気ままな散歩

2019年12月21日土曜日

「君」は笏丈を手にし、詔を発する権力者? 古代文字に見る真意は如何に


君の意味するものは、「恋人」「あなた」か、はてまた「天皇」か、古代文字に見る社会の姿は如何に
 君という字は、[恋人]とか、「君主」を表すとか、「天皇」を表すとか俗説が巷に溢れている。そこから、「国歌」の「君が代」は天皇を崇め奉る歌だとか諸説紛々としている。
 しかし、日本という国家がまだ存在しない時代に作られた漢字の「君」という字はいったい何を表すだろうか?


引用:「汉字密码」(P643、唐汉著,学林出版社)
甲骨、金文、小篆および楷書は、すべて「尹」の下に「口」加えたもの。
  「説文」は「号令を発する尹と、口からなる」と解釈されます。
 「尹」は統治に使う「笏」を手に持っている形であり、口は命令を発する口を意味する。(「字統」によれば、サイを表すとしている)。この両者の会意文字で、「笏」を手にもつ。つまり、「君」は統治の意味を持つ笏を持つだけでなく、命令を出すことができる「口」も持っています。笏を握って号令を出すものを意味します。


人間社会の現実の姿を字に映し出した「君」
 古代の書物「儀礼•喪服」では「君は尊ぶなり」と解釈されています。君の本来の意味は号を発する指令者として、すでに帝王に昇格している。人と人の間の階級、つまり動物集団の生活から生まれた階層は、本来個体間の肉体的と知能の間の先天的な不均衡から来ています。しかし、富と武力によって具現化された抑圧と搾取は、即ち人間社会の不平等の現実です。

 [君]という寺が生まれた当初は、それは、笏丈を持つものとして権力者を表していたが、封建社会には、君は世界のあらゆるものの主人となり、権力構造の頂点に立つものを表す字として解釈されるようになったのではなかろうか。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2019年12月16日月曜日

漢字一文字で「牢屋」を書くと、囹(国がまえの中に令)と書きます





出典:「管子 五輔」(出典は春秋戦国時代の管仲の作といわれる)
「囹」の字の成り立ち」
 この字は甲骨文字の時には未だ出来ていなかったようだ。最初に文献の中に出現したのが、春秋戦国時代に現れたようです。
 なぜこの字を持ち出したのかというと、「文字には、いい文字、悪い文字といった性格は初めからそもそも持ち合わせていない」ことを言いたかったのです。



漢字源の解釈
 囹はかこいを表す「囗」に音符「令」が合成されたもので、冷と同系で冷たい牢屋を表す形声文字です。


字統の解釈
 形声字。声符は令。「令」は人が起居する形。説文には「獄なり」とあり、獄舎をいう。


2019年12月12日木曜日

2019年の漢字は「令」となった。この推進力は??


今年の漢字は「令」
 今年の漢字は「令」に決まった。ある意味穏当ではあるが、今年ぐらい予想と一致した年はない。今年一年、あるいはここ数年「新元号」狂想曲のオンパレードだった。

 表に現れる様々な運動の裏には「令」という漢字の解釈をある一つの概念で統一しようという動きが目には見えない形で推進されていたようで、ある意味不気味な一年でもあった気がするのは私だけだったろうか。


京都八坂神社前を練り歩く奉祝提灯行列


 これが「めでたい、めでたい!」と祝賀パレードに、提灯行列。
 昔の映像で見た「提灯行列」が今の世の中で再び見られるとは思いもしなかった。


「令和」の『令』の甲骨文字ほか古代文字
大阪学院大学 名誉教授 中川 徹氏の解釈(2019年 4月27日付け『TRIZホームページ』より抜粋)

 「令和」の基本的な意味は、「「令」によって「和」を作る」ことだと分かりました。すなわち、「令」というやり方(「上からの命令・指示」)によって、「和」という状態(「人々が争わず協調している状態)にしよう、それを目標にしよう という意味ととれます。単純に「Beautiful Harmony」という美しい理想を掲げているのでなく、それを「上からの命令・指示」で作って行こうというメッセージを含意しています。


TRIZホームページ
様々な解釈
 この解釈以外にも、色々の解釈があります。4月3日付けで、外務省は、令和の意味を『「令」を「Beautiful(美しい)」の意、「和」を「Harmony (調和)」の意味と説明する』よう在外公館に指示を出しているようです。しかし、漢字学からの観点で言えば、これは跡付けの解釈であって、漢字の本来の意味は、中川氏も言うように、「令して和する」というのが穏当なようです。


結び
国民は柔軟な解釈を!
 先の提灯行列にせよ、一連の即位の儀式にせよ、政府は一貫して、これを国民的儀式として位置付け、国民にもそのような受け止めを促しているように見受けられます。

 しかし元号一つにせよ様々な解釈があって当然であり、それを一つの解釈として統一する必要はまったくないのであり、政府の「大本営的発表」は、好ましいものとは思われません。




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