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2024年6月7日金曜日

漢字「翔」の成り立ち:羽+羊(音符)ならなる。 羽を大きく広げて、飛び舞う。


「翔」の意味するもの: 羽を大きく広げ飛び舞う様。鳥が羽をのばすように両肘を広げる

 実に雄大な字ではないか!
 羊は太古の昔から、吉祥のシンボルとして親しまれてきた。
 その羊に、羽根を持たせ、大きな鳥のようにその大きな翼を広げ、ゆっくりと大空を回遊するさまを重ね見て、太古の人々は、幸せの到来を信じたであろう。
  4000年の年月を経て、現代人は「大谷翔平」にその大きな鳥の回遊を重ねているのかもしれない。
 さて、「翔」には年月を経ても色褪せぬ情景を響きを我々に繋いでいるのかもしれない。


導入

このページから分かること

漢字「翔」の成り立ちと由来、漢字「翔」の生れた背景、漢字「翔」の現在:どのように使われているか
漢字「翔」と名づけのヒント

前書き

目次




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漢字「翔」の今

漢字「翔」の解体新書

羽根を大きく広げ飛び舞うこと
漢字「翔」の楷書で、常用漢字である。
 この漢字には甲骨文字はない。つまり殷の時代からかなり下って、社会に氏族制度が行き渡り、人間の行き来もそこそこの規模になったのちに生まれた字であるようだ。
 人々が獲物を求めて右往左往している世情ではなく、人々の暮らしも豊かになり、即物的な幸せを求めるではなく、精神的なゆとりも求めるような安定した世の中でしかこういった漢字は生まれないような気がする。

 右に「翔」によく似た漢字「祥」を掲げる。
 羊は古代から、めでたいことの象徴のように扱われており、度々祝い事の席上にも生贄として登場した。このめでたいことを表す「祥」から後に「翔」は誕生している。

 長く続いた春秋戦国の戦乱が平定され、始皇帝による統一国家が誕生した世情をそのまま反映した字ではないだろうか。
キザシ:神の意向や運勢が現れたもの
翔・楷書



祥・楷書





 

「翔」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ショウ
  • 訓読み   かけ(る)、と(ぶ)

意味
  • 鳥が空高く飛び回る
  • 広い
  • くわしい
  •  

同じ部首を持つ漢字     祥、洋
漢字「翔」を持つ熟語    翔、飛翔、回翔


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漢字「翔」成立ちと由来


漢字「翔」の字統の解釈

翔・小篆+楷書

 声符は羊。羊に庠・祥の声が ある。〔説文〕に「回飛するなり」 とあり、鳥が羽をひろげて、ゆるくとびめぐるのをいう。〔論語、郷党〕に「趨進すること翼如たり」 とあり、その進みかたをまた翔歩ともいう。

 [礼記、 曲、礼、上〕に「室中には黙らず」とあり、翔は堂上の儀礼のときの歩きかたである。





漢字「翔」の漢字源の解釈

 形声:「羽+音符羊」 羽を大きく広げて、飛び舞う。鳥が羽をのばすように両肘を広げていく。



漢字「翔」の変遷の史観

文字学上の解釈

  羊の性格は温順でおとなしく、食に群がり人と争わず、さらに人を傷つけることも出来ない。羊はまた肉として食に貢献し、皮は衣になり、即腹がふくれ、暖にもなる。よって古人はその実用性から、功利から羊を大吉、大利のいいことの兆しとみなしたのだ。
 このように羊は昔から扱いやすく、食用にも生贄用に珍重されてきた。この背景のもとに羊の字は吉祥の代名詞として用いられてきた。
翔の字もまた然りである。
 堂上の儀礼のときの歩きかた等にも用いられている。





最近の名づけの「翔」

 名前でいうと、そもそも、「羊」は神様に近く縁起の動物と考えられてきた上に、「翔」は羽根までも持ち世界に羽ばたくイメージがあり、「自由に力強く飛翔する、実力と可能性を秘めた人に!」という願いを込められ、最近では一種のトレンドになっている。
  特に、男の子の名前に使われる漢字のなかでも、5本の指に入る「翔」

 男子: 翔太(しょうた)、美翔(みしょう)、翔平(しょうへい)、翔陽(しょうよう)

 女子: 翔子(しょうこ)、翔和(とわ)


まとめ

 昔から、象形文字は、文字ができる基本とされてきた。人間の認識から言えばその通りである。しかし、象形文字は最初に見たそのままの形を表し、即物的である。しかし、世の中が進んでくると、そういった即物的なものだけではなく、抽象的、観念的な漢字も見られるようになる。ここで取り上げた「翔」は正にその典型例ではないだろうか。

  


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