"法"の繁体字は"水+廌(鹿と馬に似た珍獣)+去”を合わせて書く。漢字源よると「池の中の島に廌を押し込め外に出られないようにした様」を表しているということで、伝説上の動物の名前で、悪者に触れてその非を糺すという性質があると信じられている。
今日はこの「法」について、もう少し深く解説したい。
引用 「汉字密码」(P894 唐汉,学林出版社)
「説文」の解釈
「説文解字」はこの字を解釈して、廌を解き放すことだとした。牛に似て、角が一本で、古代の人は訴訟を決定し、正直でないものに触れて、その非を正す性質があるとされた。
許慎が見るところによれば(多くの古人も含め)「廌+去」の字の造りの意味は、歴史的伝説から出ている。
「法」の字にまつわる伝説
春秋の時期、斉の庄公はある壬里の臣下が、中里の臣子を相手取って訴訟を起こした。罪状が判断付きにくかったために、斉の庄公は直ちに「廌」を、即ち神獣獬豸を呼んで彼ら二人の訴状を読ませた。 結果壬里国の訴状を読み終わっても獬豸はなんら動きを表示せず、一方、中里の訴状の半分も読み終わらぬうち、獬豸は角で彼を翻した。こうして斉の庄公は壬里国の勝訴の判決を下した。
かくして、この種の角で罪があるかないかを断じる方法が、漢字「サンズイ+廌+去」の字の構造の中に割り込ませることになった。漢の法官の冠にはこの神獣の角を形どった物が使われていたということである。
金文の「法」の字の生れた由来
実際上、金文中の法の字は古代の現実の生活の中から来ている。右辺は一頭の水牛の象形で、左辺の上部は「大」(人を表す)+口(地の穴)の構成の「去」の字である。下部は即ち水の象形の描写である。三つの形の会意は、人が水牛の水中遊泳の方法を見習うことが出来ることを示している。あるものは水牛ではなくいわゆる神獣であると説く。いずれにせよ、小篆の法の字は金文を承継しているが、ただ書の法の字は廌の形を省いて、「法」と書く。
「法」の字の本義
法の本義は「真似る・模倣」することである。「商君の書・更法」の如く、「治世不一道,便国不必法古。」 この事は国家を治めるには一つの道だけではない。ただ国家に有利にするには、必ずしも古きを模倣することではないという意味である。法は模倣の意味。また拡張され、「手段・方法」を表す。また更に拡張され、「見本。標準」の意味にも用いられる。「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。