漢字「合」にみる殷商の時代の性行為自体が合意であったのか?
漢字「合」の原義は「性交」であるという説と、「合意」であるという説がある。
このブログの基調となる「漢字の暗号」の著者である唐漢氏は漢字「合」は性交そのものだという。ところが字統では、漢字「合」は契約の成立即ち合意を意味するという。
唐漢氏によれば、漢字「合」の原義は性交である。それから拡張され「合意」の意味が派生したと考えられる。
ところが字統によると、合意が原義で性交という意味は出てきていない。
現代の男女の問題で、裁判などで問題になる「性交」に合意があったかどうか等は、甲骨文字の時代には極めてややこしい問題になることになる。つまり、性交そのものが「合」ということであれば、合意という行為はどう解釈すればいいのだろう。
甲骨文字の時代には、性交と合意とは一体であったのかも知れない。それが現代では、性行為は合意という行為と分化したことになる。
こんな議論は「馬鹿馬鹿しい」と一笑に付されそうだ。
**********************
「合」の漢字データ
- 音読み ゴウ、ガッ
- 訓読み あ(う)
意味
- ぴったりはまる。当てはまる。ごう。
- 一緒になる
- 一致する
同じ部首を持つ漢字 合、拾、閤
漢字「合」を持つ熟語 合意、合唱、合議、交合
**********************
漢字「合」成立ちと由来
引用:「汉字密码」(P517、唐汉著,学林出版社)上部の「A]のような図形は、万国共通の男性の性器を表す 下部の容器に見える図形は女性の性器を表している |
唐漢氏の解釈
「合」これは会意文字である。甲骨文字、金文、小篆で「合」の字の示すがごとく、構造的には同じで、上部の「A」の形は男性の生殖器の省略形であり、下部の容器のように見える図形は女性生殖器▽の異形である。両形の意味が合わさって、男女の性のつながりを表し、性交、合歓、性的関係の語の中の合の意味そのものである。
「合」の字は両性の性関係を表す場合を除いて、一般事物の符合、集合、会合など物体間のくっつき合うことを表すように拡張されて用いられる。
後世には「合」は古代の容量単位で10勺で1合、10合で1升を表し、1合は1升の10分の1である。秦漢の時代には、1合は20CCだったようだ。
漢字「合」の字統(P317)の解釈
祈祷を収める器である、サイの上に蓋をしている形である。上の図形はΛの下に横棒を加えたもので、集の意味である。意味は衆口を集めるを「合」とする。字は祝祷の器に蓋をする形で、約定が成り、これを載書として祈祷の器に収めることで、契約のなることを合という。
漢字「合」の漢字源の解釈
会意文字:上部の△(かぶせる)+□(あな)で、穴に蓋を被せて、ぴたりと合わせることを示す。
漢字「合」の変遷の史観
漢字・合は甲骨文字から金文、小篆、楷書に至るまで、その形状は継承され、いささかの変化も出ていない。1000年以上も人々の間で用いられ、その変化がないというのは逆に驚くべきことではないか。その理由は、変化をする必要がなかった。最初から一貫して合理的であったということなのかもしれない。
ここに至って、この字が、性交という意味も合意という意味もこの字は的確に表現しているのかも知れない。
まとめ
字統の解釈は、確かに良く分かるが、文字というものは、このように抽象的な概念が先行して生まれるものかは分からない。とはいえ唐漢氏の解釈もあまりに突飛なきもするが、一方で、ダビンチコードに出てくる聖杯の説明と合致している部分もあり面白い。念のために付け加えておくが、ここで述べたことは、今現在様々な局面で話題になっている
「性交は合意の上になされるものだ」「性交はそもそも合意されたものだ」等との卑怯な言い訳を弁護するものではない
ことは声を大にして言っておかねばならない。
「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
|