気ままな散歩

2023年9月30日土曜日

漢字「祭」の由来は神に生贄の肉を捧げる儀式だった


漢字「祭」の成り立ち:会意文字 「肉+又(手)+示(祭壇)」からなる。 実は神に生贄の肉を捧げる凄惨な儀式だった


この記事は「生贄を神に捧げる儀式を表現。太古の祭りは残酷だった」を加筆修正しています。

  太古の昔、自然の猛威の前に人々はなすすべもなく、ただ収まるのを待つだけだった。このような中で、人間が自然をも超越した「力」の到来に期待するのは当然であった。
 このような願いはごく自然なことで、そのような願いはやがて自然をも超越する「神」の存在に形を変え、人々の意識の中に沈着することとなった。

  人々の前に立ちはだかる力が大きければ大きいほど、神の存在は大きくなり、神の怒り、神の慰撫のために生贄も大きくなった。

 このことが、このページで触れたように、生贄を捧げる「祭」がともすれば残虐で、血に飢えた魔物が欲するような形になったと考えられる。






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漢字「祭」の今

 上古先民は神を喜ばせ、神の施しを受けることで自分たちの命を永らえることができると信じていた。

 「祭り」はそのために生贄を生きたまま神に捧げるという残酷な儀式であった。上古先民は血の滴る肉片を祭卓に載せ神に捧げることを進んで喜んで行っていた。 したがって祭りは神に祈りを捧げるための重要な儀式であった。

 そして漢字「祭」にはそのことをあからさまに示す跡が残されていた。


漢字「祭」の解体新書

漢字「祭」の楷書で、常用漢字です。
同じく「まつり」と読む漢字「祀」を取り上げました。この漢字は生贄を祀る儀式とは異なり、「自然神」を祀ることをいう。

 また同じく「まつり」と読む漢字で「祠」という漢字があるが。この漢字は、祝詞を開くことを示す字であり、その祭儀をいう言葉である。

 このように読みは同じであるが、その意味は全く異なる。 
祭・楷書


  
祭・甲骨文字
祭・金文
祭・小篆


 

「祭」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   サイ
  • 訓読み   まつり

意味
  • 神をまつる、物事が滞りのないように祈る
  •  
  • 先祖を、物を供えてまつる
  •  
  • まつり
  • 尚、記念、祝賀などの為に行う行事については、日本でのみ行われ、国外ではあまり関係がない

同じ部首を持つ漢字     蔡、際
漢字「祭」を持つ熟語    祭、祭典、地鎮祭


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漢字「祭」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

  「祭」、これは象形文字であり表意文字です。甲骨文にある「祭り」という言葉、右は又(手を表します)、左は肉片、中央の小さな点は肉片に滴り落ちる血を表しています。全体的な意味は、古代の祖先が先祖の神々に犠牲を払うために殺されたばかりの新鮮な肉を使用した儀式を意味しています。

 金文の「祭」という言葉は、血の滴のドットを省略していますが、犠牲の主題と方法を強調して、祭壇または祖先の位牌を表す「示i」という言葉を追加しています。
  小篆の「祭」は、金文を継承し、美しい字体とより対称的な構成になっています。楷書では、この関係で「祭」と書かれます。


漢字「祭」の字統の解釈

 会意文字。肉と又と示とに従う。示は祭卓です。その上に肉を供えて祭る。祀が自然神を祀るときの字であるの対し、祭は人を祭るときの漢字である。甲骨文の字体は色々ある。中には生々しいものもある。先に挙げた字体に比べここに挙げた甲骨文は、血が滴り、肉が焦げる臭いまで伝わってくる。




漢字「祭」の漢字源の解釈

 会意文字 「肉+又(手)+示(祭壇)」肉のけがれを清めて供えることをあらわす。



漢字「祭」の変遷の史観

文字学上の解釈

「祭り」は生贄を生きたまま神に捧げるのは、現在から見るときわめて残酷な儀式であった。

その痕跡は世界各地に残された数々の痕跡。
 ともすれば犯罪を犯しているかのごとき評価をすることさえ見受けられる。
  •  日本では、魏志倭人伝には卑弥呼の死に際して、100人あまりの奴婢が殉職させられた記録や諏訪大社の御柱にまつわる伝説、静岡県三股淵の付近では人身御供を伴う祭りが12年毎に行ったという言い伝えが今でも残されている。これは神の怒りを静めるための祭りであったといわれている。

  • 中国では 殷代の紂王以前には、生贄を捧げられ、神の意思を確認したとみられる甲骨文字が出土している。また、殷墟からは850人もの軍隊の人骨や戦車が出土している。あの残虐非道といわれる紂王ですら、奴隷の生贄を中止させたといわれる「慈悲」の心を持っていたと伝えられる。その行為が彼の「慈悲心」から来るものなのか、生産性が下がることを恐れる「合理性」からくるものかは今は分からない。

  • 現代のペルー首都に近いところで1400年代に栄えたチーム王国で140人以上の子供と200頭以上のリャマの生贄して捧げる儀式が行われミイラが残されている

  • また、アルゼンチンの北部の山頂で1999年、インカ帝国時代の子どものミイラ3体が発見されており、保存状態が極めてように安らかな表情で調べているということである。

  • 古代メキシコに出現し強烈な輝きを放ちながらわずか200年ほどで消滅したアステカ王国では、壮大な生贄の祭りが行われたその真髄は人間の血を神々に捧げ神の生き血を人間がいただくことであった。


 このように世界各地の民族で、時の権力者たちが、多くの生贄のささげ、自らの権力を保持するために壮大な祭りを取り行って来た。祭りは現代で喜びや華やかさのみが残ってはいるが、その歴史は実に血生ぐさい歴史の連続であった。

祭りにおける神への祈りと喜びを享受することが乖離
 しかし生産の発展とともに、人々の神への依存が少なくなって、祭りにおける神への祈りと喜びを享受することが乖離するようになった。
 祭りには文化祭、歌謡祭、感謝祭、音楽祭など色々あれど、神々の匂いを感じさせるものは今は殆ど見ない。そして、近頃では、例えばハロウィーンの祭りの如く、人々がかぼちゃの仮面を被って娯楽の側面がクローズアップされているが、これはもともと「収穫祭」といわれ、収穫の喜びを表わし、神々に感謝の意を示すものでした。
 ところがこれに商業主義が乗っかり、神に感謝することからはなれ、単なるお祭りで騒ぐことに変化してしまっています。

 この原意との乖離の是非はともかく、漢字の世界にも同じようなことが起こっています。

 お祭りで楽しく過ごすこともいいのかもしれませんが、元々は、そもそもは「祭」は神に祈りを捧げるための重要な儀式であったということを思い起こし、一歩後ろに下がって考えてみることもいいことではないだろうか?


まとめ

  祭りは神に人間が生きていること、この世界に自然という恵みを与えていることに対する感謝を表すという崇高なものでした。しかしその実際の姿は、人身御供の世界があり、単に稲や果物や魚などの珍味だけではなしに、奴隷たちが焼かれたり生き埋めにされたりする世界がありました。時には生きたまま体を切り裂かれ内蔵を引き出されるというおぞましい世界もありました。

  人類の歴史には綺麗ごとだけでなく、生々しい惨たらしい世界が長く続きました。そして何より、人類はそのような血だらけになりながらの歴史の中で生きてきた結果として今の私たちがあるということです。
  そしていまでは、祭りには文化祭、歌謡祭、感謝祭、音楽祭など色々あれど、神々の匂いを感じさせるものは見え辛くなってきている。

 漢字の中には人々の営みが刻まれているが、長い歴史の中で、概念が変遷し全く異なるものに変質することも多い。私たちは、漢字を通して、人々の営みをリアルに明らかにすることもまた今必要とされていることと思います。

  


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2023年9月28日木曜日

漢字「死」の由来の意味するところ:古代人の死生観・・人は二度死ぬ!


古代人の死生観・・人は二度死ぬ!


人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。これが、漢字「葬」である。風化を待つためである。まずは自然に帰る。漢字「死」意味するところ、生死のの死ではなく、屍を意味していた。
 風化して後は、殯葬という形式がとられ、正式にあの世に旅立つのである。




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漢字「死」の今

漢字「死」の解体新書

漢字「死」の楷書で、常用漢字です。
 人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。これが、漢字「葬」である。風化を待つためである。
 のち殯葬 という形式がとられ、板屋などに隔離し、安置した。 そして風化した骨をとって葬るので、いわゆる複葬 の形式をとる。ト文の生死の字は囚に作り、棺中に人のある形。
死・楷書


  
死・甲骨文字
死・金文
死・小篆


 

「死」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シ
  • 訓読み   しぬ、ころす

意味
  • 人間・動物などが、呼吸したり、動いたりできない状態になる  
  • 自分で呼吸したり、動いたりできない状態にする。
  • そのもの本来の力や働きが果たされなかったり、うまく利用されなかったりする状態にある 
  • そのものがもっている活気(勢い)や価値がなくなる
  •  

同じ部首を持つ漢字     死、葬、蔞、螻、
漢字「死」を持つ熟語    死、妓楼、蔞、螻、


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漢字「死」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 甲骨文の「死」の文字は右側に「歹」の文字があり、上は水平、もう一方は力強く、顔を上にして真っすぐに横たわっている状態を示し、下は二本になっています。
 中央のものは足が縛られていることを示す斜めになっています。 足を縛られていると動けなくなり、歩くことも動くこともできない人が死んだ人になります。

漢字「死」の字統の解釈

 歺 と人とに従う。 歺は人の残骨の象。 「人」 はその残骨を拝する人の形であるらしく、死を弔う意である。
 死の声義について、人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。漢字「葬」は葬は死 (屍) の草間にある形。風化を待つためである。
 のち殯葬 という形式がとられ、板屋などに隔離し、安置した。 そして風化した骨をとって葬るので、いわゆる複葬 の形式をとる。ト文の生死の字は囚に作り、棺中に人のある形。いまの死字の形は、歺の前に人の跪く形で、明らかに複葬の形式を示している。
 それで死はもと生死の字でなく、屍を意味する字であった。




漢字「死」の漢字源の解釈

 会意文字: 死は「歺(骨の断片)+人」で人が死んで骨切れに分解することをあらわす。



甲骨密码

【死,薨】的甲骨文金文篆文字形演变含义 死・甲骨文字=(跪く人)+(口・叫び)+( 歺・死体)、造語の原義:命が終わると、他人が泣きその遺体を悼む。 甲骨には「口」を省略したものもあります。 青銅碑文と篆刻は甲骨碑文を引き継いでいます。 ここで篆書の「人」は転倒した形をとっています
(「甲骨密码」を参照)



漢字「死」の変遷の史観

文字学上の解釈


【死,薨】的甲骨文金文篆文字形演变含义 死・甲骨文字=(跪く人)+(口・叫び)+(悪・死体)、造語の原義:命が終わると、他人が泣きその遺体を悼む。 甲骨には「口」を省略したものもあります。 青銅碑文と篆刻は甲骨碑文を引き継いでいます。 篆書の「人」は公用書では「短刀」と書きます。

まとめ

 白川氏は漢字「死」を「歺 と人とに従う。 歺は人の残骨の象。 「人」 はその残骨を拝する人の形であるらしく、死を弔う意である。」と解釈している。この解釈が正しいとすると漢字「死」は死そのものではなく、残骨や遺体を配することを「死」と解釈していたことになる。


 「死」の甲骨文字にはいくつかの字体が存在していて、漢字「死」の変遷の史観の項に掲げた。これ等の字体がすべて正しく表現されている保証はないが、一応参考のために掲げた。
 これらを概観してみるといずれも囲いの中に入っていることと、人が反転して書かれていること(漢字「化」の旁の部分)などもある。

 これらのことから考えてみるに、古代人は人間の死を抽象的には捉えることができないで、「人が死んだあと骸骨や死体が風化した後を見て『ああ、死んだのだ』と認識していたのではないだろうか。従って、白川氏の「字統」の記述にも、「副葬」という記述がみられるのは、こうした事情によるものではないだろうか。



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2023年9月25日月曜日

神は「下る」とは決して言ってはいけない理由が今明らかになった!


神は「下りる」とは決して言ってはいけない理由が今明らかになった!


導入

前書き

 「下」は単に上下関係だけを言い表しているだけであるのに対し、「降」は何らかの意思が働く場合に使われるようだ。
 原字に遡って調べてみた。

目次




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漢字「下と降」の今

国語辞典 旺文社で「下りる・降りる」を引いてみた。

    結果は下記の通りだった
  • 「下りる」は、一般に物が上から下へ移動する場合に用いられ、「エレベーターが下りる」「錠が下りる」「認可が下りる」などと使われる。
  • 「降りる」は、人が意志的に高い所から 低い所へ移動する場合や乗り物に関して用いられ、「屋上から飛び降りる」「会長の座を降りる」「車から降りる」などと使 われる。また、露・霜についても「降りる」が用いられる。
つまり、「下」は単に上下関係だけを言い表しているだけであるのに対し、「降」は何らかの意思が働く場合に使われるようだ。
 そう考えると、「神は降臨する」のであって、「下臨」するのではない。確かに響きもよくない。腹は下すものであって、「降ろす」ものではない。
 左が、漢字「下」の楷書で、甲骨文字でも一目瞭然です。
 そして、右の字が「降」の楷書です。意味は共に、下に下がるです。「下と降」も、訓読みでは、「おりる」と読みます。原字では、単に位置をしたに下げるというのと、意識的に意志を持って下に降りるという違いがあるようで、そのニュアンスは現代にも引き継がれているようです。
 ここでは、同じように「下に下る」を意味する漢字が、果たしてどう違うのか、最初から違っていたのかの解明に努めます。
 
下・楷書


漢字「下」の解体新書

 甲骨文字、金文、小篆いずれも、見ただけで直観的に「下」とわかる。しかしこれらの文字のうち、金文が最も洗練され、文字としての記号化が完成されていると考えても違和感はない。文字の発展過程が直線的に進むとは限りないし、サンプリングの時期の問題もあろうから、やむを得ないものだろう。 
下・甲骨文字
下・金文
下・小篆


 

「下」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   カ、ゲ
  • 訓読み   した、くだる、

意味
  • した
  •  
  • くだる :場所・順序・数量・地位等が低い事・遅い事・下方・後方へ移る。或いは、移す
  •  
  • くだす:判断など決断する。 下痢をする
  • おろす: 上から下に移動させる

同じ部首を持つ漢字     下、雫、
漢字「下と降」を持つ熟語    下、下降、下車、下痢


漢字「降」の解体新書

会意 阜と夅に従う。阜は神の陟降する神の梯の形。夅は歩の倒文で、歩は陟る、夅は降るときの左右の足。この解釈は、白川博士と唐漢氏とも全く同じである。 
下・甲骨文字
下・金文
下・小篆


「降」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 降訓読み   おりる、ふる

意味
  • 「くだる」、「おりる」:「高い所から低い所へ移る」
  •  
  • 負けて敵に従う
  •  
  • 雨や雪などがふる

同じ部首を持つ漢字     阪、隆、際、隣
漢字「降」を持つ熟語    降、降参、降下、降臨、


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漢字「下と降」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「下」もまた指示語である。言葉の意味は「上」と相反している。甲骨文の下は長い横線と下に短い弧線を加えて、位置が下にあることを指示している。金文の後期には「二」と区別をするために「縦の線」を一本加えている。 特別に長い縦ラインを追加しました。 楷書も同じ由来で「下」と書きます。 「下」の本来の意味は「上」の反対で、低い、下のという意味です。 「下」は、「下、下級、下流」など、低い、下から拡張して、品位や品質が劣るものを指すこともあり、また、順序や時間の遅れを意味することもあります。 「午後、次回」など。 「下」は動詞としても使われ、高いところから低いところへ降りることを意味し、「田舎に行く、解雇される、分散する、仕事を辞める」など。

漢字「下と降」の字統(P69)の解釈

 指事詞: 掌を伏せた、その下方を指示する。〔説文〕に「底なり」とは下方の意であろうが、篆文の字形は、一横線より、 直線の上に向かうものを上、下方に向かうものを下 とするが、文・金文の字形は掌上・掌下を示す形で、上は掌、下は覀覆(かふく)の意。覀はものを覆う蓋の形である。上下は場所・時間・身分など、 すべて対称的な関係のものを意味する。




漢字「下と降」の漢字源の解釈

 会意兼形声文字 夅は下向きの左足と右足を描いた象形文字で、下へ下ることを示す。
降は「阜+音符夅」で、丘を下ることを明示したもの。



 「下と降」の甲骨文字を示したが、一見したとき、これらの二つの字の間には、構成要素、字素、含まれている概念に大きな開きがあることは見て取れるだろう。下はやはり直感的で、象形的で見たままであるのに対し、「降」は字素も複雑で、成立ちも多くの要素・概念からなっている。これらの字の間には相当の時間の開きがなければならないと思う。すなわち、相当の経験、生活、認識の蓄積がなされたものだと思う。或いは二つの概念は全く異なる概念だともいえる。あるいは、全く別の見方をすると、下は単なる位置関係を示したに過ぎなかった。

 ところが下は移る行動を表現する必要があり、下の金文や小篆のように、上下二本の線をまたぐ縦線で、この行動を表したともいえる。降は初めから神が降臨する表現で、下とは全く別物と考えられた。考古学的には、これらの時間の空隙を埋める研究がなされることが期待される。



まとめ

  「下と降」は全く異なっていたのかも知れない。甲骨文字の時代に「神」が降臨するときだけに「阜」という立派な設備を使って降りてくるのであり、神は決して「下りてはこない」。この使い分けは今でも厳然と守られている。
 今ここにようやく古代の謎が解けたというのは、言い過ぎだろうか?
  


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2023年9月23日土曜日

漢字 合の原意は「合意」!この「合」の中には「性交」の意味も含まれるのか


漢字「合」にみる殷商の時代の性行為自体が合意であったのか?

 漢字「合」の原義は「性交」であるという説と、「合意」であるという説がある。
 このブログの基調となる「漢字の暗号」の著者である唐漢氏は漢字「合」は性交そのものだという。ところが字統では、漢字「合」は契約の成立即ち合意を意味するという。
 唐漢氏によれば、漢字「合」の原義は性交である。それから拡張され「合意」の意味が派生したと考えられる。

 ところが字統によると、合意が原義で性交という意味は出てきていない。

 現代の男女の問題で、裁判などで問題になる「性交」に合意があったかどうか等は、甲骨文字の時代には極めてややこしい問題になることになる。つまり、性交そのものが「合」ということであれば、合意という行為はどう解釈すればいいのだろう。
 甲骨文字の時代には、性交と合意とは一体であったのかも知れない。それが現代では、性行為は合意という行為と分化したことになる。
 こんな議論は「馬鹿馬鹿しい」と一笑に付されそうだ。




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「合」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ゴウ、ガッ
  • 訓読み   あ(う)

意味
  • ぴったりはまる。当てはまる。ごう。
  •  
  • 一緒になる
  •  
  • 一致する

同じ部首を持つ漢字     合、拾、閤
漢字「合」を持つ熟語    合意、合唱、合議、交合


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漢字「合」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P517、唐汉著,学林出版社)
上部の「A]のような図形は、万国共通の男性の性器を表す
下部の容器に見える図形は女性の性器を表している

唐漢氏の解釈

  「合」これは会意文字である。甲骨文字、金文、小篆で「合」の字の示すがごとく、構造的には同じで、上部の「A」の形は男性の生殖器の省略形であり、下部の容器のように見える図形は女性生殖器▽の異形である。両形の意味が合わさって、男女の性のつながりを表し、性交、合歓、性的関係の語の中の合の意味そのものである。

「合」の字は両性の性関係を表す場合を除いて、一般事物の符合、集合、会合など物体間のくっつき合うことを表すように拡張されて用いられる。

 後世には「合」は古代の容量単位で10勺で1合、10合で1升を表し、1合は1升の10分の1である。秦漢の時代には、1合は20CCだったようだ。


漢字「合」の字統(P317)の解釈

  祈祷を収める器である、サイの上に蓋をしている形である。上の図形はΛの下に横棒を加えたもので、集の意味である。意味は衆口を集めるを「合」とする。字は祝祷の器に蓋をする形で、約定が成り、これを載書として祈祷の器に収めることで、契約のなることを合という。


漢字「合」の漢字源の解釈

 会意文字:上部の△(かぶせる)+□(あな)で、穴に蓋を被せて、ぴたりと合わせることを示す。


漢字「合」の変遷の史観

漢字・合は甲骨文字から金文、小篆、楷書に至るまで、その形状は継承され、いささかの変化も出ていない。1000年以上も人々の間で用いられ、その変化がないというのは逆に驚くべきことではないか。その理由は、変化をする必要がなかった。最初から一貫して合理的であったということなのかもしれない。

 ここに至って、この字が、性交という意味も合意という意味もこの字は的確に表現しているのかも知れない。


まとめ

 字統の解釈は、確かに良く分かるが、文字というものは、このように抽象的な概念が先行して生まれるものかは分からない。とはいえ唐漢氏の解釈もあまりに突飛なきもするが、一方で、ダビンチコードに出てくる聖杯の説明と合致している部分もあり面白い。
 念のために付け加えておくが、ここで述べたことは、今現在様々な局面で話題になっている

 「性交は合意の上になされるものだ」「性交はそもそも合意されたものだ」等との卑怯な言い訳を弁護するものではない
ことは声を大にして言っておかねばならない。
  


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2023年9月18日月曜日

漢字「政」の成立ちは、他国を支配することを正しい「正」とし、有無を言わせず征服する行為「攴」から成る。今も基本は昔と変わらない


 政は「正」と「攴」からなる。正は他邑(くに)を征服する意味を持つ。 他国の支配のために攴撃を加えることを政という。

本稿は2012年2月8日に発行の「漢字「政」の起源と由来」を全面加筆修正したものである。

 漢字「政」の基本字素は「攴」である。攴の意味するところは、こん棒で殴りつけることである。

  では、そもそもこの政治の「政」という字はいかなる意味を持っていたのか?
 そしてそれは、どのように使われたのか。
 この問いに最も端的にこたえる例がある。それは、秦の始皇帝ではないだろうか。始皇帝は自身は韓非子の教えを、自身の骨の髄まで叩き込み、成長してからは法家の後継者 商鞅・李斯を取り立て、法による支配を国是とする一大帝国を作り上げた。


 その始皇帝の諱名は「政」であった。これは彼の生前の名前でもあったが、「その意味するところは、他邑を攻撃征服することを示す字」であり、他をこん棒でもって殴り倒してでも他の国・邑を制覇することが、正義であるという考え方に基づき、生涯を全うした。

 まさに秦の始皇帝自身が「政」そのものであった。






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漢字「政」の今

漢字「政」の解体新書

漢字「政」の楷書で、常用漢字です。
 漢字「政」を決定づける基本字素は「攴」であり、この攴が付く漢字には、「改、救、攻、放、故」等数多くあるが、いずれも「力ずく」でものごとを行うという意味を暗示している。そのことを踏まえ、これらの漢字を吟味すると、今まで見落としていた漢字の味わいが見えるようになること請け合いだ。

 ここでいう基本字素とは、筆者が命名した造語であるが、旁や偏が、漢字の成立ちの構成要素であるのに対して、漢字の意味を「決定づける基本的な要素」と定義した。この見解を広く世間で主張するつもりはないが、少なくともこのブログでは、この定義に基づいた使い方をするつもりだ。
政・楷書


  
政・甲骨文字
政・金文
政・小篆


 

「政」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   セイ
  • 訓読み   まつりごと

意味
  • 「まつりごと(国家の権力者が領土・人民を治める事)」(例:政治)
  •  
  • 物事を整え治める方法
  •  
  • おきて(決まり、法律)、政治を行う時の仕組み・制度

同じ部首を持つ漢字     改、救、攻、放
漢字「政」を持つ熟語    政、政治、政界


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漢字「政」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「政」この字は会意文字であり形声文字でもある。「説文」では「政は正なり」と解釈し、「支」と「正」から来て、発声は「正」を取ったとしている。金文の「政」の字の右辺は棍棒を手に持った形で、左辺の下部は「足跡」があり、歩みを表す。上部は一本の短い横棒で行動の目標を表す。明らかに政の字の構造の意味するところは、自ら棍棒を用いて他人を既定の目標に向かわせようとすることである。小篆は金文と相似であるが美観は一層整っている。  

漢字「政」の字統の解釈

  形声 声符は正。 正は他邑を攻撃征服することを示す字。 その支配のために攴撃を加えることを政という。
 正は征服、征は賦税、政が支配の形態を示す字である。〔説文〕に「正なり。 攴に從ひ正に従ふ。正は亦聲なり」とするが、正・征・政は一系 の字とみてよい。
  金文に征を征行・征伐に、政を政治的支配の意に用い、それぞれの字義がすでに分化 している。




漢字「政」の漢字源(P673)の解釈

 形声文字。正とは、止(あし)が目標の一印に向けてまっすぐ進むさまを示す会意文字。
征(まっすぐ進む)の原字。政は「攴+音符正」で、もと、まっすぐに整えること。



漢字「政」の変遷の史観

文字学上の解釈

漢字「政」は正に加え、攴(こん棒でなぐるを意味する)が加えられ、その意味がより一層明確になった。
 太古の昔は、暴力が支配し、それが正義とされた時代が確かに存在したということである。

 しかし、人間が増え、社会の交流が活発になるにつれ、「こん棒で殴り、言うことを聞かせる」方法だけでは立ち行かなくなった。人間は次第にお互いの意見を調整することを覚え、意見を調整する制度的仕組みを作り出す。太古の邑が国という仕組みを構築するためには、人口は100万人が必要であるといわれる所以はここにある。かくして、国家が登場する。この経過は、ヨーロッパで、中世に出現した夜警国家にも通ずる部分がある。



まとめ

   正は甲骨文字では「□+止」と書き、その意味するところは、他邑を攻撃征服することを示す字。漢字「政」は正に加え、攴(こん棒でなぐるを意味する)が加えられ、その意味がより一層明確になった。後に「まつりごと」などとカモフラージュさせた解釈がされるようになるが、いくら曖昧にしようとも、もともと古人が、「政」という漢字を作り出したその意図は、権力こそが正義としたことに他ならない。

 太古の昔は、暴力が支配し、それが正義とされた時代が確かに存在したということである。しかし、権力者のし好は時代が下っても変化はない。

  


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2023年9月16日土曜日

「殺し」の漢字考:人は誰がために人を殺めるのか?


「殺し」の漢字考:人は誰がために人を殺めるのか?

 前回の上載記事「漢字「殺」の変化に見る人間の「殺」の意識の変化。」は認識不足の部分があり、ここに訂正加筆を加えることとなった。
 主な訂正箇所は、「殺」の甲骨文字の理解に致命的な誤りがあったために、訂正を加えた。

 「殺し」を意味する漢字は、20種にも及ぶ。たった一つの行動に対して、どうしてこれ程多くの漢字が必要とされたか?

 それは、「殺し」という行為があまりに重すぎるため、一種のうしろめたさも手伝い、あるいは贖罪の気持ちもあり、少しでも責任逃れのため、言い訳をしてしまった結果だろうか。

 今日は、これらの「殺し」を意味する漢字を取り上げ、漢字に込められた殺人者の心理に迫る。 




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「コロシを意味する漢字」の一覧

辜斬殺殊殀亟戕刳死卯犮殲劉戮蔡僇誅弒煞殛屠弒


 

漢字「殺」の解体新書

 漢字「殺」の楷書は「殺」と書きます。漢字の簡体化で「杀」となり、甲骨文字の字形に接近してきました。殺の本義は殺すことで植物や動物や人が命を失うことです。
殺・楷書


 会意 タタリをなす獣の形と、殳とに従う。テイは祟の 初文。その呪霊をもつ獣を撃って、自己に向けられ ている呪詛を祓う共感呪術的な方法を、殺という。 もともと減殺を本義とする字である。〔説文〕  「戮するなり」とし、罪によって人を刑殺する意とするのは、のちの転義であり、もとは呪詛を減殺する呪的な方法を意味する。それで減殺 相殺の意と なる。廟中でその呪儀を行なうことをサイといい、放竄の竄のもとの字である。
「殺」・甲骨文字
祟りを引き起こす獣を撃って自己に向けられた呪詛を祓う意味を持つ
「殺」・金文
字の体裁が整えられている
「殺」・小篆
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する


 

「殺」の漢字データ

殺しを意味する漢字
  • 「殳」
    殺:P348一枚の枝の葉、切り落とされた様子です。
     (もちあわ)の穂を刈りとり、その実をそぎとること。
     タタリをなす獣の形と、殳とに従う。テイは祟の 初文。その呪霊をもつ獣を撃って、自己に向けられ ている呪詛を祓う共感呪術的な方法

    弒:P372 臣下が主君、雇い人が雇い主、子が親を殺す等、倫理に反した殺人をおこなうこと。主に漢籍の訓読時に用いる。  
  • 「歹」:
    殊:P401死罪とすることをいう。「誅」と字義を同じとする。
    殀:P845「殀」は没なり。若死にのことをいう。若死・殺す
    死:P364「歺と人に従う」歺は人の残骨の象。歺の前に人の跪く形で、明らかに複葬の形式
    殲:P529 声符は韱(セン)。センは多くの人の首を伐る意である。ころす、みなごろしにする。

  • 「刀」:
    刳:P274 声符は夸。「玉篇」に「物の腸を空にするなり」とあるように、物をえぐり取って中空とするをいう。曲刀を持って深くえぐり取ること
    劉:P879 「ころす、克つ、陳ぬ(つらぬ) 惨殺することを意味する。

  • 「斤」:
    斬:P356 車と斤に従う。車を作るための材を切ることをいう。車裂の形のことをいうが、車裂の形には斤は不要であるから、斬るとは材を切ることだという説あり


  • 「戈」:
    戕:P437 声符は爿。説文に「槍なり」というも戕は「槍」で人を刺殺することをいう。ショウ、ころす
    戮:P875 リク 声符は翏。説文に「殺すなり」とあり、罪によって殺すことをいう。
       戮に僇(ころす)、勠(みなごろし)の意味も含む。


  • 「亟」:
    亟:P205 会意:二と人と口と又とに従う。二は上下の間が狭く、狭笮する空間に人を押し入れて、その前には祝禱の器を置き後ろから手を加えて、これを殴ち懲らしめる意
    殛:P206「歺と亟に従う」亟は人を極所に押し込めてこれに誅責を加える形。

  • 「その他」:
    辜:P278 形声:声符は古、辛は刑罰として入れ墨を加えるときの針器で、
     辜とは入れ墨の罪をいう。
     また辜は入れ墨の罪にとどまらず、磔殺の意を含むとされた。
    辠:P278 辠とは鼻に入れ墨を加える刑をいう。辠は罪の初文
    卯:P794 象形:牲肉を両分する形。卜辞に犠牲を卯す(ころす)意に用いており、それが字の初義である。
    煞:P348 急と支に従う。はやし、ころす
    犮:P695 象形:犠牲として、磔殺された犬の形。清めのために行われるもので、修祓の祓いの初文。祓は犬牲の形。
    蔡:P341 象形:字の初文は祟りをなす呪霊を持つ獣の形。長毛の獣の形である。

    誅:P596 声符は朱。朱に咮の声がある。説文に「討つなり」とあり、誅戮、誅滅することをいう。
    屠:P637 形声:声符は者。者に都の声がある。説文に「刳くなり」とあり、牛、羊の属を殺すことをいう。
     多くを一時的に屠殺するので、城市を攻めてその人を皆殺しにすることを「沛を屠る」のように言う。


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漢字「殺」成立ちと由来:「殺」の変遷はどこからもたらされたか

漢字「殺」の字統(P348)の解釈

  会意 「たたり」をなす獣(テイ)(シュ)とに従う。祟その呪霊を持つ獣を撃って、自己に向けられている呪詛を払う共感呪詛的な方法を「殺」という。説文に「戮する也」とあるのは、後の転義であり、もとは呪詛を減殺する呪的な方法を意味する。



 殺を構成するテイで、その呪霊を駆使して呪詛などのことが行なわれた。






引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

  「殺」これは象形文字です。甲骨文の「殺」の字はまるで一枚の枝の葉、切り落とされた様子です。だがまだ木の皮と木が連なっている状態です。但し枯れてしまって間もなく死んでしまう状況です。 
 「殺」の字の発音は大きな木の枝が折れたときのガザガザという音です。金文の字は少し変化して、夭折の形はかえって跡形もなくなっています。
 小篆は金文を引き継いでいますが、但し構造はいわば変化しており、左辺の上部のXは切断を表示し下辺の叉は手で掻きむしった様を表示しています。両側にある縦の線は下向きで、言葉の意味をさらに明晰にしています。右辺には一個の武器「支」が付け加えられた意味です。この時の言葉の意味は既に夭折して死亡したことから殺戮して死んだことに意味が変わっています。隷書を経て楷書は「殺」と書きます。漢字の簡体かで「杀」となり、甲骨文字の字形に接近してきました。殺の本義は殺すことで植物や動物や人が命を失うことです。

 甲骨文字の解釈が、白川氏は「祟りをなす獣を撃つ」と見るのに対し、唐漢氏の解釈は「一枚の枝を切り落とす」と解釈する違いが、両者の決定的な解釈の違いとなり、世界観にまで広がっている。どちらが正しいとは言えないが、唐漢氏の解釈から「殺す」という意味を引き出すには多少無理がある。



漢字「殺」の漢字源(P859)の解釈

 会意。「メ(刈りとる)+(もちあわ)+殳(シュ:動詞の記号)」で、(もちあわ)の穂を刈りとり、その実をそぎとること。摋(そぎ削る)と同系。また散(そぎとってば らばらにする)とも縁が近い。殺陣師 殳,殺,


まとめ

 人間は今まで、数えきれない殺戮を繰り返してきた。

人間以外の動植物は決して他を殺そうとしない。百獣の王ライオンは肉食上動物の頂点に立ちいろんなものに襲いかかり食する。彼らはただ食べるだけ。食べること以外に他の動物を殺すことはしない。縄張りを守るため自分の支配下に入ってきた他の侵入者を追い回し追い出すことはする。しかしその侵入者が領域外に出てしまえばそれを追い回して殺そうとはしない。

 彼らは自分が空腹でなければ、いくらってものが目の前に来ても反応を示し戦うことはしない。
 殺すという行為は人間だけが行う本来の衣食住とはかけ離れた行為と言わねばならない。しかしこの行為を人間を見つけたばかりに自分の本来の生存とは関係なしに他を傷つけ殺し凌辱していく性格を身を着けたといわなければならない。

 人間とは厄介な生き物である。そう考えれば、人間の社会から戦争はなくなるとは思えなくなる。
 人間がどのように高尚なことを考えようとも、哲学的であったとしても、あるいは高邁な宗教者であったとしても結局は食べること(生活・経済)から逃れることはできない。このことは食べること生活することが全ての基本であると考えたマルクスやエンゲルスの深い思考には頭を下げざるを得ない。 この世から「殺し」をなくするのは、結局経済の問題に帰結する。なぜか悲しくなってしまう。

  


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2023年9月11日月曜日

漢字「殺」の変化に見る人間の「殺」の意識の変化。仏教より本源的なものかもしれない


漢字「殺」の変化に見る人間の「殺」の意識の変化。仏教より本源的なものかもしれない


 漢字「殺」の変化に見る人間の「殺」の意識の変化。甲骨文字の「殺」 と、金文の「殺」、小篆の「殺」では文字そのものが、全く違うのだ。甲骨の「殺」の字は、今日的な意味での「殺」という気配が感じられない。いわゆる、殺意がないというか、そもそも甲骨の時代は「殺」そのものをどう捉えていたのだろうか。太古の昔は、生命を奪うことに何の感傷もなかったのかも知れない。そこに感傷という「感情」が芽生えるためには、神の前に捧げるとか、日常の営みとは異なるものがなければならなかったと思う。




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漢字「殺」の今

漢字「殺」の解体新書


 
 漢字「殺」の楷書は「殺」と書きます。漢字の簡体化で「杀」となり、甲骨文字の字形に接近してきました。殺の本義は殺すことで植物や動物や人が命を失うことです。
殺・楷書


甲骨文字から金文そして小篆に至る文字の変化は、やはり概念の深まりを示している。

 甲骨文の当時は、単に木の枝をとってくるだけのものであったが、次第に祭祀を伴う殺戮を示すようになりそれと共に字形も複雑さを増すようになった。

 単純な表示ではどこかに「申し訳ない」という感情が働くのだろうか?  
「殺」・甲骨文字
原義は木の枝や葉を取り除くことを意味していた?
「殺」・金文
甲骨文字と比べ、明らかに対象の変化が見られ、動物を対象とするようになった
「殺」・小篆
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する


 

「殺」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   サツ
  • 訓読み   ころ(す)

意味
  • ころす(生命を奪う)、勢いを止める  (例)息を殺す、封殺
  • 滅ぼす、除く    (例)減殺
  • 切って落とす
  • すさまじい、ものすごい  (例)殺気、殺伐とした、忙殺

漢字「殺」を持つ熟語    殺気、殺伐、忙殺、殺戮、自殺、殺生、殺意、暗殺、殺陣、封殺


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漢字「殺」成立ちと由来:「殺」の変遷はどこからもたらされたか

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

  「殺」これは象形文字です。甲骨文の「殺」の字はまるで一枚の絵だの葉、切り落とされた様子です。だがまだ木の皮と木が連なっている状態です。但し枯れてしまって間もなく死んでしまう状況です。 
 「殺」の字の発音は大きな木の枝が折れたときのガザガザという音です。金文の字は少し変化して、夭折の形はかえって跡形もなくなっています。
 小篆は金文を引き継いでいますが、但し構造はいわば変化しており、左辺の上部のXは切断を表示し下辺の叉は手で掻きむしった様を表示しています。両側にある縦の線は下向きで、言葉の意味をさらに明晰にしています。右辺には一個の武器「支」が付け加えられた意味です。この時の言葉の意味は既に夭折して死亡したことから殺戮して死んだことに意味が変わっています。隷書を経て楷書は「殺」と書きます。漢字の簡体かで「杀」となり、甲骨文字の字形に接近してきました。殺の本義は殺すことで植物や動物や人が命を失うことです。


漢字「殺」の字統(P348)の解釈

  会意 「たたり」をなす獣の形と、殳(シュ)とに従う。祟その呪霊を持つ獣を撃って、自己に向けられている呪詛を払う共感呪詛的な方法を「殺」という。説文に「戮する也」とあるのは、後の転義であり、もとは呪詛を減殺する呪的な方法を意味する。


漢字「殺」の漢字源(P859)の解釈

 会意。「メ(刈りとる)+(もちあわ)+殳(シュ:動詞の記号)」で、(もちあわ)の穂を刈りとり、その実をそぎとること。摋(そぎ削る)と同系。また散(そぎとってば らばらにする)とも縁が近い。殺陣師 殳,殺,



まとめ

 人間は今まで、数えきれない殺戮を繰り返してきた。

人間以外の動植物は決して他を殺そうとしない。百獣の王ライオンは肉食上動物の頂点に立ちいろんなものに襲いかかり食する。彼らはただ食べるだけ。食べること以外に他の動物を殺すことはしない。縄張りを守るため自分の支配下に入ってきた他の侵入者を追い回し追い出すことはする。しかしその侵入者が領域外に出てしまえばそれを追い回して殺そうとはしない。

 彼らは自分が空腹でなければ、いくら獲物が目の前に来ても反応を示し戦うことはしない。
 殺すという行為は、人間だけが行う本来の衣食住とはかけ離れた行為と言わねばならない。しかしこの行為を人間を見つけたばかりに自分の本来の生存とは関係なしに他を傷つけ殺し凌辱していく特性が身を着けたといわなければならない。

 人間とは厄介な生き物である。そう考えれば、人間の社会から戦争はなくなるとは思えなくなる。
 人間がどのように高尚なことを考えようとも、哲学的であったとしても、あるいは高邁な宗教者であったとしても結局は食べることから逃れることはできない。このことは食べること生活することが全ての基本であると考えたマルクスやエンゲルスの深い思考には頭を下げざるを得ない。 最後の一脈の希望は、すべての人間が充足した生活が送れる社会と仕組みを構築することである。それは、極めて困難な道筋かも知れないが、できない相談ではないと考える。

 なぜなら、人間が地球に蔓延るようになってから、わずか数千年に過ぎない。わずか数千年で地球を破壊しつくす事をやってのけた人間である。逆に人間が自覚さえすれば、ほんの数百年で地球を再生することをやってのける力を持っているはずだ。

  


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