気ままな散歩

2018年10月24日水曜日

漢字「風」の起源と成り立ち:「風を読む」と「空気を読む」


漢字「風」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P265、唐汉著,学林出版社)
「風を読む」と「空気を読む」の違い
   昔から色々の局面で、風を読むことは、戦術を立てる上で非常に重要なことであった。映画や物語の上の話ではあるが、三国志の「赤壁の闘い」で揚子江を挟んで、攻撃を仕掛ける際、孔明は風向きの変わるのを読んで、戦術を立てた。このようなことはおそらく古代の闘いだけではなく、現代の戦闘においても恐らく非常に重要なことであると思う。
 近頃これに対し、「空気を読む」ということが盛んに取りざたされている。風を読むと同じようなフィーリングであるが、その持つ意味には大きな違いがあるように思えてならない。
  1.  空気の場合、空気を共有している場でなければならない。しかし風の場合には、空気の流れの変化について論じている。
  2.  風を読むことは多分に動的である。それに対し、空気を読むというのは静的な行為である。
  3.  風を読むときには、利害が対立している場合が多い。空気を読むときは必ずしも利害については問題としない。
つまり何が言いたいかというと、空気を読むというのは、「回りを気にする」ということであり、あまり堂々とした態度ではないことをいい、現代人はそれだけ、回りの空気で自分を決しなければならないような姑息な態度を迫られているのかもしれない。

「風」の字の成り立ち」
 風は甲骨文字では と風鳥の組み合わせからなっている。昔の先民の観念の中では大きな鳥が団扇のように羽を広げて起こす気流から表現されている。殷商時代の先民の風に対する知識は浅いものだった。 
商代の甲骨卜辞中、すでに専業化した「四方風名卜辞」というのがあった。
 風の分類もまた精緻である。小風、大風、狂風など。金文と小篆中の風の字は上部はみな凡で、 から変化したものだ。但し金文の風のなかは百になっている。小篆の凡の中は虫になっている。説文は風は虫の生を動かすとして、小篆の風の字の解釈を出している。ただ飛んでいる虫が群れを成し風のごとく通り過ぎるかのようだと比較的こじ付け的な理解をしているようだが、金文の表意からは遠く離れることなく、日に照らされた水が熱を受け上昇するとしている。

古代人は風を如何に捉えたか
 古代格言中、「木静かなるを欲して風定まらず、子養う親を欲して必要とせず」の名句がある。それから「声を聞いて風を知る、風を察してその志を知る」の経験は物語る。前者に用いているのは風の本義である。後者は即ち風俗・風気をさしている。風は古代で特に指している詩経にあるように詩歌の類の一種である。即ち国風の中に収集したものは各地の民族歌謡である。
 


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2018年10月9日火曜日

漢字「歯」の起源と成り立ち:人の歯も動物の歯も概ね同じ構造。歯は象形文字


漢字「歯」の起源と由来
人の歯も動物の歯も概ね同じ構造を持っている。即ち門歯(動物の場合切歯という)、犬歯、前臼歯、後臼歯の4種類があります。漢字の「歯」は人間の歯の象形文字です。

引用:「汉字密码」(P422、唐汉著,学林出版社)

「歯」の字の成り立ち」
 歯は人の歯である。甲骨文字の歯は象形文字で、まるで人の口の中で上下の歯の並びのようである。
 金文と小篆のは一個の「止」の字の符号が増えて、読音を表示し、上下の犬歯の相互の嚙みあわせを表示している。そこで歯の字は本来の象形文字が変わって、会意文字、形声文字に変化したものだ。楷書では簡単化と規範化の後「歯」とかく。

牛馬などの家畜は幼いとき、毎年一つずつ歯が生え、歯の数でもって牛や馬の年齢を数える。又人の年齢に拡張して、「歯発」の言葉がある。歯と頭髪の変化が変わって、人の年齢を指す。したがって両者とも年齢に従って出てくる変化や変異となる。

この記述は少し正確さにかけるので、以下の通り補充します。
牛には、人間の門歯に相当する切歯という歯があります。
  1. 牛は成長すると、永久歯が生えますが、上あごは切歯も犬歯もなくて前臼歯と後臼歯がそれぞれ3本ずつあります。切歯がないので,歯ぐきが硬く歯床板いわれる状態になっていて歯の役目をはたしています。下あごは切歯3,犬歯1,前臼歯3,後臼歯3だけど,犬歯は切歯とおなじシャベル状をしているので,切歯が4本あるようにみえます。
  2. 永久歯生える時期と年齢には以下の関係があります。
    23±2ヵ 月齢:第 一永久切歯萌出.
    30±2カ 月齢:第 二永久切歯萌出.
    36±3カ 月齢:第 三永久切歯萌出.
    44±4ヵ 月齢:永 久犬歯萌出.
    「永久前歯による牛の年齢判定 江崎安一、白井弥 日獣会誌43 423~431(1990)」より抜粋

「歯」と「牙」
中国では、歯科のことを「牙科」という。漢字で言えば、牙という漢字ができたのは、甲骨文字からはるかに遅れてからのようであるので、なぜ「牙」という漢字が当てられたのかはよく分からない。
 因みに人間の歯の治療はかなり古くから行われていたようで、なんと旧石器時代、歯を抜いたり歯を削ったりする習慣があったというから驚きだ。
 そして、長崎県歯科医師会のホームページには、「B.C.5000年頃パピロニアの王家の図書館でみつかった粘土板にむし歯の原因が“歯の虫”であるとの記述があります。」
 わが国では、「701年(大宝元年)わが国最古の法令『大宝律令』や『養老律令』の『医疾令』に定められた医学生の教育内容の中に耳目口歯科と明記され、耳、目、口、歯は一つの科として医師が行うことになっていた。」ということです。

 このように歴史を紐解いてみると、エジプトに端を発した医療が最先端だったようで、その関係から、歯科医療は西洋のほうでより早く発達し、先端を行っていたようです。

耳寄り情報
 歯医者に行ったとき、表には出てこないのが、歯科技工士である。私の場合、ある歯医者で、部分入れ歯が壊れたので治療してもらった。この歯医者は実に藪医者で、部分入れ歯を作り変えてもらうのに型を3回とって、3回共に入れ歯を入れたら、1時間と持たない間に歯茎とこすれて、出血した。こんな医者は信用できないので、ついにそれまでの治療費は捨てて、その医者にいく事をやめた。この場合医者が悪いのか、歯科技工士が悪いのかは分からないが、おそらく医者が、「歯科」ではなくて、「薮科」だったんだろうと思っている。
 ところで現代では、中国の歯科技工士が最先端だということだそうだ。中でも広東省の「歯科技工士」が最も優れているそうで、いまやブランド化しているとのことだ。 


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2018年10月5日金曜日

漢字「牙」の起源と成り立ち:犬歯からとった象形文字


漢字「牙」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P421、唐汉著,学林出版社)

「牙」の字の成り立ち」
「牙」は即ち牙歯である。金文の字は、まるで上下に交錯し、突出した犬歯の形をしている。人の犬歯は門歯と臼歯の間にあって、尖った円錐形の形状をしている。俗称「虎の牙」という。このために漢字の縦長で横幅の狭い特徴に適応されている。金文の第2款は将にその縦置きになっている。小篆はこの縁から「」と書かれる。金文と比べ字の形は均整が整えられ形からの意味は既に不明瞭になっている。

漢字「牙」の使われ方
 古文中の「牙」は、多くの象牙やその工作物を指している。「牙尺、 牙板、牙管」の如く。人の歯に用いる時は、「爪牙、牙口」のように、もっと曖昧なことが多い。昔売買の双方が利益を取り合う人に、「牙子(仲買人)、牙俭」のように用いられた。現在ではブローカーや仲介といわれる。
 草木は発芽する「芽」には草かんむりを加えて、草木の芽の形が犬歯と同じ様な状態であることを示している。 


後書き
 昔、中国では仲買人のことを「牙子」と言ったそうだ。双方利害関係が食い違う中に入って、犬歯をむき出しにして激しくやりあう様を、この「牙子」という言葉はひったりと表現している。すばらしい表現力ではないだろうか。そのれ引き換え「仲買人」と言う言葉は一見上品になっているが、活写されていないという点で、曖昧になっていると言えるだろう。日常普段に使う言葉にもこのような類のものが数多くあり、知らず知らずに為政者に慣らされてしまっていることも多いことに気をつけるべきだろう。
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2018年10月4日木曜日

漢字「芽」の起源と成り立ち:芽は牙のようであることから来ているのか


漢字「芽」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P134、唐汉著,学林出版社)

「芽」の字の成り立ち」
 芽は植物の種子の新芽を指す。または植物の葉や花が蕾を含みほころびを待つ最初の状態を指している。小篆の芽の字は草冠の字の頭と牙が組み合わさった字で明らかに形声字である。
 芽の字にどうして「牙」が用いて、その声符となしたのだろう。小篆、楷書の「芽」の字は構造は「互」によく似ているしLと¬が交錯した構造になっている。
 双葉がかみ合っていることから、草かんむりに音符の「牙」をとったという。因みのこの説明は「漢字源」、「字統」でも同じで、会意+形声文字という。


古人は「芽」と「牙」に何を見たか
 「芽」の字の声符は動物の牙をとっており、双葉の柔らかい新芽を表している。花の蕾もいわゆる固い形状も一緒に芽という。人々は常に芽胞というがこれは最初に出てくる葉や花の芽が牙のような形状をしていることからそういう。芽は通常植物の種子、葉、花の蕾の最初の状態を言う。また拡張して、事物のはじめの状態を「萌芽」という。

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2018年10月3日水曜日

漢字「杏」の起源:今ブレイク中の女優は「杏」さん。杏はアンズの杏。生命力溢れた植物


漢字「杏」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P158、唐汉著,学林出版社)

「杏」の字の成り立ち」
 杏の原本は象形字である。甲骨文字の「杏」の字は杏の核から芽が萌芽した形をしている。杏は生命力のある果樹で杏子の棋盤に埋め込んでも発芽し枝を出すという。又土地がどんなに貧弱でも、山の谷あいのいたるところで杏の木はあり、砂漠でも杏の木はあるのは生命力の強い証拠だ。「杏子」の字の下部は断裂があり、木と口とに変化している。楷書ではこの関係からこの字になった。


古人は「杏」を如何に考えたか
 杏は中国原産の植物である。昔から香りのいい食物として珍重され、また咳止めの漢方薬としても重宝されていた。
 ある人は杏の発音から、その芳香が人を気持ちよくさせるものと認識している。この種の話はある道理も持っている。
杏仁(果実とその種)は香りがよく、杏仁の中の白色の部分を取り出し粉末にして杏仁粉とする。もし水と糖を加えると杏仁乳が製造され、清涼飲料になる。我々は杏仁豆腐として馴染みがある。但し杏の発音は古音ではHengと読み"亨、行と同じ音である。

「杏」にまつわるちょっといい話
 杏に関していえば、いい話がある。三国時代の名医呉董奉という人は、廬山に住んでいたが、人の病気を治しても金は取らなかった。しかし、病気が重いものは杏5株、軽いものは杏1株を植えさせ、それを治療費とした。数年後杏は10万株にもなり、董仙を称して杏林といった。なくなって以後杏林は医療を讃える言葉となった。このほか、学術界のことを、杏壇と人々はいうが、これは孔子がかつて、杏壇(現在の山東省曲阜)で教えていたからである。



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2018年10月1日月曜日

「姻」の起源と成り立ち:父権制の確立後に生まれた文字、新婦の寝る場所を示す


漢字「姻」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P505、唐汉著,学林出版社)

「姻」の字の成り立ち」
「姻」は会意文字であり、形声文字でもある。小篆の字形の左辺は「女」の字で、右辺の「因」は甲骨文字の原本は筵の上で寝ることを表示している。拠り所のあるという意味である。父権制の確立後、中国の婚姻風俗は一般には皆女子は男の家即ち新郎の家に出かける。それゆえ新婦の拠り所となる場所となる。また直視的な解釈で新婦が寝る場所という意味である。  いわゆる姻は女と因の組み合わせである。その中で因は又表音を表わす。姻は婚と同じく会意と形声文字である。

古人は婚姻を如何に考えたか
 「姻」は説文では「姻、婚家なり」と解釈され、それゆえ拡張され、姻親と関係する。《尔雅•释亲》の説くごとく、「婚これ父曰く、婦の父を婚となす。このことは「親家の間、女性の父親を婚と呼び、男の父親を姻と呼ぶ。


現代の日本の法律上の「親族」「姻族」の定義
親族の定義
 一般的には,親族というと,親戚の方全般を指すものとして使われています。  法律上の「親族」は,すべての親戚を指すわけではない。すなわち,法律上の親族とは,6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族のことを指します。
姻族の定義
 姻族(いんぞく)とは,一方の配偶者と,他方の配偶者の血族との間の関係のことをいいます。例えば,妻と夫の父母などは姻族となる。  姻族関係は,あくまで配偶者双方の問題です。したがって,配偶者以外の者同士が姻族関係になるというわけではないことを知っておいても損はない。   


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華:民族主義の原点、中華の「華」の語源と由来


漢字「華」の起源と由来
 「華」と「花」は同じではない。花」、「華」は機能が分かれ、「華」は多くは抽象的意味を受け持ち、中華民族の仮借を指している。一方、開花の華は即ち「花」と書く。

 一方現在、中国では小学校では、「華夏」という言葉の意味について教育が徹底されているという。この華夏というのは、「中華」の華であり、夏商周の三代の最古の王朝「夏」のことである。中国の子供たちには自分たちが世界最古の文明を維持して持つ、中華民族であり、これまた最古の王朝である夏王朝の末裔であることが徹底されているという。 実際の中身が分からないが、民族教育としても、「社会主義を目指す国」の民族教育としては、もう少し、現代的な、世界の中の中華民族ということに重きを置くべきと考えるが・・。


 さて、今回この「華」という字に焦点を当てる。この「華夏」ということについては、NHKが今年の10月18日の総合テレビで、中井貴一さんがレポート役とした、番組を組んでいた。中国では「二里頭村」というところで、「夏王朝」の宮殿が発掘され、今まで伝説上の話として伝えられていたものが、実在したことが確実になったと伝えている。

引用 「汉字密码」(P136, 唐汉,学林出版社)


 「華」は植物の有性繁殖器官であり、古代には華と書いていた。
华は「華」の簡体字である。図に示すが如く、甲骨文字の「華」の字は、まるで木の上の花が咲き誇っている様子である。華は象形文字である。金文と小篆は大きく変化しているが、その趣旨は変わっていない。上は花や葉が茂っている状態で、下は茎や幹枝が伸びているようである。
 古代、木の上の開いた華を称して「華」となし、地上の植物の花が開くことを「栄」とした。


 先に華があり、後で花が出来た。花はいつごろ出来たのだろうか。南北朝以前の書の中には見られないが、晋代の詩の中に、「一岁再三花」の句が見られ、花の字は晋朝に出現したと云われている。 「花」という字の出現后も、多くの成語の中に華の字を用いる習慣が残った。



 「花」、「華」は機能が分かれ、「華」は多くは抽象的意味を受け持ち、華彩、華麗の様に使われている、又
「華夏、華裔」など、中華民族の仮借を指している。一方、開花の華は即ち「花」と書く。
 花の字は草かんむりと化けると書く。これは会意形声字である。化けの字は甲骨文字中では一人が正立、一人は倒立した二人の人間を表現し、人の生と死の変化を示す。花は開いて落ちる、盛んなること敗れることがある。 花は化けるの音符を用い音と意味を表す。
 
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