気ままな散歩

2021年9月29日水曜日

漢字「親」の起源と由来:古代の漢字・親は、「近しい関係で見ていることができるのが親」であることを今に伝えている。


漢字「親」の起源と由来:身近に接して見ていることができる人を表している
 親の語源については、諸説紛々としている。
  1. 「亲+見」で、木で作った刑具を見る距離が対象とするものとの近しさを表現している
  2. 「亲+見」で。「亲」は木をナイフで切った生木の意で、「見」との会意で、ナイフで身を切るように身近に接して見ていること
  3. 辛を打って選んだ木で位牌を作る意味だが、位牌で拝む対象は親だから
 いずれももっともらしい説明ではある。3番目の説明は、位牌を作るのに木を針で選ぶ、素朴な手法がとられている時代に、親族を祭るいう氏姓制度が発達していたであろうかという疑問は残る。
 いずれにせよ、木をナイフや刀で切るのを見る様を表した漢字というのが、私には最も腑に落ちる解釈である。

約10年ほど前に、「親という漢字の起源と由来」と題して、やはり「親」を取り上げた。しかし改めて読み直してみて、この記事がいささか一面的であり過ぎるように感じ、改めてページを書き起こした。これで過去の一面性は少しは改善されたかも知れぬが、筆者の気休めに過ぎぬかも知れない。

 近年、親の子供殺し、子供の親殺しという事件が後を絶たない。「親」という概念、或いは位置付けが揺れ動いているように思う。これは人間の経済活動が活発になり、従来の社会の関係性が崩れつつあることを示している。

  親という漢字の生まれと成り立ちを見ると、近代の社会発展にもかかわらず、結局は「近しい関係で見ていることができるのが親」ということに帰結することになる。

漢字「親」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「亲」、「右側は「見る」で語義は、辛を打って選んだ木を見て神位とするの意である。
親・楷書


  
親・甲骨文字
建屋あるいは廟の中で木に針を打っている様を表す

単純に建屋の中で木に細工を加えている作業を表しているのかも知れない
親・金文
廟の外に出て、辛を打った木を見て観察している様

木に細工を加えている作業を表しているであれば、屋内である必要ななく、余計な事物は排除されたのではないか
親・小篆
金文を承継しているが、記号としてより鮮明に意味が伝わるようにしたもの

文字として、抽象化し、洗練された表現方法となった


    


「親」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シン
  • 訓読み   おや、ちか(しい)、した(しい)

意味
     
  • おや(子を新しく作り出す行為を行い、子を作り出した男・女)   例 親子
  •  
  • したしい  
      互いに打ちとけて仲が良い       例:親友
      近い  「血筋(血のつながり)がある  例:親戚
  •  
  • したしむ   動詞 

同じ部首を持つ漢字     新、薪
漢字「〇」を持つ熟語    親密、親戚、親族、親指、親類、親権




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 辛は刑具で、木で作った刑具を架せられた人を近く見ることとしている。近くに張り付いていて、中途半端な距離ではなく、極めて近い距離にあることを示している。

 



漢字「親」の漢字源の解釈P1438
 会意兼形声:「亲+見」で。「亲」は木をナイフで切った生木の意で、「見」との会意で、ナイフで身を切るように身近に接して見ていること


漢字「親」の字統の解釈
 亲は辛を打って選んだ木でこれを切るのは新(亲+斤)これで神位を作って祭るものは親である。
 説文に「至る也」とあり。また神位を拝するを親といい 親の廟中でその儀礼をおこなう意である。


まとめ
 漢字「親」もまた、古代の生活の発展が漢字の中に刻み込まれている。この解釈が正しいのかどうかはわからない。しかし、漢字は社会の発展過程を如実に再現しているように見える。今後のさらなる研究に期待したい。

 結局、近代の社会発展にもかかわらず、結局は「近しい関係で見ていることができるのが親」ということに帰結することになるというのが、古代の文字から得た私の現在の結論だ。



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2021年9月22日水曜日

漢字「寛」の成り立ち:廟の中で巫女が緩歌漫舞する様を表す。緩やか、寛容の意味が生まれた。今こそ求められる寛容の精神


漢字「寛」の成り立ち:廟中の巫女が緩歌漫舞して祈る様をいう。このことから、物理的な広さではなく人の気象・態度についていう語
 近年特に感じるのは、人々の寛容さがなくなって来ているのではないかということである。
 それは特にネットの上で顕著に現れている気がする。ネットに現れた片言隻語に対し、すぐに攻撃する、相手を叩き潰すということが日常茶飯事である。それほど重要なことでもない、いわば物事の枝葉末節に部分においてすらその非を全く認めない議論が横行している。そこまで言わなくてもと思うのだが、どうにも規制が効かないようだ。なぜ人はこうも完全なものを求めるのだろうか。攻撃する本人は人にそれほど完全なものを求めるほどに完全なのであろうか。社会はまだそれほど成熟していないということなのか。今から2500年ほど前の中国で諸子百家が活躍していた時代と人間は何ら成長していない気がしてならない。

 寛の使い方は、寛容、寛大などに見られるように、物理的な空間の広さではなく、人間の心象、態度についていう言葉ばかりである。物理的な空間の広さを表す「広」とは、使い方に於いてはっきりと区別ができる。


漢字「寛」の楷書で、常用漢字です。
説文では、「寛」は家が寛大なり」すなわち、部屋の広い壁、面積が大きいことといっています。このことから一般的な意味の上で広々として広大とを示し、狭いとの対比を示しています。拡張して、心が広い、ゆったりとしているという意味を持つようになりました。
 この解釈は説文によるところであるが、白川氏は全く逆に人の気象・態度についていう意味がこの語の基本であると主張している。
寛・楷書


  
寛・金文
廟中の巫女が緩歌漫舞して祈る様をいう。
寛・小篆
金文を引き継いでいる


    


「寛」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   カン
  • 訓読み   ひろ(い)

意味
     
  • ひろい  家などが広い
          心がゆったりしてゆとりがある
          他人の意見をよく受け入れる気持ちを持っている」 例:寛大
          ゆるやか(例:寛刑)
          のびやか(心が穏やかで生き生きしている)
       
  •  
  • 動詞  ゆるめる
  •  
  • 動詞  ゆったりする、くつろぐ

同じ部首を持つ漢字     寛、莧
漢字「寛」を持つ熟語    寛大、寛容



引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「寛」は会意文字です 。 古文の漢字は 居室の中の内という意味です 突出した二つの目と眉毛の人間が書かれ、これでもって人の孤独に返って部屋が広く大きいことを示し、強調しています。
  小篆の寛の字は金文を受け継ぎ、ただ一つ眼と眉毛が一個の首の字に代わっていますが、下辺の人の形は儿の字になって、一人の文字の形成文字を形成しています 。

 



漢字「寛」の漢字源の解釈
 中が丸くゆとりがあって、自由に動ける大きい家


漢字「寛」の字統の解釈(P127)
 会意文字。旧字は寛に作り、宀と莧とに従う。宀は廟、莧は眉に呪飾を加えた巫女。寛は説文に「屋、寛大なり」とするが、廟中の巫女が緩歌漫舞して祈る様をいう。
 その気象は寛緩、ゆえに寛大、寛容などの義が生まれる。家の大きさをいう字ではなく、すべて人の気象・態度についていう語である。

まとめ
 人々は古代は寛容で、寛大であった。いつから狭窄で攻撃的になったのか。古代は為政者は他を攻撃し自らの勢力を維持していたようだが、庶民は宗教が違っても、同じ社会に生きている限り、実に寛容に相互に認め合って生きていたことが文献の中でも伺える。人間は失った寛容を取り戻すことなしに、決して明るい未来は築き得ない。



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2021年9月18日土曜日

「いなご・蝗」は大群となりて世界の人類を滅ぼすか、果てまた人類を救うたんぱく質の供給源となりうるか


漢字「蝗」の成り立ち:「虫+皇」から成る。蝗の大群はまるで皇帝のように傍若無人に振舞い人々を苦しめてきた
 つい2、3か月前イナゴの大群がアフリカ北部からトルコ、シリアのあたりに飛来し農作物を食い荒らしているというニュースが駆け巡りました。

 近年蝗の一種である、サバクトビバッタがアフリカに大発生し、それがアフリカ、中東、西南アジアに飛来し、20か国以上にも及ぶ国々の農業、食料に甚大な被害を与えていると報じられています。


  2021年5月11日付JICAのホームページには、その被害の状況を下記のように報告しています。
 さまざまな農作物を食い荒らすサバクトビバッタ。アフリカから中東、南西アジアまで広く分布しており、大発生すると大群が風に乗って一日に100km以上飛翔するため、その被害はこれまで約60カ国、地球陸地面積の約20%に及ぶといわれています。 なかでもパキスタンは被害が大きく、2019年末に大発生したサバクトビバッタの被害面積は約1800万ha(ヘクタール)と世界最大かつ過去最悪でした(世界銀行:2020年6月資料)。さらに2020年からは新型コロナウイルスの影響も重なり、パキスタンの主要産業である農業分野は甚大な被害を受けています。

パキスタンで、サバクトビバッタへの対応に取り組んできた国際連合食糧農業機関(FAO)はJICAと連携し、バッタ被害が深刻な小規模農家の生計向上や、バッタ防除を行う政府職員の能力強化など、農家をサポートする体制づくりを進めています。
  また蝗は豊富にたんぱく質を含むことから、飼料として利用する方法も開発が進んでいます。


 日本では昔から蝗の佃煮や、甘露煮、てんぷらなど蝗を食べていた地域もあります。今後気候変動や地球温暖化などで現在の食材では賄いきれなくなった時には、これや昆虫類も人類を救う重要な食糧源になることが期待されています。

漢字「蝗」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「虫」で、右は「皇」という字で、四方に広がるという意味を持つ。
 この昆虫は、稲やありとあらゆる植物を食い荒らす害虫として人々に恐れられてきた。「蝗」は古代は、「水、火、兵、蝗」の四大災害の一つとして、古代の文献にもしばしば登場している。
蝗・楷書


  
蝗・甲骨文字
昆虫そのまんま、触覚、頭部本当に昆虫にしか見えない
蝗・金文
甲骨文から更に進化した
蝗・小篆
ここまでくると象形文字の率直さは失われて、文字としての体裁と買いやすさ、表現の統一性が際立ってくる


    


「蝗」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   いなご

意味
     
  • 蝗 (イナゴ)   イナゴ科イナゴ属のバッタの総称。
  •  
  • ショウリョウバッタ(精霊蝗虫) 日本に分布するバッタの中では最大種で、斜め上に尖った頭部が特徴である。
  •  
  • トノサマバッタ

同じ部首を持つ漢字     凰、隍、蝗、篁
漢字「蝗」を持つ熟語    飛蝗、蝗害




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  甲骨文と金文の「蝗」の字は象形字で、触覚と翅と足から成っている。蝗の各部分は全て具備している。小篆の蝗の字は虫と皇とからなり、会意兼形声字である。

古文字中「皇」と「王」の字はみな大きく強勢な意思を持っていた。イナゴの大軍が移動するとき天を覆い日を遮り、常々広いスペ-スをカバーし、人々は蝗の壮大な勢いに恐れをなし、蝗と名付けました。このほか蝗と同類で形も似た蚱蜢(ショウリョウバッタ)は突然発作のように猛烈に繁殖するという意味の突然変異の意味を持つ。ここで漢字の「蚱」は(急に出てくるという意味を持つ)。

 蝗の突然の発作で、農作物に災害を及ぼし、中国の歴史上でも害は大きい。甲骨文の中にも神に助けを求め、この害を取り除くよう求めたという記録があります。ということは今から3500年前~4000年前にはすでに蝗の被害は人々の生活に重大な影響を及ぼしていたことになります。



漢字「蝗」の漢字源の解釈
 会意兼形声:虫+音符「皇」(四方に広がる)


現代漢語中の漢字「蝗」
 現代漢語中、人の貪り食うさま、丸のみをするさま、きれいさっぱり一掃するようなとき、腐敗した役人が国境を超えるとき、地を三尺も削るとき等が、蝗の越境と例えられます(皮肉を交えて?)


まとめ
 甲骨文字の時代に、蝗の被害の被害の記述があったということは、その時代既にそれなりの農業が発達していたことの裏返しでもあります。
 しかし今日の蝗の被害は飛躍的に増大していることでしょう。また近年その被害が甚大となっている背景には、地球温暖化があるといわれております。温暖化の結果砂漠化が進み、蝗が飢餓と飽食のサイクルを繰り返すことで、爆発的な繁殖を生み出すことになっています。私たちは地球温暖化を防止すると同時に蝗の食材化と開発も同時に進めなければなりません。

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2021年9月17日金曜日

漢字の成り立ちと由来:漢字「盃、和」の成り立ちはほぼ同じ。「盃と和」が同じ意味であったとは新たな発見であった


漢字「盃」の成り立ちの意味するもの。日本では「盃を交わす」という言葉があるが、実は相和すということであった
 漢字「盃」は古代は「盉」と書いた。「禾」+「皿」の会意文字である。五穀を表す「禾」を「皿に入れる」というのが、素直な文字の解釈である。

 五穀で作った羹ものであろうという解釈が大方のものであるが、羹は同時に酒であったかもしれないという想像力は働く。盃は早くからあったのではないだろうか。

 聖徳太子の言ったといわれる「和を以て貴しとなす」という言葉の真意は、「盃を交わして親しくなろう」と同じことだったのかも知れない。

 今日は自民党の総裁選の出陣式が行われていたようだ。従来なら盃を掲げて、気勢を上げるという風景もこのコロナ禍で様変わりをしたようだ。
 しかし、おそらく2000年以上続いたこの文化的風習も形式こそ変わりつつあるものの、その精神的構造は変わっていない。そろそろ、変わる境目にいるのかも知れない。


左は漢字「盃」の楷書で、常用漢字です。
 右側は古代青銅製の酒燗器で、中国語では(he)と発音します。
日本語ではさかずきとして「杯」がもっぱら使われる。
盃・楷書
古代青銅製の酒燗器




  
古代文字「禾」古代文字「皿」
古代文字「盉」・「盃」とも書く


    


「盃」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ハイ パイ
  • 訓読み   さかずき

意味
  • さかずき。酒を飲むためのうつわ。
  • 容器に入れた液体などを数える語
  • たこ・いか・あわびの数詞

熟語   金盃・銀盃、乾盃、玉盃、献盃




引用:「汉字密码」(P668、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 盉これは会意形声文字である。金文の「盉」の字は禾と皿から出来ている。皿はここでは代表的な食器である。禾は代表的な農作物の穀実である。両形の会意で、五穀は肉の羹の味を中和するか或いは程度を表す。小篆の字は金文を受け継ぎ、楷書はこの関係で盉と書く。 

 「盉」と「和」は同じ音を持って意味も近い。(金文の形態は十分似かよっている、両者は本義は同じ語源でありうる)この為に人々は「和」を仮借して「盉」の調味の意味を表示した。

 「和」の字は均しく調味を示している。調味はまた混ぜ合わせる意味が出てくる。液体中に粉や個体を混ぜ合わせることを表示している。混ぜて面状にする、あるいはどろどろにする。糖を加えて和える。


「盃」と「和」は、中国語での読みは近い。調味という意味から
和えるという意味も出てきて、使い方も同じようなものである。

漢字「盃」の漢字源の解釈
 会意兼形声。「不」は花の下の丸く膨らんだガク。または蕾を描いた象形字。杯は「木」+「不」でふっくらと膨らんだ形の噐。



漢字「和」の漢字源の解釈
 会意兼形声。「禾」は粟の穂の丸くしなやかに垂れた様を描いた象形文字。窩とも縁が近く、角が立たない意を含む。



まとめ
 古代の人々が実に闊達に想いを巡らせ、認識を発達させたかの後付けができて実に楽しい。



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2021年9月15日水曜日

漢字「麗」の成り立ち:鹿の麗しい姿を表現した。鹿の皮も角も美しいが、「麗」は特に鹿の角を強調したものだ


漢字「麗」の成り立ち:鹿の麗しい姿を表したものという
 少し古めかしい言葉に「麗人」というのがあります。そして麗人で思い出されるのは「男装の麗人」で、一人は太平洋戦争を舞台に登場した川島芳子、もう一人はフランスの女流作家ジョルジュサンドです。
  • 川島芳子:清朝の王女として生れながら大陸浪人の養女となり日中15年戦争中には軍服を着て大陸と日本とを往復し「東洋のマタ・ハリ」とも謳われた川島芳子。日本の敗戦で売国奴として銃殺刑に処せらたというが、実際には中国でひそかに生き永らえていたという説もある。
  • ジョルジュ・サンド(George Sand、1804年 – 1876年)は、フランスの作家であり、初期のフェミニストとしても知られる。彼女は自由奔放な性格で、フランスの社交界の中でも、男装の美貌の作家として多くの人々と関係を持ったことで知られている
漢字「麗」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「麗の簡体字」で語義は、美しいということです。
即・楷書


  
麗・甲骨文字
甲骨文字の中の「丽」の字は「鹿」の全体の形象である。また、鹿の角を回した意味。鹿の角を同じではない角度で見た図である。
麗・金文
金文の麗の字は甲骨文の省略形である
麗・小篆
小篆と楷書の変化は「鹿」の字と同じとなっている。


    


「麗」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   レイ
  • 訓読み   うるわ(しい)

意味
     
  • うるわし
  •  
  • 連なる  並ぶ
  •  
  • 対   夫婦

同じ部首を持つ漢字     鹿、鹿、麓、麒、麟
漢字「麗」を持つ熟語    艶麗、華麗、奇麗、高麗、高句麗、秀麗




引用:「汉字密码」(P90、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 鹿の角を強調した字である。一種の突出した表現方法で、身体姿の特徴を強調する表現方法は異曲同工の妙(やり方は違っても効果は同じである)を持っている。金文の麗の字は甲骨文の省略形で、小篆と楷書の変化は「鹿」の字と同じとなっている。麗の本義は美しく装飾した鹿の角である

 


漢字「麗」の字統の解釈(P901)
 象形文字 字の上部の「丽」が初文で 麗、鹿の皮を並べた形とされるが卜文・金文は、鹿の角を主とする字とみられる。 説文に 「旅びて行くなり、鹿の性、食を見ること急なれば、則ち必ず旅びて行く。」といい丽声とする。結納として両鹿皮を用い、 これより伉俪の意となり、並ぶ意となる。また美麗の意は鹿の角について言うべきものであろう。


まとめ
 古代人の表現力は非常に優れているものを感じる。特に甲骨文字にそれは表れており、甲骨文字の中でも動物には芸術的ともいえるようなものが多い。



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2021年9月14日火曜日

漢字・虐の成り立ち:虍+爪からなる。地球上で最も残虐なのは、虎ではなく私たち人間ではないか


漢字・虐の成り立ち:虍+爪からなる。虎は昔から残虐の象徴のような存在であった。虎と人とのすみわけができていれば、虎がこのような汚名を着せられることはなかったはず
 来年は寅年。虎が寅の代用をされるが、普段は悪者扱いされる虎も来年ばかりは、十二年ごとではあるが皆から愛される存在となり、ほっとしているのでは?

 私たちはいろいろな現象の原因を自分たち自身に求めないで他者の精にしてきたのかも知れません。よく考えてみるとこの地球上でもttも残虐な生き物は私たち人間ではないでしょうか。
 虎は決してホロコーストを作ったりしません。獅子はむやみに人間を襲うことはありません。虎も獅子も明日の自分自身の生活のため他のものを支配下に置いて、隷属させたりしません。
 人間だけが他者の生活を脅かし残虐ににふるまうことをしてきた生き物なのです。


漢字「虐」の楷書で、常用漢字です。
 「虐」の本義は残酷さと攻撃的な性質を示す、或いはその性質をもつもの
虐・楷書


  
虐・甲骨文字
「虐」は会意文字で、右辺は虎の形で、左辺は人の形でからなる。
虐・金文
金文中の「虐」の字は人の形が変わって虎の体と尾がすでに簡略刺され、突出して虎の頭と虎の口になっている。象形に違いが出て、かえって明確になっている。
虐・小篆
小篆の「虐」の字は十分明らかに虎の爪とつかみに行った小さな人の形である


    


「虐」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ギャク
  • 訓読み   しいたげる

意味
  • むごい(吐き気を催すほどすさまじい、悲惨・痛ましい行為である)
  •  
  • しいたげる  (痛みつける)
     「見ていられないくらいの行為をして徹底的に苦しめる」   (例:虐待、残虐)
     「人の気持ちや身体の調子を悪くするほどの荒々しさで取り扱う」
  •  
  • 残酷さと攻撃的な性質

同じ部首「虍」を持つ漢字   虍、虎、虐、彪、處、
              虚(虎とは同じ部首を持つが、成り立ちは全く異なる)
漢字「虐」を持つ熟語    残虐、虐殺、自虐、暴虐




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  「虐」説文で、「虐、残なり」。甲骨文の「虐」は会意文字で、右辺は虎の形で、左辺は人の形である。虎の爪の人が嚙みつくことを意味している。
 金文中の「虐」の字は人の形が変わって虎の体と尾がすでに簡略刺され、突出して虎の頭と虎の口になっている。象形ニ違いが出て、かえって明確になっている。小篆の「虐」の字は十分明らかに虎の爪とつかみに行った小さな人の形である。

 小篆から楷書への変化は虎と反り返った爪の会意となっている。虐の字はの元は老虎が大口を開け鋭い牙の残虐な生き物で、このため「虐」の本義は残酷さと攻撃的な性質を示す。「虐杀、 虐待、虐政」と「暴虐」など。

 


漢字「虐」の字統の解釈(P169)
 虐 象形文字 トラが爪を表している形。虍+爪からなる。篆書の字型には 人をくわえているが、別の字形には下部に爪の形をくわえるものあり。


まとめ
 虎は残虐の代名詞のように言われるのは、生活圏が被さる部分があるから。虎と獅子(ライオン)では、お互いに植物連鎖の頂点に立つが、生活圏が異なるため相争うことはない。争えば間違いなく虎が勝つ?



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2021年9月8日水曜日

漢字・熊の成り立ち:能+灬(火を表します):熊の肉はよく燃えることから、熊は火の精と奉られていました


漢字「熊」の成り立ち:能+灬(火を表します):能と熊は別物ではない。熊は能であり能は熊
 昔から「能ある鷹は爪隠す」といわれていますが、熊に関して言えば、「能ある熊は能隠す」とでもいえるかもしれません。我々は、能と」熊は全く別の漢字のように感じていました。

 しかし、熊の中には「能」が隠されています。不思議なことにそれを認識することはあまりないのです。漢字というのは不思議なものできちんと認識すれば、ものは見えてくるものです。熊の中に能と火が隠され、それぞれに意味があったということを!


漢字「熊」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「能」、下部は火で四つの点で表します。
熊・楷書


  
熊・甲骨文字
象形文字そのものです。古代人が生き生きと事物を表現していたのには驚かされます
熊・金文
文字として、抽象化と形象が洗練されがかつ、使いやすい、書きやすい形になっています
熊・小篆
文字として一層抽象化が進んだのでしょうが、甲骨文字や金文に見られた、熊の形体を見出すことはできなくなっています、


    


「熊」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ユウ
  • 訓読み   くま

意味
     
  •  

漢字「熊」を持つ熟語    熊笹、熊手




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「能」は「熊」の初字である。造字の始め「能」が参照されているのは、図の示すような雰囲気の、甲骨文字の「能」の字で、まさに熊の図である。左は頭で、上は耳で下は口、大きくて太い体と足の爪、腰には小さな尻尾。
 金文の中では巨大な首と大きな口、正に典型的な熊の特徴である。小篆の形体は既に熊の様子ではなくなっている。

 楷書では小篆から変化して、熊の大きな二つの爪は能の字の右の部分は変化し、人が熊の様子を探すことはできなくなっている。能の本義は「熊」である。

 



漢字「能」の漢字源の解釈
 会意文字 「能」は ねばり強くて長く燃える獣のあぶら肉のこと。 熊は「能+火」で、肥えて脂肪の乗った熊の肉がよく燃えることを示す。熊は昔火の精であったあると考えられた。


漢字「熊」の字統の解釈
 字統839ページ
会意文字である:能と火に従う。説文に 「獣なり。豕に似て山に居し、冬は蟄す。 能に従い 炎の省声」とし、炎声の字とする。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。古代人の表現力には驚かされます。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年9月5日日曜日

漢字「狼」の成り立ちと起源:「犬+良」から成る。鹿やイノシシなど農作物を捕食する動物として尊敬されてきたことから「良」という字がついた?


漢字「狼」の成り立ちと起源:「犬+良」から成ることは間違いない。
 しかし、荒々しい獣の代表のような狼がなぜ良という字を持つのか>その不思議に迫れるか・・。



漢字「狼」の楷書で、常用漢字です。
 
狼・楷書


  
狼・甲骨文字
狼・小篆
構成の左は犬から取ってきています。右は「良」で、冷酷を意味するといいますが、後付けのように思います。
狗・甲骨
偏が犬偏ではないことに注意。現代では獣偏で統一されています


    


「狼」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ロウ
  • 訓読み   おおかみ

意味
     
  • 狼・・・おおかみ(イヌ科。家族単位で暮らし、冬には群れをつくって共同で狩りをし、大形の動物なども襲う)   (例:)
  •  
  • ひどい残虐なやり方をいう・・・豺狼
  •  
  • 酷い行いをする人をたとえ 

同じ部首を持つ漢字     狼、浪、痕
漢字「良」を持つ熟語    狼藉、一匹狼、狼煙、狼狽




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 字形から構造分析をすると、狼は犬に似てそのために字形の右側が「犬」のような形をしており、字形の左側は甲骨文「良」です。
 良とは元々、光線が穴から差し込んでくることを意味し、オオカミの目は2つのターコイズブルーのライトのようなものということから、「狼」という言葉は「良」を構成要素として使用しました。オオカミの眼の光は青緑色のライトのようで、ことのほか目を奪うものです。

 古代の先祖は「良、犬」の会意で以て狼の字を作り出し、観察は精密で考えの組み立ては巧妙です。

 



漢字「狼」の漢字源の解釈
  「犬+音符 良(冷たく澄み切った)」 冷酷な性質の動物の意


漢字「狼」の字統の解釈
 狼:形声文字。声 符号は良。説文に「犬に似て鋭頭白頬、高前廣後」と言う。その鳴く声は小児の声に似ている。暴虐の甚だしいものを虎狼といい、その代表とされる。飼うことのできない獣とされる


まとめ
 オオカミは人間との交流の歴史が長く、一部の農耕社会や狩猟採集社会では、鹿やイノシシなど農作物を捕食する動物として尊敬されてきた。漢字の生まれた中国の中原では農耕が発達し、基本的に農耕社会であった。このような意味から漢字「狼」には、「良」という文字がついているのかも知れない。またオオカミは、家畜やペットである犬の祖先とも言われている。



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