的な重荷としての側面と、個人の成長や共同体内の連帯感を生み出すポジティブな変容としての側面が共存しています。経済、スポーツ、心理学、そしてSNSという多様なフィールドで、私たちは「負う」という行動や感情と向き合い、その中から新たな価値や学びを見出す努力を続けています。さらに、こうした「負」の多面的な意味は、現代に生きる私たちそれぞれにとって、挑戦や再生の可能性を提示しているのです。


まとめ

  現代社会における「負」は、経済的・社会的な重荷としての側面と、個人の成長や共同体内の連帯感を生み出すポジティブな変容としての側面が共存しています。経済、スポーツ、心理学、そしてSNSという多様なフィールドで、私たちは「負う」という行動や感情と向き合い、その中から新たな価値や学びを見出す努力を続けています。さらに、こうした「負」の多面的な意味は、現代に生きる私たちそれぞれにとって、挑戦や再生の可能性を提示している。
 「負」の精神は、単に勝ち負けの問題ととらえてはいけない。これは今や「日本人の精神構造の背骨をなすものとなっている! 」

  


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2025年5月10日土曜日

漢字「城」の成り立ちとその文化的背景 | 漢字考古学:


漢字「城」の成立ちから都市の生成、形成を考える


 漢字「城」は、城壁を意味する「成」や、守るを意味する「守」等の組合わせからなる古代中国文字が起源と考えられています。ここでは、漢字『城』の成立ちと、その発展の歴史的過程と文化を、分かりやすく解説します。
 

漢字「城」の成立ちから都市の生成、形成を考える
日本の名城 白鷺城とも呼ばれる
 「城」は、古代中国で城壁を意味する「成」や「城」、守ることを意味する「守」などの文字が組み合わさってできた文字と考えられています。
  日本では、古代中国の都市制度が導入される中で、城壁を備えた城塞が築かれるようになり、「城」という漢字が使用されるようになりました。
  「城」は、日本語の中で特に城郭を表す漢字として広く使われており、歴史的に重要な役割を果たした城郭の名前にも多く見られます。また、「城」は、日本の伝統的な建築物のデザインにも取り入れられ、現代の日本においても、美しい城郭や城跡が観光地として多くの人々に愛されています。

しかし、城はそもそもここに書かれたような発展過程を経ているのでしょうか。日本の城と中国や西洋の城とは少し趣が異なるようです。
 詳しい説明は「城の地政学的考察」を参照ください。
中国の城、日本の城、西洋の城はどう違うのでしょう
城には背景とする文化により基本的な違いがあります。
  1. まず、西洋の城は一般的に防御を目的として建設されており、高い壁や堀、塔や砦、城門などが特徴的です。
  2. 一方、中国の城は、周辺の地形を活かして建設されることが多く、山や河川などが自然の防御として利用されることが多いです。
  3. また日本の城は、戦国時代の混乱の中で領主が戦略的要塞として築いたもので、防御機能と同時に権威の象徴としての役割を持ちます。戦況に応じた機動性や、複雑な多層防御が求められました。
以上のように、西洋の城と中国の城には、目的や建築様式、機能など、多くの違いがあります。


「城」の漢字の成立ち
漢字「城」の楷書で、常用漢字です。
 甲骨文字の時代には、楼閣の「郭」という概念はあったとしても、まだ城郭という概念には発達していなかったのではないだろうか。つまり、村を守るための柵や、堀、塀は作られたにせよ、城壁を建立し村落全体を守るという概念が出てくるには、生産力がかなり発達するまで相当の時間が必要であったろうと思われる。
城・楷書


  
城・金文(第1款)
高くて大きい城郭(左側の記号)と大きな斧「戌」(右側の記号)からなる
城・金文(第2款)
右側の下部に土という記号が加えられて、土壁が補強されたことを示す
城・小篆
全体として象形的なものがなくなり、文字の記号としてより機能的になっている


    


「城」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ジョウ
  • 訓読み   しろ

意味
     
  • 戍守の意。(要は守ること)
  •  
  • 城壁で囲まれた都市
  •  
  • 砦、要塞 

類似の漢字         郭、塞、砦、𨛗
漢字「城」を持つ熟語    城郭、城壁、牙城、


漢字:「城」の起源と由来
Kanji-Castle4Styles
漢字4款 甲骨、金文、小篆、楷書
唐漢氏の解釈
古代中国の城郭
古代の城
 高くて大きい城郭と大きな斧「戌」からなり、両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物を意味している。

 「城」の字は会意文字である。金文で城の字の左辺は「郭」の字の古文体であり、高くて大きい建築物を表し、城都の中を見渡し、また城を護る角楼のように見える。右辺は古文で「戌」の字であり、柄の長い大きな斧の象形文字である。そして両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物を示している。 金文中の別の城の字は右半分の下辺に土を加えて、守護用の広大な土壁を強調している。

 小篆では変化の途中で角楼とその影響の合体図形がなくなり、又右半分の下辺の「土」が左辺に移動し、一個の土と成からなる会意兼形声文字となった。
 城は守護の意味を持つ造字で城堡の意味である。説文では「城は以て民を護る」としている。城壁から意味が拡張され、城壁を護る場所を示している。
 即ち城市である。「史記・孫子呉起列伝」では、魏の文候は呉起を以て将となし、秦を攻撃し、五城を奪取した。古文中、城、郭と同時に言うときは、城は内城を指し、郭は即ち外城を指す。城郭と連用するときは広く城市を指す。

 それにしてもこの城という字は実に堂々とした風格のある字だと思う。

漢字「城」の漢字源(P322)の解釈
 会意兼形声。成は「戈+音符(成)」で住民全体をまとめて防壁の中に入れるため、土をもって固めた城のこと。
 しかし、城が城壁の中を指すのに対して、郭が城壁の外を指すとの解釈もあり、必ずしも住民を守るために城はたてられたのではないのではという解釈もある。その点古代の都市のナポリや長安などと日本の城とはその成り立ちや役割も違うという説もある。


漢字「城」の字統の解釈(P458)
 声符は成。成に戍守の意味がある。国人は全て城邑の中におり、武装してその城邑を戍る字が国である。即ち城壁を築き、守りを固めた建造物が城である。



城の地政学的考察

  西洋の城、中国の城、日本の城は、各地域の歴史的背景や軍事戦略、建築技法、そして文化的価値観に基づき、根本的なコンセプトと成り立ちが大きく異なります。下記にそれぞれの特徴と違いを詳述します。

      1. 西洋の城

      特徴と成り立ち
      防御と権力の象徴: 中世ヨーロッパの城は、封建制度の下で領主や騎士の居住・防衛拠点として作られ、領土支配と権威を示すシンボルとして機能しました。

      建築と設計: 主に石造りで、中心に堅牢な主塔(ドンジョン)が据えられ、周囲に厚い城壁、塔、堀、吊り橋など複数の防御層を有しています。これらは侵入者に対する攻撃を防ぎ、守備を徹底するための工夫が施されています。

      軍事戦略: 城全体が一種の「防御ネットワーク」として設計され、城内の複数の層が敵の突入を難しくする設計思想が見られます。


      2. 中国の城

      特徴と成り立ち
      都市防衛の要: 中国における「城」は、単なる個別の居城というよりも、城壁で囲まれた都市全体の防御システムとして発展しました。都市全体を守るために、計画的な城郭都市の設計がなされる点が特徴的です。

      建築と設計: 城壁、門楼、城楼などの要素で構成され、整然とした幾何学的配置が目立ちます。また、風水思想や当時の天文・地理的な知識が反映され、都市配置全体に一種の秩序美が追求されました。

      行政・軍事機能の融合: 城郭都市は、防衛だけでなく、行政の中心、経済活動の拠点、軍事的統制の中核としての役割も果たしており、公共性が強調されています。


      3. 日本の城

      特徴と成り立ち
      戦国と権力の象徴: 日本の城は、戦国時代の混乱の中で領主が戦略的要塞として築いたもので、防御機能と同時に権威の象徴としての役割を持ちます。戦況に応じた機動性や、複雑な多層防御が求められました。

      建築と設計: 木造建築と石垣が組み合わされた独自のスタイルが特徴です。自然の地形を有効活用し、曲線を描く石垣、複雑な通路、そして中央の天守閣(主に権威の象徴としての意味合いが強い)が配置されています。

      美学と戦略性の融合: 単なる防御用建築ではなく、地域の景観や美意識と結びついたデザインが施され、戦略的要塞としての機能と、後の時代における文化的・歴史的遺産としての価値も高い点が大きな違いです。


      比較のまとめ

          起源と目的:

        西洋の城は封建制の中で権力の象徴および軍事防御の拠点として発展。 
        中国の城は、都市全体の防衛や行政管理を目的とした城郭システムとして形成。 
        日本の城は、戦国時代の戦略的要塞として築かれ、後に美学や権威の象徴としての側面が強調される。

        建築技術と素材:
        西洋は主に重厚な石造建築による多層防御、
        中国は計画的な城郭都市の整然とした城壁・門体系、
        日本は木と石垣を組み合わせ、自然地形を利用した巧妙な防衛設計となっています。

        文化的役割と象徴性:
        西洋の城は地域の封建的権威の顕現、
        中国の城は公共性と秩序が重んじられる都市の防衛、
        日本の城は戦略的防御とともに、文化的美意識や地域の歴史・伝統を象徴する存在として発展しました。

        このように、各地域の城はその成立や発展の背景が大きく異なり、単に「防御」だけを目的とするものではなく、それぞれの文化や政治体制、軍事戦略の反映物として独自の進化を遂げています。これらの違いを理解することで、各国の歴史や文化、さらには現代におけるその遺産の価値をより深く味わうことができるでしょう。

まとめ


 漢字:「城」とは高くて大きい城郭と大きな斧「戌」からなり、両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物のことである




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2025年4月29日火曜日

漢字『時』の歴史と文化:時を刻む文字の謎と今の意義

漢字『時』の歴史と文化:時を刻む文字の謎と今の意義


『時』は、単なる『時間』を示す記号を超え、古代の思想や文化と深く結びついた漢字です。本記事では、字形の成り立ちから歴史的背景、哲学的な意義、そして現代における応用までを徹底解説します。

導入

「時」は私たちの日常から歴史、そして哲学的議論にまで影響を及ぼす重要な漢字です。

このページから分かること
字形の成り立ち、歴史的背景、現代での使われ方

前書き

現代日本語に欠かせない漢字「時」。本稿では、漢字・時 成り立ちから現代の時・漢字 意味までを、甲骨文・金文など古代文字の実例を交えつつ、古文書を紐解きながら論究します。

目次




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漢字『時』の構造:成り立ちと変遷

漢字「時」の成立ちの解明

 
時_楷書
漢字「時」の楷書で、常用漢字です。
 白川博士はこの文字の成り立ちは、形声文字としている。
つまり右の字は「之」(シ)で仮借とする 
時・楷書


時_甲骨
時_金文
時_石鼓文
時_小篆
  
時・甲骨文字
時・金文
時・石鼓文
時・小篆




 

「時」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ジ、シ
  • 訓読み   とき

意味
  • 過去から現在、現在から未来へと、一方的また連続的に流れて     行くと考えられている物。
  •  
  • 社会構造・政治形態や文化・思想等の、ある目安によって区切られた、一定の長さの歴史的期間。
  •  
  • 重要な期間の区切り

同じ部首を持つ漢字     時、旦、昼、昏、朝
漢字「時」を持つ熟語    時間、時計、時代、時刻、時期


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歴史の中で刻まれる『時』:古代~現代の使用例

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)


漢字「時」の変遷:甲骨文字から楷書まで

漢字「時」の「漢字の暗号」の解釈

 甲骨文字と金文の構成は同じで、日と之から成り立っています。 「之」という言葉はつま先を示し、人々がある場所から前方の場所に移動するときの出発点となります。したがって、太陽と人間の足が出発するところの会意文字の「時」という言葉は、太陽の天空の運行を示しています。古代人は早くから、時間と太陽の運行が不可分のものであることに気付いていたといえます。




漢字「時」の字統の解釈

 形声文字、声符は寺。寺に持続するものの意がある。説文は四時を示しているとするが、他の古文には時間の意味はないとしている。のちに時間の意味を持つようになったとする。




漢字「時」の変遷の歴史

東洋思想における時間観

 東洋思想では、時間は直線的な流れというよりも、循環的なリズムを持つものとして捉えられています。この観点は、自然との調和や宇宙のリズムを重視する東洋哲学の核心に基づいています。「循環論」と「陰陽のリズム」は、東洋的な時間観を理解するための二つの重要な柱です。

循環論:終わりと始まりの連続性
 東洋思想において、時間は終わりのない循環の中に存在すると考えられます。この考えは、自然界の周期的な現象(春夏秋冬の四季や日々の朝昼夜)に強く影響されています。

  • 四季の循環: 農耕文化が根付く東洋では、四季の移り変わりが人々の生活や思想を形作ってきました。例えば、春は始まりと再生、冬は終焉と準備を象徴し、この周期が永遠に続くと考えられました。

  • 仏教の輪廻思想: 仏教では、人生そのものも「生」「老」「病」「死」という循環の一部として捉えられます。この輪廻の概念は、時間を単なる直線的な進行ではなく、生と死が連続して繰り返されるものとして示しています。


陰陽のリズム:対極の調和
 東洋の時間観において、陰陽思想は重要な役割を果たします。陰(闇、静、柔)と陽(光、動、剛)という相反する要素が互いに補完し合い、調和を生み出すという考え方です。

  • 時間の陰陽性: 一日の中でも、朝(陽の始まり)と夜(陰の高まり)が交互に訪れるように、時間そのものが陰と陽のリズムに基づいて動いています。

  • 自然のリズムとの統一: 季節や月の満ち欠け、潮の干満もまた陰陽の原理に従っています。これらの自然現象に基づく時間観は、人間と自然の密接なつながりを強調します。

  • 東洋医学における時間観: 陰陽のバランスは、東洋医学においても重要な概念です。例えば、体内のエネルギー(気)は、時間帯や季節ごとに変化する陰陽のリズムに従い流れるとされています。


調和と全体性としての時間

 東洋思想の時間観は、人間や社会、自然の調和を重視しています。時間は孤立した概念ではなく、宇宙や環境全体との調和の中に存在するものです。

  • 老子の『道徳経』に見る時間観: 老子の思想では、時間は「道」(タオ)という普遍的な存在の一部として捉えられています。「道」の流れに身を任せ、自然のリズムに調和することが理想とされています。

  • 全体的な時間の捉え方: 東洋では、時間は全体性を持つ宇宙の構造の一部とされ、個々の瞬間だけでなく、その瞬間が生じる全体のリズムが重視されます。

 

東洋思想の時間まとめ
 東洋思想における時間観は、「循環」と「調和」を基盤にしており、それは自然界との深いつながりを反映しています。この時間観は、時間を効率的に管理する現代的な考え方とは異なり、宇宙や環境全体のリズムに従うことで調和を追求するものです。
西洋の直線的な時間観との対比から、「時」という概念の多様性と奥深さを読み解くことができ、現代社会における新たな時間の捉え方を探求するヒントにもなります。



 西洋における時間の捉え方は、主に「線形的時間観」という特徴を持っています。この概念は、キリスト教を中心とする宗教的背景とギリシャ哲学の影響を受けながら形成されました。


ギリシャ哲学における時間の基盤

 古代ギリシャ哲学は、西洋時間観の土台を築いた重要な要素です。プラトンやアリストテレスは、時間を「変化の尺度」として捉え、人間が経験する物理的な現象を体系的に理解するための基礎として位置付けました。

  • プラトンの視点: プラトンは、永遠の「イデア界」と時間が流れる「感覚界」を対比し、後者は前者の不完全な反映であるとしました。この考え方は、西洋の時間観において、時間を人間の限界として捉える哲学的基盤を築きました。 

  • アリストテレスの視点: アリストテレスは、「時間」を変化の過程を記録する尺度として分析しました。時間は物理的世界の運動に付随するものであり、それ自体に固有の実体はないとしています。


キリスト教と時間の線形性

 キリスト教思想における時間観は、東洋の「循環的時間観」と異なり、直線的かつ目的を持つものとして認識されています。この考え方は、西洋文明における歴史観や未来志向に大きな影響を与えました。

  • 創世記から終末へ: キリスト教の教えでは、時間は神による「創世記」から始まり、「救済史」を経て、「終末」に向かう一方向の流れとして描かれています。このため、時間は単なる流れではなく、目的地に向かう道筋であると捉えられます。

  • 救済と進歩の観念: この線形的時間観は、個人や社会の「進歩」という概念に結びついています。時間は成長と改善の契機として見られ、未来に向かって進むという希望的な見解が広く受け入れられています。


現代の科学と時間観

 20世紀に入ると、相対性理論を始めとする科学的探究が時間観を新たな方向に押し進めました。

  •  アインシュタインの相対性理論: 時間は空間と結びついた「時空」として解釈され、絶対的なものではなく、観測者の位置や速度に依存する相対的な存在となりました。この革新は、古典的な時間観を揺るがすと同時に、新しい哲学的議論を呼び起こしました。

  • デジタル時代の時間の変容: デジタル技術の普及により、時間は効率性や管理の尺度としての役割を強調されるようになりました。瞬時の通信や情報アクセスが可能になり、時間の価値が再定義されています。


西洋の時間観のまとめ

 西洋の時間観は、線形的でありながら、哲学的、宗教的、科学的視点から多面的に捉えられています。この直線的な時間の流れは、未来志向や進歩の概念を生み出しつつ、現代のデジタル技術による変化をも取り込んでいます。

 東洋思想の「循環的時間観」との対比を踏まえると、時間の捉え方は文化や価値観の反映であり、人間がどのように世界を理解しようとしてきたかを示す重要な指標となっています。



時間観念の文化史

仏教・儒教・道教における「時」の捉え方──無常・循環性などを俯瞰。

  • 仏教: 「時」は変化と無常を示す流転のプロセス(諸行無常)
  • 儒教: 社会秩序や礼に基づく「時節」の倫理的活用(時中)
  • 道教: 自然のリズムに調和する「道(タオ)」の時間(循環と再生)

二十四節気と時間の制度化──「時刻」概念と暦システム(節気・時辰)の歴史的連関について
古代中国では、太陽の運行を基準にした二十四節気が制定され、農耕社会における作業時期の指標となった。
 二十四節気は、春分・秋分・夏至・冬至といった四至を基本に、太陽黄道を約15度ごとに24分割して季節を細分化した制度である。これにより、単なる日常的な「とき」の感覚が、天体運行に基づく社会的時間制度へと体系化された。
一方で、都市化・官僚制の進展とともに、時辰(じしん)制度も発展した。
 これは、昼夜をそれぞれ6等分する「十二時辰」に基づき、時間帯を管理するシステムであり、「子(し)」「丑(ちゅう)」「寅(いん)」などの呼称で知られる。
時辰制度は、季節の推移を管理する暦法(節気)と連動し、農耕・行政・宗教儀礼などの正確な時間運用を支える基盤となった。

 こうして、「時」という概念は、自然現象の観察から制度的管理へと深化し、生活世界における時間意識の変容──自然的時間から社会的時間への転換を促した。



6. 歴史的変遷と生活の変化

6.1 農耕社会における「時」  農耕社会において、「時」とはまずもって自然のリズムであった。昼と夜、季節の推移、月の満ち欠け、太陽の昇降など、自然界の変化がそのまま「生活の単位時間」として機能していた。 とくに農耕においては、播種(はしゅ)・収穫の適切な時期を見極めることが生存に直結するため、時間の感覚は極めて実践的・経験的なものであった。
この段階では、「時間を測る」のではなく、「時(とき)を読む」ことが重視されていた。つまり、時刻や暦は制度というより、天体と土地に根差した経験知であった。
しかしやがて農耕の定着とともに、観察が制度化され、前述の二十四節気や時辰制度が整備されてゆく。時間は「読む」ものから、「定められ、管理される」ものへと転じ、国家による暦の独占=権力の可視化ともなった。


このように、農耕社会における「時」は、自然的でありながら、社会的・政治的統制の萌芽をすでに内包していた。

6.2 産業革命以降の時間統制
 産業革命以降、時間は自然のリズムから完全に切り離され、**「時計によって測定される均質な単位」**へと変貌する。
 この転換の象徴が、機械式時計の普及と鉄道時刻表の導入である。18〜19世紀にかけて、西洋社会では「秒単位で時間を区切る」制度が急速に浸透し、これが近代産業の「効率」「生産性」「労働管理」と密接に結びついていった。
 とりわけ、鉄道の発展は各地のばらばらな「地方時」を統一し、標準時という概念を制度化させた。これは国家による時間の中央集権化であり、空間の均質化(例:距離を時間で測る)とも連動している。
 こうして時間は、生産ラインと規律の象徴となり、人間の生活リズムそのものを機械の論理に従わせる方向へと向かう。

 この過程において、「時」はすでに自然でも経験でもなく、資本と制度に従属する抽象的構造となった。

 このように、「時」の概念は農耕社会において自然との共生の中で生成され、産業社会においては効率と管理の装置として再編された。これは単なる技術革新ではなく、時間に対する人間の意識の根底的変容=生活様式と世界観の転換を意味している。

まとめ

  

 漢字「時」をめぐる文字史・音声史・語彙史・文化史を、生活変化との連関から俯瞰してきました。さらに〝時間〟という概念の深化と社会構造の相互作用についても考察を積み重ねてきました

  


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2025年4月14日月曜日

驚き!漢字『経』の由来の秘密-実は古代の織機から紡ぎ出された経糸だった

驚き!漢字『経』の由来の秘密-実は古代の織機から紡ぎ出された経糸だった


古代の織機から紡ぎ出された経糸が時を経て地球上の自分の立ち位置を明示的に示す経度となって立ち現れた物語が奥深い!

 中国のダビンチと称される後漢時代の張衡は、絹織物の縦糸と横糸にヒントを得て、地図に緯度と経度を適用することを思いついたといわれている。ここにひも解く歴史のロマン
 

     

このページは以前にアップした下記のページを全面的に見直しアップグレードしたものです。
「漢字 経の成立ちと由来:東経135°の「経」はどこから来たの? それは古代の織機に使われたたて糸のこと」

導入

このページから分かること:

「漢字『経』の意味、使い方、語源、関連熟語について詳しい解説。」
  漢字の意味と成り立ち: 「経」という漢字の基本的な意味、
  象形文字としての成り立ち、古代中国での使用例など。
  使い方と例文: 現代日本語での使用例、典型的な文脈での使い方、例文。
  関連熟語: 「経済」「経緯」「経験」「経度」「経営」など、関連する熟語とその意味を解説。
  文化的・歴史的背景: 漢字の歴史的な背景や文化的な意味について
 




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「経」という漢字の基本的な意味

象形文字としての成り立ち、古代中国での使用例など。

漢字「経」_楷書
経・楷書
漢字「経」の原字
経・原字

 漢字「経」の楷書で、常用漢字
 右に「経」の原字を示した。金文ではあるが、ある意味原始的な文字であるといえるだろう。これは象形文字であり、最も原始的な織機を表している。下部の横棒を足で突っ張り持ち、上部にたて糸をつけ、そのたていとを縫うようにして横糸で編み上げていく。


経_金文
経_小篆
  
経・金文
経・小篆






 

使い方と例文: 現代日本語での使用例、典型的な文脈での使い方、例文。

漢字の読み
  • 音読み  ケイ、キョウ
  • 訓読み  へ(る)

意味
  • たて糸
  • 南北の方向
    日本は東経135度にあると言われる。これは地球一周は360°であり、24時間で一回転するから、1時間当たり15°回転することになる。イギリスのグリニッチを基準とすると日本は135°線上に明石が位置する。
    世界地図
  • 筋道(物事がそうなった理由)、または道路
  • 法律、規範、おきて
  • 時間の流れ:〇〇時間を経て・・のように使われる。
  • 境界(さかい)、境を定める
  • 治める、統治する:経世済民の精神で政治を行う、経理
  • かかる、ぶら下がる、かける
  • めぐり(周期)(例:月経)
  • 文書、特に儒教や仏教の教えを記したもの(例:経書、経文)仏教の経典を学び、悟りを目指す

同じ部首を持つ漢字     経、径、軽、茎
漢字「経」を持つ熟語    
  • 経: 経典のこと、宗教の教えを収めた書物
  • 経緯:たて糸と横糸、いきさつ、天下・国家をおさめととのえる
  • 経過:通り過ぎること、物事のなりゆき、これまで経てきた途中の状態
  • 経験:実際に自分でやってみる、実際にしたり見たりして得た知識や技術
  • 経営:事業をはかり営むこと、土地を測って、たて線と外枠の線とを引く。土台を据えて建設すること



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漢字「経」の漢字の由来

象形文字としての成り立ち、古代中国での使用例など。

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
漢字「経」の金文・小篆・楷書
漢字「経」の甲骨文字は存在しない
 しかしこの時代には高度な織物技術が開発されていただろう

漢字の暗号の解釈

「経」は「經」の簡体字。 甲骨の "経"は象形文字。これは古代のベルト織機の絵文字である。 このタイプの織機は通常、二つの平行なロッドによって縦糸を支持し、一方は織機のベルトに固定され、もう一方は縦糸を締め付けるために織機の足によって支持され、中央は縦糸と横糸を分離する。


古代織機
引用:「漢字の暗号」唐漢著

  「圣」という単語が一般的に使用されるグループ構成要素になったので、人々は「糸」偏を追加し、小篆、金文の第2款を引き継ぎ楷書では「経」と書いた。
 「経」の本来の意味は古代の単純な織機であり、「説文では「経、織り方」と解釈される。

漢字「経」の字統の解釈

形声 旧字は経にに作り、巠声。巠は織機にたて糸を張り、その一端を工形の横木に巻きつけた形で、經の初文。
 先王の典籍を経とし、これを補翼するものとして作られた漢代の識(予言)を主とする書を、緯書という。建物の造営に、まず測量して南北を正すことを経という。



漢字「経」の漢字源の解釈

 会意兼形声。「巠」は上の枠から下の台へたて糸をまっすぐに張り通した様を描いた象形文字。
 経は「糸+音符・巠」で糸へんを添えて、たて糸を明示した字。



漢字「経」の歴史的変遷

漢字「経」の原字
漢字「巠」・経の原字

文字学上の解釈

「巠」の由来と意味
「巠」は「巠」の原字である。 「圣」という単語が一般的に使用されるグループ構成要素になったので、人々は「糸」偏を追加し、小篆、金文の第2款を引き継ぎ楷書では「経」と書いた。







漢字「緯」_小篆
漢字「緯」 小篆


「緯」の由来と意味
 緯は経の対句の様に用いられるので、補強する意味でここに説明を加える。
 形声文字 声符は韋。韋は城邑の上下を左右に巡ることで、その左行右行を織物に移して、横糸を緯という。たて糸は経(經)。 経をたどって緯を加えるので、ことの過程・経過を 経緯という。儒家の経典とするものは経、これに附託して行なわれた漢代の予言や占トの書を緯書とい う。予言を識というので、その学を讖緯という。





天文学・地図学における「経」という概念について

古代の経線
 地図を経線と緯線で区切って、その座標で各地点の位置を表すという発想は古くから存在した。古代に地球の大きさを求めた地理学者エラトステネス(紀元前275年 - 紀元前194年)は、シェネ(アスワン)とアレクサンドリアを結んだ線を基準として、それと平行に数本の直線を引いた地図を作成した。
 その後、紀元前の天文学者であるヒッパルコスは、天球と同様に地球を自転軸を持つ球とみなし球面上の角度として経緯度を定義し、360分割した経線と緯線を考え、さらにその分割した1つの区間(1度)を60分、さらにその1分を60秒で表すといった、現在のような等間隔の経緯線網を考案した。
 このヒッパルコスの方法を使って、プトレマイオスは実際に経度を旅行記などの資料を参考にしてまとめた地図を作成した。
 しかし、当時は経度を求める技術がまだ確立されていないため、その経度は実際よりも大きく外れたものになっている。  しかし、当時は経度を求める技術がまだ確立されていないため、その経度は実際よりも大きく外れたものになっている。





中国における経度
張 衡地動儀(模型)

 同じ頃、中国でも経度の概念が生まれた。プトレマイオスと同じ時代に活躍した張衡は、地図上に縦横の線を延ばしてその座標で距離を求める方法を考え出した。これは、地図を絹織物に刺繍する際に、縦糸と横糸が交じり合うさまを見て思いついたといわれている。また3世紀になると裴秀も同じように縦横の線で位置を示す方法を提案し、その2つの座標にそれぞれ縦糸・横糸を意味する「経」「緯」という文字をあてた。

 張 衡(78年 - 139年)は、後漢代の詩人、学者及び発明家であり、力学の知識と歯車を発明に用いた。彼の発明には、世界最初の水力渾天儀(117年)、水時計、候風儀と呼ばれる風向計、地動儀(132年)、つまり地震感知器などがある。




まとめ

 漢字「巠」は太古の昔、使われていた織機の象形文字であり、「経」の原字である。そしてそのたて糸を明示する為に糸へんを付加され。「経」は織機から切り離され、もっぱらたて糸そのものを表すようになった。
 このたて糸が「経」の基本的な意味であり、現在では色々の使い方をされるが、すべて、この「たて糸」から派生、拡張されたものである。
 またたて糸と対句的に表現される横糸を「緯」という。
 今我々が北緯、東経などで使っている「経」と「緯」はまさしくここから出たものである。

  

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2025年4月8日火曜日

五行説:現代科学における未解明な分野への独自の視点


五行説:現代科学における未解明な分野への独自の視点

Subtitle: 古代中国の五行説が指弾!現代科学は未解明な意識や心身の闇をどう解明する!

 

はじめに

このページ「五行説:現代科学における未解明な分野への独自の視点」から分かること
  • 現代科学における未解明な分野と五行説の視点が明らかになる
  • 西洋医学に伝統中国医学を応用することの課題


目次

  1. はじめに
  2. 現代科学における未解明な分野と五行説の視点
       意識と感情
       複雑な症候群(慢性疲労症候群、線維筋痛症)
       心身相関
       伝統医学における病因と治療
     

  3. 現代科学との相違点と補完性

  4.  
  5. 文化・思想的合理性

  6. まとめ


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1. はじめに

 五行説は、古代中国の思想に根ざした、宇宙のあらゆる現象を木、火、土、金、水の五つの要素の相互作用として捉える包括的な理論です[1]。この理論は、単なる物質的な要素を超え、それぞれが特定の性質や機能を持つダイナミックな「気」の現れと捉えられています[2]。
 五行説は、近代科学でも実証的に解明できなかったファジーな分野である、伝統中国医学(TCM)をはじめ、占星術、風水、武術など、中国文化の多岐にわたる分野に理論的体系付けを与えてきました[3]。

 本小論では、現代科学がまだ完全に解明できていない分野に対して、五行説がどのように独自の説明を提供しているのかを探ります。

 現在の五行説や近代科学の持つ障壁は、生成AIと統計学の更なる発展により取り払われ、人類の全面的認識が勝ち取られることは間違いないと確信されています。

2. 現代科学における未解明な分野と五行説の視点

 現代科学は目覚ましい進歩を遂げてきましたが、意識、生命の起源、暗黒物質と暗黒エネルギー、量子力学、複雑な生物学的現象など、未だ多くの謎が残されています[4]。これらの分野に対し、五行説は独自のアプローチと解釈を提供しています。

  • 五行=意識・感情相関図
    五行説_意識・感情
    意識と感情
     TCMでは、感情は単なる心理状態ではなく、身体の臓器や要素と深く結びついていると考えられています[5]。五つの主要な感情(怒り、喜び、思いわずらい、悲しみ、恐れ)は、それぞれ木、火、土、金、水という要素と対応する臓器に関連付けられています[5]。五行意識の枠組みでは、これらの要素は身体、精神、魂のレベルで機能する基本的なエネルギー周波数であると捉えられ、意識と感情の経験を身体全体のエネルギーバランスと関連付ける全体的な理解を示唆しています[6]。



  • 複雑な症候群(慢性疲労症候群、線維筋痛症)
     慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症のような複数の症状を伴う複雑な状態は、現代医学では原因が特定しにくい場合があります[5]。TCMでは、これらの症候群は五行の不均衡、特に気や血の不足や停滞、湿や熱といった病邪の侵入によって説明されることがあります[5]。治療は、鍼灸、漢方薬、食事療法などを通じて、これらの不均衡を調整し、症状の緩和を目指します[5]。 火は、炎が熱く燃え上がり、上昇する様子を表し、熱、温かさ、上昇、明るさ、そして情熱の性質を持ちます 1。色は赤、季節は夏、方角は南と関連付けられています。火は、エネルギー、熱意、そして活動の頂点を象徴しています。最も暑く、日照時間が最も長い夏との関連は、一年の中でエネルギーが最も高まる時期を示唆しています。
    • 五行心身相関図
      五行説_心身相関図

  • 心身相関
     五行説は、感情と特定の臓器や要素を密接に関連付けることで、心と身体の深い繋がりを示唆しています[10]。例えば、恐れは腎臓(水)、怒りは肝臓(木)、喜びは心臓(火)、思いわずらいは脾臓(土)、悲しみは肺(金)と関連付けられています[5]。この視点から、心理的なストレスや感情の乱れが身体の不調を引き起こしたり、逆に身体の不調が感情に影響を与えたりする可能性が考えられます[10]。


  • 伝統医学における病因と治療
     五行説は、TCMにおける様々な病気の原因を説明し、治療方針を決定するための基礎となっています[11]。例えば、自己免疫疾患は、陰陽の不均衡や気血の流れの乱れ、外邪の侵入など、五行全体の調和の乱れとして捉えられます[36]。精神疾患(うつ病、不安など)も、特定の要素や臓器の不調和と関連付けられ、五行のバランスを整える治療が行われます[37]。



3. 現代科学との相違点と補完性

 現代科学は、客観的な観察と実験に基づいて因果関係を解明しようとするのに対し[12]、五行説は自然界のパターンや相互関係を重視する全体論的な視点を持っています[13]。TCMで用いられる「気」や「経絡」といった概念は、現代科学では明確に証明されていません[14]。
 しかし、五行説が提供する全体的な視点や、個々の体質に合わせた治療法は、現代医療における個別化医療の考え方と合致する可能性も示唆されています[22]。鍼灸などの治療法は、科学的なメカニズムが完全には解明されていないものの、一部の疾患に対して有効性が示唆されており[23]、現代科学との統合的なアプローチが模索されています[10]。



4. 文化・思想的合理性

   五行説は、単なる医学理論に留まらず、中国文化における世界観や価値観の根幹をなしてきました 1。
 自然界の現象、人間の身体、感情、社会現象などを五つの要素を通して関連付け、理解しようとするその体系は、長年にわたり多くの人々に受け入れられてきました 1。


5. まとめ

 五行説は、現代科学とは異なる視点から、未解明な現象に対する独自の解釈を提供しています。
 その全体論的なアプローチや、心身の繋がりを重視する考え方は、現代科学がまだ十分に解明できていない領域に新たな光を当てる可能性があります。
 五行説を科学的な視点のみで評価するのではなく、その文化的背景や思想的合理性を理解し、現代科学との補完性を探ることで、より包括的な人間理解へと繋がるかもしれません。







参考文献

  1. Introduction to the Five Elements and the absence of air among them : r/wolongfallendynasty, https://www.reddit.com/r/wolongfallendynasty/comments/13l5uat/introduction_to_the_five_elements_and_the_absence/

  2. Wuxing (Chinese philosophy) - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Wuxing_(Chinese_philosophy)

  3. Wuxing (Wu-hsing) | Internet Encyclopedia of Philosophy, https://iep.utm.edu/wuxing/

  4. The Five Elements According to a Bioengineer Turned Acupuncturist, https://www.risewellnessclinic.com/post/the-five-elements

  5. The Emotions, Organs and the Five Elements in Chinese Medicine - Ondol Clinic, https://www.ondol.com.au/the-emotions-organs-and-the-five-elements/

  6. The Five Elements Theory in Chinese Medicine (With Chart) - Qi Health, https://www.qihealth.io/learn/articles/five-elements-theory

  7. Application of Psychotherapy Based on Five-Element Theory in Traditional Chinese Medicine in Improving the Mental States of Patients with Post-Stroke Depression - PMC, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11319754/

  8. How TCM can help balance difficult emotions - EkhartYoga, https://www.yogaeasy.com/artikel/how-tcm-can-help-balance-difficult-emotions

  9. How Emotions and Organs Are Connected in Traditional Chinese Medicine - Verywell Mind, https://www.verywellmind.com/emotions-in-traditional-chinese-medicine-88196

  10. Acupuncture as an Approach to Psychosomatic Disorders - IABDM, https://iabdm.org/education/resources-for-practitioners/german-biological-dental-medicine-research/acupuncture-psychosomatic-disorders/

  11. The Psychosomatic Traits of “People with the Five Elements in Traditional Chinese Medicine”: A Qualitative Study - Biomedical and Environmental Sciences, https://www.besjournal.com/en/article/doi/10.3967/bes2023.136

  12. Original Article The Psychosomatic Traits of “People with the Five Elements in Traditional Chinese Medicine” - Biomedical and Environmental Sciences, https://www.besjournal.com/fileSWYXYHJKX/journal/article/swyxyhjkx/2023/11/PDF/23108.pdf

  13. The Psychosomatic Traits of "People with the Five Elements in Traditional Chinese Medicine": A Qualitative Study - PubMed, https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38098326/

  14. A Case Report Demonstrating the Efficacy of Acupuncture as a Viable Treatment for Mild Episodes of Depression - Herald Scholarly Open Access, https://www.heraldopenaccess.us/openaccess/a-case-report-demonstrating-the-efficacy-of-acupuncture-as-a-viable-treatment-for-mild-episodes-of-depression

  15. Disclosing Central-Earth Splenic Theory Based Upon two TCM Five-Element Models, https://www.heraldopenaccess.us/article_pdf/9/disclosing-central-earth-splenic-theory-based-upon-two-tcm-five-element-models.pdf

  16. Chinese Medicine and Autoimmune Disease - WellTheory, https://www.welltheory.com/resources/chinese-medicine-and-autoimmune-disease

  17. The Five Elements Guide - DiVA portal, https://www.diva-portal.org/smash/get/diva2:830651/FULLTEXT02.pdf

  18. How to Eat and Exercise Based on 5 Element Theory - Wongu University, https://wongu.edu/how-to-eat-and-exercise-based-on-5-element-theory-presented-by-canan/

  19. The Five Elements - Seven Treasures Healing Arts, https://seventreasureshealingarts.com/The_Five_Elements.html

  20. Chronic Fatigue Syndrome - Evergreen Chinese Medical Centre - Acupuncture Melbourne, https://evergreencmc.com.au/chronic-fatigue-syndrome/

  21. CMV: The practice of Traditional Chinese Medicine is pseudo-scientific, and all perceived positive effects are either caused by the placebo effect, or have nothing to do with TCM treatment at all : r/changemyview - Reddit, https://www.reddit.com/r/changemyview/comments/azmh71/cmv_the_practice_of_traditional_chinese_medicine/

  22. Five Element Theory in Chinese Medicine: What the Science Says - Healthline, https://www.healthline.com/health/mind-body/what-are-the-five-elements

  23. Traditional Chinese Medicine for Chronic Fatigue Syndrome - PMC, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2816380/

  24. Fatigue: A traditional Chinese medicine perspective | Nervous system | Herbal Reality, https://www.herbalreality.com/condition/fatigue-tcm-perspective/

  25. Chronic Fatigue Recovery With Acupuncture | NCCAOM, https://www.nccaom.org/wp-content/uploads/pdf/Chronic%20Fatigue%20Recovery%20With%20Acupuncture.pdf

  26. Tiredness & Fatigue - the Traditional Chinese Medicine Approach - - The Jade Centre Leeds, https://thejadecentre.co.uk/tiredness-fatigue-traditional-chinese-medicine/

  27. Fibromyalgia and Traditional Chinese Medicine (TCM) - Raleigh Acupuncture Associates, https://raleighacupunctureinc.com/fibromyalgia-and-traditional-chinese-medicine/

  28. Fibromyalgia Explained: Symptoms and How Chinese Medicine Can Help | Sustain Health, https://sustainhealth.com.au/blog/fibromyalgia-explained-symptoms-chinese-medicine-can-help

  29. How Beneficial is Chinese Medicine for Fibromyalgia Sufferers?, https://healingpoints-acu.com/how-beneficial-is-chinese-medicine-for-fibromyalgia-sufferers/

  30. Chinese Medicine Treatment of Fibromyalgia - East West Healing Center, https://eastwesthealingcenter.net/wp-content/uploads/2018/07/Fibromyalgia.pdf

  31. Fibromyalgia & Chinese Medicine - Avicenna Acupuncture Clinic, https://www.avicennadenver.com/conditions-treated/fibromyalgia-care/chinese-medicine/

  32. Harmonize Life's Energies: Five Elements in Qi Gong - Advanced Musculoskeletal Medicine Consultants, Inc., https://advancedmmc.com/exploring-five-elements-in-qi-gong/

  33. Five-Element Music Therapy Combined with Artificial Intelligence - PMC - PubMed Central, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10855257/

  34. The Simple Foundations of Life - Kindred Black, https://www.kindredblack.com/blogs/journal/five-elements

  35. The Science of the Five Elements in the Evolution of Humanity: Primo Vascular System (Bonghan Circulatory System) - Scientific Research, https://www.scirp.org/journal/paperinformation?paperid=63617

  36. Clinical Application of Yin-Yang Theory and the Five Elements Theory in Traditional Veterinary Medicine - VIN, https://www.vin.com/apputil/content/defaultadv1.aspx?pId=11343&meta=generic&catId=34551&id=5124188&ind=4&objTypeID=17

  37. 5 Elements Chinese Medicine for Optimal Health - CentreSpringMD, https://centrespringmd.com/5-elements-chinese-medicine/

  38. Autoimmune Disorders - Family Tree Acupuncture, https://familytreeacupuncture.com.au/autoimmune-disorders/

  39. Autoimmune Diseases - Advanced Holistic Center: NYC Acupuncture & Chinese Medicine Center, https://advancedholisticcenter.com/conditions/autoimmune-diseases/

  40. How to Treat Autoimmune Disorders With Acupuncture and TCM, https://myartofwellness.com/how-to-treat-autoimmune-disorders-with-acupuncture-and-tcm/

  41. Chinese Medicine for Autoimmune Diseases - Nature Heals, https://www.naturehealsclinic.com/how-can-chinese-medicine-help-for-rheumatism-autoimmune-and-inflammatory-diseases/

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