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2024年4月28日日曜日

漢字 冤の成立ちから学ぶ「冤罪」への心構え 


漢字 冤の成立ちから学ぶ「冤罪」への心構え

 このページでは、漢字「冤」の成立ちを解明した。 冤罪が弱い立場の者をターゲットにするかのように襲い掛かり屈曲した状態に押し込めることを見てきた。

  冤罪のターゲットになってしまうと抜け出すのは非常にむつかしい状態に押しこめられてしまう。
 しかし、生きている以上諦めてしまうことはできない。自分に非がないのだから、闘い抜くしかない。
 その際に、周りを信頼し、信頼されているのといないのでは天と地の開きがある。

この記事は以前にUpした記事を全面修正したものである。  

導入

押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

冤罪は人間の歴史始まって以来、一度も止むことなくなく延々と発生し続けている。

 このページでは、漢字「冤」の成立ちに立ち返り、弱い立場の者がいつも強者の迫害にさらされてきた現実が漢字に反映されている事実を確認した。
 そうしてもう一歩踏み込んで、その現実を直視したうえで、力の弱いものがこの世の中を生き抜く上での心構えをもう一度考え直してみたい。


 冤罪は権力犯罪だけでなく、コロナ警察、ネット上でのデマ攻撃、街中での痴漢摘発など、証拠もなく、偶発的な事件ででっち上げられたり、警察に引き渡されたりする事件を非常に頻繁に見聞きするようになった。今日では、だれもがいつでも被害者になる可能性がある現在、他人ごとではなく、自分のこととしてある種の覚悟をもって臨んでおかねばならない。

目次




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漢字「冤」の今

漢字「冤」の解体新書

 
漢字「冤」の楷書で、常用漢字。
 甲骨文字、金文ともに存在していない。
 右に冤の小篆を参考までに掲げた。ワ冠の下部というか中にあるのは、「兔」であって、「免」ではない。兔と免は非常によく似ており、紛らわしいが全く別の系統の漢字である。「冤」では、免ではなく兔が字の構成上非常に重要である。

   また、甲骨文字や金文が存在せず、突如として小篆が世に現れたということも非常に重要なことだと思っている。
 つまりこの字が、実際の生活上の考えたり、使ったりする必要がなかったにも拘らず、ある日?突然必要性に見舞われたことを示している。

   なお逃げるという漢字に逸が使われているが、この漢字「逸」はもともと「兔+辵(シンニョウ)」が 正しかったようである。
calumniation
冤・楷書冤・小篆


「冤」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   エン
  • 訓読み   かがむ

意味
  • 無実の罪
  •  
  • ぬれぎぬ
  •  

同じ部首を持つ漢字     冤、兔
漢字「冤」を持つ熟語    冤、枉冤、冤罪


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漢字「冤」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「冤」、これは会意文字。 小篆の「冤」、周辺は「ヮーかんむり」、ここでは覆いを意味し、下は「兔ウサギ」です。 まるで優しくて弱いうさぎが、物に覆われ、身動きできない様を表している。 楷書は小篆を継承し「冤」と書く。 「冤」は覆いに覆われた「弱いうさぎ」の絵を通じて、屈曲した本来の意味を体現している。つまり、ストレッチして逃げ出すことはできないという意味である。

漢字「冤」の字統の解釈

冂(ケイ)と兔とに従う。〔説文〕に「屈するなり。免に從ひ冂に従ふ。 兔、冂下に在り、走ることを得ず、益々屈折するなり」とある。ト文に上部を网に作るものがあり、 免網にかかる意であろう。任屈の意より、無実の罪 のことを枉冤という。脱出するの意の逸に対して、 不幸にして罪せられることを冤という。


 両者の漢字の解析からいえるのは、「冤罪」誰彼なしに襲い掛かってくるものだが、なかでも弱い者はお好きなようである。自分が悪いのではないという毅然たる身構えが、冤罪を撥ね返す大きな力になるようである。

漢字「冤」の変遷の史観

文字学上の解釈

「兔死狗烹」(兔が死ねば猟犬でも煮て食えれる)の「兔」のこれは象形文字。」
甲骨文字の兔は大きな頭と長い耳、短い尾と上向きに湾曲した小動物。側面から見た図は簡単明快で、十分走り跳ぶうさぎの様を表している。ウサギはとても弱い動物で犬、ワシ、キツネ、人などの敵に遭遇した場合、走る以外に選択肢はない。したがって、後の世代になって、「ウサギ」を使って比ゆ的な言葉ができたが、多くは弱弱しく、逃げ足に関係するものとなっている。「兔死狐悲」(同類相憐れむ)、「兔死狗烹」(兔が死ねば了見でも煮て食えれる)、「狡兔三窟」(すばしこい兔は多くの隠れ穴を持つ。あらかじめ逃げ道を用意しておき、巧に身の安全を図る等々。

 漢字では「兔」と「免」の筆画が最もよく似ているが、「点」の有無が違いがあり、この「ドット」がうさぎの小さなしっぽを意味しているからだ。これは、文字作成のいわば遺伝といえる。

exemption

 字に二系あり、一は免冑、冑を免ぐ形で、 免脱の意とすべきもの。一は分娩の象で、またを開く形とみられるものである。
 兎は兔の象形で、免と字形は似ているが、全く異なる字である。金文に〔免解] [免重」など、その字形は冑を免ぐ形である。〔国語、周語〕「左右、冑を発ぎて下る」、「晋語」 「冑を免ぎて 命を聴く」、また「礼記、曲礼、上」「冠は免ぐこ と勿れ」とある字である。

冤罪対処の心得

AIでは、どのような答を出しているのか、当たってみた。

もちろんここではAIではどのように認識しているか、当たってみただけのことである。
 ここで最も大切なことは、人の考えを決してうのみにしないことである。人に相談はしてもいいが、あくまで自分で考え、自分で決断をし前に進めることである。 冤罪のターゲットになりやすい人の特徴
冤罪のターゲットになる理由は様々だが、いくつかの共通点がありるようだ。


冤罪は、誰にでも起こりうるものです。上記のいずれの特徴にも当てはまらない人でも、冤罪のターゲットになる可能性があります。

冤罪を避けるためには、以下のことに注意する必要があります。
弁護士立ち会いのもとで臨む。
黙秘権を行使する。
自白はしない。
罪に問われている場合は、速やかに弁護士に相談する。
冤罪被害者になった場合は、一人で抱え込まず、弁護士や支援団体に相談することが大切です。

参考情報
冤罪被害者支援センター: https://enzai.org/
人権擁護委員会: https://www.moj.go.jp/JINKEN/index_yougoiin-a.html
刑事弁護センター: https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/keijibengo.html
冤罪は、人の人生を大きく左右する重大な犯罪です。冤罪を防ぎ、被害者を救うために、社会全体で取り組んでいくことが重要です。



 以上AIで、「冤罪のターゲットになりやすい傾向」を探ってみたが、結論はこの設定自体ナンセンスだということが分かった。
 というのは、冤罪は誰にでも起こりうるものだということで、こちらに選択権はないということだ。AIを鵜吞みにしていると、疑心暗鬼になって、ノイローゼになってしまう。
 中途半端な情報に一喜一憂することよりも、自分の生活を見直し、つけいれられる隙を取り除き、自律ある生活を確立することが大切だ。



まとめ

 漢字の「冤」の成立ちから、兔のような力の弱い生き物がターゲットとなり、力の強いものの餌食となる社会を見てきた。
 そして、権力を維持する装置の一つとして機能している冤罪を取り上げた。
 それは世の中が進み自由と民主主義の社会と喧伝されても、基本的には、強いものがより強く、自らの自由を謳歌する構造に変化はない。

 冤罪は昔は権力犯罪の典型的な事象であったが、近年権力だけと言えない様々な問題が出てきている。
 例えば、コロナ警察、ネット上でのデマ攻撃、街中での痴漢摘発など、証拠もなく、偶発的な事件ででっち上げられたり、警察に引き渡されたりする事件を非常に頻繁に見聞きするようになった。

 冤罪に対する最大の防御は、孤独を排除し、心を打ち溶け合える信頼できる友人、知人をできる限り多くもつことだ。   

 人間て馬鹿だなと思う反面、まだ捨てたものじゃないはずとも思う。知恵を出し合い、力の弱い人間として、たのしく生きていくことがいつの世でも求められる。

「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2022年1月11日火曜日

漢字・兔の成り立ち:兎と免はよく似ているが由来は全く異なる。兎角、兔の甲骨文字はウサギの側面のデッサンを表す象形文字です


漢字・兎の成り立ち:象形文字であり、兎の横から見た姿そのもの、古代人の表現力には感心する
漢字・兎の成り立ち:兎と免はよく似ているが由来は全く異なる。甲骨文字はウサギの象形文字です。一方免は兜を脱ぐことを示しています。兎に角、甲骨文字の兔は大きな頭と長い耳、短い尾と上向きに湾曲した小動物です。

 「兎角」という言葉は、殷紂の時の逸話で、「大亀に毛を生じ、兎に角を生じる。これ甲兵まさに興らんとすの兆しなり」とあり、世にあるまじきことの起こるをいうことから発生した言葉です。「兎に角」という発想が面白いですね


漢字「兎」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「兎」で、ウサギを側面の素描した象形文字です。後ろにある点は、尻尾を表しています。
兎・楷書


  
兔・甲骨文字
兔・古文
甲骨文字を一貫して引き継いでいる
・小篆
甲骨文字、金文を承継するものだが、単純化と抽象化のため兎の原型は失われている。


    


「兔」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ト
  • 訓読み   うさぎ

意味
  • うさぎ

同じ部首を持つ漢字     兎、兔、冤
漢字「兔」を持つ熟語    脱兎、兎角、菟




引用:「汉字密码」(P91、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「兔死狗烹」(兔が死ねば猟犬でも煮て食えれる、猟犬の役目は終わったので、処分できるの意)の「兔」です。これは象形文字です」

 甲骨文字の兔は大きな頭と長い耳、短い尾と上向きに湾曲した小動物です。
 側面から見た図は簡単明快です。十分走り跳ぶうさぎのさまを表しています。古文から小篆までの「ウサギ」は、段階的な変換により、直感的に兔の原型を見ることはできなくなったが、変更の一連の流れは極めて明らかです。
 


漢字「兎」を含む成語、ことわざ
  • 兔死狐悲・・・同類相憐れむ
  • 兔死狗烹・・・兔が死ねば猟犬でも煮て食えれる (猟が終われば犬は役割を終え食べられる運命にある)
  • 狡兔三窟・・・すばしこい兔は多くの隠れ穴を持つ。あらかじめ逃げ道を用意しておき、巧に身の安全を図る。
     災害防止の心得みたいな言葉です
  • 待兔守株・・・「待ちぼうけ」の歌そのもの
  • 犬兔之争・・・意味のない争いの比喩
  • 兔角牛翼・・・兔には角はなく、牛には翼は生えない。条理に合わないことのたとえ
  • 东兔西乌・・・古代神話の中でいうには、月明かりの中に玉兔がおり、太陽の中に三本足の金鳥がいる。したがって鳥と兔で月日を代表させ、月が東にのぼり、日が西に沈む。時が不断に流れることを示す。
  • 兔子死了 ・・・兔が死ぬと狐や狸は悲しむ。同類や仲間の失敗や死を悲しむことの比喩
     『兔死狐悲』と同じ意味
  • 脱兔之势・・・非常に迅速に形勢が変化すること。迅速な行動の比喩
  • 全狮搏兔・・・ 小さな目標のため、大きな力で攻撃することの比喩
  • 见兔放鹰・・・ 野兎を見て即座に鷹を放つこと。行動に移るときは時期にあっているべきという比喩

  • この他、四文字熟語は多数あります。これも漢字文化の豊かさなのでしょうかね

漢字「字統 P636」の字統の解釈
 象形:兎の形 説文に「うさぎの踞して、その尾を後ろにする形に象る。」兎の字には後ろに一点あり、免にはその一点がないことについて、同字異字が論あるが免は兜を脱ぐ形で声義とも異なる。

 兎角とは殷紂の時の逸話で、「大亀に毛を生じ、兎に角を生じる。これ甲兵まさに興らんとすの兆しなり」とあり、世にあるまじきことの起こるをいう。


まとめ
 甲骨文字にせよ、金文にせよ、生き生きとした人々の浮かび上がってくるようです。実に素晴らしいデッサンで、芸術的ともいえるようなデッサンが素晴らしい。文字の形に簡略化し、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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