「壺」日本語では、訓読みでは“ツボ”と読み、音読みでは“コ”という。中国語・簡体字は「壶」で、読みでは«hu 2声»と読む。
尚、「字統」での解釈は、唐漢氏のものとほぼ同様であるが、祭祀用に用いた酒壺というニュアンスが若干強いように感じた。
ようこそ、漢字考古学の道へ
漢字考古学とは?
今漢字の総数は10万字ぐらいだろうと言われてる。
これらの全ての漢字、一つ一つに意味があり、起源と由来があり、それぞれ歴史を持っている。
このブログの使命はこれら漢字の起源と成立ちを明らかにし、その背景を探る中で、人間の営みの歴史を詳らかにすることにあると考えている。
引用 「汉字密码」(P679,唐汉,学林出版社)
読み方:(音)レキ (訓) かなえ
「鬲」これは一種の民族的色彩の濃い炊事用具である。「鬲」字は象形文字で、甲骨文字ではまさにこの種の煮炊きする用具のデッサンである。下部に3本の足があり、袋状の腹と二つの耳を持っている。金文の「鬲」字は甲骨文字と大方似ている。小篆の形象を失っている。
「鬲」は古代の陶製の炊事具からきている。丸い口と別れていない3足の足を持っている腹がある。鬲は今から6、7千年を隔てた新石器時代の華夏民族の重要な発明である。
それは陶器のとがった底と容量不足の矛盾を巧妙に解決し、更に陶器を焼くときに底部の面積が大きすぎて窯の壁が癒着してかつ焼成が失敗するという難題を解決した。鬲の用途は鼎と相似である。これは一種の食物を煮炊きする炊事具である。
すこぶるつたないデッサンで申し訳ないが、「鬲」とはこんなものだと概念的に理解していただくために提示した。まさに後の「鼎」である。実際はこの表面に、文様が施されている。
上古社会で多く作られたものは陶製で、また陶鬲に倣って少数のものは青銅で作られた。
「鬲」の字は多音多義語である。二通りの読み方があり、一つはこの煮炊きの容器の場合ともう一つは「隔てる」という意味で、それは火と水を隔てる噐の一種というところからきている。
因みに白川静博士の説明は以下のようになっている。
かなえの類で、器腹は分当形(口切に足のふくらみをもっ形)をなし、足は中空の款足である。 [説文]に「鼎の属なり。・・・ 腹の交文と三足に象る」という。又(璽雅、釈器〕に、鼎の款足あるもの、これを鬲と謂ふ」とあり、款足の上部まで物を容れうるので、熱のあたる部分が大きく、器も分当形をなしている。「漢字の世界の起源と源流を探る」のホームページに戻ります。
出来
引用 「汉字密码」(P728,唐汉,学林出版社)
漢字:「郭」の起源と由来 城邑に立つ高い建物とその影の合わせた字形
郭は繁体字で「郭」と書く。原本は会意文字である。と甲骨文の金文の郭の字は造字の方法は「中、北、夜」の字と相似通っている。どれも元の事物とその影の合体したものである。図に示すごとく、この郭は即ち午後4,5時で、城邑の中の高くて大きい建物とその影の連体図形である。
小篆の郭の字は美観と毛筆で書くときの都合から、まさに連結部分が裁断され、完全に象形の味わいが失われた。また意味を区別するために右辺に「邑」が付け加えられ、楷書は郭と書くようになった。
郭の本義は表示時間の名詞である。本来高くて大きい建築物の影から来ている。後日表示時間の意味は逐次消失し、城外の郭を表示するようになった。
筆者にはこの唐漢氏の説明はしっくり来ないところがある。これを鏡像とは捉えないでなぜ影とするのか。確かに、これを影としなければ、時間の概念が出てこないのは事実だが・・・。
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引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)
旧は繁体字の「舊」(フルトリという)の簡体字である。舊は原本は一種の鳥の名称である。即ち、鶴鷹またカモメカラスともいう。甲骨文字では と書く。古代の先民たちはこの種の鳥を残忍で殺戮を好みいつもほかの鳥の巣に入り込み占領し、彼らの雛を食べると思っていた。
甲骨、金文、篆書の中の舊の字はまさに一匹の毛と角の鳥が爪を伸ばし鳥の巣に侵入する形をしている。これは正に一匹の鳶(ミミズク)が巣を占領して、他の鳥の巣を壊している形状だ。旧の本義は鳶が鳥の巣に侵入し占領している様である。(これはいささか飛躍しているようにも思うが・・。)
以降多く陳旧(すでに壊され無用になった巣の意味)を表示するのに用いられ、新と相対し、基本義は次第に消失した。 「詩・大雅・文王」のごとく、「周旧邦といえ、その命新しさを繋ぐ」この中の旧は即ち過去を表している。
現代漢語の中の故旧(旧友)、旧書(古本)、懐旧(昔をしのぶ)など、その中の旧は、みな過去を表し、随分以前の意味である。
現在日本では、「復旧」は元の状態に戻すことであり、「復興」は一度衰えたものが再び盛んになることまたは盛んにすることとしている。(大辞林)
復興とは前の状態に戻すことではなく、衰えを盛んにすることで、前の状態に復することではない。復旧と復興ではその持つ意味合いはかなり異なってくる。即ち「復」の持つ意味が、違っていることになる。前の状態に復することと前の状態に復するのではなく、新しい状態にすることの全く相反する意味になっている。では、「復」の意味はいったい何なのだ?「漢字の世界の起源と源流を探る」のホームページに戻ります。