漢字・恒は実に意味深い。それは、この字の成立ちと由来からくる
漢字「恒」の出生の秘密とどうして「恒久・永遠」という意味を持つようになったか?
もともとは「亘」から来たという。しかし、この「恒」の原字は「亘」ではなく、「亙」ではないかという説がある。ここでは、白川博士や唐漢を逸脱して、大胆に「亘」と「亙」の問題について掘り下げてみる。
導入
前書き
目次
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漢字「恒」の今
漢字「恒」の解体新書
左は漢字「恒」の楷書で、常用漢字である。 右は「恒」の小篆だ。「恒」の原字は「亘」だという。亘には同じ様な字体で、亙という字が存在する。結論から先に言うと、「恒」の原字は「亘」ではなく、「亙」ではないか考えている。 | ||
恒・楷書 | ||
亘・楷書 |
恒・甲骨文字 |
恒・金文 |
恒・小篆 |
「恒」の漢字データ
- 音読み コウ
- 訓読み つね
意味
- 不変、変わりがない
- 永久に
- 常に、久しい
同じ部首を持つ漢字 亘、亙、姮
漢字「恒」を持つ熟語 恒、恒久、恒常、恒星
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唐漢氏の解釈
「恒」の甲骨文は「亘」、立心偏はない。
「亘」の字の上下の横線は天と地を表し、中央には三日月が描かれている。 両形の会意で、上弦の月が徐々に満月に変わっていく様子を意味し、また月が天地に恒常的に存在することを表している。
例えば、『詩経』では「月のように永遠、太陽のように昇る」というように、「恒」とは、三日月から満月、満月から三日月へと永遠に変化し続けることを指している。
漢字「恒」の字統の解釈
形声 声符は亘。亘は上下二線の間に弦月の形をえたものであるが、「亘」の篆文と古文との形が著しく異なるので、その初形を定めがたいが、亘・亙の両字が同字異文として存在する。亘・亙はもと異なる字であるにもかかわらず、亘・亙の両字が同字異文として考えられたため、混乱を生じたところがある。
漢字「恒」の説文解字の解釈
恒、常也。 天と地の上下の間にあって、心と舟とに従う。
ここでいう舟は三日月のことをいう。太古の人々は三日月が常に変わらずに、天と地の間にあって存在し続けるようにみたのだろうか。
漢字「恒」の変遷の史観
文字学上の解釈
恒の甲骨文の3款である。
恒の金文の2款である。なぜ金文になると立心偏が現れたのか。
この甲骨文から、金文に至るまでの約1000年の変化の過程が、失われた1000年といっても過言ではなく、私にとっては謎である。
字統では、「亘」の字形について、篆文と古文との形が著しく異なるので、その初形を定めがたいと述べている。
亘・亙の二字はもと異なる字である。ただ恒をまた亙ともしるし、亘・亙の両字 が同字異文と考えられたため、混乱を生じたところがある。わたる・連なるの訓は、もと舟の形に従う亙の字義である。結局のところ全く訳が分からないことになる。
まとめ
恒の原字は亘だという説があり、ではその亘という字には、亘・亙の二つの異体字?がある。亘・亙の二字はもと異なる字でにも拘らず、同じ字義を持つものと考えられた。「亘」という字は、もっぱら垣根や石垣のような本来の字義に用いられるようになった。
一方、「恒」には天上に現れる月が天と地を結ぶ象徴のように「常や不変」を表す意味を持たせ、リッシン偏をつけて明確にしたのではないだろうか。
「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
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1 件のコメント:
亘 は天と地の上下の間にあって、心と舟とに従う。
上記の文、まるで 現代詩ではないか?
恒の意味を知らずにいたが、不明な点を含めて、なるほどです。
不明な点があるのは、研究者の永遠の好奇心を刺激するのではないかと
想像します。たそがれ源氏
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