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2020年9月1日火曜日

漢字「行」:漢字に進化論の真髄を見た



 「漢字の進化論の真髄を見た」という多少オーバーな表題だが、漢字と文化、人々の思考の奥深さを感じざるを得ない。

 許慎はこの字を十字路の象形文字としては解釈せず、歩行する動作と解釈している。とすれば、許慎の時代には、すでに「行」を動詞として取り扱っていたと考えられる。

 おそらく当時「歩」という漢字はすでに発明されていたであろうが、十字路という象形文字から、歩くという具体的な行動ではなく、「行く」という抽象的にな行動を発想するという思考の飛躍には驚かされる。


引用:「汉字密码」(P747、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「行」、象形字です。 甲骨文字の形状は縦横交差する道路のようなもので、上下が左右につながっていて、四つ折りの道を顕示しています。

 金文の形状は甲骨と似ています。これは、東西南北を通る大きな交差道路を意味します。

 小篆の変化が多く、字体も綺麗ですが、却って通行出来る大道の様子は出ていません、楷書はこの縁で「行」になっている。


字統の解釈
 象形。十字路の形。交差する大道を言う。説文に「人の歩趨なり」というのは、字を右歩、左歩と合わせて歩行する動作と解したものであるが、甲骨の字形は十字路の象形。



行の発声
 コウ(漢音)、ギョウ(呉音)、アン(唐宋音)、ゴウ(呉音)



結び
 文字の発展を見ると、人間の発想や思考は連続的な発展だけの繰り返しではなく、不連続的な思考という発展が繰り返されてくるものだという思いにぶつかる。

 将にこのことにこそ人間の文化の発展の源泉があるのかもしれない。そしてそのことはダーウインの生物学的な進化論の表れのひとつかも知れないと思うと興味は果てしなく続く。




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2019年4月5日金曜日

水前寺さんの「365歩のマーチ」の「歩」の長さは?

長さの単位としての「歩」
 今では「一歩」というと、純粋に歩幅を表現しているようだが、日本でも中国でも「一歩」というのは、「左右の歩を進めた長さ」のことをいう。

 昔から歌や格言に使われてきた「歩」が具体的に、何センチのことを言うのか、考えたことがおありだろうか?
 日本と中国では少し定義が異なり、約 1.818m(日本)、 約 1.667 m(中国)であったということだそうだ。


365歩とは具体的にはどのくらいの長さ?
甲骨文字「歩」
 今から50年前水前寺清子さんの「365歩のマーチ」という歌がヒットした。あれから50年も経つのかと思うと年月の流れるのは早いものだと思う。しかし、50年も経った割には世の中は365歩どころか、一歩も進んでいないように見える。最近では、戦前に帰れだとか、100年前に引き戻そうという動きさえ見える。
私たち日本人は、この辛い戦争を経験し、一体何を学んだのだろう。
 逆にロシアの革命家のレーニンの著書に「一歩前進二歩後退」というのがある。この本の通り言えば、大正デモクラシーから、100年。この100年の間に100歩も後退したことになる。

 この「「歩」というのは、概念的な歩みのことで、現実の物理的な「歩」を指すわけではないが、「千里の道も一歩から」という言葉もあるので、少し歌でいけばどのくらい進んでいなければならないのか、少し考えてみよう。




塵も積もれば
 歌詞に拠れば365歩は1年で歩くことになるので、365歩 X 50年 = 18250歩 進んでいなければならない計算だ。
 さて、この一歩は、日本では長さの単位としては、1.818mで、中国の清の時代まで使われた尺貫法で言う1.667mとは少し異なるが、ともかく365 X 1.818 X 50 = 33,178.5m という勘定になる。即ち、33Kmも進んでいるはずということになる。
 これを多いと見るか少ないと見るか、いろいろあろうが、日本の全ての国民がこれだけ進むということは、やはり凄い数字である。
 あくまで比喩の話ではあるが、ちりも積もれば山となる、千歩の道も一歩からを具体的に見れば、大変な数字である。   因みに、ヴィキペディアによると、この長さの単位としての「歩」は以下の通り。

歩(ぶ)
系    尺貫法
量    長さ
SI    約 1.818 m(日本)、 約 1.667 m(中国)
定義  6尺(日本) 、 5尺(中国) 
由来   左右の歩を進めた長さ




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2016年12月19日月曜日

漢字「歩」の成立ちを「甲骨文字」に探る:左右を併せて一歩としていた


漢字「歩」の起源と由来

歩くということ
 甲骨文字では、足跡が二つ前後に並んでいる状態を表している。つまり「歩く」ことを表している。この歩くという行為が、あって、これを長さの単位とするようになった。今でも計測器のないときには、実際に歩いて長さを測定することが日常的にもある。

 日本では、片方の足を踏み出すことを一歩としている。ところが中国では、片足を踏み出したぐらいでは、「歩く」つまり「一歩」とはいわなかったらしい。あくまで、右、左と両足で踏み出して初めて一歩とカウントしたということだ。そう言われればなるほどと思う。「歩く」という概念もなかなか奥が深い。


引用:「汉字密码」(P394、唐汉著,学林出版社)

 歩は象形文字である。甲骨文字と金文の歩は両足の足跡が一つは前に一つは後ろにあることを表して、足が交代で前に行くことを示している。歩の本義は歩行である。歩兵、徒歩、等。
 「步步为营」この成語は、言っているのは軍隊が前進する時、前進の一歩一歩陣地を固めながら前進することである。まるで人の一歩の足跡を「稳扎稳打」(着実に根をおろし、着実に戦う)の形容することで、注意深くあるという事である。
文字の変化の過程で小篆の歩は象形から抜け出て、符号化の方向に発展し、楷書を経て隷書にいたって「歩」と書くようになった。


「歩」は長さの単位
長さとしての「歩」は、古代中国の周代に制定された。右足を踏み出し、次に左足を踏み出した時の、起点から踏み出した左足までの長さ(現代日本語でいう「2歩」)を「1歩」とする身体尺で、約 1.35 m(面積は 1.822 m2)だった。

 実際の1歩の長さは時代によって異なる。秦・漢では6尺と定義された。当時の尺は約23cmであり、1歩は約1.38m(面積は 1.9 m2)となった。その後、尺の長さが伸びるのに比例し従い歩の長さも伸び、隋代には約 1.77 m(面積は 3.14 m2)となった。

 唐代には5尺、つまり約 1.56 m(面積は 2.42 m2)となった。ただしこれは、歩の長さ・面積が変わったというよりは、尺が伸びたことに対し歩を変えないようにした結果だとする説もある。唐の大尺は小尺の1.2倍なので、大尺5尺は小尺6尺に等しくなる。



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