気ままな散歩

2017年3月27日月曜日

漢字 「阜」の起源・由来を「甲骨文字」に探る:土盛りであった。梯子であったとも


漢字「阜」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P314、唐汉著,学林出版社)


 「阜」は象形文字である。甲骨文字の「阜」の字の形状は一層一層の階段である。また一歩一歩階段や上の丘にを上ることを示す。実のところ、「阜」の字は古代のはしごからの取象である。一本の木の上に連なった切り欠けをつくり、出入りに都合のいい穴とした。
 金文と小篆は甲骨に似せて書き、楷書の字形はいわば変化をして梯子のようにも見えない、山のようにもみえない。
 阜の本義は梯子である。従って「降」や「防」の字の構成要件にもなる。また拡張して、山の坂を登るための階段を指す。段玉裁は「説文解字注」で土山のように高く大きくしかも上が平らで、その上に層をなすことが可能な 主なイメージはその高さで、次のその他のイメージはその3割程度だという。
 张衡的《西京赋》: "百谷殷阜。"ここでの「阜」は全て土山の意味である。一般的に土山大都は植物繁茂でおおわれているので、このために「阜」は又繁茂、盛んの意味にも使われる。『物阜民丰』の中の阜は繁茂の意味だ。
 「阜」の字は部首にも使われる。阜が偏となる「コザトヘン」の時、階段の意味を含む。「リク、降、防、階」など。


引用:「字統」(P739、白川静編,平凡社)
象形文字で、神が天から降りてくる時に用いる梯であると断定している。

引用:「漢字源」(P1680、藤堂明保編,学研)
会意文字で、もともと、ずんぐり土を盛り重ねた様を描いた象形文字としている。


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漢字「江」の起源・由来を「甲骨文字」に探る:大陸を貫く大河の意味を持つ。


漢字「江」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P299、唐汉著,学林出版社)


『江』は長江の専用名称である。説文では解釈して、「江、水。出蜀浦民徽外幡山,入海。从水工声。」といっている。これは、「長江は四川から出て、5省2市を経て、勢いよく大海に流れ込む。中国では「江」と言えば、長江を指し、「河」と言えば黄河のことを指す。江河は即ち長江と黄河の別称である。
《苟子•劝学》では『假舟樨者,而绝江河。』ここでの江河は長江と黄河を指す。但し又その河流を広く指している。漢代以降江河の支流も又江河を冠した名前をつける。
 金文と小篆の字形の研究から、江は黄河に比べて幾分遅く出てきた文字である。会意文字である。許真は江は形声字の観点で錯誤と認めている。甲骨文字中の「江」は「針」の象形で、上下貫通して表示される。このため穿ち通す貫いて穿つの意味がある。
 長江は中国で水流最大の河流である。又アジア最大級の河流である。長江は三峡の峻険な岸壁から奔流して、自然の造化の巨大な威力を示していると同時に大自然の神業の作品である。 長江は「穿通水」と称されるが、名実が一致するものだ。

引用:「漢字源」(P877、藤堂明保編,学研)
 漢字源では、この解釈とほぼ全く同じ解釈で、文字の成り立ちは、「会意兼形声」文字としている。工は上下の面に穴を開けて貫き通す指事文字としている。


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2017年3月25日土曜日

漢字「嘘」の起源・由来を「甲骨文字」に探る:元々は「墓」だった


漢字「嘘」の起源と由来
 近頃、世間は「嘘」の話で結構騒がしい。大阪で幼稚園を経営する籠池氏という方が、小学校を作りたいと大阪府に申請を出した。その小学校の教育理念は、「教育勅語」を基本に据えるという、とんでもない時代錯誤のものらしいが、その話に、保守を標榜する色々の方面から後押しをし、また忖度をすることで、漸く大阪府の認可を取り付け、建設が始まった。しかし、その土地の取得の段階で、総理大臣夫人への依頼があったとか、お金のやり取りがあったとかなかったとか、虚虚実実の話が飛び交い、大騒ぎになっている。

 さてここでは、その真偽については、政府やマスコミに任せるとして、「嘘」という漢字について触れてみたい。

引用:「漢字源」(藤堂明保編,学研)
 「嘘」という漢字は形声文字だという。もともとの意味では、「①息を吸ったり吐いたりすることで、② 嘯くとか大げさに言う」という意味があると書いてある。日本で使われる「嘘」という使い方は現在の中国ではしないようだ。中国では「谎言、假话」という言葉が使われるようだ。 そこで。もう少し話を突っ込んでみよう。この「嘘」という字の旁の「虚」という漢字は、一体どういう由来があるのだろうか。

引用:「字統」(白川静編,平凡社)
 白川氏はある意味明快で、声符は虚。虚は墳墓(墓)のいみで、実体のないもの。嘘は言葉にならぬ気息を言う。日本では「うそ」の意味に用いるが、「うそ」は「虚偽」、「嘘」は気息に用いる文字である。

引用:「汉字密码」(唐汉著,学林出版社)

 「虚」は会意文字である。金文の虚の字の上辺は、既に「虎」の頭の変形をしたものとなっている。下辺は「丘」の字である。小篆ではこの関係から、虎の頭の形が明晰に多く残っている。楷書は丘を変化させ、「虚」になっている。「虚」は虎の頭と丘の会意で見たところ高く大きいことを表示しており、実際、土でできた大きな土山である。
 「説文」は「虚」は大きな丘だと解釈している。
 《诗•部风•定之方中》の中で、「升彼虚矣,以望楚矣。」とあるが、これは、「あの大きな土の山に登れば、楚の国の地まで見渡せることが出来る」の意味で、土の山の意味である。また拡張させて、ある人がかつて住んだことを特に指し、後に殷墟のように、荒れ果てた高台を、商の人がかつて住んでいた荒れ果てた高地を後に「虚」と書いた。
 大きな山のようで、実は土の塊の意味から、拡張されて空虚、嘘、度胸がないこと、徒然・・むなしい、無駄、ただ・・ばかり、虚弱など多くの意味を含んでいる。成語「乘虚而入(虚に乗じて入り込む)、虚无嫖纱(虚無)、虚位以待(しかるべきポストをあけて待つ)、做贼心虚(悪事を働けば,心はいつも不安である)、虚度年华(年月をむなしく送る)、虚怀若谷(虚心坦懐)」の中のなど等。



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2017年3月21日火曜日

漢字「忖度」の「忖」の成立ちを探る! 他人の心を思いやる?

漢字 忖度の「」の起源と由来
引用:字統(P557、白川静編,平凡社)

「忖度」、 少し聴きなれない言葉が、今年に入ってから、森友学園の小学校の建設に絡んで、この「忖度」という言葉が非常によく聞かれるようになった。毎日、毎日、テレビのどのチャンネルも、どの新聞も、官僚が政治家を慮って便宜を施したということで、「忖度!!!、忖度!!、忖度!」と聞かない日はない。間違いなく今年の「流行語大賞」である。
 しかも、 最近では、この忖度をめぐって、とんでもない議論が出てきている。「忖度」には、いい忖度と悪い忖度があるというものである。

この議論であれば、忖度という言葉そのものに、新たな価値観を持ち込むことになり、ますますもって、日本語の混乱を起こしかねないと心配する。この分では、いい原子力と悪い原子力があります皆さんどちらの原子力を選びますか?という議論に世間を誘導していくことにもつながり、非常に危惧を感じている次第だ。こんなことは誰が言い出したのか? こんなことを言い出す人の頭の中はやはり保守!。要は大衆受けする言葉を使って、世間を何も考えない方向に持っていこうとする魂胆が見え見えだ。

 「字統」によると、「忖度の「忖」は、「寸」は手の指4本を並べた長さの1本分で、長さを図る意がある」として、唐漢氏の説明とほぼ同様である。当BLOGの「寸」を参照願いたい。
 「詩経・小雅・巧言」には、「他人有心、予忖度之」とあり、既に2500年前に孔子の言葉として語られていることから、ずいぶん昔から人間は「忖度」し続けてきたものと見える。因みに「忖度」の「度」という字も、はかるという意味があり、現在でも度量衡で使われている。また「漢字源」では「指をそっと置いて長さや脈をはかるように、そっと気持ちを思いやること」とあり、この解釈が現在、マスコミで騒がれている使い方にぴったり来る。


大辞林


因みに、日本語では、「大辞林」によれば、「他人の気持ちをおしはかること」とある。

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