気ままな散歩

2023年5月29日月曜日

漢字・弦の由来は、狩猟の弓の弦。今では弓道、音楽、月などに用いられます


漢字・弦 は、形声文字である。弓の後ろの両端の間に張られた糸のこと。


矢を放つために使用されます。これを会意文字とする説もある。「玄」の玄は象形文字で、糸束をねじた形を表しているので、会意文字としても考えられる。白川博士は、これを形声文字とする。



目次

  1. この漢字の由来の諸説
  2. 漢字「弦」のいろいろのジャンルでの使われ方
  3. 「弦」の漢字データ
  4. 漢字「弦」の解釈
      唐漢氏の解釈
     漢字「弦」の字統(P269)の解釈
  5. 「弦」に関する諺
  6. 弦楽器の弓の弦の素材についての豆知識
      弦楽器の弓の弦の素材についての豆知識
      武器の弓の弦の素材についての豆知識
  7. 月の満ち欠けの「弦」
  8. まとめ

この漢字の由来の諸説


 この漢字の由来については、諸説ありますが、一般的には、弦を作るために用いられる「糸(いと)」が絡み合って張り巡らされる様子を表したとされています。

 これ以外に、楽器の弦が原義という説もありますが、やはり生活上の必需品である、弓の弦に由来すると考える方が自然でしょう。

 また、別の説では、戦国時代に斉の将軍・孫臏(そんぴん)が考案したとされる「発石器」(はっせきき)という兵器の一種に由来するという説もあります。この発石器は、石弾を弦で飛ばすために用いられた兵器であり、この弦の部分を「弦」と呼んでいたとされています。ただし、この説は定かではありません。

 一般的には、弦を作るために用いられる「糸(いと)」が絡み合って張り巡らされる様子を表したとされています。弓を引くと、弦が振動し音が鳴ることから、音を表す「音(おと)」と合わせて「弦」という漢字が作られたとも言われています。


漢字「弦」のいろいろのジャンルでの使われ方


  1. 音楽:
    「弦」は、楽器の弦を意味します。特に、弦楽器(げんがっき)で使用される弦を指します。代表的な弦楽器には、ギター、バイオリン、チェロなどがあります

  2. 弓道:
    「弦」は、弓と矢を用いた日本の伝統的な武道である「弓道(きゅうどう)」にも関連しています。
    弓道では、弓の弦(つる)を引いて矢を放つことにより的を射る技術を養います。

  3. 文字の意味:
    「弦」は、漢字の中でも音を表す文字です。他の漢字と組み合わせて音を表す役割を果たします。例えば、「弦楽器」の「弦」や、「弦月」の「弦」などが該当します。

  4. 比喩的な意味:
    「弦」は、弓や弦楽器の弦のように伸びやかでしなやかなものを比喩的に表す場合にも使用されます。
    例えば、「心の弦に触れる」「情熱の弦を奏でる」といった表現があります。
漢字「弦」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「玄」で語義は、臍の緒を示しています。
弦・楷書


小篆は左が「弓」、右が「玄」の文字。 玄はへその緒に似ていて、絹の縄にも似ています。 へその緒はある程度の柔軟性を持った物理的な組織で、弓の弦は主に牛スジと絹の縄でできているため、「弦」という言葉は弓と臍の緒から成り立つもの、つまり弦を意味すると理解されます。 隷書への変更後、楷書では「弦」と表記される。 慣用句に慣用句に『箭在弦上,不得不发』という言葉があり、ここで「弦」とは弓の弦のことで、自分ではどうしようもない状況にあることを指します。
弦・小篆
弦・楷書
弓+玄
  


    


「弦」の漢字データ


漢字の読み
  • 音読み   ゲン
  • 訓読み   つる
 意味 
  • 弓の弦
  •  
  • 月の満ち欠けを表現する。・・上弦、下弦
  •  
  • 楽器に張る糸。(バイオリンやチェロ等の弓に張る糸のこと
     「弦」は「つる」と読みます。「つる」と読まれる理由は、古代日本で弓を作るために使われた植物の一つに「蔓科」の植物があり、その「つる」が弦を作るのに適していたことから、弦を表す漢字に「つる」の字が使われるようになったためと言われている。

同じ部首を持つ漢字     玄、玄人、率、眩、呟
漢字「弦」を持つ熟語    上弦、鳴弦、正弦、弦楽

漢字「弦」の解釈

引用:「汉字密码」(P570、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈


 「弦 Xian」は、会意文字である。弓の後ろの両端の間に張られたロープを指し、矢を放つために使用されます。 小篆は左が「弓」、右が「玄」の文字。 玄はへその緒に似ていて、絹の縄にも似ています。 へその緒はある程度の柔軟性を持った物理的な組織で、弓の弦は主に牛スジと絹の縄でできているため、「弦」という言葉は弓と臍の緒、つまり弦を意味することから理解されます。 隷書への変更後、楷書では「弦」と表記される。
 

漢字「弦」の字統(P269)の解釈

「弦」 形声文字。 声符は弦。 説文に「弓弦なり」とし、玄は発声(音)を表す記号と考えてよい。


「弦」に関する諺

 「弦」に関する諺としては、「弦を引けば音が出る」があります。これは、琴やギターなどの楽器に弦を張って弾くことで音が出るように、努力をすれば結果が出るという意味で使われます。 また、「弦が切れるほど引き締める」という表現もあり、物事に取り組む際には適度な緊張感を持つことが大切であるという意味が込められています。
最後に「弦」が取り入れられた諺を後学の為紹介しておきます。

  1. 弦外之音
    「弦外」は弦の外側を意味し、「之音」は音を指します。この成語は、本来の話題や本題から外れた意見や話をすることを指して使われます。つまり、本題から逸れた話や意見を述べることを批判的に表現する際に使われます。
     最近テレビやメディアで特に耳障りなのが、この音です。芸人上がりのコメンテーターがべらべらと愚にもつかないことをまことしやかにしゃべるのを見るのは反吐が出ますね。

  2. 弦を切る(つるをきる)
    この表現は、困難や苦境に直面して諦めることを指します。弦が切れて楽器が演奏できなくなるように、何かの原因で行動や努力が中断されることを意味します。

  3. 弦高を上げる(げんだかをあげる)

    「弦高」は楽器の弦の高さの調整を指し、この表現は困難な課題や問題に取り組む意欲や能力を高めることを指します。困難な状況に立ち向かい、自身の能力や努力をさらに高めて乗り越えることを表現しています。

  4.   
  5. 韋弦の佩(いげんのはい)
    自分の性格の悪い点を改めるために常に努力することのたとえ。
     「韋」はなめし皮。「弦」は弓のつる。「佩」は身につけるという意味。
     中国の春秋戦国時代の武将が、自らの性格を直すため、なめし皮や弓の弦を身につけ、いましめとした故事から出た言葉

これらの諺や成語は、「弦」の持つイメージや音楽的な意味合いを通じて、さまざまなメタファーを表現しています。


弦の素材についての豆知識


弦楽器の弓の弦の素材についての豆知識


     
  • 弦楽器の弓の毛は、馬のしっぽの毛が最も一般的です。馬の毛は、柔らかく、弾力性があり、摩擦力が高いため、弦楽器の音を出すのに最適な素材です。また、馬の毛は、比較的手に入りやすく、価格も安価なため、弦楽器の弓の毛としては最もポピュラーな素材です。

  •     
  • 他にも、ウシやシカなどの動物の毛、クジラのひげ、合成繊維などを弓の毛に使用することもできます。しかし、これらの素材は、馬の毛ほど音質や弾力性に優れていないため、一般的には使用されません。

  •  弦楽器の弦は、主にガット、ナイロン、鋼線、金属線などを使用しています。ガットは、牛や羊などの動物の腸から作られた素材で、柔らかく、温かみのある音色が特徴です。ナイロンは、化学繊維で、ガットよりも耐久性があり、メンテナンスが簡単です。鋼線は、金属で、ガットやナイロンよりも明るく、力強い音色が特徴です。金属線は、鋼線よりも高価ですが、最も明るく、力強い音色が特徴です。

武器の弓の弦の素材についての豆知識

中国の古代の弓の弦の素材についての豆知識
    古代中国の弓の弦の素材は、主に麻、絹、獣皮などでした。

  • 麻は、古代中国で最も一般的に使用された弓の弦の素材でした。麻は、強度と弾性に優れていました。また、麻は比較的安価で、入手しやすい素材でした。


  • 絹は、より高価な素材で、より滑らかで静かな音を奏でました。絹は、通常、戦場以外で使用される弓に使用されました。

  • 獣皮
     獣皮は、最も強度の高い素材で、特に戦場で使用されました。獣皮の弦は、通常、1本の獣皮を長方形に切り抜いて作られました。獣皮の弦は、非常に強力で、耐久性に優れていました。


  •  漆は、古代中国の弓の弦に使用された最も一般的な塗料でした。漆は、弦を保護し、腐食を防ぐのに役立ちました。また、漆は弦に滑らかで静かな音を与えました。

日本の古代の弓の弦の素材についての豆知識
    古代日本の弓の弦の素材は、主に麻や苧(からむし)が用いられていました。

  •      麻は丈夫でしなやかで優れた素材でした

  •    

  • 苧は強度と弾性に優れているため、弓の弦に適した素材です。

  •    
  • 牛や馬の腱
         また、古代日本では、弓の弦に牛や馬の腱を用いることもあったようです。

  •    
  • 現代
    現代では、弓の弦に化学繊維が用いられています。化学繊維は、麻や苧よりも丈夫で、伸びが少ないため、より精密な射撃が可能となります。
     弓の弦は、弓の性能を大きく左右する重要な要素です。古代日本では、弓の弦に様々な素材が用いられていましたが、現代では化学繊維が主流となっています。

月の満ち欠けの「弦」

    月の満ち欠けは、月が地球の周りを公転する際に太陽の光が反射して見える部分が変化する現象です。
     月は約29.5日かかって新月から新月までの周期を一巡します。

    月の満ち欠けは主に次のような4つの段階に分かれます。
  • 新月(しんげつ):太陽、地球、月の順に一直線に並んだ状態で、月の表面が太陽に直接照らされることがなく、見えなくなります。

  •      
  • 上弦の月(じょうげんのつき):太陽、地球、月の順に一直線になり、月の右半分が太陽の光で照らされ、左半分が暗くなります。右半分の月が「D」の字のように見えることから、「第一四半期」とも呼ばれます。

  •      
  • 満月(まんげつ):太陽、地球、月の順に一直線に並び、月の表面が太陽の光で完全に照らされます。この時、月の表面のほとんどが見えるため、満月と呼ばれます。

  •  
  • 下弦の月(かげんのつき):太陽、地球、月の順に一直線になり、月の左半分が太陽の光で照らされ、右半分が暗くなります。左半分の月が「C」の字のように見えることから、「第三四半期」とも呼ばれます。

  •  

     このサイクルは繰り返され、新月から次の新月までの期間を1ヶ月とします。ただし、地球の公転速度が一定ではないため、月の満ち欠けの周期は約29.5日となります。
      この月の満ち欠けに基づき作られた暦を陰暦と呼び、可視的で直感的なため、日本では江戸時代までは、この陰暦が長い間採用されていました。また、地球上の観測者の位置や時間帯によっても見え方が異なる場合があります。
    なお、月の満ち欠けは潮汐(ちょうせき)にも関連しており、満潮と干潮のタイミングに影響を与えます。

   


まとめ

弦(げん)は、漢字の1つで、音を出すための細いひもを表します。由来は、古代中国で弓矢に使われていた細いひもから来ています。弦は、楽器や弓矢、また物事をつなぐものなど、さまざまな場面で使われます。

 弦の使い方には、次のようなものがあります。
  1. 楽器の弦:弦楽器の音を出すための細いひも。
  2. 弓矢の弦:弓矢に張られた細いひも。
  3. 物事をつなぐもの:物事をつなぐための細いひも。
  4. 物事を支えるもの:物事を支えるための細いひも。
  5. 物事を切断するもの:物事を切断するための細いひも。
  6. 弦は、音を出すための細いひもを表す漢字です。

由来は、古代中国で弓矢に使われていた細いひもから来ています。弦は、楽器や弓矢、また物事をつなぐものなど、さまざまな場面で使われます。    


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2023年5月27日土曜日

漢字「棚」と「柵」は紛らわしい! 古代でも棚と柵は全く別物だった


紛らわしい漢字「棚」と「柵」は古代人にも紛らわしかったのか? 全く別物だった
目次

前書
 漢字には紛らわしいものも多く、「柵」と「棚」などその一例でしょう。この紛らわしさはいったいどこから来るのでしょうか。甲骨文字に戻ってその原因を探ってみましょう。   

「柵」という字の成立ち
漢字「柵」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「木」で、右側は「冊」で語義は、書き物を綴じて、纏めたものです
柵・楷書


  
柵・甲骨文字
柵・金文
まさに柵そのもの
柵・小篆
木偏をつけて「柵」だということを明示的に示している


    



「棚」という漢字の成立ち
AIの解答例
漢字「棚」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「木」で、右側は「朋」で語義は、簡単な建築物で、現在の棚とは少し概念が違っているようです。

 朋は意味は、同朋の朋と同じ意味で、連ねて併せること。 小屋、篆書=(木製の家)+(朋、併せてつながる)、言葉の意味は次のとおりです。基礎もなく、壁もなく、棟も梁もありません。木板(竹の板)を用いて、四方の壁と屋根をつけただけの簡単な建築物  

字統の解釈
[字形] 形声 声符は(朋)(ほう)。に相連するものの意がある。〔説文〕に「棧(さん)なり」とあり、また閣ともいう。〔倉頡〕に「樓閣なり」とあるのはいわゆる複道、屋根のある廊下のことである。
棚・金文棚・楷書






    





引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 柵は象形文字である。甲骨文字、金文字の柵の字は等しく柵の意味で、垣根のデッサン絵である。周時代は「柵」は木簡柵に借用された。

木や竹を用いて編んで垣根とする。古代では物を押しとどめるために多用された。
 商周の時代の青銅器多くの柵の図形がある絵が書かれていた。
 図の如く豚を飼う為で、二つの目が看守の人がいることを示している。二つ目は柵の中には牛と樹木がある。3つ目は柵の下に4把の木鋤があり、柵で囲んだ土地の上の工作物を表している。 
 




まとめ
 柵は文にも書いたように、基本的に動物を囲い込んで養育するためのものであり基本的に屋外に作られ、家の構造物とはみなされていなかったようである。
 文字の作りも、木や竹を並べ、綱や縄であんだり、戸を付けたりしている様子が反映されている。

 ところがタナはあくまでも屋内の構造物であり、廊下であったり、で物を整理するための棚と考えられていたようである。したがって文字の作りもさくとは大きく異なっている。
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2023年5月13日土曜日

漢字 「戦」の由来と成立ちは?;「戦」という漢字は攻と防の二つの漢字から構成されていた


漢字 「戦」の意味するもの;「攻と防」の二つの漢字から構成される「戦」そのものだった


2022年の漢字は「戦」であった。それは今も続く。ロシアの言い訳は欺瞞と矛盾に満ちたもの。そしてその漢字「戦」そのものもまた矛盾に満ちたものだった
 ここでは、「戦」という字が盾を表す「単」と「戈」(ほこ)の2つの字素から構成されており、後の時代になって戈は矛に発展する。両者とも高度化するようになるが、その背景には戦闘がより組織化された集団同士の戦いに変化したことがあげられる。

前書き
2022年の漢字は「戦」清水寺の管長の揮毫が、かくも力強く、かくも悲しい
 2023年も年の初めからロシアのウクライナ攻撃で明け、終わりの見えぬまま悪戯に時は過ぎゆく。
 この問題は以前にも取り上げた。しかし終わりの見えない現実。再度取り上げる。

 異常気象が叫ばれ、地球温暖化が危惧され、地球の滅亡も云々されているこの時に至っても、他の民族や国の人々の土地を奪おうとする執念は人間の業なのだろうか。食べることができなくなるかもしれない恐れからくるのだろうか。
 未来を予見することができるという人間の傲慢からくるのだろうか。人間なんというものは宇宙から見ればゴミにも足らない存在にも拘らず、自分たちが世界を支配できると考えるのだろうか。人類は少しは進歩しているのだろうか?


戦という字の成立ち
フォーク型武器(つまり干・一種のサスマタのようなもの)に盾を付けると「単」という字になる。 古代、先祖が狩りする時、「干」は一種の便利で実用的な狩猟道具だった。 戦争で使用する場合は、木の棒の下にツタなどを織り込み、オリジナルの盾となる。 動物の皮で覆い、模様を描くと、立派な「盾」となる。
甲骨文字「戦」の成立ち
盾・甲骨文字
戈・甲骨文字
 左側の文字は飾りのついた「盾」の甲骨文字で、現在は「盾」という漢字になっている。
 右側は飾りのついた「戈」(ほこ)で、刃が骨や石であった時代はこの文字が使われていたが、青銅が使われるようになると「矛」に置き換わる。
 つまり、「戦」という文字は、最初から「盾」と「矛」という文字から構成されていた。しかも両者とも飾りのついた武器であったということは、戦という字は個人の戦いを表現しているのではなく、何が知ら儀礼の入った集団の戦いを意味していたのではないだろうか。即ち、「戦」ということは、単に戈と盾を使うだけではなく、攻撃、防御という抽象的概念を表していたということではないだろうか。これが後世になってから、戈から攻撃、盾から防御という相反する概念が生まれ、さらに「矛盾」という概念は、ずーと後世になってから生まれたのだろう。

戈という文字の変遷
 戈は、敵を打ち据える動作によって殺傷するのに適した穂先を持つ、古代東アジアのピッケル状の長柄武器である。 (ヴィキペディアによる)
戈・金文 戈・小篆 戈・楷書


矛という字の変遷
 矛、鉾(ほこ)は、槍や薙刀の前身となった長柄武器で、やや幅広で両刃の剣状の穂先をもつ。 日本と中国において矛と槍の区別が見られ、他の地域では槍の一形態として扱われる。
矛・金文
矛・小篆
矛・楷書


    


「戦」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   セン
  • 訓読み   たたかう、いくさ

意味
     
  • たたかう。たたかい
  •  
  • おののく
  •  
  • おそれる 

同じ部首を持つ漢字     単、戦、弾、禅、憚
漢字「戦」を持つ熟語    戦争、戦慄、戦役、戦禍、


兵器の変遷 「戈」から「矛」に移るとき
「戈」これは鉤で啄ばむ方式の殺人兵器で、また中国固有の民族的特徴を捉えた戦争兵器である。
 新石器時代の晩期の遺跡中考古学者はかつて石戈が出土したときその形から分析し、これらは有史以前の時期の「斧」であるかもしれないと考えた。斧は古代社会にあって、一種の樹木の切削道具として用いられた。必要あらば、敵をつつき殺すのにも用いられた。
 しかし、絶え間ない殺伐の啓示から、われわれの祖先は「戈」という一種独特の兵器を作り出した。

 商周の全時代を通じて、「戈」は最も重要な格闘兵器となり、多くは青銅が浅く鋳造されたのち再び磨かれ打ち直されたものだろう。戈は長ものと短柲の2種類があり、短秘の戈長さは約1メートルあり、歩兵の格闘に適し、長柲(木変に必)は長さは2-3メートルあり戦車の攻撃に適す。「戈」は商周の時代を経て一直線に戦争の実践主要兵器となった。

 紀元前3世紀に至ると「矛」の鋼鉄製の兵器の出現によりついに矛は戦争の舞台から退出した。


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 柄の長い武器「矛」は、白兵戦で突き刺しや突き刺しに使用された。 殷の初期には石や骨が主に使用されていたが、製錬された青銅の硬度が向上したため、殷の後期には銅の矛が普及した。

 秦と漢の時代以降、鉄が広く使われるようになると、「矛」は徐々に「戈」に取って代わり、古代の戦争で最も長く使用された兵器の1つになった。
 銅碑の「矛」は「矛」の象形文字です。矛の頭は柳の木の葉の形状を成している。 胴体の部分には縄を結わえる半円の固定部が備わっている。小篆の「矛」の文字は青銅の碑文を継承しているが、象形文字の魅力を失い、楷書の文字の形は小篆の形体を整えたものとなっている。  「矛」は先が鋭く、刃が2枚あり、柄の部分は竹を集めたもので、つまり芯は直木で、外は竹の糸縄で縛り、漆できつく固めたもので、長さは主に 3.2 メートルから 3.8 メートルの間で、最長のものは 4 メートル以上あり、戦車で使えるように対応させている。「詩・秦風・無衣」:「王瑜興師、戈矛を我に修む」 戦国時代の戦争や征伐では、戈矛が併用されていたことが分かっている。

 


漢字「矛」の字統の解釈
 象形文字 説文「長い柄を持つほこの形。酋矛なり。兵庫に建つ長さ2丈。象形」という。
 長さ2丈4尺のものは夷矛、枝刃のあるものは戟、この矛を台座につけて兵庫の上に建て淳巡を行うことを遹正という。矛盾は特殊な読み方。


まとめ
 、「戦」という文字は、最初から「盾」と「矛」という文字から構成されていたのです。即ち、「戦」ということは、戈と盾を使うものだということだったということだ。これが後世になってから、戈から攻撃、盾から防御という相反する概念が生まれたにせよ、「戦」という漢字にはそれが生まれたときから、「盾」と「矛」という相反する概念が含まれていたことに間違いはないだろう。



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2023年5月10日水曜日

漢字・化には古代人のどんな想いが込められているのか。底流には驚くべき東洋的思想が流れていた


「化」は、どこから来たのか、人の最も大きな変化は死です。
 太古の人々は旁に人偏を逆転させ、併せて一字でその変化を表現しました。


甲骨文字・化の発生過程
 甲骨文字(こうこつもじ)は、中国の殷(いん)・周(しゅう)時代(紀元前14世紀~前3世紀)に使用された文字の一種で、主に龜甲(きっこう)や獣骨(じゅうこつ)に刻まれた文字です。

 「化」(か)という漢字は、甲骨文字の中でも非常に古い時代から存在していた文字で、古代人のどんな想いが込められているのか。
 底流には驚くべき東洋的思想が流れていた。
 「化」は、もともと「変わる」という意味を持ち、物事が姿や性質を変えることを意味している。甲骨文字の左側は人偏で人を表し、右側は「の字形は「人」を逆転させた形で、「死」を表している。
 即ちこれらの会意で「化」をいう変化を意味している。それも人間の究極の変化である「生」から「死」を!

ここには東洋人の死生観が現れているような気がします。


漢字「化」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「匕」で字形は「人」を逆転させた形で、その意味は「死」です。

 即ち古代人は人の最も大きな変化である生死を一字で「変化」を表現しました。
化・楷書


  
化・甲骨文字
左の人偏が逆転し、右の旁になっている
化・金文
跪いた状態を表している漢字
化・小篆
人偏と旁の会意で、化という字ができた


    


「化」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   カ、ケ
  • 訓読み   ばけ

意味
     
  • 変化する。 
  •  
  • 化ける
  •  
  • つなぐ。ウシをつなぐ。つながれる。 

同じ部首を持つ漢字     貨、訛、花、囮、靴
漢字「化」を持つ熟語    変化、化粧、化ける、化身


引用:「汉字密码」(P852、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「化」は会意文字である。甲骨文の「化」は正立と倒立した二人の人間の像である。
 この正立と倒立の人は変化を表示されるようになった。実際上は、上古先民の概念中、この正立、倒立した人の形はまさに生き死にの二つの状態である。生は正立し、死は倒立である。


 


漢字「化」の字統P70 の解釈
人と匕に従い、死人の倒錯している形。
説文に「教え行わるるなり」とし、「匕に従い、人に従う。匕は亦聲なり」とし、人を教えて化する意とするが死去の意。匕がその初文。化けは複数形にすぎない。
(周礼、大祝)に「化祝」があり、兵災に対する祈りを言う。化去の義よりして変化・化育などの義が生まれる。


まとめ
 会意文字であるようだが、一文字で、ある状態から別の状態への変化を表すという発想はなかなか出て来ない。
 また、化の「匕」を匕首と主張する論者もあるようだが、甲骨文字から予断なく判断すると、人が逆転した形と考えるのが、最も素直な見方であるような気がする。

 この文字は冒頭にも書いたように、東洋人の死生観を表現したものとすれば、かなり深い哲学的なものを持っていることになる。遥か3500年前の人々が果たしてそのようなことを考えるだろうか。筆者の単なる思い付きかも知れないが、何か世紀の発見をしたようで嬉しくなっている。

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