漢字「聞」と「聴」は、古代文字を見る限り、同じ動作を表すとは考え難い
漢字「聞」と「聴」はいずれも「きく」という動作を表すが、古代文字を見る限り、まったく異なる所作でなかった
導入
前書き
目次
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漢字「聞と聴」の今
漢字「聞と聴」の解体新書
漢字「聞と聴」の楷書で、それぞれ左が「聞」、右が「聴」の常用漢字です。 いずれも主に「音を耳からきく」ことに使われますが、語彙には微妙な違いがあります。 これから、原点に戻ってその違いに迫ってみることとします。 | ||
聞・楷書 | 聴・楷書 |
「聞と聴」の漢字データ
- 音読み ブン、モン
- 訓読み きく、きこ(える)
意味
- 隔たりを通して聞こえる
- きく、きいて関係する
- きこえる
同じ部首を持つ漢字 𥹢、問
漢字「聞と聴」を持つ熟語 聞、多聞、風聞、見聞
- 音読み チョウ
- 訓読み きく
意味
- きく。耳を向けてきく。
- 聞こうとする意志を持ってきく
- きく、したがう
同じ部首を持つ漢字 廰、聽、聖
漢字「聞と聴」を持つ熟語 聴、聴衆、聴講
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漢字「聞と聴」成立ちと由来
引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社) 「聞」は会意文字です。甲骨文の形は跪く人が片手で耳を覆いまさに耳を傾けて聞く様子です。人型の上部は特に突き出した耳たぶを示しています。併せて声音の3つの道の横線を示していますこのことから「聞」の本義は傾聴することです。金文は耳を右辺に移しているが、構造は甲骨文を継承しています。小篆は別の途を立てて、改めて字を作って、耳と門の発声ととから会意兼形声文字になっています。まるで一つの耳が貼り付けられて門の中間で傾聴しているかのようです。楷書ではこの縁で「聞」と書きます。簡体化の規則に従い、簡体文字は闻と書きます。
現代中国語では、「听」という漢字があります。これは「聴」の簡体字で、やはり聞くと解釈されますが、「闻」と「聴・听」の使用には微妙な違いがあります。「听」は動作アクションであり、「闻」は听くことの結果であり、听の結果や听いて見たことを意味します。
漢字「聞」の字統の解釈
〔説文〕に「聲を知るなり」とあり、「往くを聽といひ、来るを聞といふ」とするが、聽(聴)の偏の部分が卜文の聞の初形にあたる。聖 (聖)の初形も、 文はそのに、祝禱の器であるDをそえている形「さい」で、祝して神の啓示を待ち、それを聞きうるもの聖といった。それで聞・聖・聴の字形は、もと一系に属するものである。
漢字「聴」の字統の解釈
旧字は聽に作り、偏は耳と人の挺立する形「てい」、卜文の聞はその形に作る。神の声を聞く人の意で、その旁に祝禱の器のを「サイ」をそえると、聖となる字である。旁は呪飾を施した目と心とに従い、もと目の呪力をいう字である。
この引用枠内は字統からのものではありません
「听」は「聽」の簡体字です。 甲骨の碑文にある「听」という言葉は、「左の耳、右の口」を意味する会意文字です。 金文の最初の部分は甲骨文に倣い、単に「口」を「耳」の形の中に放置しているだけですが、2番目の「聞く」の部分はさらに複雑で、上部は「耳口」の形をしており、古代中国語の「生」と「古」が追加され、過去や起こったことに耳を傾けることを意味します。
まとめ
漢字「聞」の甲骨文字は象形文字であるが、実に巧みに「聞く」という行動を描写しており、古代人の観察力と表現力に改めて感じ入る。古代文字を分析すると、聞・聖・聴が同一の言葉で、同じ語源を持っているとは驚きだ。また聞くという字形が、戦国時代に至って初めて見えると白川博士はいうが、この字形が甲骨、金文、小篆と時代が移るにつれ、実に革命的な変化を遂げている。この大きな変化の背景には何があるのか、さらなる追求が求められる。「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
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3 件のコメント:
聖 (聖)の初形も、 文はそのに、祝禱の器であるDをそえている形「さい」で、
祝して神の啓示を待ち、それを聞きうるもの聖といった。それで聞・聖・聴の字形は、
もと一系に属するものである。
上記の記述は、古代の在り方を彷彿とさせるものであり、非常に興味深く読みました。
象形文字の生き生きとした字形も魅力的で、人類の美的、知的、聡明さを感じさせます。
表音文字の味気無さに比べれば、誠に、現代にまで通じるアートだと驚嘆します。
学説のいろいろの違いも興味深く、正確に記述しようとする、誠実さを感じます。この先も楽しみに読ませていただきます。
きょんた
いつも深い内容のご意見をありがとうございます。
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