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2021年5月12日水曜日

漢字「艱」の成り立ちと由来から歴史が見える:漢字はかくも歴史を暴き出すのか?


漢字「艱」の成り立ちと由来から歴史が見える:歴史に翻弄される女の姿が浮かび上がる
 もともとは、敵の来襲に際して、太鼓を打ち鳴らし、危険を知らせる女の姿を表示したもの

漢字「艱」・楷書
漢字「難」・楷書
漢字「艱」を取り上げます。この漢字は少し難しいですが、四文字熟語「艱難辛苦」を構成する漢字です。この「艱難」の二文字の成り立ちは、似通っており「カン」(二つの字の左の部首)を共通して持っています。この「カン」は火矢の形とみられる説もありますが、「焚巫」(雨乞いのため「巫」を焚くこと)あるいは急を知らせる鼓の象とも見られるという説もあります。

 さて本題ですが、この「艱」の字の右の部首は、「女」を表し、両者の会意で、太鼓を打ち鳴らす女を表すものだということです。




漢字「艱」の成立
漢字「艱」・甲骨文字
女が跪いて、太鼓を打ち鳴らすさま。または焚巫の祈りをささげる様とかいう解釈もある。
漢字「艱」・金文
左側には鼓の形があり、その下には一個の口が加えられて、声を発出することを強調している。
漢字「艱」・小篆
正面の人形と火で革に変り、併せて左に移り、鼓は右に移ったのち艮の字になった。楷書の艱の字になった。
 甲骨の「艱」の字は女が村が襲われた危急を知らせんと太鼓を打ち鳴らしている様が目に浮かぶ。

 金文では声を発し、辺りには「火」も迫ってきて、いよいよ受難の事態を表現している。

小篆「艱」 女は火で革のごとく、「艮」となり、怖れのため進むことができない事態に追い込まれている。

 こうして、甲骨から小篆までの字の移り変わりを見ていると、まるで舞台で「艱難」の有様が繰り広げられているかのような錯覚に陥る。かくもリアリティーに富んだ漢字の変遷は、歴史の変遷ではないかとの思いを深くする。 


    




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「艱」は会意文字だ。甲骨文の「艱」の右辺は女性である。左側は鼓の形で、女性が鼓を叩く状態を示している。
上古時代男たちは朝早く村は離れて遠く離れたところで狩猟などに行った。村の中に残ったのは女性と老人、子供であった。もしここに敵が攻めてきたら、女性は直ちに鼓を打ち鳴らし、敵が侵入してきたことを知らせねばならない。

 「艱」は将に生活の原形の描写である。さらに重要なことは、古代の部族間の戦争である。常々女性を略奪することを目的としていた。

 女と鼓の会意で、艱の字の中には余すところなく表現されている。この方法は、殷商時代の烽火の伝達システムになったことであろう。
 この甲骨文字からは、部落を襲ってきた外敵の侵入を一刻も早く、村全体や、周りの部落にも知らせようと必死に太鼓を打ち鳴らす女の姿が目に浮かぶ。

漢字「艱」の字統の解釈
 声符は「艮」(コン)艮は邪眼に怖れ進みえない形。「カン」は焚巫の象で基金を意味するが、それより外敵なども含めて、最も艱難のことをいう語となった。


まとめ
 漢字は歴史の混乱の中、人々を襲った艱難辛苦とそれに伴う怒りや悲しみ全てを包含して、今日も生き続けてきている。



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