2013年4月28日日曜日

「狂」:漢字の起源と由来

 最近、何かが狂い始めている。国の指導者も然り。本人は実に真面目に「一生懸命」である。だから余計に始末が悪い。
 
 諺に「亀の甲より年の功」といわれるが、最近特に感じることである。
 例えば戦争に行くことが、決していいことだと言わないが、すくなくとも戦争を経験したものは、二度と戦争をしたいとは思わない。しかし、戦争を経験していないものは、意識が抽象的になって、「戦争」を簡単なものに考えてしまうのではないだろうか。北朝鮮の指導者にしても、日本の首相や高級官僚などの国を指導する人々は、なぜあんなに戦うことを急ぐのか?
 「強いアメリカ」「強い日本」「強い中国」、いずれも民族主義を肩に担いで動こうとする。大衆の意向がそうといえばそうであるが、そもそも大衆の意向は何で決まるかといえば、その政治で決まる。つまり前の政権を引き継いだにせよ、指導者が自ら作り出してきた「潮」である。
 
 民族主義は非常に危険な思想だが、しかし自然発生的に出てくるものではなく、強力な権力が何らかの意図を持って、国外または国内で工作を仕掛け意識的に誘導して作り出されるものが、殆どではないかと思われる。そしてそれに易々とだまされるのが、概して貧困層であり、教育を受けていない被支配者階級(階層)なのだ。
 人類は結局、お互い闘い殺し合い、最後は死滅するのかもしれない。その時になって初めて、「人間とは何と愚かな生き物なんだ」と気付くのかもしれない。その時まで、この狂気の思想に取りつかれたまま、死に向かって行進するのかもしれない。

 世の中全体が、或いは自然までも狂い始めているように感じられる。だれが、世の中を狂わしているのか?


 「狂」という漢字の起源と由来に当たって見よう。この狂いを太古の人々はどのように認識していたのか。


引用 「汉字密码」(P35,唐汉,学林出版社)

甲骨文字の「狂」の字の右半分は犬の象形のデッサンである。

甲骨文字の「狂」の字の右半分は犬の象形のデッサンである。左半分の上部は足の足跡を表示し。下辺は「土」の字である。



「犬」の字は、犬が狂犬病を患った後で走り回る情景を表している

 両形は会意文字である。犬がその本性を失ってしまって、走り回ることを止められない。犬が狂犬病を患った後で走り回る情景を表している。小篆の「狂」の字は既に会意兼形声文字となっている。「犬と圭」。隷書から楷書まで一歩ずつ変化し、今日の狂の字がどのようにして一歩ずつ変化したか(訛り)を見るのは難しいことではない。楷書の「狂」の字は既に典型的な形声字となっている。犬という字と「王」の発声。


現代漢字中、「狂」の字は人の精神の常を失しているという意味である。

 現代漢字中、「狂」の字は人の精神の常を失しているという意味である。
 またこれから拡張され人の「狂妄、人が理知的な状態を失って、あるがままに放蕩し拘束を受けない状態を言う。心を失い、病に狂い・・。
 また拡張され、情勢が猛烈で広く大きい時、「狂風暴雨。狂暴不安」のように用いる。
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2013年4月23日火曜日

獄:漢字の起源と由来

 犬にまつわる漢字について、連続して調べているが、今回は「獄」という字である。獄という字は、「監獄、地獄」という風にあまり好いイメージには使われない。犬は最も古くから人間と馴染んできた動物であるが、その割には昔からあまりいい評価を与えられていない。犬は人間が飼いならして以降、人間に忠実で、人に逆らうことはなかったことから、却って見下げられてきたのかもしれない。どこかの首相がどこかの大統領に媚びた為、「ポチの尻尾」と呼ばれたことにも通じるのかもしれない。この方は、この一国の首相の個人の問題で終わらなく、その国民全体が今や世界からあまり評価を受けなくなってしまっていることに、深刻な問題をはらんでいる。

引用 「汉字密码」(P29,唐汉,学林出版社)

「獄」という字は、二匹の犬が相まみえて唸り鳴いている形をしている


  「獄」という字は金文では、二匹の犬が相まみえて唸り鳴いている形をしている。真ん中の字形は「言う」の字で、これは二匹の犬が争っている時の叫び声を表している。犬が相互にかみ合っていることから、拡張され争いを表している。人と訴訟する意味である。敗訴になった人は牢につないがれたことから拡張され、漢代以降、人々は監牢を「獄」と称するようになった。

 獄の字は二匹の犬が守って、牢獄の一つの概念を示している。単に監獄に犬を看守として用いるだけではなく、無論大きな家の人は、皆通常は百姓等も皆犬を使って、大きな家の警護した。


歴代の統治者は犬
 犬は人間に対しては多くの用途があり、いわゆる歴代の統治者は犬を十分重んじてきた。《周礼•秋官》の中で、宮廷では犬と人一緒ではなく、専門に飼い犬を掌管し、犬の用事をした。漢代には「犬監」という、皇帝の飼い犬を養育を請け負う専門の部署があり、唐代には犬を養う「狗房」があった。元代の"狗站"は犬の駅を提供する役使であった。


人間の犬に対する評価

 犬と人は密接な関係を持っていたけれども、しかし中国人は犬に対してはそんなに高い評価をしているわけではない。犬で以て人を例えて、賎しいとか軽蔑の意味を持つ。「走狗、狗屁(たわごと)、狗屎(くだらないやつ)、狗官(悪役人)、狗眼看人低(権力や金持ちに媚びるような人間は、決って貧しい人を軽蔑するものである。)等など。皆貶す意味をもった生活習慣用語である。
 
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2013年4月21日日曜日

狗:漢字の成り立ちと由来 いつから犬のことを「狗」と呼ぶようになったのか?

 中国では犬のことを「狗」と呼ぶ。日本でも天狗や走狗というように用いられるが、犬は専ら「犬」である。しかし現代中国でも、牧羊犬、警犬、玩赏犬、食肉犬というが、番狗、食肉狗とは言わない。また犬歯というが、狗歯とは言わない。いつからそのようになったのだろう。犬と狗との使い分けはどうなっているのだろう。少し探って見た。
引用 「汉字密码」(P27, 唐汉,学林出版社)

「狗」は犬の交配から先住民が呼び出したことによる

 「犬」の字はなぜQuan(チュアン)と発音するのか?これは犬の子の鳴き声の「きゃんきゃん」というところから来ている。これは犬の発音は子犬の擬声語から来ている。
 しかし、人々はなぜ「犬」を「狗」と呼ぶのだろうか。このことは人々が通常湾曲した形状のものを「鈎」と称したことによるものだ。湾曲したものをつなぎ合わせて一緒に「句(gou)搭」と呼んだ。雄犬と母犬が交配をする時、大変長い時間「離れがたく一緒」にいるが、まるで繋がったものと同じようである。先住民は交配している犬を見て、自然に「句住」と呼んだものだろう。こうして長い間、「句」の発音は犬の通称となった。発音に基づき、犬と句の音と犬の字が同時に使用されて、人々は「狗」の字を作った。


漢の時代には既に「犬」は「狗」と呼ばれていた

 西漢の初年、漢の高祖が天下を取るのを助けた戦功を立てた大将軍韓信は謀反の嫌疑をかけられ、毒を飲まされ自殺した。彼は一句世に伝える名言を残している。「狡兔死,走狗烹。」この意味はずるい兎を捕まえる時は犬は一定重用されるが、一旦ウサギが捕まり、犬が用いられなくなると料理されて食べられるものだ。これは韓信のの自嘲の気持ちである。我々は却って、この事から、犬を狗と呼ぶようになったのは相当古いことだと見て取れる。

 漢字の中で「犬」の字は部首である。偏と旁に用いる時、犬は却って「狐、狼」の様にかかれる。「犬」の造りは通常犬と同類の哺乳動物の類を表す旁となる。音を表す旁を用いて、犬の行為に関係を示す。

「犬」は早い時期から狩りの助けなど
人々の生活に係わってきた

《诗•小雅•巧言》のなかに「子供のウサギに心が躍る、犬に会ってこれを捕まえる」の記述がある。これから分かることは相当早い時期から、犬は既に人々の狩りの助けをし、人々のために犬馬の労に献身する。
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2013年4月19日金曜日

「犬」:漢字の起源と由来

前回と前々回で「臭」と「献」の字について、それがいずれも犬から派生された字であることが理解できた。そこで今回は、これらの大本の由来である、「犬」の字の起源と由来について、唐漢氏に尋ねてみることにする。
 犬は中国人は「狗」という。犬科で聴覚、嗅覚とも鋭敏で、犬歯は鋭く、前脚は5趾、後ろ足は4趾で曲がった爪をもち性格は機敏で、訓練に適応し、狩犬、牧羊犬、番犬、愛玩犬、食肉犬等になる。 犬は人類が最も早く(約8千年前)から順化させた野生動物の典型は中国狗で、尾は後ろに巻きあげている。


ここで一つの疑問が出てくる。中国の3300年前の先民たちは、なぜ字を書くのに縦長で、立てて描いたのだろうか?

これは漢字や文字が縦に書かれることのルーツであるような気がする。
引用 「汉字密码」(P26,唐汉,学林出版社)

「犬」これは象形文字であり、輪郭の特徴をとらえた造字法である

「犬」これは象形文字である。2千年以上も前、孔子は「犬」字を見た後、少し感心した感じで、「犬の字は『狗の絵の様だ。」といったという。
 明らかに犬の字は牛や羊の造字方法の特徴とは同じでなく、犬の字が従っているのは、輪郭の特徴をとらえた造字法である。即ち線で輪郭を取る方法である。この種の方法はしっかりと犬の外形的特徴をつかんでいる。体は細く、長い尾は巻いている。

先民が犬を縦長に立てた状態で描いた

観察上字形を述べると、我々は犬の字が横から見た、実際の状態に対応できるのが分かる。これは漢字の横に狭く縦に長く書くという特徴に適応したためで、3300年以前のはるか昔の先民が犬を縦長に立てた状態で描いたものだ。まさにこれは一つの原因であり、それ以降犬の字は随時一つ一つ変わっていって、今日の犬の字の楷書になっている。厳格に述べれば、今日の「犬」の字は一種の文字符号であるが、それは依然として象形文字である。
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