2024年1月13日土曜日

漢字 夫 の意味:男・夫を表す、では夫人は「夫の人(夫に従属する女)」を表していたのか


漢字「夫」の由来:字の構成の上から言っても「妻」と対比をなす


このページはかつてアップした『漢字「夫」の成立ち』をReviseしたものです

 「大」の上に「━」は何を意味する? 「大」は人の正面形、その頭に横線「一」を付けた形。この横線「一」こそ盛装のシンボルである髪飾りである。
 成人男性の頭の上に髪飾りを付けた形。そしてこの構造は妻にもいえる
 もともと成人した立派な男性を示す漢字であった。これに対し「妻」は頭上に三本の簪を加え、これを手で挿している女の姿をいう。夫妻という字は婚儀に際し夫妻の盛装した姿をいう。
 しかし「夫」に「人」が付けばキュリー夫人のように専ら女性を示す。これも最近のジェンダーの議論でいえばNGなのでは。(男についた人という意味で、従属的な漢字ということにならないのか?
 もっともこんなことをいい始めたら埒が明かないかもしれない

導入

押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

目次




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漢字「夫」の今

漢字「夫」の解体新書

漢字「夫」の楷書で、常用漢字です。
 古代は盛装し、髪に髪飾りを付けた成人男子を表していたが、時代が下るにつれ高官や貴人の妻を指すようになり、現代では社会的評価のある結婚した女性を示すようになった。
 しかしそれでも、丈夫のように男性の名残りはまだ受け継がれている。
夫・楷書



  
夫・甲骨文字
夫の字は一と大から成る。大は成年男子を表し、一は髪を束ねるために用いられる簪を表している。
夫・金文
甲骨文字を継承している
夫・小篆
周代には諸侯の正妻
漢代には列候の妻に贈る封号
唐代以降高官や貴人の妻を指すようになった




 

「夫」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   フ
  • 訓読み   それ、これ、か、おっと

意味
     
  • 「おっと(結婚して妻のいる男)」(例:夫妻)
  •  
  • 丈夫 1人前の男(親からの助けを受けず生活を送れる男)
    最近では親からの支援を人前で堂々と披ける人間がいるが、あれは一人前でない
  •  
  • 夫役 ・・・公共(国)の仕事を割り当てられた男または公共(国)の仕事の割り当て 

同じ部首を持つ漢字     大、天
漢字「夫」を持つ熟語    夫人、農夫、人夫


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漢字「夫」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

民俗的解釈


  夫の字は一と大から成る。大は成年男子を表し、一は髪を束ねるために用いられる簪を表している。古代の礼俗によると男子は20歳になると髪に笄を加えるようになり、成年男子であることを示す(女性は15歳で成人とみなされた)

甲骨文字と金文では「夫」の字は髪を束ね、笄を挿した人の形である。このため「夫」の本義は成年男子のことである。男子の成年は結婚もでき、妻も娶ることができる。だから夫は拡張されて丈夫を指す。即ち女子の配偶の妻に相対し、「丈夫、夫君」など

 


漢字「夫」の字統の解釈


  大は人の正面形で、その頭に加えている一は簪飾り、男子の正装の姿である。妻も髪飾りを付けた形。夫妻とは婚礼の時の晴れ姿を写した字である。
 列国期には、「太夫」の称号が用いられ、社会的に重要なものとされている。おそらく荘園的な経営地の管理者の地位にあったものであろう。
 夫人・夫子という語は「夫(かの人)」という婉曲的な呼称。


漢字「夫」の変遷の史観

文字学上の解釈

 漢字「夫」は、結婚のために 髪飾りをつけて正装した男性を表す漢字の象形であった。そして夫人という言葉は、「その人」というどちらかというと指示代名詞的な使われ方がされていたようで、女性だけを指すものではなく、男性に使われていた。さらにリスペクトをしたもので『夫の人』のような差別的な意味合いは全くなかっただろう。 そしてもう少し歴史を紐解くと、古代中国において 荘園を管理する人のことを言っていたようで、 少し 時代を下ると地方では 特定の階級を形成し 独特の力を持ち、「清朝」の時代においても地方では権力者として存在していたようです。このような人々を「大丈夫」(ダジョウフ)と称し、歴史にもたびたび 登場している。

まとめ

 今では、差別用語として社会から葬り去られたりしている言葉も、歴史をさかのぼれば、逆にそのような誹りを受ける謂れのない成立ちがある。歴史は移り変わるもので、やむを得ない部分は多々あるが、只何とはなしに差別だという非難することだけは避けたいものだ。漢字の歴史をさかのぼることによって、正しい認識と歴史を見直すきっかけを作る活動として、これからもこのブログを作り続けるつもりだ。


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

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