漢字「伺」と「窺」は使いかたを誤ると大喧嘩になることもあり要注意!
導入
前書き
少し前に毎日新聞に、「伺と窺」についての短いコラムが掲載されていました。
その解説によると窺うと伺うは、どちらも「うかがう」と読みますが、そのニュアンスには微妙な違いがあり、
- 伺うは、聞く、尋ねるという意味あいが強く、
- 窺うには察する、推察するという意味合いがあります。 又窺うには陰に隠れてこそこそというニュアンスもあり、あまりいいようには使われていないようで、「スパイ」という訳まであります。
目次
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漢字「伺と窺」の今
漢字「伺と窺」の解体新書
漢字「伺と窺」の楷書で、常用漢字です。 「伺」と「窺」は、ともに日本語の漢字で、「うかがう」と読むことができますが、微妙な違いがあります。 伺(うかがう):「伺う」は謙譲語であり、相手を敬うために使用されます。具体的には、尊敬や敬意を表す場面でよく使われます。例えば、目上の人に尋ねる際や、訪問する際に使われることが多いです。 窺(うかがう):「窺う」も「伺う」と同じく「うかがう」と読みますが、こちらは覗き見る、うかがい知るといった意味合いがあります。他人の行動や心情を探る際に使われることがあります。少し探りを入れるような意味合いがあるため、ややニュアンスが違います。「隙を窺う」 | ||
伺・楷書 | 窺・楷書 |
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「伺と窺」の違い
司は祝疇の器を開らき見る意で、もと神意を伺う意がある。 〔説文新附〕「候望するなり」とするが、遠方を望む意ではなく、もと祝禱を啓いて神意を伺う意。 |
「窺」:「穴」+「規」からなる。規々に局・区々の意があり、小さなところでこせこせする意をもつ。 | ||
伺・小篆 |
窺・小篆 |
「伺と窺」の漢字データ
- 音読み シ
- 訓読み うかがう
意味
- 人の心をおしはかる(推測する)
- 「注意を集中してよく聞こうとする」
- 「世話をしたりするためにそば近くに控えている」
漢字「伺」を持つ熟語 伺、伺候、伺察、
「窺」漢字の読み
- 音読み キ
- 訓読み うかがう
意味
- うかがう・のぞく(目上の人の様子を見る
- 「そっと見る」 (例:窺伺)
- みる(視) (例:窺見)
漢字「伺」を持つ熟語 窺、窺伺、窺見、窺知
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漢字「伺と窺」成立ちと由来
「伺と窺」の双方の漢字共に甲骨文字は見つかりませんでした。つまりこの時代には、「伺と窺」の文化はまだ芽生えてなかったのかもしれません。このように謙譲の態度をとるとか、相手の対応して態度を変えるという文化はまだ発達してなかったのかも知れません。
漢字「伺と窺」の字統の解釈
伺: 形声 声符は司。司は祝疇の器を開らき見る意で、もと神意を伺う意がある。
〔説文新附〕「候望するなり」とするが、遠方を望む意ではなく、もと祝禱を啓いて神意を伺う意。
のち候覗の意となり、〔史記、伍子胥伝」 「人をして微かに之を何はしむ」のように用いる。また 尊上に侍することを伺候という。魂と通用するが、魂を伺候の意に用いることはない。
一方「窺」については、 形声 声符は規。〔説文〕 に「小しく見るなり」とあり、のぞき見る意。 [老子〕 第四十七章「戶を出ずして天下を知り、をはずして天道を知る」とみえる。規々に局・区々の意があり、小さなところでこせこせする意をもつ。窺はおそらくその声義を承ける字であろう。身分不相応のことを望むのを 窺爺といい、字はまた覬覦に作る。覬と通用する字である。
漢字「伺と窺」の説文解字の解釈
- 伺: 【人部】 编号:5183 伺,𠊱望也。从人司聲。自低已下六字,从人,皆後人所加。
- 窺: 【穴部】 编号:4637 窺,小視也。从穴規聲。
漢字「伺と窺」の変遷の史観
両者とも「うかがう」と読むが、その成り立ちはは全く異なり、
伺はその旁に「司」(司は祝疇の器を開らき見る意)を持つのに対し、
窺はその旁に穴を持ち、穴の中で規(小さなところでこせこせする意)を持つ。
まとめ
伺う:神にお伺いを立てる
窺う:様子を窺う
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