2020年9月25日金曜日

漢字「柳」と楊:柳行李は楊行李とは書かない。それは「柳」と「楊」は違うからだ


漢字「柳」と楊:柳行李は楊行李とは書かない。それは「柳」と「楊」は違うからだ
 柳行李は楊行李とは書かない。それは「柳」と「楊」は違うからだ。では漢字の「柳」と「楊」はどう違う?

 今ではほとんど見かけなくなった柳行李ですが、コリヤナギというヤナギ科の落葉低木の皮で編んだ衣装ケースのことです。ほんの50年間には日本のどこの家にも見られたものです。

比較的安価で通気性にも優れ、軽いので運搬するのにも適していたために、日本では長く用いられてきました。

 歴史は古く、奈良時代にまで遡るそうです。

 背がそれほど高くないために、川べりや街路樹として用いられました。また、諺として「柳の下に泥鰌は居ない」などがあり、一度うまくいったからといって、再びうまくいくとは限らない」という意味に使われます。

 上の画像は、ウィキペディアからのものです。

引用:「汉字密码」(P160、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「柳」は「卵、木」から構成された字です。 「卵」は、象形文字で、胎盤からの胎児の分離を意味しており、オブジェクトのさまざまな部分の動作を指します。 柳の木の枝は柔らかく、きれいに整えられて垂れ下がっていますが、それぞれが風に揺れます。 したがって、人々は「木」と「卵」を使用して「柳」という言葉を作成しました。



「柳」(Goo国語辞書参照
 ヤナギ科ヤナギ属の落葉樹の総称。一般に湿地に多く、低木または高木で、葉はふつう互生する。雌雄異株。主に早春、花が穂状か尾状につき、種子は白毛があって風で飛び、柳絮 (りゅうじょ) という。街路樹や庭園樹などにされ、材は器具・薪炭用。コリヤナギ・ネコヤナギなど多くの種があるが、葉の細長いシダレヤナギをさすことが多い。

唐漢氏の解釈
「杨ヤン」の繁体字は「楊」です。










「楊」(ヴィキペディア参照)
 枝が立ち上がる種類(ネコヤナギやイヌコリヤナギなど)のことをいう。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。 葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。 雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。ただし、外見的には雄花の花序も雌花の花序もさほど変わらない。雄花は雄しべが数本、雌花は雌しべがあるだけで、花弁はない。

結び
 以上「柳」と「楊」の違いを見てきたが、感じは確かに違うが、実際には、かなり混同して使われてきたようだ。漢字には生まれは違っても、使われていくうちに、混同されたり、あるいはまったく別のものになったり、漢字がまるで生き物のように見えることがある。

 柳と楊、赤と紅など感じは違うが同じような意味を持つ漢字がいくつかあります。今後少しずつ違いをはっきりしていきたいと思います。



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2020年9月21日月曜日

我田引水の漢字「引」の意味するものは・・?


漢字「引」:我田引水の「引」の意味するものは・・?
「我田引水」という四字熟語ご存知でしょうか。我田引水とは、他人のことを考えず、自分に都合が良いように考えたり、ものごとを行ったりすること。読んで字のとおり、自分の田んぼにだけ水を引き入れる意です。

 少し意味合いが違いますが、「牽強付会」という似たような言葉があります。これは、自分の都合のいいように、強引に理屈をこじつけることです。

 トランプ大統領のいう「アメリカファースト」という言葉は、我田引水の最たるものでしょう。また自分が不利になると、ことある毎に、「それはデマだ」というデマを流すのは、「牽強付会」の典型的なものでしょう。それを見習った安倍政権にもずいぶん屁理屈なこじ付けを見せ付けられました。


 さてここでは「我田引水」の「引」の字を分解してみましょう。

引用:「汉字密码」(P571、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「引」、これは会意文字です。 甲骨文字の形の左側は「弓」の絵文字であり、弓線の点線は発射する前に弦が後ろに引っ張られて、移動することを示しています。右側は手に持った矢の形です。 小篆の「引」は右手の形を省略し、硬さを保持しています。これは、「矢」が「弓」にかかっていることを意味します。

  「引」、「説文」は「引、開弓也」と解釈されます。矢は弦の上に置かれ、弓でいっぱい引いて、発射の準備ができたことを意味しています。

字統の解釈
 「字統」では説文の「引、開弓也」の解釈を引用していますが、初文がないので確かめようがないとしています。




結び
 甲骨文字の字形から見ると、矢をつがえ、将に弓の弦を引かんとする様に見えますが、このことから、物を引っ張たり、手まれに引き寄せたりすることを「引」としたようです。

「射」という漢字は、この引くという動作から「射」という一連の動作の動きが、漢字に表されているようで、非常に面白く思いました。






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2020年9月17日木曜日

射手座のロマンと漢字「射」の生まれの甲骨文字の持つロマン


射手座のロマンと漢字「射」の生まれのロマン
 夏の夜の空を代表する射手座がロマンを掻き立てる。いて座は、アルテミスから狩猟を学んだケンタウロスであるケイローンが弓を引く姿で親しまれている。射手座は紀元前1300年ごろ、地中海で勢力を持ったシュメール文明に起源を持つとするのが定説である。

 漢字の「射」は射手座の生まれとはまったく関係のないところで生まれた。しかしこの文字は射手座の設定より数世紀遡ると考えられるものの、同じような時期に生まれていることは、偶然といえ興味深い。

漢字「射」の甲骨文字は、弓に矢をつがえた状態の象形文字である。実にリアルで面白い。
 一方「引」の甲骨文字は、弓は引けども矢はつがえてない象形文字になっていて、非常に面白い。青銅器に描かれた射撃の訓練の様子のデッサンは実にすばらしい。非常に洗練されたデッサンで、すばらしいの一言であると思いませんか。





引用:「汉字密码」(P572、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「射」、これは会意文字です。甲骨文字の「射」という言葉は、湾曲した弓のようなもので、矢印は弦上で発射される状態です。

 金文の「射」という字は矢尻にもう一個又(手)を追加し、手に持って矢を射ることで「射」意味します。

 小篆は「身」、「寸」、乃至「身」と「斗」に変わった。「寸」(腕)は金文の又の変形である。楷書は小篆から、「射」と書きます。

 この説明では、本来弓偏であったものが、なぜ「身」変に変わったのかの説明が付きません。甲骨文や金文では、左の字形はどう見ても弓にしか見えないのですが、何故「身」になったのかは疑問です。


字統の解釈
 初形は弓矢と手に従う。弓に矢をつがえてこれを放す形。今弓矢の形と身と誤り解釈して、その形義を得がたいものとなった。
 つまりこの解釈であれば、「射」のもともとの字は、弓偏+寸もしくは弓偏+又であったはずで、「身」は誤用だという。



結び
「引」と「射」の二つの甲骨文字に遡った。現代で活用されている字形からは、及びも付かないが、甲骨文字ではこの二つは同じ字源を持っており、共通点は「弓」である。「引」は、弓を引いてはいるが矢はつがえていない。一方「射」は弓に矢はつがえられて将に射出する様が字になっている。このことは現代の字からは想像だに出来ないことである。。



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2020年9月14日月曜日

漢字「石」の起源と名前

漢字「石」の起源と名前
 今日、自民党の総裁選が行われた。そこでこのページでも取り上げた石破茂氏も立候補したが、ある意味戦わずしてヤブレタ感じであった。私は今回の選挙を見て、自民党というのは「民主」という名前を持っているが、およそ民主的な党ではないなと感じた。密室でサッサと自分たち(党三役)だけで都合のいい候補者を選び、その候補者が選ばれるように選挙方法を決め、投票する権利のある党員にも平等な権利を与えず選挙をしてしまった。

これは単なる一政党の問題だから、とやかく言う問題ではないという人もいるだろうが、選挙の結果として、国民の生死にかかわる総理大臣を選ぶのだから、水に流してしまうわけには行かない。

 こんな党が日本を牛耳っている限り、国民の声を聞くような民主的な手続きが為されるはずがないと思えてくる。


「石破茂」という名前を勝手に鑑定した
 Web上の無料の姓名判断で、勝手に占ってみました。あたるも八卦、あたらないのも八卦。皆さんはこれをどう判断するでしょうか。
 探求心や知的好奇心が旺盛で、色々突っ込んで調べたりして、周りから相談を受けたり、統率力も持っている。そして自分の能力を高めることに熱心で、さまざまな知識や技術を身につけようとするでしょう。ある意味でオタク。そうした傾向が、高い評価や人気につながっています。


石破という苗字の由来
 鳥取県が発祥。発生は奈良時代に遡るという。そして、石破という苗字を名乗る人は全国で400人ぐらいというからかなり珍しい方に入るのかもしれない。苗字全体では30万種ほどあるらしいが、「石破」という苗字はかなり珍しいことになる。
 石という漢字は、甲骨文字は、岩盤から外れた?塊を表しているらしいが、このことから、硬い石の塊とか、硬い材質とか、硬い状態などに関係することを表すときは「石」が付く文字になっているようだ。

引用:「汉字密码」(P307、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「石」これは会意文字である。甲骨文字の「石」の字は、左上隅は石の岩盤のデッサンとなっている。右下隅の「口」は石盤の上から下に吊り下げた塊を示している。古人はこのように巧妙な思考を持ち、石盤の材質を表している。即ち石の塊である。

 金文と小篆はこの岩盤の形が省略され「厂ガンダレ」になっている。ガンダレのひっくり返した記号は、その意は転がして動かせる石の塊という意味である。



面白漢字
「磊」という漢字がある。この漢字から思い出す熟語は、「磊落」という単語である。この意味は、あけすけで小さなことに拘らないさま(漢字源より)

 因みに「磊」という漢字そのものの意味は、石がゴロゴロしているさま。発想としては、「森、姦、晶」と同じである。






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結び
 漢字の意味などを真剣に考えるときは、子供に名前をつける時だ。
 自分も若いときにずいぶん色々悩んだものだ。
 後で知った話だが、子供が生まれて、所定の期間内に届けを出さなかったら、ペナルティーの対象となる。色々悩んだが、これまた後で読んだ本では、画数が子供に影響を及ぼすことはないとのこと。それよりも、漢字の成り立ちや由来から漢字がどのように使われ、発展してきたかを学ぶほうがずっと子供のためになる。後悔先に立たずとはこのことだ。しかし一番悪いのは、自分のうだつが上がらないのを名前のせいにして、恨まれることだ。やっぱり子供の名前には悩んでしまうのが、親というものだ。




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2020年9月8日火曜日

雷に打たれることから身を防ぐ


雷に打たれることから身を守る
近年雷の発生が盛んになっているといわれている。これは地球温暖化の結果として、海水温が上昇して、端的に言えば積乱雲の発達につながり、結果として雷がより多く発生しているというのが定説のようだ。たまたま、今年20年9月の始め、神戸市から淡路島付近で発生したの分布は下図のようなものであった。


左の図の黄色のドットが示しているように、かなりの密度で雷の発生が見られる。

雷とは? (気象庁のホームページによる)
雷は、大気中で大量の正負の電荷分離が起こり、放電する現象です。
放電する際に発生する音が雷鳴で、光が電光です。雲と地上の間で発生する放電を対地放電(落雷)といい、雲の中や雲と雲の間などで発生する放電を雲放電といいます。

雷を発生させる電荷の分離は、雲の中で「あられ」と氷晶(小さい氷のつぶ)の衝突により起こると考えられています。
湿った空気が激しく上昇して上空の低い温度の層に達すると「あられ」や氷晶が多量に発生し、雷雲となります。

このため、雷は上空高くまで発達した積乱雲で発生し、雷雲の背丈は夏は7km以上、冬は4km以上となります。






雷に遭遇した場合は安全な空間へ避難(気象庁のホームページの抜粋)
1) 雷は、雷雲の位置次第で、海面、平野、山岳などところを選ばずに落ちます。近くに高いものがあると、これを通って落ちる傾向があります。グランドやゴルフ場、屋外プール、堤防や砂浜、海上などの開けた場所や、山頂や尾根などの高いところなどでは、人に落雷しやすくなるので、できるだけ早く安全な空間に避難して下さい。
2) 鉄筋コンクリート建築、自動車(オープンカーは不可)、バス、列車の内部は比較的安全な空間です。



雷サージからあなたのパソコンを守ろう・・ちょっとした気遣いを

それでも、雷の危険に遭遇したときは、「雷ぶらり」というサイトでは、雷しゃがみのポーズをとって、とにかくその場をしのぐこと推奨しています。


雷しゃがみのポーズの仕方は以下の通りです。
1. ひざを折ってしゃがみ、上半身をできるだけ前かがみにします。
2. 両足のかかと同士をつけます。
3. そのまま爪先立ちします。
4. 両手で耳を塞ぎます。
特に重要なのは、2と3です。



漢字「申、神、雷」の古文

電光の走る形に象り、神の初文 声符は申。申は電光が斜めに屈折して走る形で、神威のあらわれるところ 甲骨文字の雷は光が走る。甲骨にしろ、金文にしろ古文にしろ共通しているのは、電光が走ることであり、それらはすべて神に関係していることである。




結び
 太古の昔から、雷は神のなす仕業として、畏れ、敬い、アンタッチャブルの領域として、人間は入り込むことをしなかった。フランクリンが、雷の実態を暴いた後は、人間は神の領域をものともしなくなった。しかし、コロナウイルスにしても宇宙の果てにしても人間に分かった部分はほんのわずかな一部に過ぎない。あくなき探求心であらゆる法則を手に入れようとするのは人間の性かもしれない。しかし、人間が手を加えて、自然が自らをコントロールできないようになるまで迫るのは少し控えるべきではないかと思うようになってきた。



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2020年9月4日金曜日

漢字「舟」、船、艇、艦はどう違うの?


漢字「舟」、船、艇、艦の違いはどこにある?
 「舟」は木を刳りぬいた原始的だが、基本的な舟、船は沿岸を走るから大きな舟、艇はまっすぐ進む小さな舟、艦は船の上に版屋を設けて、矢を防ぐ形をした軍船をいう。近代の特殊な使い方で、タンカーは油轮という。

 漢字「舟」に関係する漢字を拾ってみました。これで全てかどうかは分かりませんが、全部で110個がカウントできました。
 そのうちごく一部ですが、舟が旁や偏で明示的に構成要素となっているものを要素に分解し、下記に一例として挙げてみました。

舟、航(こう 舟+亢で形声文字)、
盤(深いお盆のような器・・白川氏は刳り舟と盤は同形であるから盤形は舟で示されるとしている)
般(舟+殳(しゅ)からなる、白川氏は舟は盤の象形で、殳は盤中のものを汲み取る形という。合わせて運ぶの意味があるという)
舳(へさき:舟+由から構成され、由は壷の先端から油などを抽出する様をいい、抽出されたように船首が突き出ているのでへさきという)、
船(大型の舟をいう)、舵(かじ 舟+它で会意兼形声、它は横に伸びる意味を持ち、横に引っ張る船の舵をいう)、
舶(大きな船のことを言う・・日本書紀に出てくる)、
艇(会意兼形声、廷はまっすぐという意味を持つ。併せてまっすぐに直進する細い小船)、
艙(そう:船倉のことを言う)、
艘(そう:会意兼形声、舟+叟で、叟は細長いという意味を持つ、舟を数える数詞)、
艦(会意兼形声、舟+監(上から見下ろすという意味を持つ)戦いの船、
艫(とも:会意兼形声、舟+盧で、盧はつぼ型の窪みのことを言う)
油轮:タンカーのこと・・タンカーは船なのになぜか油の輪と書く 

これ以外で「舟」を構成要素の中に持っているが、明示的でない漢字
俞:これは会意字です、受、朕(ちん)



引用:「汉字密码」(P115、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「舟」という 字は、 字型の観点から見ると、甲骨の木の筏の形状に似ているものから、今日見られる小さな小舟に発展しています。

 最も発達したものは平底、方頭、方尾で、上頭と尾がわずか跳ね上がり、舟の両端にはデッキと突き出た角があります。これは比較的先進的な木造船で、その形は木を削いで一木舟としたもののようです。

 金文の「舟」は甲骨に似ており、小篆はすでに変化し始めており、楷書は隷書に変遷后「舟」と書きます。


字統の解釈
盤(舟の別名とも考えられる)
 字統:船 舟の形に象る。説文に 舟なり として 昔木をくりぬいて舟となし 木を削りて櫂としなし 以って通ぜざるを渡すと起源説話をくわえている。 左のような大きな容器に物を入れ運搬し、物をやり取りしていたとも考えられる。その結果として、このような盤を舟と称していたという説もある。








結び
 舟にかかわる漢字を集めてみたが、甲骨文字など古くさかのぼると、これらの文字が直感的に理解できることが良く分かりますね。
 漢字の持つ素晴らしさが改めて理解できた。




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2020年9月2日水曜日

漢字「受」:後に授受に分化する。授受の立場の違いが、漢字の中に歴然と?


最初は授受の区別はなかった。しかし授受の立場の違いが、漢字の中に歴然と?
 今は受と授は受動的な行為と能動的な行為にはっきり分けられているが、太古の昔は両者の区別はなく、受けるも授けるも同じ漢字「受」を使っていたようだ。

 考えてみれば、受けるも授けるも視点を変えれば同じ行為となるので、同じ漢字を使っていたとしても、それほど混乱は生じなかったのかもしれない。




引用:「汉字密码」(P115、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「受」、これは会意文字です。甲骨文と金文の「受」という言葉は、上下に手があり、中央に「船」の象形があります。会意の考えで、ある人が「ボート」を別の人の手に渡したという意味です。

 このイメージは「与える」と「受け取る」の両方を意味するため、古文では、与えることと受け取ることの2つの意味を両方とも「受」で表現していました。

 受の字形の分析から、殷商の時代の船はおそらくただ人を乗せるためだけではなく、航海の前後には、全て人から人への引き継ぎプロセスがあったはずだ。 一人の人の手から他の人への手にという受渡しの過程がある。

 小篆の「受」という単語が変更され、両手はまだ残っていますが、中央の「舟」は見えなくなり、単なる識別記号にすぎません。そのため、楷書では「受」と書かれています。


言葉の進化
 「受」、「説文」は「受、お互いに支払う」と解釈されている。つまり、引き渡しです。

 この元々の意味は後に「授」(与える)と「受」(受け取る)に分化しました。

 たとえば、「孟子•离委上」:「男性と女性に物を与えることは「礼節」の礼ではない」意味することは、男女は物品を授受することで親しく近づくことではない。私の読みが正しければ、ものの授受と礼節の問題まで言及されている。



字統の解釈
 会意文字。「上下の手」と舟に従う。ここで「舟」は「盤」の象形。盤中のものを手に入れて授受することをいう。ここで、舟はものを盛る盤で搬ぶ(はこぶ)などはその形に従う字である。



結び
 唐漢氏は受の媒体が本物の舟であるという論理を展開しているが、白川氏は「舟」は本物の舟ではなく、ものを乗せる{盤」であると解釈している。舟の使い方がもう一つはっきりしないのでなんともいえないが、問題は単純に舟と割り切れない部分がある。

 受け渡しの間に「船が入るか盤であるか」は別として、受け渡しの行為は、単なる行為の違いだけではなく、立場や態度の違いが生じてしまう。ここに礼節の問題が出てくるのだろうか。人間の世界は面白い。




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2020年9月1日火曜日

漢字「行」:漢字に進化論の真髄を見た



 「漢字の進化論の真髄を見た」という多少オーバーな表題だが、漢字と文化、人々の思考の奥深さを感じざるを得ない。

 許慎はこの字を十字路の象形文字としては解釈せず、歩行する動作と解釈している。とすれば、許慎の時代には、すでに「行」を動詞として取り扱っていたと考えられる。

 おそらく当時「歩」という漢字はすでに発明されていたであろうが、十字路という象形文字から、歩くという具体的な行動ではなく、「行く」という抽象的にな行動を発想するという思考の飛躍には驚かされる。


引用:「汉字密码」(P747、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「行」、象形字です。 甲骨文字の形状は縦横交差する道路のようなもので、上下が左右につながっていて、四つ折りの道を顕示しています。

 金文の形状は甲骨と似ています。これは、東西南北を通る大きな交差道路を意味します。

 小篆の変化が多く、字体も綺麗ですが、却って通行出来る大道の様子は出ていません、楷書はこの縁で「行」になっている。


字統の解釈
 象形。十字路の形。交差する大道を言う。説文に「人の歩趨なり」というのは、字を右歩、左歩と合わせて歩行する動作と解したものであるが、甲骨の字形は十字路の象形。



行の発声
 コウ(漢音)、ギョウ(呉音)、アン(唐宋音)、ゴウ(呉音)



結び
 文字の発展を見ると、人間の発想や思考は連続的な発展だけの繰り返しではなく、不連続的な思考という発展が繰り返されてくるものだという思いにぶつかる。

 将にこのことにこそ人間の文化の発展の源泉があるのかもしれない。そしてそのことはダーウインの生物学的な進化論の表れのひとつかも知れないと思うと興味は果てしなく続く。




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