この甲骨文字を見て思わず笑ってしまった。「こりゃ、まんまじゃ!」。象形文字ではないか。あえて言えば、情景文字とでも言えようか。たしかに厳密には象形文字とは言えないかも知れない。
しかしよくできた漢字だなとつくづく感心する。「孕」もすばらしかったがこれも素晴らしい。
乳房を出して子供に母乳を与える。 誰も異存のない描写ではかなろうか |
「乳」これは会意文字である。甲骨文字の「乳」は一人の母親が胸の前に乳頭を出し、両腕で子供におっぱいを吸わせている情景の様である。この為「乳」の本義は乳を与えることである。即ちおっぱいで子供を養うことである。
小篆の「乳」は字形が調整され、両腕が手に変化している。母親の形状は乳房を表す形になっている。但し乳を与えるという本義に変化はない。楷書の「乳」は小篆の隷書化から来ている。
「乳」字は哺乳の意味から引き出され乳汁と乳房の両方の意味が出てきた。母乳、練乳は共に乳汁を指す。「胸をはだけて乳を出す」の「乳」は乳房の意味である。又この拡張は乳汁も乳房と同じようなものを指すのに用いられる。乳濁液、鍾乳石などである。また哺乳の対象から引き出され、生れたて、幼少のものを指すこともある。 乳鶏(ひよこ)などという。
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