2019年9月26日木曜日

漢字「備」の原義は、現代風に言えば「軍備」


漢字「備」の起源と由来
 最近、防災ということがよく言われます。防災の本来の意味は、「災害を防ぐこと」の意味です。しかし、最近では、意味が変化して、「災害を防ぐ」ではなく、「災害に備える」という意味に用いられることが多いようです。

 「備えあれば憂いなし」と昔から言われています。昔から備えることの大切さを説く戒めの言葉でもあります。昨今では、大事故になって原因を追究された時の逃げの言葉として、「想定外のことです」というのが流行っていますが、備えをしても、備えの想定を超えた事態の発生を言っていますが、実際には、事故のない範囲を想定したに過ぎない場合がありますから、十分な吟味が必要でしょう。

引用:「汉字密码」(P573、唐汉著,学林出版社)
 「」は「備」の簡体字です。 「備」は象形文字です。甲骨文字と金文の構造から、形状と用途から備が一種の矢立てと想像は難しくありません。「備」は矢を挿入するためのエビラです。中央に下向きに差し込んだの頭のある矢があります。「備」は、昔は日常生活で普通に使用されていたツールです。

 「小篆」の「準備」は変形されており、1つは「人」が偏に加えられており、もう1つは金文の「備」が変化して○となったことです。
 楷書の繁体字に借用された「備」はこれに基づいており、簡体字は「備」と备と変化しています。 「備」の本義は、箙に入れること



漢字「備」の起源の「漢字源」の解釈
 会意兼形声。旁は矢を射る用意として入れた矢をそろえて入れた箙をあらわすとして、唐漢氏と同様の解釈。人偏が入っているのは、主役の事故を見越して用意のために揃えておく人の意。


漢字「旅」の起源の「字統」の解釈
 象形文字。箙の形としている。外を皮で覆って背負えるようにし、中は矢立の象形文字としている。これを負うことを備えるとした。


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2019年8月29日木曜日

漢字「旅」は道連れ:まさに「旅」の字そのものが大勢の人間が出行することを表していた。


漢字「旅」の起源と由来
旅という言葉
 昔から、「旅」という言葉には、日本に留まらず世界でも、日常から切り離されたものとして、特別の響きが醸し出されているように感じます。

 紀行文で有名なのは、マルコポーロの「東方見聞録」でしょう。この紀行文に触発され、ヨーロッパの人々に具体的な姿として、目に映るようになったことは確かでしょう。日本でも有名な紀行文は、紀貫之の「土佐日記」、松尾芭蕉の「奥の細道」などがすぐにでも頭に浮かびます。
 
 太古の昔の人々にとっても旅は特別なものだったようです。「旅」と言う漢字がどのように生まれ、発展してきたかを跡付けて見ましょう。
 「旅」という字は、会意文字ですが、旅がいかなるものであったか、甲骨文字や、金文では実に良く表されています。それは大きな旗の下に行進する兵士を良く現しています。金文になると、それに戦車が加わり、いっそう組織的になった模様がよく表現されています。


引用:「汉字密码」(P610、唐汉著,学林出版社)
形象や概念を表す古代の民が実に生き生きと活写しているのには驚かされます
「旅」、これは会意文字です。甲骨文字の「旅」の上部は古代の旗の象形記号です。 右下には2人がいて、兵士たちが軍旗に従って行進していることを示しています。金文は戦車に大きな旗を掲げており、兵士たちは大きな旗の周りに集まっています。 小篆は甲骨文字に似ており、大旗の下に2人の人(兵士)がいます。楷書の「旅」が改変され、下部の2人が上下をつなぐ民の字に変化しています。



「旅」の本義は、軍隊の出征
 「旅」の本来の意味は、一定数の兵士の武装した兵士の旅であり、軍隊の開始、つまり軍隊の旅行、軍隊の意味とみなすこともできます。軍隊出征から拡張され、古代軍隊の編成、つまり、軍事部隊旅団の「旅」を表している。「説文」曰く、「旅」は、軍500(人?)の遠征。『左传•哀公元年』にあるように、軍隊の一団は軍隊の一旅団をあらわしています。また軍隊の旅行は、
海外旅行にまで拡張されましたが、「旅」は通常多くの人がかたまっていくことを表しています。



字統
 旗を掲げて、多くの人が他に出行する意味。それで軍行の集団の意となり、旅行の意となる。
 旅は多数の人が従う意味であるが、必ずしも軍旅のことに限らず、外祭のために旅することも「旅」という字で表した。


漢字源
 人々が旗の下に隊列を組むことを示す。いくつも並んで連なる意味も含む。軍旅の旅がその原義に近い。


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