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2024年2月1日木曜日

漢字 春の由来と成立ち:立春の「春」はどこから来たの


2月4日は立春:春はどこから来た?

「春はあけぼの、ようよう明るくなりゆく・・」と枕草子の中で清少納言はうたった。桜が咲き、今本格的な春の訪れを迎え、心もここなしか浮き浮きとなる季節である。
また最近では「もうすぐ春ですね~、恋をしてみませんか」という歌詞も一世を風靡した。猫のさかりの声がやかましくなる時期でもある。
 2月4日は立春である。このところ世界中は紛争や戦争、天変地異と暗い息苦しい状態が続くが、明るい春が望まれる

 この記事は、2014年にアップしたものを全面的に書き換えたもので、いわば旧版のアップグレード版です。
  漢字の成り立ちと由来:甲骨文字の「春」からは、古代の先人たちが春を心から待ち望んでいた様子が窺える!

導入

押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

目次




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漢字「春」の今

漢字「春」の解体新書


 
SpringCharacterPanel
漢字「春」の楷書で、常用漢字です。
 右の「旾」は春の異体字。
春・楷書
春の異体字


  
春・甲骨文字
他の字形と乖離している
 左は木に日、右は屯である
旾・フォントが見いだせないが、
この字に草冠が春の原字であるようだ
旾・フォントが見いだせないが、
この字に草冠が春の原字であるようだ
春・小篆


 

「春」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シュン
  • 訓読み   はる
  • 異体字   旾

意味
  • 季節の名前
  •  
  • 比ゆ的に厳しい状態から一気に解放された状態をいう 青春
  •  

同じ部首を持つ漢字     屯、蠢、頓、純
漢字「春」を持つ熟語    春、青春、新春、


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漢字「春」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

  春の原本は会意文字である。甲骨文字の左辺は上下に分かれ、「木」の二つの部分である。木の中間に「日」があり、太陽が昇ることを表している。字の右辺は「屯」であり、潜り込んだ根が発芽することを表している。明らかに春の字の本来の意味は太陽の光が強くなり草木が生え出す時期を表している。

 金文と小篆の春は甲骨と比べ字形は均整化されている。
 上部は草冠、中間は「屯」の字で下部は「日」である。以後隷書の変化を経て今日の字体となり、「草」、「屯」の字は最早現らわれていない。

 しかし「春」は一年の開始を示し、この本義はずっと変わらずにいる。春のような景色は「春色」「春光」といい、春の農繁期は「春忙」といい、30歳になると赤い紙に吉祥の文字を対連で「春联」などなど。古代文学者は大変多くの草木の生長する様を描写して、「春に至りて江南の花自ら開す」「春の到来を人は草木に先んじて知る」「春に至れば人間万物鮮やかなり」など、これらの詩句春に万物が萌出る現象を表現している。又「春」という字から始まる成語も多数ある。



漢字「春」の字統の解釈

 形声文字: 屯声。〔説文〕「下に「推なり」と訓し、字形を「日と䒑クサと屯」に従い、屯の亦声」とする。屯を亦声とするのは、屯を草木初生 のとき、屯蹇(伸びなやむ)の象とみるものであ るが、屯は絶縁(へりぬい)の象であるから、声符とみるべきである。「推 なり」の訓は春と双声の字で、〔礼記、郷飲酒義〕に「春の言たる、蠢なり」と、万物の蠢動をはじめ る時期とする。

四季の名は、西周の金文に至るもな おその徴がなく、ト辞中に四季の名に擬せられているものは、にわかに信じがたい。陳夢家の〔殷虚卜辞綜述〕に、屯・楙を春、龝を秋とするが、季節名として用いるものではない。

夏は〔製公設〕に「夏」の語があるも、これを春夏の意に用いた例がない。ただの (春秋)に四季をもって月の名を象け、「春正月」のように言う。春はおそらく陽光の関係のある字で、動く、輝くの意を持つ語であろう。




漢字「春」の漢字源P708の解釈

会意兼形声。異体字 旾
 屯は生気が中にこもって、芽がお出でるさま。春はもと「草+日+音符屯」で地中に陽気がこもり、草木が生え出る季節を示す。ずっしり重く 、中に力が起こもる意を含む。



漢字「春」の変遷の史観

文字学上の解釈

「春」は異体字も含め、多くの字体が存在する。

字統では、季節を表す漢字が生まれたのは、春秋戦国時代になってからという。しかし、唐漢氏は甲骨文字の時代から季節を表す漢字は存在していたと主張する。真偽のほどは分からないが、人間が少なくとも農業を営むようになってからは、季節を明確に認識していただろう。ということは季節を表す文字も早くから出来ていないはずはないと考える。


まとめ

  

 春はここにあるように、草木がもえ出る様子を表したものであり、夏は暑い最中に人が扇ぐ様子、秋は虫を象し、冬は狩猟道具を具象して漢字がつくられてきた。漢字の創成、発達の歴史を見るとやはり人々の暮らしの中から生れ育まれてきたものであることは間違いはないようだ。甲骨文字が卜術の中から生成されたから宗教的意味合いを強調される向きもあるが、基本は人々の生活の営みを外すわけにはいかない。その意味で、まだまだ漢字の研究は解き明かさなければならない任務を持っているといえよう。

  


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2013年2月7日木曜日

黄砂を表す漢字「霾」(つちふる):黄砂は雨や雪と同じように天から降ってくるものと古代人は考えた

漢字の成り立ちの意味するもの
漢字の成り立ちと由来:漢字「霾」は雨カンムリとお供えとから構成され、黄砂も雨と同じように天から降ってくるものと考えた。

」はすこぶる難しい漢字である。これを読める人はそうざらにいるものではない。これは日本語読みでは「つちふる」と読んで黄砂を表す。なぜ突然こんなことを言い出したかというと今日の毎日新聞の「余禄」というコラムでこの漢字のことが触れられていた。これは春の季語である。毎年春になると中国大陸で発生した黄砂が海を渡って日本の上空にやってくるのに加えて、日本で発生した汚染物質が入り混じって襲来し空を黄色に染める。従って西日本では特に春先になると晴れているのだが、霞がかかったような状態になる。しかもこの霞黄色い色をしている。いわゆる花曇りとは少し異なった趣を示す。
 私は中国にいたとき「黄河」のほとりを尋ねたことがある。黄河の砂浜に足をつけたことがあるが、この砂はすこぶる小さくて、砂というより殆ど泥だなと感じたことがある。またある時は、中国で街中を歩いていたとき、突然天気が変動し、大粒の雨が降ってきたことがある。この雨日本のように透明ではなく、泥の雨だったことを覚えている。雨が降った後、自分の服を見ると雨滴の跡に泥がひっついて大変汚らしい感じを持ったことがある。そこらあたりの車も同様で、窓も屋根も泥だらけだったのを覚えている。
 ところがこの黄砂が日本にやってくる過程で、色々の汚染物質を付着してくるので、非常に厄介なことになる。

 今年の黄砂は、「PM2・5」という車の排気ガスなどから出る微小粒子物質が付着したもので、健康にも非常に害のあるものだということである。日本に飛散してくる前に、中国でも深刻な被害を及ぼしているということなので、中国自身で解決してほしいものである。これは日本人のたっての願いだが、やはり自分の身は自分で守れ!といことで、マスクをかけて欲しい。マスクは高機能のものが出ているが、中でも光触媒を使ったもの等が開発されている。


 公害防止の鉄則は「できるだけ根元から断て」である。飛散や拡散してしまってからでは、遅いのである。
 さて今日はこの「」の起源を尋ねたい。
引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)

漢字「霾(つちふる)」甲骨、小篆
漢字の成り立ち
 「」は、説文で言うには「風雨土」である。これは、中国の北方地方特有の一種の現象である。風雨の中に混じった大量の土埃であり、雨で下に落ちたり、砂嵐や汚れた雨になって下に落ちる。甲骨文字の「」の字は上部は雨の簡単形で、下部は獣といくつかの小点からなっている。これは土埃の雨で動物の体に出来た汚い汚点を示している。
 小篆の「霾」は、変化して形声字になっている。

 形声字。 雨と発声字。狸は「埋める」という意味の初めの字である。もともとはお祭りの時動物を穴の中に埋めたことを示している。ここで土の点は 「落ちた」という意味である。
 「霾」の本義は大風が土埃を巻き上げることを示している。雨で落下する天候の現象である。「终风且霾」の意味は、「大きな音を立ててやってきた大風は土埃が混じっているものだ。」という意味である。
 「霾」は中国の一種の特有の気象現象である。遠く数億年前から、シベリアから吹き込んでくる黄土は、中国北方の黄土高原を形成した。甲骨卜辞に記載のあった3千数百年前、安陽の地区の砂嵐が記載されている。ここ数年新聞メディアでは砂嵐の出現の頻度は毎号頻々としている。これは地球環境の悪化のためか、あるいは周期の歴史の回帰性なのか、まだ人を悩ませている。
 実はこの唐漢さんの説明には、非常に違和感を感じるのである。唐漢さんの本は2000年の初めに書かれているので、彼が書かれた頃には勿論「PM2・5」という問題は発生していなかったであろうが、しかし黄砂の問題、酸性雨の問題は既に大きな問題になっていたはずであろう。しかし彼は黄砂を単なる「黄土の砂問題」として、矮小化してしまっている所に違和感を感じるのである。彼は「ここ数年新聞メディアでは」と今日的な問題を取り上げている限り、この「霾」が単なる黄砂の問題ではなくなっていることの問題提起をして欲しかったと感じるのは私一人だろうか。


雨カンムリの甲骨文字
要素「雨」を持つ漢字を集めて見ました。左から「雨」、「雪」、「雹」です。雨カンムリが共通して表示察れていますが、漢字の中でそれぞれどのように表現されているか見ることができます。これらの漢字のなかで共通して表現されているのは、雨足、雪の切片などが小さな点として書かれています。したがって、「霾」の甲骨文字の中の小さな点は、唐漢氏が言うようにお供えにできた土の汚れではなく、天から降ってくるものを表現したように思います。
漢字「雨」甲骨文字:雨に関わる基本文字漢字「雪」_甲骨文字漢字「雹」甲骨文字




 

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2012年4月1日日曜日

漢字の成り立ちと由来:甲骨文字の「春」からは、古代の先人たちが春を心から待ち望んでいた様子が窺える!

漢字の成り立ちと由来:甲骨文字の「春」からは、古代の先人たちが春を心から待ち望んでいた様子が窺える!

「春はあけぼの、ようよう明るくなりゆく・・」と枕草子の中で清少納言はうたった。桜が咲き、今本格的な春の訪れを迎え、心もここなしか浮き浮きとなる季節である。また最近では「もうすぐ春ですね~、恋をしてみませんか」という歌詞も一世を風靡した。猫のさかりの声がやかましくなる時期でもある。 
 春は草木や木々が日の光を受けて、萌出る季節であり、字体にもそのことがよく現わされている。

 春の原本は会意文字である。甲骨文字の左辺は上下に分かれ、「木」の二つの部分である。木の中間に「日」があり、太陽が昇ることを表している。字の右辺は「屯」であり、潜り込んだ根が発芽することを表している。明らかに春の字の本来の意味は太陽の光が強くなり草木が生え出す時期を表している。
 金文と小篆の春は甲骨と比べ字形は均整化されている。
 

 上部は草冠、中間は「屯」の字で下部は「日」である。以後隷書の変化を経て今日の字体となり、「草」、「屯」の字は最早現らわれていない。
  しかし「春」は一年の開始を示し、この本義はずっと変わらずにいる。春のような景色は「春色」「春光」といい、春の農繁期は「春忙」といい、30歳になると赤い紙に吉祥の文字を対連で「春联」などなど。古代文学者は大変多くの草木の生長する様を描写して、「春に至りて江南の花自ら開す」「春の到来を人は草木に先んじて知る」「春に至れば人間万物鮮やかなり」など、これらの詩句春に万物が萌出る現象を表現している。又「春」という字から始まる成語も多数ある。
参考: 四文字熟語は故事と成語の尽きない泉

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