書とは何かの問いに「書とは文字による記録である」というのが、もっとも原則的な回答ではないだろうか。 しかし、近年文字だけではなく、絵画、漫画等による記録も出現し新しいジャンルとして認知されるようになってはいる。またかなり古くから、「書」を記録として重視するよりも、表現媒体として、記録は結果としてだけ捉える考え方もあり、いわゆる『書』として、独特のジャンルが確立されている。
因みに日本大百科全書(ニッポニカ)による「書」(ショ)の解説は以下の通りここではあくまでも、文字の記録を主たる目的とする「書」に焦点を当てて考えることとする。
筆・墨などを用い、漢字・仮名の文字を書くことによって表現される造形芸術。書は中国と日本で発達した独特の芸術で、漢字のもつ造形的な要素と密接な関係がある。
中国では古くから六芸(りくげい)(礼・楽・射・御・書・数)の一つに数えられ、官吏や知識人の必須の教養科目であった。運筆、構成、墨色、配置などの美や、作品に現れた筆者の風格が尊ばれ、筆道ともいった。
書は文字を表記の手段としてだけでなく、筆者の芸術的創作として鑑賞の対象とする。
漢字「書」の楷書で、常用漢字です。 聿(いつ)と者に従う | |
書・楷書 |
書・甲骨文字 手で筆を持つ象形と記録を入れる器(曰:えつ)で構成される |
書・金文 甲骨文を踏襲するが、なぜかくも複雑になったのか 甲骨から金文になる間、何か大きな変化があったのかも知れない |
書・小篆 金文を基本的に承継する |
「書」の漢字データ
- 音読み ショ
- 訓読み か(く)く
- 文字や符号を筆やペン等で記す・目に見える形で記録する (例:名前を書く)
文章を作る 例:作文を書く - 印刷された 本 例:書物、書籍、
記された文字(筆跡) 例:王羲之の書、書跡、手紙
墨、筆などで書かれた特別な様式で書かれた文字
「文字」 例:楷書、草書、隷書 - 文書、記録、、帳簿(金銭・物品の出し入れ等、事務上の必要事項を記入する為のノート)
漢字「書」を持つ熟語 書類、文書、書籍、内申書、書記、秘書
引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
会意:正字は聿(いつ)と者とに従う。
者は祝禱の器である曰(えつ)を土中に埋め、その上を小枝や土で覆う形で、古くは集落の周囲の土垣の中にこれを封じた。その垣を堵というという。この呪能によって外部からの邪悪なものを杜絶しうるとしたのである。
その祝禱の器の中に置かれた呪符の文を書という。即ち者は書の初文。後に者が多義化するに及んで上に聿(筆)を加えて器の中の書を示す字とした。書とは呪禁として用いる文字、祝詞をいう。文字には呪能があり、祝詞の持つ言霊的なちからはここに安定的に宿るものとされた。
形声:「聿+音符者」で、ひとところに定着させる意を含む。筆で字を書きつけて紙や書簡に定着させること
甲骨文字の「書」は会意文字である。上部は人の手が筆を持つ形をしている。下部は、筆で言葉を記録している様を表示している。
伝説では上古時代の先民はかつて竹で漆の点を打って書としていたという。この種の状況は大概卜官が王の占辞を記録していたことから来るだろう。
甲骨文字の書の字はこのような生活の現実から来ている。金文の書の字は、筆を持つ手と口の間にいくつかの点が加えられ、変化している。者の本義は漆で器皿に塗ることであり、この事からそれを用いて塗るの意味が出て来て、筆と墨で言葉を記録することを表示した。小篆の書の字は金文と構造的には同じで、形は均整がとれている。楷書は書と書いて、現在では簡体字になっている。
会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。
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