気ままな散歩

2019年8月29日木曜日

漢字「旅」は道連れ:まさに「旅」の字そのものが大勢の人間が出行することを表していた。


漢字「旅」の起源と由来
旅という言葉
 昔から、「旅」という言葉には、日本に留まらず世界でも、日常から切り離されたものとして、特別の響きが醸し出されているように感じます。

 紀行文で有名なのは、マルコポーロの「東方見聞録」でしょう。この紀行文に触発され、ヨーロッパの人々に具体的な姿として、目に映るようになったことは確かでしょう。日本でも有名な紀行文は、紀貫之の「土佐日記」、松尾芭蕉の「奥の細道」などがすぐにでも頭に浮かびます。
 
 太古の昔の人々にとっても旅は特別なものだったようです。「旅」と言う漢字がどのように生まれ、発展してきたかを跡付けて見ましょう。
 「旅」という字は、会意文字ですが、旅がいかなるものであったか、甲骨文字や、金文では実に良く表されています。それは大きな旗の下に行進する兵士を良く現しています。金文になると、それに戦車が加わり、いっそう組織的になった模様がよく表現されています。


引用:「汉字密码」(P610、唐汉著,学林出版社)
形象や概念を表す古代の民が実に生き生きと活写しているのには驚かされます
「旅」、これは会意文字です。甲骨文字の「旅」の上部は古代の旗の象形記号です。 右下には2人がいて、兵士たちが軍旗に従って行進していることを示しています。金文は戦車に大きな旗を掲げており、兵士たちは大きな旗の周りに集まっています。 小篆は甲骨文字に似ており、大旗の下に2人の人(兵士)がいます。楷書の「旅」が改変され、下部の2人が上下をつなぐ民の字に変化しています。



「旅」の本義は、軍隊の出征
 「旅」の本来の意味は、一定数の兵士の武装した兵士の旅であり、軍隊の開始、つまり軍隊の旅行、軍隊の意味とみなすこともできます。軍隊出征から拡張され、古代軍隊の編成、つまり、軍事部隊旅団の「旅」を表している。「説文」曰く、「旅」は、軍500(人?)の遠征。『左传•哀公元年』にあるように、軍隊の一団は軍隊の一旅団をあらわしています。また軍隊の旅行は、
海外旅行にまで拡張されましたが、「旅」は通常多くの人がかたまっていくことを表しています。



字統
 旗を掲げて、多くの人が他に出行する意味。それで軍行の集団の意となり、旅行の意となる。
 旅は多数の人が従う意味であるが、必ずしも軍旅のことに限らず、外祭のために旅することも「旅」という字で表した。


漢字源
 人々が旗の下に隊列を組むことを示す。いくつも並んで連なる意味も含む。軍旅の旅がその原義に近い。


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象は古代には、中国の北方を闊歩していた


「象」は、漢字に登場するほど中国を闊歩していた
 "象"は熱帯と亜熱帯のジャングルに生息する哺乳動物です。それは強いですが、その穏やかな気質の動物は、先史の始めのころは黄河のほとりを闊歩していたようです。殷商の先民はまだこの巨大動物を身近に見ることが出来たようです。しかしその穏やかな気質が災いして、人類による獲得と環境の破壊のため、漢王朝の時までには、象の集団は既に何千里も南に移動し、雲南省の辺境に後退してしまいました。

ここにおもしろい逸話があります。曹操の息子に曹沖という人がいたが、彼はたいそう聡明であった。
 孫権が巨大な象を送り届けて来たことがあった。曹操はその重さを知る方法を臣下たちに訊ねたが、誰もまともに答えることが出来なかった。
 曹沖は、「象を大きな船の上に積んで、その吃水にしるしをつけ、象の代わりに石をその吃水のところまで積み込んで、石の重さを計算すると象の重さがわかります」
曹操はたいそう喜んだ。
ここで言いたかったのは、当時中国では象は普通に見ることが出来たということです。

また、甲骨文字にはまさしく「象」の形象を示した文字が残っていますし、「説文」はまさに象を解釈して「象は南越の大きな獣で、長い鼻と牙を持つ」という記述になってしまっています。これが、「象」が文字や文献に残した歴史的足跡ということが出来るでしょう。


引用:「汉字密码」(P78、唐汉著,学林出版社)
長い鼻、ずんぐりした体など象の特徴を良く捉えている
 甲骨文字の「象」の字は、象の側面図です。長い鼻と広く厚い壁のような体で、象の典型的な特徴を説明している。甲骨文の「象」という字は、簡単な線画で書くことが出来て、形態生動の象形の典型です。鮮明なストロークの単純な絵文字として記述できます。 金文と小篆の "象"の字はすでに見た大象の模様ではない。楷書は即ち小篆の形態が直接変化したものだ。


字統の解釈
 字統には、この文字は「象」象形文字としている。その上で、卜辞からの引用として、「殷王の狩場の範囲にも像が生息していたことが伺えるとしている。この他、古文書の記録から象が中国の各地で広範囲に生息していた記述を見つけている。そして、「象」という字を象徴の意味に用いるのは、直接この辞からは引伸しがたいので、他の同様の音の字からの仮借ではないかとしている。


漢字源
 この文字は「象」象形文字としている。その上で、ゾウは最も大きい目立った形をしているところから、「かたち」という意味を表すようになったと解釈している。



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