気ままな散歩

2023年6月30日金曜日

漢字「突」に込められた謎は? 穴から犬が出てきたことぐらいで漢字が生まれるだろうか?


漢字「突」は、「穴」と「犬」からなる。ここでいう穴は「竈」ではないか?

 漢字「突」は、「竈」と「犬」からなる。竈は神の宿る場所として神聖化されていた。

 しかし、その神聖な場所である竈から犬が飛び出したとすると、それは古代人にとっては想定外の「突然」のことではなかったろうか。かくして新しい漢字が生まれた。

導入

前書き

 「突」という字は、「穴」から犬が突然飛び出すことだというのが定説であった。

  しかし、犬が穴から飛び出したことぐらいのことで、なぜ新しい文字が誕生されなければならない出来事か? あまりに日常茶飯事のことではないだろうか。

  前々からこの定説?には違和感を持っていた。なぜ穴でなければならないのか、なぜ犬でなければならないのか。理解に苦しんでいた。この穴は普通の穴ではないのではないか、そして犬は穴の中には普通はいるはずのないものではないだろうか。

  そして甲骨文字を繙くうちに、この穴が実は竈ではないかという説に付きあたった。とすれば竈の中に犬は普通はいないものである。かまどは神が宿る神聖な場所として見なされていた。「穴」にはいるはずのない犬が飛び出すから突然なのだという説は、かなり俗っぽいもの。もちろん今の段階では、何が俗説かは分からないが、・・。

目次




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漢字「突」の今

漢字「突」の解体新書


 

漢字「突」の楷書で、常用漢字です。
突・楷書


突・甲骨
突・金文
突・小篆




 

「突」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   トツ
  • 訓読み   つく

意味
     
  • つく
  •  
  • にわかに、急に
  •  
  • つきだす。

同じ部首を持つ漢字     穴、窒、窃、空
漢字「突」を持つ熟語    突然、煙突、衝突、猪突


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漢字「突」の変遷はどこからもたらされたか:成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P35、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「突」は会意文字である。甲骨文字の上半分は穴という字で、下半分は一匹の犬が洞穴の中でにわかに突破して出る図である。

 図に示すごとく、この一幅の図は犬が穴の中から雑草または雑草のようなものを身につけながらまさに出ようとしているところから出来たものだ。
 形は巧妙に兼ね備わったということが出来る。突の上部の穴が略して受け加えられて以降、金文、小篆、楷書体の一連の変遷を経て、形体は一致して一脈の流れを受け継いでいる。

 突の本義は急速に外に出ること、突囲、突破、狼奔系突の言葉にある。


漢字「突」の字統(P663)の解釈

漢字「突」の字統(P663)の引用

 会意 旧字は突に作り、穴と犬とに従う。穴は 穴(かまど)、犬は犬牲。 犬の形はもと友の形に作り、竈穴を犠牲をもって祓うことをいう。〔説文〕 に「犬、穴中より暫(にわか)に出づるなり、 犬の穴中にあるに従ふ」とするが、穴は犬の居るべきところでなく、また犠牲とされる犬ならば、突出してくるはずはない。
〔左伝〕 荘六年正月「王人子宊、 衛を救ふ」とあり、このとつが突の初文である。

 竈は火を用いるところ、竈神を祀り、家の中でも極めて神聖とされたところである。ここに犬牲を供えて祀ることが、古くは行なわれていたのであろう。突は竈の煙抜きのあるところで、突出するところであるから、突起・突兀の意となり、突如突怒のように急突、また突進・突撃のように勢いのよい意となる。

 

 
ここで、白川氏が主張する、「穴」は実は竈のことをいうという説に立ち返ってみる。竈という字は 上部は「穴」です。ここでは動物の巣穴を意味します。下部は虫の形象。竈とは土で作った穴の中に何かの動物(おそらく神聖な得体のしれない生き物)が生きていると想像したのではないでしょうか。そして古代人は竈を神の住む神聖な場所と考えた。
 そこで、いくら生贄といえ竈の中に動物をささげるとは考え難い。 

 しかし現実の問題として、犬が火の落ちた温かみのある竈に潜り込むことは十分考えられる。つまり神に代わって、いないはずの犬がいたとなれば突然とは考えないだろうか。とすれば、突然という意味も生まれてくると思うのだが。

古代中国の生贄

 字統によると、古代中国においては、「犬の生贄」が、広く行われていたということであるが、ChatGPTによれば、犬はそれほど多く犠牲になていないようだ。それは人間と犬との関わりの問題で、犬はむしろ協業の一端を担っていたからではないだろうか。

 古代中国の一部の宗教的および文化的慣習では、動物に関連した犠牲や儀式がいくつかありました。ただし、古代中国の文化や宗教の概念は多様であり、地域や時代によって習慣も異なることに注意してください。古代中国に関連した動物の犠牲の例をいくつか挙げます。

  1. 牛のいけにえ: 牛は、古代中国のいくつかの宗教的儀式や農業儀式で一般的な犠牲動物でした。たとえば、天に犠牲を捧げる古代の儀式では、神への敬意を表すための犠牲として牛がよく使われました。
  2. 羊のいけにえ:羊は古代中国のいけにえによく使われる動物のひとつでもあります。一部の宗教的および伝統的な祭りの儀式では、人々は神や祖先を崇拝するための犠牲として羊を使用します。
  3. 鶏のいけにえ: 鶏は、一部の宗教や習慣において犠牲動物としても使用されます。たとえば、神を崇拝したり、祝福の儀式を行ったりするとき、人々は鶏を犠牲として使います。
  4. 魚のいけにえ: 中国南部の一部の地域では、魚も宗教儀式における重要な犠牲とみなされています。漢の伝統文化において、魚は縁起と富の象徴的な意味を持っています。
 時間の経過とともに、動物を犠牲にするこれらの古代の習慣は徐々に減少し、徐々に新しい価値観に置き換えられたことを指摘する必要があります。
 古代中国では、奴隷を生贄にささげることもあったようですが、奴隷も生産を担う重要な要素になってくるようになると、生贄にささげる風習は次第にすたれていったということです。

太古の中国の犬を生贄に使う習俗(ChatGPTより)

 中国の太古時代において、犬を生贄として使用する風習が存在したという記録はあります。しかし、具体的な時代や地域に関しては詳細な情報は限られており、断片的な記述や考古学的な証拠に基づいた推測が行われています。

  中国の古代の宗教や信仰体系では、生贄が行われることがありました。生贄は神々への奉納や儀式の一環として行われ、神聖視される存在として扱われました。犬はその中でも一部で使用された生贄の一つとされています。
 犬が生贄として用いられた背景には、犬の特別な性質や神聖視される要素が関与していた可能性があります。古代の中国では、犬は忠誠心や警戒心の象徴とされ、また神聖な存在とも考えられていました。そのため、犬を生贄として捧げることで神々により深い敬意を表すとされたのかもしれません。

 ただし、古代の風習や信仰は時代とともに変化し、断片的な記録や証拠に基づく情報の解釈には注意が必要です。また、現代の観点から見ると、犬を生贄とする行為は倫理的に問題があると考えられます。 以上の情報は、限られた記録や学術的な研究に基づいており、完全な詳細や背景については解明されていないことをご了承ください。 現代中国の宗教的および文化的実践では、動物への犠牲は比較的まれであり、より多くは象徴的な方法で行われます。同時に、現代社会は一般に、動物福祉と環境保護を保護するという価値観を提唱しています。

漢字「突」の漢字源(P1163)の解釈

 会意。「穴」+犬で、穴の中から犬が急に飛び出すさまを示す。


漢字「突」の変遷の史観

甲骨文研究ネット

 甲骨文字=(かやで覆った穴)+(犬)、言葉の意味:言葉の成立ち:犬が突然穴から出てきて、人々が予想しなかったため突然という意味が出てくる

まとめ

  字統における白川博士の注釈は、もっともらしい解説ではあるが、実際に竈で生贄を焼くという行為が行われていたかははなはだ疑問である。第一、生贄を焼くとなれば、反射炉でもない限り強烈な悪臭が発生し、以降竈の役割を果たさないと感じるのだが・・・。

     結論として、私は「突」という字は、「竈」は「蛇か何かの神聖視された動物」で構成される。結果として竈は白川博士の言う通り、神聖視され、神のいる場所とされた。その場所に、いるはずのない犬がいるとすれば太古の人々にとっては、突然という意味が生まれてくると考える。
  


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

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