気ままな散歩

2021年12月28日火曜日

漢字「夫」の成立ち:「大」の上に「━」は何を意味する?成人した男性盛装した姿を示す


漢字「夫」の由来:字の構成の上から言っても「妻」と対比をなす
 「大」の上に「━」は何を意味する? 「大」は人の正面形、その頭に横線「一」を付けた形。この横線「一」こそ盛装のシンボルである髪飾りである。
 成人男性の頭の上に髪飾りを付けた形。そしてこの構造は妻にもいえる
 もともと成人した立派な男性を示す漢字であった。これに対し「妻」は頭上に三本の簪を加え、これを手で挿している女の姿をいう。夫妻という字は婚儀に際し夫妻の盛装した姿をいう。
 しかし「夫」に「人」が付けばキュリー夫人のように専ら女性を示す。これも最近のジェンダーの議論でいえばNGなのでは。(男についた人という意味で、従属的な漢字ということにならないのか?
 もっともこんなことをいい始めたら埒が明かないかもしれない


漢字「夫」の楷書で、常用漢字です。
 古代は盛装し、髪に髪飾りを付けた成人男子を表していたが、時代が下るにつれ高官や貴人の妻を指すようになり、現代では社会的評価のある結婚した女性を示すようになった。
 しかしそれでも、丈夫のように男性の名残りはまだ受け継がれている。
夫・楷書


  
夫・甲骨文字
夫の字は一と大から成る。大は成年男子を表し、一は髪を束ねるために用いられる簪を表している。
夫・金文
甲骨文字を継承している
夫・小篆
周代には諸侯の正妻
漢代には列候の妻に贈る封号
唐代以降高官や貴人の妻を指すようになった


「夫」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   フ
  • 訓読み   それ、これ、か、おっと

意味
     
  • 「おっと(結婚して妻のいる男)」(例:夫妻)
  •  
  • 丈夫 1人前の男(親からの助けを受けず生活を送れる男)
    最近では親からの支援を人前で堂々と披ける人間がいるが、あれは一人前でない
  •  
  • 夫役 ・・・公共(国)の仕事を割り当てられた男または公共(国)の仕事の割り当て 

同じ部首を持つ漢字     大、天
漢字「夫」を持つ熟語    夫人、農夫、人夫




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  夫の字は一と大から成る。大は成年男子を表し、一は髪を束ねるために用いられる簪を表している。古代の礼俗によると男子は20歳になると髪に笄を加えるようになり、成年男子であることを示す(女性は15歳で成人とみなされた)

甲骨文字と金文では「夫」の字は髪を束ね、笄を挿した人の形である。このため「夫」の本義は成年男子のことである。男子の成年は結婚もでき、妻も娶ることができる。だから夫は拡張されて丈夫を指す。即ち女子の配偶の妻に相対し、「丈夫、夫君」など

 


漢字「夫」の字統の解釈
  大は人の正面形で、その頭に加えている一は簪飾り、男子の正装の姿である。妻も髪飾りを付けた形。夫妻とは婚礼の時の晴れ姿を写した字である。
 列国期には、「太夫」の称号が用いられ、社会的に重要なものとされている。おそらく荘園的な経営地の管理者の地位にあったものであろう。
 夫人・夫子という語は「夫(かの人)」という婉曲的な呼称。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年12月23日木曜日

漢字・絶の由来と起源は:糸と色から成る。この糸は何を示し、この色は何を示すか 今驚くべき人間の業欲が明らかになる


漢字・絶の由来と起源は:構成要素の一つ「色」が色気の「色」であることに驚いた。人間から色を取り除くことはできないのだと強く感じた
 漢字の世界でも、容色の「色」が色気という意味でつかわれるのは時代が下ってからのことと思っていた、ところが、漢代ではすでに用いられている。恐るべし「人間の業」

漢字「絶」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「糸」で、右側は「色」で、語義は、元々人と節に従う意味であった。人の後ろにまた人がおり、抱く形で相交わることを示す。色は容色を表すの意味で、今使われる彩色のことは、古くは采といった。糸と色の会意で、色を絶つと解釈してもあながち間違ってはいないように思うが。
 
 ここで、断ち切る対象は、臍の緒というごく身近なものから、糸や、物事の連関というように一般的なもの、抽象的なものに変化している。この過程は社会発展の歴史であるといえないだろうか
絶・楷書


  
絶・甲骨文字
二つの連なった糸を途中刀で断ち切る様子を表す
絶・金文
一つの刀で二つの臍の緒の中間を切断した様子である。臍の緒の形はさらに図象化している。
絶・小篆
左半分は「糸」の字で右半分の上部は刀である。糸、刀で形符に用いられている。下部は「卩」


    


「絶」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ゼツ
  • 訓読み   たえる

意味 
  • 「たつ」 ・・ 「断ち切る」、「中断する」(例:中絶)、「殺す」
  •  
  • 「かけ離れる」  ・・「かけ離れている」(例:絶倫)  「優れている」、 「勝る」(例:卓絶)
  •  
  • 「険しい」・・「切り立っている」(例:絶壁) 

同じ部首を持つ漢字     「絶」は脆・最などは同系という
漢字「絶」を持つ熟語    絶交、絶対、絶倫、絶食




引用:「汉字密码」(P544、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 甲骨文の絶の字は、二つの連結したものが臍の緒で結ばれていることを示している。二つの臍の緒で結ばれたものの中間は横線が引かれている。これは臍の緒の両端を切断したことを示している。血縁が続けることを中止したことを示している。

 「絶」の本義は、子孫を絶つことである。血縁の縁族を中断することを示している。拡張して、一般の意味の「断絶、隔絶、終止」などの意味である。外交関係を断絶し、いわば断交であり、図書を以後出版しないことを絶版という。子孫を断ち切ることを殺絶という。すべて断絶と終わりをいう。

 



漢字「引」の漢字源の解釈
 会意文字:「糸+刀+卩」で刀で糸や人を短い節に切ることを示す。ふっつりと横に切ること。右側に部分はもと色ではなく刀印を含む。また卩は人の姿と解してもいい。

 字統の解釈とは異なる


漢字「絶」の字統の解釈
 形声、 声符は色、「色」にゼイの声がある。説文に「断糸なり。糸に従い、刀に従い、卩に従う」とあり、、会意とするが、色声とみてもよい。初文は糸を断卩した形である。


まとめ
 漢字「絶」の構成要素である「色」の解釈で、全体の意味の解釈が大きく異なる。「色」が容色という意味を表すことが、このように昔からあったとは驚きだ。人間の業である、容色の色を太古の人々も感じていたとは・・。



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2021年12月22日水曜日

漢字「寅」の成り立ちと由来は如何に:そして来年は最強の金運「五黄の寅」に当たる


漢字「寅」は、現代では十二支や名前しか使われない。干支は干支でも最強の運勢「五黄の寅」を自分のものにせよ!!という説あり
「寅」という漢字は。現代では専ら十二支と名前にのみつかわれている。

 日本人に最もなじみが深いのは、言わずと知れた、`フウテンの寅さん」こと寅次郎である。この響きは、平成になった今も「昭和のノスタルジック」な郷愁をもって私らたちの頭の中に生きている。

 甲骨文字から見る原字からは、矢をまっすぐに伸ばす(直す)という意味が見て取れる。しかし、今やそのような原義は失われて、名前と十二支だけに用いられているのはなぜだろう。
 英語で、寅のことをTigerというが、その語源は、ペルシア語のthigra、ギリシア語でtigrisから英語・ドイツ語のtigerへと変化したとのこと。

   来年、令和四年は九星気学において、最強の運勢とされる五黄土星と十二支の中で最も金運が強いとされる「寅年」が重なる36年に一度の貴重な年だそうです。『五黄の寅』と呼ばれ、とりわけ強い運気を持つとされる年だそうですです。
 さらに干支では壬寅と表記し、壬(みずのえ)は五行説で水の流れるが如く金回りがよくなる年とされています。
 しかも、今年の漢字は『金』でした。これぞ最強の舞台設定です

 当たらぬの八卦、当たるも八卦、信じるか信じないかはあなた次第。しかし、信じて待つのではなく、【自分も豊かになるのだ】という前向きの気持ちで事に当たれば、道は開ける。これが運勢学で最も肝要なこと。
漢字「寅」の楷書で、常用漢字です。
 矢と両手に従う。 両手を持って 矢柄を治す形である。
 矢が曲がりなくまっすぐになるということから、物事が滞りなく進むという意味に拡張され、「演」という漢字ができたと伝えられる。
寅・楷書


  
寅・甲骨文字
別の一款からは、もう少し矢の曲直を治すことが明示されたように見えるものもある
寅・金文
甲骨文を基本的に引き継いでいる
寅・小篆
唐漢氏は寅の本義は、胎盤が引き落とす導引を示すとするが、どこからそのような解釈が生まれるのかよく分からない


    


「寅」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   イン
  • 訓読み   とら

意味
  • 十二支の第3番目の年
  •  
  • 名前・・・寅吉、寅雄、寅次
  •  

漢字「寅」を構成要素に持つ漢字    演、
漢字「寅」を持つ熟語    寅歳


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 寅が十二支に占める位置は第3位である。これも会意文字である。
 甲骨文字の寅の字は繁簡両方の型式を持っている。その一は上部の矢の形に同じ符号である。これは臍の緒が繋がっている方向を示している。下部の符号「文(父)」は即ち母親の産門を示したものだ。そして中間の口は産門の内外を示したものである。三つの形の会意で、胎児が出産後、胎盤からまだ出ずに,臍帯がつながった状態を示している。

 その二は上部の三角は胎盤で、中間の左右両辺に手があり、そろそろと注意深く胎盤から引き下ろしている様を示している。したがって、寅の本義は、胎盤が引き落とす導引を示す。

 唐漢氏はこのように「寅」の字を十二支に由来するとして、一貫して縷々説明をするが、字形とその説明はどうも結びつかない。




漢字「寅」の漢字源の解釈
 原字は 矢+両手で矢をまっすぐ伸ばすを示す。寅はそれに宀を添えたもので家の中で体を伸ばし 居住まいを正すこと。

漢字「寅」の字統の解釈
 矢と両手に従う。 両手を持って 曲直を治す形である 篆書の字形は、その初形を失っており、説文、古文の字形も甚だしく形が変形しているが、卜文の字型にはその初意がなお 残されている。
 字統によると、十二支にこの字が用いられているのは仮借であるという。(発声が似ているため、別の漢字から持ってきて、青の漢字に当てた)


まとめ
 「寅」は今では人々の名前と十二支にしか使われない。使われなくなった理由は、使われる場面がなくなったということだろう。多くの字にも栄枯盛衰があるだろう。このブログはその人間の生活史を跡付けることも指名があると考えるので、追々考えていくことにしよう。

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2021年12月17日金曜日

漢字 金:昔から人々をとらえて離せないもの「金」それは羨望の果てに欲望がある


漢字「金」:今年の漢字に選ばれたには理由がある
 今年の漢字は「金」に決まった。 2000年、12年、16年に続き4回目。
 日本漢字能力検定協会は、応募者が「金」を選んだ理由の概要として、東京五輪で日本人選手が多数の「金」メダルを取ったことや、大谷翔平選手が大リーグでMVPを獲得、藤井聡太さんの最年少四冠達成など各界で「金」字塔を打ち立てたことなどを列挙。さらに給付「金」や新紙幣、新硬貨などお「金」にまつわる話も話題に上ったことを挙げている。
過去3回の「金」が選ばれた理由は、以下の通り

  1. 2000年・・・理解できない公的資金の使途、相次ぐ金融機関の破綻や再編成、品質管理を怠りその事実を隠してまで販売(金優先)を続けた大企業に憂いを感じたことなどから、“金に明け、金に暮れた年”“悲喜こもごもの一年”“嬉しい金と悲しい金”などという表現が多く見受けられました。

  2. 2012年・・・ 金環日食などの天体ショーが見られた、数々の金字塔が打ち立てられた。(東京スカイツリー、ロンドンオリンピックで史上最多のメダルなど等、政治で金の問題が表面化

  3. 2016年・・・リオオリンピックでの金メダルラッシュ、東京都知事選挙での選挙資金問題、イチロー選手の金字塔、スポーツ界に新たな金字塔、マイナス金利初導入、シンガーソングライターの金色衣装などにも注目が集まった。

  4.  こうしてみると世間の関心事は、実際の金そのものではなく、オリンピックでアスリートたちが勝ち取った栄冠の結果としての金メダルに集まり、片や自分たちの生活とはかけ離れた世界の金の流れに関心が集まるようである。
     漢字「金」とは、それを「キン」と呼ぼうが、「カネ」と呼ぼうが、そここから頭に浮かぶことは、自分の生活に関係のない物事を目に浮かべ、あこがれと蔑視を同時に感じるようである。

 


この記事は以前にアップしたものをリバイスしたものです。

漢字「金」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「今」で、語義は、貴金属の金、貨幣の「かね」を表します。

 「金」という文字はやはり不思議な力を持つようで、片や多くの人々のあこがれであるし、方は底知れぬ力で、人々を支配するものです。

 しかしそういった力は「金」に最初からあったわけではなく、資本主義の世の中で、金本位体制が長く続き、金が資本として、世界を君臨してきたからでしょう。

 そして漸く資本主義の終焉が叫ばれてきてはいますが、さて「新しい資本主義」が岸田内閣のいうようにやすやす実現できる代物ではないことは、岸田首相やその他世の中のほとんどの人にはわかっている話ではないでしょうか。
金・楷書






  
金・甲骨文字
上部は銅液の流出を表し、下部は「火」を表し、全体として溶錬を示す
金・金文
下部は一つの書き方では土から出来ている。即ち土(鉱石のことを示しているが)の中から冶煉で出来たことを示している。
金・小篆
金文を受け継ぎ、「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字


    
    


「金」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   キン・コン
  • 訓読み   かね・こがね

意味
     
  • 材質
  •  
  • 貨幣を表す
  •  
  • 反射光を持つ黄色 

同じ部首を持つ漢字     銅、鉄、
漢字「金」を持つ熟語    金色、金環、金字




引用:「汉字密码」(P774、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 金は古代にあっては銅のことを称していた。その後金属類の総称となり、最後にはやっと専ら黄金の名前となった。

 甲骨文字の「金」の字は上下部の繋がった構造となっている。下辺は「火」であり、火で熔煉を表した。「金」の字の本義は銅であり、青銅の銘文の中で「吉金、赤金、美金」などから分かる。この中の「金」は全て銅を指している。

 






漢字「金」の漢字源の解釈
 会意兼形声。今は「抑えた蓋+一」から成る会意文字で、何かを含んで抑えた形を表す。「金」は「点々のしるし+土+音符今」で土の中に点々と閉じこもって含まれた砂金を表す。


漢字「金」の字統の解釈
 象形文字:銅塊等鋳込んだ形。説文に「五色の金なり」とし、金の土中にある形に今声を加えた形とするが、字は今声に従うものではない。金文の字形は全形の左右に楕円形の小塊二を添えている。


まとめ
 近頃の金の高騰を受け、メルカリには金塊が多く出品されているそうだが。その殆どのものは「銅」の合金である「黄銅」だそうで、悪徳業者が世にはびこる世の中だ。十分注意あれ。



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