漢字「加」の成立ち:女+力の会意で、なかったものに新たに追加されることを意味した
漢字「加」という字は、甲骨文字から金文に至るまでに、劇的な変化をしている。
甲骨文字では、字の構成要素に明らかに「女」の象形が使われ、、金文では「女」の象形は消え、その代わり「鋤」の象形が使われ、「サイ」という祝禱を入れる器が現れている。甲骨文字の時代には、いまだ女性崇拝は残り、子供を産むという生産性に畏敬の念を持っていたものが、金文の時代には、農業の発展により、人々の関心がより即物的な事物、つまり食料の生産に移ったのかも知れない。
人々の間には「子供を産むこと」自体はそれほど努力しなくてもできる。しかし、コメや食料はかなりの手をかけないとできないと価値観が変わったのかも知れない。最もこの見立てはあくまでも仮説にしかすぎないが・・。
導入
前書き
目次
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漢字「加」の今
漢字「加」の解体新書
漢字「加」の楷書で、常用漢字です。 左側は「力」で語義は、鋤を表すということである | |
加・楷書 |
「加」の甲骨文字は、『女+耜(スキ)』である。それが金文になると。耜+口(但し字統によるとサイという祝禱を入れる入れ物)に変化し、小篆では文字化の過程で、より図式化した耜の形に変化した。甲骨文字から金文までの過程で文字の大変容をもたらすような大きな変化は何か。 | |||
加・甲骨文字 女+力 |
加・金文 甲骨文字から変遷し、鋤と「サイ」で鋤を清め生産の高めることを祈った |
加・小篆 金文を引き継ぎ、文字化のレベルが高まっている |
「加」の漢字データ
- 音読み 加
- 訓読み くわ(える)
- くわえる、くわわる 増す、多くなる」(例:増加)
- くわえて、その上に
- 足し算 例:加算
同じ部首を持つ漢字 伽、賀、迦、
漢字「加」を持つ熟語 加算、加害、加圧、加減、加持、加護
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漢字「加」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
漢字「加」の字統の解釈
会意文字:力と口に従う。「力」は鋤の象形。口は祝禱の器の形で「サイ」。
「加」はもと鋤を清めて生産力を高めるための儀礼をいう。鋤を祓い清める礼で農耕の始めに秋の虫害を避けるため、鋤に修祓を加えるのが例であった。
漢字「加」の漢字源の解釈
会意文字:手に口を添えて勢いを助ける意を表す漢字「加」の唐漢氏の解釈
加は会意文字である。甲骨文字の左辺は女の人の象形文字で、右辺は男の子を表している。金文の加の字は改めて新たな構造形となっており、下辺は女の子を表す。やはり会意方式で、もう少し意味があり、男の子を産み落としている。漢字「加」の変遷の史観
文字学上の解釈
漢字「加」の変遷を色々当たってみたが、左に「女」+右に「力(鍬の象形)」で構成される甲骨文字は「汉字密码」(P542、唐汉著,学林出版社)のみで見出され、それ以外の文献では、「加」の甲骨文字は見出されなかった。なぜ「加」の文字に「女」が入っているのか、唐漢氏の説明によれば、この耜は男の子を生んだことを表しているという。太古の昔、女が女を生むことは現象的にも普通のことであるが、男の子を産むことは、どうしても理解できなかったのではないだろうか、しかし現実には特別に良いことであると考えられていた。男の子が生まれたことを「加」と表現していたというのである。
しかしこの解釈には、あまりに飛躍があり承服しがたい部分はあるが、「加」の甲骨文字もないというのも、逆に不自然で、あってもいいのではという意味でここで取り上げることとした。
まとめ
甲骨文字の「加」は、「女+耜(スキ)」から成る。時代が下るにつれ劇的に変化する。その訳は、母系制社会から、生産力の高まりと主に父系制社会に変化したことである
「漢字考古学の道」のホームページに戻りる。
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