漢字「襪」の由来と成立ち:古代に眼に呪飾を加えている巫女のことをいう。この巫女に呪祝を行なわせ、戦が終るとその巫女を斬り、敵の呪能を無力にすることを蔑といった
漢字「蔑」はさげすむという意味から拡張されて、目にも留めないという意味に使われる。
これは無視するということと少し意味合いが異なる。現代の若者の間で、「シカト」するという言葉がはやっているそうだ。これは花札の鹿十にその起源があるようだ。花札の鹿はそっぽを向いていることから無視するということに使われるようになったということだ。このシカトは「見ない」「無視する」であって、「蔑」は見たうえで、目にとめない、軽視する、目にとめないという意味となり、意味が異なる。
さらに、古語で使われる「しかと」という言葉とは180度ことなる。こちらのほうは「しかとせよ」とは、しっかりしなさいという命令であって、無視せよとはまるっきり異なる意味である。
導入
前書き
目次
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漢字「蔑」の今
漢字「蔑」の解体新書
漢字「蔑」の楷書で、常用漢字である。 同じ系統の漢字に滅・襪などがある | |
蔑・楷書 |
甲骨文字から小篆に至るまで、基本的には同じコンセプトが踏襲されている。 小篆は他の2点とは異なるように見えるが、まったく同じコンセプト。一番上は目の上の飾り、その下は目を表す。さらにその下は人で、その首の部分に戈があてられて、全体としては目に飾りをつけた巫女が用済みの結果、殺されることを示している。 | |||
蔑・甲骨文字 |
蔑・金文 |
蔑・小篆 |
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「蔑」の漢字データ
- 音読み ベツ
- 訓読み さげす(み)、ないがし(ろ)
意味
- ただれた目、よくみえない目
- 相手を目にも留めない
- けなす、見えない、ない
同じ部首を持つ漢字 蔑、襪、戌、滅
漢字「蔑」を持つ熟語 蔑、軽蔑、蔑視、侮蔑
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漢字「蔑」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
民俗学的解釈
これは会意文字である。 甲骨文にある「蔑」という文字は、上部に睨みを利かせた男性を示し、下部には人型に突き刺さる「戈」を示している。
小篆の「蔑」の文字は金文を継承しており、「戈」の形状や刺し位置がより明確になっている。
小篆は、人の形、目、眉が楷書から分離されている以外は金文の文字の構成要素がすべて揃っている。楷書ではこの結果「蔑」と書かれる。
しかめ面や睨みつけて人を殺すには、必然的に心理的には軽蔑しなければ殺すことはできない。
漢字「蔑」の字統の解釈
会意 ベツと伐とに従う。
ベツは眼に呪飾を加えている巫女。戦争などのとき、この媚とよばれる巫女が 呪祝を行なうので、戦が終るとその巫女を斬り、敵の呪能を無力にする。これを蔑という。
ト文・金文 の字形では、その巫女に戈を加える形である。
ト文・金文の字は、ときに下部を女に作っており、すなわち媚女を戈にかける形である。これによって敵の呪力を無力とするので、「蔑(な)し」とよみ、またそれは功烈を「蔑(あらわ)す意となる。
金文に「蔑暦」という」という語があり、軍功を表彰する旌表の意に用いる。
漢字「蔑」の漢字源の解釈
会意文字:大きな目の上に、逆さまつげが生えた様に戈を添えて、傷ついてただれた目をあらわした。よく見えないことから転じて、目にも止めないとの意に用いる。
漢字「蔑」の変遷の史観
文字学上の解釈
甲骨文字から小篆に至るまで、多くの文字が作り出されているが、それらは一貫しており、大きな目に戈をあてがったものとなっている。このことが意味することは、約1000年もの間基本的に社会的通念が変化してこなかったと考えていいのではないだろうか。
それは巫女に対する見方そのものというより、戦闘上呪術的な方策が実際的にそれほど重視されなかったということではないだろうか。
まとめ
「蔑」とは古代中国で眼に呪飾を加えてた巫女に、呪祝を行なわせ、戦が終るとその巫女を斬り、敵の呪能を無力にすることをいった。人間は神に祈ることで戦いに勝つことを願い、負けたら負けたで、神に見放されたといい、戦いの成否を神や運のせいにしてきたことがどのくらい長く続いたことか。人間は馬鹿だなあというのは結果論だろうか?
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