2015年5月26日火曜日

漢字:壺の起源と由来

漢字:の起源と由来
「壺」日本語では、訓読みでは“ツボ”と読み、音読みでは“コ”という。中国語・簡体字は「壶」で、読みでは«hu 2声»と読む。
引用 「汉字密码」(P680,唐汉,学林出版社)

 象形文字である。甲骨文の壺は上古時代の酒壺の形取ったものである。上部の大という字は壺のふたである。

  中ほどのひょうたん型のものは、壺の腹を指している。下部は壺の輪底である。 小篆もまた大体酒壺のもようで、楷書の壺の字は簡体字では象形の味を失って、完全に線状化、符号化してしまっているように見えるが、繁体字では、未だ壺のふくらみが残されているようで面白い。

 壺は古代にあっては主要な酒盛りの器であった。
 古代からの文献を見るに、壺は当時また水器に用いられた。《周礼·夏官·挈壶氏》「掌掌壶以令军井」とある。ここで言っているのは、挈壶氏は水つぼを提げる職掌だということだ。軍隊の為に井戸水のある処を指示したのだろう。



 尚、「字統」での解釈は、唐漢氏のものとほぼ同様であるが、祭祀用に用いた酒壺というニュアンスが若干強いように感じた。

2015年5月23日土曜日

漢字:鬲の起源と由来



引用 「汉字密码」(P679,唐汉,学林出版社)

読み方:(音)レキ (訓) かなえ
 「鬲」これは一種の民族的色彩の濃い炊事用具である。「鬲」字は象形文字で、甲骨文字ではまさにこの種の煮炊きする用具のデッサンである。下部に3本の足があり、袋状の腹と二つの耳を持っている。金文の「鬲」字は甲骨文字と大方似ている。小篆の形象を失っている。
 「鬲」は古代の陶製の炊事具からきている。丸い口と別れていない3足の足を持っている腹がある。鬲は今から6、7千年を隔てた新石器時代の華夏民族の重要な発明である。


 それは陶器のとがった底と容量不足の矛盾を巧妙に解決し、更に陶器を焼くときに底部の面積が大きすぎて窯の壁が癒着してかつ焼成が失敗するという難題を解決した。鬲の用途は鼎と相似である。これは一種の食物を煮炊きする炊事具である。
 すこぶるつたないデッサンで申し訳ないが、「鬲」とはこんなものだと概念的に理解していただくために提示した。まさに後の「鼎」である。実際はこの表面に、文様が施されている。
 上古社会で多く作られたものは陶製で、また陶鬲に倣って少数のものは青銅で作られた。
 「鬲」の字は多音多義語である。二通りの読み方があり、一つはこの煮炊きの容器の場合ともう一つは「隔てる」という意味で、それは火と水を隔てる噐の一種というところからきている。

 因みに白川静博士の説明は以下のようになっている。
かなえの類で、器腹は分当形(口切に足のふくらみをもっ形)をなし、足は中空の款足である。 [説文]に「鼎の属なり。・・・ 腹の交文と三足に象る」という。又(璽雅、釈器〕に、鼎の款足あるもの、これを鬲と謂ふ」とあり、款足の上部まで物を容れうるので、熱のあたる部分が大きく、器も分当形をなしている。
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