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2021年6月8日火曜日

漢字「宿」の成り立ちから窺えるもの:宿とは一時的に雨露をしのぐ屋根と藁の蓆があるだけのもの。きちんとした寝る場所ではなかったようだ


漢字「宿」の成り立ちから見えて来るもの:そこには一時的に雨露をしのぐ屋根と藁の蓆があるだけだ。古代の宿はそのようなところ
宿も「寝」所も同じように寝る場所に過ぎない。しかし、古代の漢字を見る限り、その扱いには格段の違いがある。
「宿」は 粗末な藁の蓆の褥があるだけで、ただ夜露をしのぐだけの屋根と褥があるだけである。しかし疲れた体にはそれでも十分なものだった。それが宿なのだ。

 しかし漢字「寝」となるとそうはいかない。部屋には箒がかけられ、清掃は行き届き、そのほか色々のサービスが加えられたことを示す「手」が付け加えられている。

 


漢字「宿」の楷書で、常用漢字です。
右に「寝」の漢字を参考までに列記してみました。「宿」は正式の寝所ではない寝るところでありますが、同じ寝るという行為でも、明確な違いをこの漢字では見せつけています。楷書では少し分かりにくいのですが、甲骨文字や金文などでは、はっきりした違いが漢字に見られます。

 即ち、寝では箒掛けをして丁寧に手を加えた様子が窺えるのに対し、「宿」は藁の蓆の上に横になる旅人の姿が字に埋め込まれています。

 今でこそ豪華ホテルがふんだんに用意されているのでしょうが、古代では粗末な宿で蓆の褥の上で寒さに震えながら旅をしていた姿が目に浮かびます。それが普通だったのでしょう。
即・楷書


  
宿・甲骨文字
宿・小篆
跪いた状態を表している漢字
寝・小篆
宿との対比のため、寝の小篆の字を列記した。「宿」と「寝」のちがいが際立っていると思う


    


「宿」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シュク、スク  
  • 訓読み   やど、やど(す)(動詞)、やど(る)

意味
     
  • やど       宿屋、旅館、滞留するところ、住み家 
  •  
  • やどす      宿泊する       例)子を宿す、やどらせる
  •  
  • もとからの          

漢字「宿」を持つ熟語    宿直、野宿、合宿、宿酔、船宿、宿便




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  「宿」は会意文字である。甲骨文字の「宿」の字は外は家屋のデッサンである。家屋の中の右には蓆があり、蓆(ムシロ)の上で仰向きに横になっている。
 金文の構造は甲骨文字と同じであるが、蓆の形が三角形に変わっていて、人と蓆の位置が入れ替わっている。
 小篆の「宿」は変化していく中で、蓆は「百」の字に変わって、楷書では「宿」となった。 

 万葉集の「家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあらば椎の葉に盛る」(有馬皇子)の詩を彷彿とさせる字である。この詩を少し変えて、今の漢字に焦点を当てて詠みなおすと
「家にあれば褥に寝るはずが 草枕宿にしあれば藁の蓆に臥す」とでもなるのかも知れない。





漢字「宿」の字統の解釈
  宀と人が廟中に宿泊することを示す言葉に従う。説文に「止まる也」とするが、留宿して廟所を守るのが字の原義。
 白川博士は宿は「廟を守るために投宿すること」とするが、甲骨文字や金文などの成り立ちから見ると、少し後付けのような気がしてならない。


まとめ
 漢字の中には、人々の生活や息吹が生き生きと刻み込まれている



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2012年9月1日土曜日

寝: 漢字の起源と由来

  寝室は中国語では「卧房」という。さて、ここで「寝」と同じような意味を表す漢字に「卧、寝、寐、眠、睡」がある。意味は似ているが具体的な使用方法には、少し違いがある。「卧」は腹ばいになって寝ることを指す、但し必ずしも眠っているわけではない、その姿形に重点がある言葉である。「寝」は睡眠を指す。眠っている部屋に重点がある。「寐」は一般的に寝ることを指す。睡眠に重点がある言葉だ。「眠」は目を合わせて閉じているのが本義で、そこから拡張され、「睡」を表す。「睡」は座って首を垂れうたた寝をしている意味である。
 




引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)

「寝」の本義は病臥することとしている

「寝」の本義は睡眠である。また寝室を表している。甲骨文字では、「令多尹作王寝」とある。これは多数の執事や大工に命じて王の居住の寝室を作らせたということである。





「寝」は居室に寝るために清掃することを示している。 

甲骨文字の「寝」の字は会意文字である。外側は部屋を表す形で、内部は箒の象形である。両形の会意で居室を寝るために清掃することを示している。金文の「寝」の字は甲骨文字の基礎の上に一個の手を加え、清掃することを明確にしている。小篆は金文の形に人を加え、楷書では「寝」と書く。また造字の方法で人を変化させ、寝台の意味を持たせ、これを簡単化した旁で、「寝」とした。

 「寝」は説文では「臥」なり。

「寝」は説文では「臥」なりとある。「体を横たえて寝る、休息の意味である。論語の衛霊公では「我味わいて、終日食わず、終夜寝ず」とあるのは俗に言う、「夜食が不安なら寝るのも安定しない」の意味である。 「寝」は名詞を作り、寝る場所を指す。「入寝、寝室」など。又特に帝王の陵墓を「陵寝」などという。

 
漢字「寝」の字統の解釈
 病気で臥せることを「寝」という。「説文」に 病みて臥するなり」と注釈を引いている。


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