2018年12月31日月曜日

世界で最も注目された漢字は「嘘」(フェイク)  嘘は虚なることを言うこと


漢字「嘘」の起源と由来

「嘘」とは口で「虚」(絵空事)と書く。意味は「虚」を言うこと
 因みに英語の"fake"の語源は古代フランス語の"fals, faus”(意味:うそ)から来ているらしい


 「今年の漢字」は毎年12月に公益財団法人 日本漢字能力検定協会が公募し、決定されるものです。検定協会からは「『今年の漢字』応募集計結果」が発表されていますので、興味のある方はご参照ください。

 因みに、第2位は「平」で、平成の最後、平昌オリンピックや、大谷翔平君などが話題に上った。第3位は「終」だそうで、平成の終わり、築地市場の営業が「終」了。安室奈美恵さん引退で有「終」の美を飾る。オウム 13 人全て死刑執行を「終」 える。貴乃花親方引退で相撲人生を「終」える。「平成最後の○○」というフレーズが多用されたことから、候補に挙げた人が多かったようだ。いずれによ「平成」という言葉が、発想の基軸になっているようです。

 今年はトランプ大統領のフェイクに振り回された感じですが、このような足が地につかないふわふわした次代はもういいかげん終わりにしたいものですね。

引用:「汉字密码」(P313、唐汉著,学林出版社)

「嘘」の字の成り立ち」
 今年の漢字の候補として、「嘘」を上げた方もあったようだが、上位20位にも入っていない。流行語というのであれば「フェイク」がダントツ1位にと期待していたが、こちらの方も見事に裏切られた。
 折角、期待したので、この「嘘」という漢字の成り立ちを探ってみよう。

 「嘘」は「口」と「虚」の会意文字である。


「虚」の成り立ち
 嘘のは「虚なることを口で言うことが、字の成り立ちであったことは当ブログの記事「漢字「嘘」の起源と由来」でも触れた。

 今の世の中で非常に大きな問題は、この「虚」ということが蔓延していることではないだろうか。仮想通貨は今や実態経済の何十倍にも膨れ上がり、世界を駆け巡り、資本主義経済を崩壊させている現況になっています。この資本主義の悪しき運動即ち実態経済からの乖離と悪貨の果てしなき増殖運動が、資本主義自体を押し潰そうとしている。これらは、全て実態からかけ離れているにも係わらず、いかにも実態であるかのように認識して吹聴する嘘が元になっている。先に述べたトランプ大統領の「フェイク」手法、イギリスがEUを脱退するきっかけになったのも「嘘の情報」、インターネットを駆け巡る怪しい情報といずれもそれで世の中が動いてしまうのが、今非常に危険なことではないだろうか。そして、世界中の誰もがその危険な行き着く先を知っているものがいないということだろう。
まさに、「我が亡き後、洪水来たれ!」

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「歳」と「年」の違いは? 漢字「歳」の起源はどう違うの?


漢字「歳」の起源と由来
 今年もまた、「年が明け歳が暮れる」ことの繰り返しであった。これはずーと何一つ変わらず繰り返されてきた。しかし、そこで出来事は凄まじい勢いで流れていく。漢字では「年」と「歳」が何の疑問も持たれずに、用いられてきた。しかしこの差は一体なんであろうか。

 前号で、年の字の成り立ちから見て、「年」の本義は成熟した作物であるという意味であることは理解できた。しかし、ここで同じように一年の時間の長さに「歳」という漢字があり、この「年」と「歳」がどのように違うのか明らかになっていない。そこでここでは、この二つの漢字の成り立ちがどのように違うのかを明らかにしたい。

引用:「汉字密码」(P289、唐汉著,学林出版社)

「歳」の字の成り立ち」
 甲骨文字の「歳」は血の付いた斧のようなものです。「斧」は殺害のための武器であるため、古代の文献では「歳」は「生贄にして犠牲にする」、つまり先祖や神々に捧げるため牛を犠牲にするために牛を殺すことを意味するのによく使われている。甲骨文字の第1款の歳の形の上の小さい点は犠牲を殺した時の血の跡の可能性がある。上古時代「歳祭」はもっぱら「一歳挙行一回」はこの種の大規模な盛大な祭祀を指している。


「歳」が犠牲の血で以て神にささげる祭りという意味から時間に概念が変わる時
 甲骨文字の第2款と金文の歳は斧鉞を用いて二つの「止」を分け隔てている。このことから時の流れを分けることを表示するようになった。
 歳は年歳の名前で、大歳も先民の祭祀に関係がある。中国人の星座には歳星、またの名を大歳星すなわち木星がある。因みに木星は12年ごとに空中を一回周遊する。木星の運行は一辰すなわち一年である。この説明はもっともらしいが、少し後付けのようなきらいがないわけではない。

 結果として、歳は「年」と同じく時間の指標として、用いられてきた。しかし、成立ちは大いに異なるようです。片や農業の実り由来する実りであり、片や神権政治に結び付く、歳祭に見られる生贄を祭る祈りの挙行からくるようです。しかし、この二つの由来を結びつける必然があったように思われます。それが何かを解きか明かすことに更なるロマンがあるようです。


参考記事
1. 漢字「年」の起源と成り立ち 


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2018年12月28日金曜日

干支の起源:2018年の干支は「戌」で、2019年は「亥(いのしし、猪)」となる理由は? 


干支の起源:来年の干支は「亥(いのしし)」と決めた理由は何?
 干支とは何ぞや
 今までこのブログでも何度か干支について説明をしてきました。(「干支、十二支の起源と成立ち」を参照ください)しかし、干支の起源:どうして2018年は「戌」で、来年の干支は「亥」?という質問の答えはなく、「干支とはなんだ」という概念はもう一つはっきりせず、消化不良という感じを持たれてきた読者の方々も少なからずあったのではないかと反省をしています。そこでここではもう一度基本に戻って解き明かしてみたいと思います。

 干支は十干と十二支の二つの概念で構成されていることは既にお話してきました。十干とは天干ともいい、甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の10種類からなります。この甲乙丙丁とは、こう、おつ、へい、ていと読むのでなく、きのえ(木の兄)、きのと(木の弟)、ひのえ(火の兄)、ひのと(火の弟)と呼びます。

 十二支は子丑虎卯辰己午未申酉戌亥は地支といい、天干と地支と相交えて日にちを表していた。従って、この方法によれば、10X12の最小公倍数の60を1サイクルとする年代を表すことができることになります。

西暦を十干十二支で表してみると
十干は10年でワンサイクルということですから、西暦の1位の数字に夫々甲乙丙丁・・を割り当てて、「十干」としたようです。
 ではなぜ、このように割り付けられたかというと、成立ちは、以下の理由によるということです。

 この紀年法が定式化されたのが、後漢の建武26年(西暦50年)だったようで、この時が庚戌の年だったということです。光武帝に随従していた学者たちが、決めたことが結局今日まで続いているということです。」


西暦の一位 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
十干

十二支の起源の話に移ります。
十二支の起源も、十干と同様で非常に単純な話です。
 偶々この紀年法が定式化されたのが、後漢の建武26年(西暦50年)だった時に、この紀年法が決定されたことだけの話です。後漢の光武帝が力を持っていたことの証明になるのかもしれません。


西暦を12で割った余り 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
十二支



干支が決まるまでの長い歴史とその意義
 今までの説明(「干支、十二支の起源と成立ち」を参照ください)で、既にお分かりの事と思いますが、後漢の光武帝の時には紀年法が定式化されただけのことで、紀年法に干支はすでに商(殷)代に現れており、2000年近く使われてきたものです。しかし、十干と十二支が殷の時代に生まれて、後漢に至るまでの間、ああでもない、こうでもないと議論が闘われてきたのですが、光武帝の時に「これで行こう!」と正式に決定されたということです。

 干支が鼠、丑、寅などの十二支や陰陽五行思想と結びついたことで、さまざまな伝承や迷信・俗信が生まれましたが、元号紀年法が政治体制により、目まぐるしく変化したのに比べると、一貫したものを持っており、西暦が一般化するまでの間実用性を持って人々の間で重宝されてきました。


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2018年12月24日月曜日

漢字の起源の簡単クイズ 発想を飛ばして想像力を鍛えよう!!


現在の漢字は何でしょう?
 下の漢字は甲骨文字といって、今から3500年前頃、中国の黄河流域で使われていた文字で、漢字の起源といわれているものです。そしてこれは形を変えながらも今に受け継がれています。このような文字は他にはありません。

 頭を柔らかくし、昔の人がどのように考えていたか、一緒に考えて見ましょう。

 あまり難しく考えないで、ご自分の頭の柔らかさを簡単にテストするつもりで、挑戦されてはいかかでしょう。



今日のクイズ
ヒント
何か屋根のようなものが見えますね。そして、その中には動物がいるように見えます。ここから想像を飛ばしてください。

ヒント
今年は、振り回されました。落ち着けばいいんですけどね。いつまでも反目している時ではないでしょう

 

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漢字「上」の起源:「上」は初めは「二」と表記?しかし、余りに紛らわしい!


漢字「上」の起源と由来
甲骨文字では「上」は「二」であったのが、やがて「上」となった。理由は、至極簡単で、古代人も頭が混乱したからだ。

引用:「汉字密码」(P338、唐汉著,学林出版社)

「上」の字の成り立ち」
 上は指事字である。甲骨文、金文の上の字は一つの横長の線あるいは弧線の上方に一条の横線を加えることで、方向あるいは一の上の意味を表している。後期の金文と小篆は縦線を加えることで、「二」との区別を示した。


 上の本義は相対的に高いところを、上面を指している。上と下の意味は相反している。


概念の発展と文字の拡張
 またこれから拡張され、等級や品級の上等な事物を広く示す。上級、上流社会、上品、上好などである。古代社会もまた尊長なことを示す。また特別に皇帝を指す。「犯上、上谕」など。

 言葉の意味が拡張発展後、順序、時間が前にある事物を指すようにもなった。上冊、上半年など。あるいはある事物の範囲の内にあることを示す。「顔の上、壁に、本に、思想上」など。

動詞にも使われた
 上はまた動詞を作るのに用いて、低いところから高いところに上がる意味で、塔に上る、山に上るなど。この他外向き外、前進の意味に用いる。「上街など」。また物を表面に加えるときに用いる。靴クリームを塗る。光を当てる。

 とにかく上は言葉の意味も豊富で、豊富な字の使い方、用い方がある。




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2018年12月23日日曜日

2019年の干支の漢字の出番。漢字「亥、猪、豬、彘、豕」を揃えました。今からでも間に合う年賀状


今からでも間に合う年賀状に使える漢字
(使うか否かはご自身の自己責任で)


 漢字に見る「豚からイノシシへ」の変遷。年賀状の提出期限が迫る中、イノシシの漢字のそろい踏み。人間と猪の付き合いは長い。猪から豚に変化する中で、漢字もまた変化しその形を変えた。年賀状はややこしいことは止めにし早いうちに片づけてしまおう。

もっともポピュラーな干支のイノシシ
イととよむ







古代に使われた動物の豚の漢字
今でも中国で使われている漢字「ブタ」







「彘(いのこ:猪の別名)」の字の成り立ち」
 これが本来のイノシシか。ブタに順化する前のイノシシ?






豚とイノシシが混同されるようになり、後で作られた漢字
 現在中国で用いられているイノシシ






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漢字「元」:新「元号」の「元」の成り立ちって何だ?


漢字「元」の起源と由来
ここでは、「漢字源」、「字統」、「説文」、「汉字密码」を参照したが、三者三様の解釈で少しずつ差はあったが、共通するところは「元」は人の頭や首を表すということだった。

引用:「汉字密码」(P431、唐汉著,学林出版社)

読み方:(音)ゲン (訓)もと 中国語読み:ユエン
 「元」の本義は人の脳みそである。甲骨文字の字形は人の上に横棒の一を加え、人の頭のある部位を示した。あるいは人の上に二本の横線を加えた。この二のように見える記号は古文字の中で「上」という字でる。「元」は人と上を用いた会意文字である。または人の脳の所在を表示したものである。「硕身丧元」(大きい体は元がない)の中の「丧元」は脳を失うことである。
 小篆の「元」の字の下部は「儿」に変っているが、人の体を指している。 「元」は人の頭を指す。 人の頭は丸いので、音も同じようである(「元」の中国語の発音はyuanであり、「円」も同じピンインである。

 説文では「始まりなり」とい解釈している。注釈には、「兀の声音でコツを取るが、兀とは首を失ったものを言うとしている。

 人の頭は人体の首で、「元帥、元首、元凶、元老、元勲」の中の元は等しく首の意味である。上から下まで、人の頭は人体の始まり、いわゆる元は派生して始まりとなる。「元旦、元年」など。 「元」の字はまた天地万物の本源を指す。古人は元気を万物を生み成り立たせる原子物質と認識していた。「元気、元々」の中の元は本源的な意味を表示し、現代漢字の中では一元銭、二元銭に用いられる元であり、円の借用の元は「元」とは無関係である。

漢字源
 象形文字。兀(人体)の上に丸い印(あたま)を描いたもので、人間の丸い頭のこと。頭は上端にあるので、転じて先端、はじめの意となった。


「字統」
人の首の形を丸く大きな形で示した人の全身形で、首を表し元首という。


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2018年12月3日月曜日

乃木坂46の「乃」の起源は女の乳房及び乳


漢字「乃」の起源と由来
最近テレビでも引っ張りだこの女性アイドルグループ「乃木坂46」の漢字「乃」の起源は何と聞かれて答えられる人はいないだろう。もっとも答えた所で、それがなにかの役に立つかといえば、何の役にも立たないだろう。だけどこと「乃木坂46」のことはどんなことでもいいから知りたいというのが、ファンの心情というものだ。

乃木坂の由来
乃木坂の名は1912年(大正元年)9月、大日本帝国陸軍の重鎮で、学習院院長であった乃木希典大将の殉死を悼み、赤坂区議会が改名を議決したことに由来する。(以上ヴィキペディア参照)
 乃木希典について今知る若い人は皆無と言っていいだろう。日露戦争のとき、203高地の激戦の指揮官として有名であった。明治天皇の死に際して、割腹自殺を遂げている。


二〇三高地の戦跡を示す標識モニュメント
乃木希典将軍は息子二人を
この二〇三高地の激戦で失っている


引用:「汉字密码」(P886、唐汉著,学林出版社)
「乃」の字の成り立ち」
「乃」は女性の乳房の側面の形象である。ただ、楷書が変化の過程で字の方形に釣り合いを取らせるために、左辺に斜めの線を加えたに過ぎない。「乃」と書く。
 ただ女性の乳房という意味を表すのは後に起こった"奶 "の字に受け継がれ、「乃」の字は"尔"第2人称代詞として使われるようになった。

 日本では、「乃至」という言葉で、または、もしくはの意味に用いられる。


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2018年12月1日土曜日

今年の漢字予想:私の予想は右翼の「右」、世界中で右旋風が吹き荒れた


一足先に漢字「右」の起源と由来を調べてみた
漢字の話の前に、右翼(英:right-wing, rightist, the Right)とは、
左翼の対立概念であり、政治においては「特権階級による特権の維持を目指すための社会制度を支持する層」を指すとされ、一般に、社会秩序や社会的成層への支持を表すために使われる。

 因みにこの右翼とか左翼といった用語は、フランス革命期の国民議会の議場で,議長席から右側の位置に極端な保守派が議席を設けたところに由来する。つまりそれまでは、政治的立場で右も左もなかったということか。

 日本や中国では、右大臣、左大臣という役職があったそうで、右大臣とは、太政官(だいじょうかん)の長官で、太政大臣・左大臣に次ぐ地位。政務を統轄した官。ということで、一番偉いのは、太政大臣、次に左大臣、右大臣と続く。

引用:「汉字密码」(P336、唐汉著,学林出版社)

「右」の字の成り立ち」
 完全に右手の正面の形状である。金文中の右の字は変化して、会意文字となり、右下にひとつの「口」が加わっている。これは食事をするときの手を表している。楷書の右の字は書きやすいようにと、形を整えて、鏡像反転をして、今日の右の字となっている。

「右」の持つ意味
 「右」の字の本義は右手である。説文では「右」は手と口を相互に助ける字なりとしている。右手の主な効能は食事をするとき食物をつかんで口に物を運ぶことなので、いわゆる右の字は助けるという意味も持っている。

「右」は高く、優れている
 大多数の人間に言えることだが、右手はすべからく、左手より器用に動く。これをもって古代人は「右」を巧み、高いと考えている。成語中でも、「无出其右」(その右に出るものはない)とそれより優れたものはいないという意味に用いる。
「左に出るものは居ない」とは言わない。 


右は左より偉いのか
 だいたい右が偉いだのいや左だのということ自体ナンセンス。右と左はこんにゃくの裏表みたいなもの。こんにゃくの裏表に貴賤はない。
 しかし、心臓は左にある。従って左にある心臓を守るために、人間は、右手を使うようになっている。右手を使う人が古今東西圧倒的に多いのはこうした理由による。


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2018年11月30日金曜日

「核」:解釈「木偏+亥で木の固い核を表す」について

以前に「核」の起源と由来について触れた時、「一般」の解釈の紹介で下記の様に述べた。



漢字源では、「会意兼形声。亥(ガイ)は、ぶたの体の芯に当たるかたい骨組を描いた象形文字で、骸(ガイ)の原字。」 「核」は、「木」+「亥」で、木の実の固い心をいう。


左は「亥」の金文文字である。

唐漢氏はどういうのか

そこで、「亥」の解釈について、この漢字源とは全く趣を異にする解釈である、唐漢氏の解釈に触れる。これについては、確かに十二支の範囲については、唐漢氏の解釈は一貫性があり、面白いと思うが、拡張された「核」「骸」等の字との一貫性については疑問が出るように思うが、私自身知見がないので、ここでは十二支の「亥」の字の範囲で(つまり唐漢氏の解釈の範囲)にとどめることとする。


十二支の中の「亥」の起源と由来
「亥」象形文字である。甲骨文字の二つの「亥」の字は等しく裸の男子の側面のデッサンである。しかし、特に生殖器を強調している。この図形は仰韶の彩陶器の中の図案の男子の形象と表現は違っても同じ意図を表している妙がある。



金文の「亥」は甲骨文字を引き継いでおり、形は似ているが既に象形の持ち味は失われている。小篆に変化していく過程で右に蛇足の画、人の字が付け加えられている。楷書は隷書化の過程で、更に変化し「亥」となっている。


故事の中の「亥」

殷商時代の甲骨の卜辞の中で、いつも一人の「亥」と呼ばれる先公が出現する。商の人はこの人を「高祖」と呼び、最も早い男性の祖先、先公とみなして、彼の母親は特殊な待遇を受けている。即ち「亥」と一緒に殷商の先民の祭祀としている。卜辞の言うように「王に焼かれた亥母豚」の中の亥母である。この「亥」とその「亥母」は子供の生殺の権力を握っており、その為に「亥」は十二支の最後の位置を与えられたのだろう。

この是非がどうであれ、生まれ落ちた「亥」の原義は男の子であり、「亥」と「亥母」に対して祭献を行い、嬰児の成長を助け、氏族の繁栄を希求するのである。「亥」は十二支の十二番目。時刻を表すには9時から11時までを示し、「亥」年とは「猪」生れのことである。

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2018年11月24日土曜日

日産のゴーンさんは漢字で「戈恩」と書く:その漢字の意味は?


ゴーンさんの名前の意味するところ

 日産のゴーンさんは漢字で「戈恩」と書く:その意味はこじつけだが「恩をブッタ切る」

 最近、新聞・テレビなどで最もクロースアップされている人物というと、日産の元会長の「カルロス ゴーン」氏であろう。今でもフランスの自動車会社ルノーの取締役会長兼CEOにして、三菱自動車工業の会長も兼務し、日本とフランスの自動車工業会に大きな力を持っているという人物である。彼はまさに「天国から地獄」へ急転直下の憂き目にあっており、日本の司法当局の対応が注目視されているが、日本、フランスおよび世界の自動車工業界に大きな影響を与えるだけに事はそんなに単純な問題ではないだろう。

 日本では、カタカナがあるので実にうまく、簡単に名前の読みを音に比較的忠実に表記できるが、カタカナのような表音記号を持たない漢字の世界では西洋人の名前を表記するのは、簡単なことではない。

 今日は、漢字の起源などという難しい問題はやめて、単純に西洋人の漢字表記について考えてみよう。

 西洋人の漢字表記は、中国の新華社が命名した漢字表記に追随するらしい。いくつかのルールが有る。音が似ている漢字を持ってくることが多いようで、
 トランプ・・特朗普 特にあまねく朗らかに (確かにアメリカンカーボーイのようにどこでも陽気だ)
 オバマ・・・奥巴馬 奥へ入った所で巴のごとく堂々巡りする馬(確かに混迷するアメリカが出口を失った馬のよう)
 ケネディー・・・肯尼迪 「肯」は喜んでする 「尼」梵語で母の意、「迪」は道、何かの始まる道
         確かに彼は1960年代何かが始まるような雰囲気を持って現れた

 という具合です。こうしてみると、表音文字を当てたにも係わらず、それなりに含蓄のある命名になっている。

ゴーンさんの名前漢字表記
ゴーンさんの場合、「戈恩」と書くらしい。 ここでも表音文字として使っているので、意味は特にない。
 しかし、あえてこの漢字表記の意味を取り上げてみると、次のようになる。

 「戈」は象形文字である。甲骨文字の「戈」の字はまさに「戈」のデッサンだ。
 戈の竿の上にある先の尖った横棒は「戈の頭」で、上端の短い一画は「秘帽」で、下端は「鋳」になって降り、地上に突き刺せるようになっている。金文の「戈」の字は、甲骨文に比べると美観は真に迫り、特に戈の後面の補画は穂を示している。小篆の戈の字は線条明晰であるが、象形の味わいはいくらか失われている。楷書はこの関係から「戈」と書く。
 このとおり、名前の意味を忠実に解釈すると、「恩」をまさかりでぶった切るという物騒な意味になってしまう。

 彼は日産で、容赦なく首切りを断行した。彼が偉いのではない。彼の首切りを断行を許した日本の風土の問題だ。外国ではこうは行かない。戦争に負けた日本はまるで気の抜けた空気のように、ゴーンに支配され、まるで腰の抜けた奴隷のようにヘナヘナと。よく似ているではないか。
 

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2018年11月17日土曜日

漢字「彘」(いのこ)の起源と成り立ち:猪、豕、彘、干支では「亥」すべて「いのしし」


漢字「彘(いのこ)」の起源と由来
この漢字は、当用漢字にない。中国語の中でも、この漢字が使われるのは、成語だけだという。この漢字の訓読みは「いのこ」という。この日本人で、この漢字が読める人はどのくらいいるだろう。意味は猪の意味である。中国語のピンインでは、zhiと読む。

引用:「汉字密码」(P41、唐汉著,学林出版社)
「彘」の字の成り立ち」
 「猪」にはまだ一つの別名がある。それは彘という名である。図に示すところによると、甲骨文と金文の中間部分に記号即ち代表的な矢であるが、、一匹の野猪が矢に撃たれた状況が表示されている。小篆の中では記号は既に形を変え矢の字になっている。株は則分離して二つの「比」になっている。尻と股の二つの半を表している。図形全体は野猪の尻と股の真ん中を一本の矢に射抜かれた様子を示している。

 この説明は、「字統」でも同じである。


野猪が馴化するにつれ、文字の上で起こった変化
 野猪の力は大きく荒々しい。弓矢を用いないで捕獲するのは難しい。彘の本義は元々野猪を指している。後に転じて家で変われた雄の猪を指すようになった。さらに拡張され一般の猪を示すことも出来るようになった。

現代、「彘」はどのように使われているか
 現代漢語の中では「彘」は只成語の中でしか用いられない。「行同狗彘」(犬畜生のように振舞うの意味)、「狗彘不如」(犬畜生にしかず)の意味。通常犬や猪のような恥知らずの行為、「犬や猪」の比喩に用いられる。

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2018年11月15日木曜日

「支」(木の枝)と「干」(木の幹)から古人は年月の数えるのに干支(えと)を考え出した


「支」は元々「枝」を意味していた。そして干支は木の幹と枝から発想された

引用:「汉字密码」(P139、唐汉著,学林出版社)

「枝」の字の成り立ち」
木の枝の漢字の起源は「枝」ではなく、「支」であった。白川博士の字統でも「支:木の小枝を持つ形で、枝の初文」とある。「支」の用義が分化するに及んで、四肢・枝幹などの字が作られたとある。
 木の「支」の下部の又の字は元々「手」である。 甲骨文字では、具体的に、木の中ほどに手をいれて掴んでいるように見えるが、唐漢氏はこのことから、白川博士より、もう少し踏み込んで、「古文中に手の中に一本の棍棒をとる形は即ち植物の枝の条のなす所以だ。枝は比較的細く、小さな棍棒と同じく木の幹から派生して、枝別れする枝である。植物は根、茎、枝で全体である。枝は幹と比べるとそれほど重要ではない。このため枝節は副次的なこと或いは緊要でないことの比喩に用いられる。」
 
 この「枝」が幹から派生していくのを、古人は年月を数えるのを、木の幹である「十干」にその枝として「支」を結合させ、六十年を一サイクルとする干支を作り出したものであろう。


世界の干支
 さて、日本、中国、韓国以外にも年月を数えるのに干支を用いている国には、ベトナム、チベット、タイ、モンゴル、ロシア、ベラルーシなどがあるということである。

 登場する動物も、干支の最後に登場する猪の代わりに豚が登場する国がある。猪の変わりに豚、ウサギの代わりに猫、牛の変わりに水牛、寅の変わりに豹など、民族色豊かだ。


これは猪か果てまた豚か
 少し話は変わるが、南太平洋の諸島の中でバヌアツという国があるのをご存知だろうか。この国では、豚が非常に珍重されていて、結婚式の引き出物だとか、部族間の抗争の手打ちに豚一頭が使われていたそうだ。


バヌアツの豚の置物
 バヌアツという国の豚は牙を持っており(他でもあるだろうが)、この牙もまた珍重されて、タスカルという名で国旗にも使われている。最高級のものは、この牙が何重にも巻いているものだそうだが、イギリスのエリザベス女王の下にはこの最高級の牙が収められているということだ。
 おそらく豚が完全に人間に馴化するまでの過程にはこうした牙を持った豚あるいは猪が、世界を闊歩していただろうという話。






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2018年11月13日火曜日

来年の十二支(干支)は「亥」(いのしし):使われて日本や中国だけではない


干支の「亥」は日本だけで使われているのではない
 年末になると来年の干支の話で盛り上がる。殷商の時代すなわち甲骨文字が生まれた時代に早くも十二支は天干と共に日にちを表すのに用いられている。干支は十干と十二支の二つの概念で構成されている。

 つまり、中国、韓国や日本人なのどの北東アジアの人々は、古来3000年以上にもわたって、一貫してずーとこの干支を通じて、年月の移り変わりを認識してきたことになり、これはこれですごいことだと思う。
 この干支について唐漢氏は、十二支は人の出産・成長過程を表したもので、古代人が時を表すのに、身近に起こる出来事で象徴的に表したものだという説を唱えているが、これに対しウィキペディアでは、「また生命消長の循環過程とする説もあるが、これは干支を幹枝と解釈したため生じた植物の連想と、同音漢字を利用した一般的な語源俗解手法による後漢時代の解釈である。鼠、牛、虎…の12の動物との関係がなぜ設定されているのかにも諸説があるが詳細は不明である。」として、干支の由来がもう一つはっきりしない。

 さてこ今回は、干支の「亥」について以前にも触れたが、再度、「亥」の成立ちについて整理してみよう。

引用:「汉字密码」(P879、唐汉著,学林出版社)
「亥」の字の成り立ち」
「亥」象形文字である。甲骨文字の二つの「亥」の字は等しく裸の男子の側面のデッサンであるという説もあるが、なぜこの字が干支の最後の字に割り当てられたかについては、諸説紛々としてはっきりしない。
 字統では、「獣の形に象る(かたどる)」とあり、呪能をもつ、獣の象形であり、その残骨を骸という」としている。


古人は干支の最後に「亥」という漢字を当てたか
 なぜ「亥」という漢字が、干支の最後の段階にあてられたかについて、唐漢氏は殷商時代の甲骨の卜辞の中で、いつも一人の「亥」と呼ばれる先公が出現する。商の人はこの人を「高祖」と呼び、最も早い男性の祖先、先公とみなして、彼の母親は特殊な待遇を受けている。即ち「亥」と一緒に殷商の先民の祭祀としている。卜辞の言うように「王に焼かれた亥母豚」の中の亥母である。この「亥」とその「亥母」は子供の生殺の権力を握っており、その為に「亥」は十二支の最後の位置を与えられたのだろうという説を唱えている。
詳しくは、十二支の中の「亥」の起源と由来を参照願います。



古代人の子孫繁栄・生殖崇拝の想いが伝わってくる
 わが唐漢氏は、「子丑寅卯辰己午未申酉戌亥」という漢字が、大きく二つに分けられ、前半の「子丑寅卯辰己午」は人間の胎児の時代から、産道を通って出産してくる現実の出産過程を表し、後半の「未申酉戌亥」は未だ未然のことではあるが、嬰児が夭折なく、無事育つよう、希望と期待をあらわしていると解釈しているが、私は唐漢氏の考えというより、この「亥」という字そのものに古代人が、子孫を残し、生殖崇拝に切なる思いを持っていたかが脈々と流れているような気がしてならない。何故ならこの亥という字から、生命力の強い猪という字即ち概念に想いをつないで今日まで繋がれてきている気がするのである。


干支の「亥」に関連するページは下に集めてみました \(^o^)/

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2018年11月10日土曜日

漢字「猪」起源と成り立ち:中国では「猪」は豚。ではイノシシは「野猪」


漢字「猪」の起源と由来は猪豚ではない
 今まで、いのししというとともすれば干支の「亥」について触れることが多かったが、ここでは原点に戻り、干支のいのしし「亥」から少し離れて、「猪」という漢字そのものと動物の関係ついて考察してみよう。イノシシは長い間に飼い馴らされて、猪豚になり、豚になった。この間数千年の時が流れる。


引用:「汉字密码」(P886、唐汉著,学林出版社)



「猪」の字の成り立ち」
「猪」はるか昔の時期人々は、豕と称していた。つまり「猪」という漢字が出来る前には、所謂「猪」を「豕」と書いていた。 現代でも猪の「繁体字」は「豬」という字が用いられるが、「説文解字」にも「豬」が収められている。しかし猪という漢字は、秦代以前にも既にあったということである。


 甲骨文字の豕は、象形文字であり、口が長く、足が短い。腹は丸々肥えて、尻尾は下に垂れ下がる。横から眺めてみると、将に一頭の太った猪のそっくりそのままのデッサンを書いている。  





「豕」は「猪」にどのように代わって行ったか
はるか以前の先民から見ると「豕」は六畜(牛、羊、豕、馬、犬、鶏)の一つである。人類の最も早い馴化養育した家畜であり、猪はきわめて不安定な狩猟を補充する生活の道を講ずる方式を補充するものであったと見ていい。飼育されるようになった豕は、自然に食糧の備蓄として当てられるようになった。
 即ち、「豕」は非常に長い年月を経て、人間に馴化し、人間の食糧補給として、人間と共に生きてきた。そして馴化した猪は、まるで人間について回る付帯動物のように認識されてきたのではないか。「豬」の旁の「者」は元々漆器の器物上の大きな漆塗りで著わしたものを指すことから、人間に付帯するものとして、「豕」に「者」を付け加えるようになったのではないかというのが、唐漢氏の説のようである。


「豕」にかかわる古事来歴
遼東の豕(いのこ)
 時は後漢の光武帝の治世のころ、今の北京・天津の辺りの彭寵という太守の不穏な動きを大将軍朱浮が戒めた中で、使われた言葉で、「他から見れば異とするに足らない功を誇る」「他から見れば当たり前のことを自ら奇異だと誇る」という意味た。これは朱浮が、「遼東の辺りで白頭の豚の子が生まれたので、これは変わった豚だと王に献上しようとした者が江東まで行くとその地の豚は皆白かったので、恥じて帰った」という逸話から引いて戒めたという話がある。
 このような話は、いつの世でも塵芥のごとく散らばっており、どこかの首相や大統領にもこの手の話は尽きないようである。


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2018年10月24日水曜日

漢字「風」の起源と成り立ち:「風を読む」と「空気を読む」


漢字「風」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P265、唐汉著,学林出版社)
「風を読む」と「空気を読む」の違い
   昔から色々の局面で、風を読むことは、戦術を立てる上で非常に重要なことであった。映画や物語の上の話ではあるが、三国志の「赤壁の闘い」で揚子江を挟んで、攻撃を仕掛ける際、孔明は風向きの変わるのを読んで、戦術を立てた。このようなことはおそらく古代の闘いだけではなく、現代の戦闘においても恐らく非常に重要なことであると思う。
 近頃これに対し、「空気を読む」ということが盛んに取りざたされている。風を読むと同じようなフィーリングであるが、その持つ意味には大きな違いがあるように思えてならない。
  1.  空気の場合、空気を共有している場でなければならない。しかし風の場合には、空気の流れの変化について論じている。
  2.  風を読むことは多分に動的である。それに対し、空気を読むというのは静的な行為である。
  3.  風を読むときには、利害が対立している場合が多い。空気を読むときは必ずしも利害については問題としない。
つまり何が言いたいかというと、空気を読むというのは、「回りを気にする」ということであり、あまり堂々とした態度ではないことをいい、現代人はそれだけ、回りの空気で自分を決しなければならないような姑息な態度を迫られているのかもしれない。

「風」の字の成り立ち」
 風は甲骨文字では と風鳥の組み合わせからなっている。昔の先民の観念の中では大きな鳥が団扇のように羽を広げて起こす気流から表現されている。殷商時代の先民の風に対する知識は浅いものだった。 
商代の甲骨卜辞中、すでに専業化した「四方風名卜辞」というのがあった。
 風の分類もまた精緻である。小風、大風、狂風など。金文と小篆中の風の字は上部はみな凡で、 から変化したものだ。但し金文の風のなかは百になっている。小篆の凡の中は虫になっている。説文は風は虫の生を動かすとして、小篆の風の字の解釈を出している。ただ飛んでいる虫が群れを成し風のごとく通り過ぎるかのようだと比較的こじ付け的な理解をしているようだが、金文の表意からは遠く離れることなく、日に照らされた水が熱を受け上昇するとしている。

古代人は風を如何に捉えたか
 古代格言中、「木静かなるを欲して風定まらず、子養う親を欲して必要とせず」の名句がある。それから「声を聞いて風を知る、風を察してその志を知る」の経験は物語る。前者に用いているのは風の本義である。後者は即ち風俗・風気をさしている。風は古代で特に指している詩経にあるように詩歌の類の一種である。即ち国風の中に収集したものは各地の民族歌謡である。
 


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2018年10月9日火曜日

漢字「歯」の起源と成り立ち:人の歯も動物の歯も概ね同じ構造。歯は象形文字


漢字「歯」の起源と由来
人の歯も動物の歯も概ね同じ構造を持っている。即ち門歯(動物の場合切歯という)、犬歯、前臼歯、後臼歯の4種類があります。漢字の「歯」は人間の歯の象形文字です。

引用:「汉字密码」(P422、唐汉著,学林出版社)

「歯」の字の成り立ち」
 歯は人の歯である。甲骨文字の歯は象形文字で、まるで人の口の中で上下の歯の並びのようである。
 金文と小篆のは一個の「止」の字の符号が増えて、読音を表示し、上下の犬歯の相互の嚙みあわせを表示している。そこで歯の字は本来の象形文字が変わって、会意文字、形声文字に変化したものだ。楷書では簡単化と規範化の後「歯」とかく。

牛馬などの家畜は幼いとき、毎年一つずつ歯が生え、歯の数でもって牛や馬の年齢を数える。又人の年齢に拡張して、「歯発」の言葉がある。歯と頭髪の変化が変わって、人の年齢を指す。したがって両者とも年齢に従って出てくる変化や変異となる。

この記述は少し正確さにかけるので、以下の通り補充します。
牛には、人間の門歯に相当する切歯という歯があります。
  1. 牛は成長すると、永久歯が生えますが、上あごは切歯も犬歯もなくて前臼歯と後臼歯がそれぞれ3本ずつあります。切歯がないので,歯ぐきが硬く歯床板いわれる状態になっていて歯の役目をはたしています。下あごは切歯3,犬歯1,前臼歯3,後臼歯3だけど,犬歯は切歯とおなじシャベル状をしているので,切歯が4本あるようにみえます。
  2. 永久歯生える時期と年齢には以下の関係があります。
    23±2ヵ 月齢:第 一永久切歯萌出.
    30±2カ 月齢:第 二永久切歯萌出.
    36±3カ 月齢:第 三永久切歯萌出.
    44±4ヵ 月齢:永 久犬歯萌出.
    「永久前歯による牛の年齢判定 江崎安一、白井弥 日獣会誌43 423~431(1990)」より抜粋

「歯」と「牙」
中国では、歯科のことを「牙科」という。漢字で言えば、牙という漢字ができたのは、甲骨文字からはるかに遅れてからのようであるので、なぜ「牙」という漢字が当てられたのかはよく分からない。
 因みに人間の歯の治療はかなり古くから行われていたようで、なんと旧石器時代、歯を抜いたり歯を削ったりする習慣があったというから驚きだ。
 そして、長崎県歯科医師会のホームページには、「B.C.5000年頃パピロニアの王家の図書館でみつかった粘土板にむし歯の原因が“歯の虫”であるとの記述があります。」
 わが国では、「701年(大宝元年)わが国最古の法令『大宝律令』や『養老律令』の『医疾令』に定められた医学生の教育内容の中に耳目口歯科と明記され、耳、目、口、歯は一つの科として医師が行うことになっていた。」ということです。

 このように歴史を紐解いてみると、エジプトに端を発した医療が最先端だったようで、その関係から、歯科医療は西洋のほうでより早く発達し、先端を行っていたようです。

耳寄り情報
 歯医者に行ったとき、表には出てこないのが、歯科技工士である。私の場合、ある歯医者で、部分入れ歯が壊れたので治療してもらった。この歯医者は実に藪医者で、部分入れ歯を作り変えてもらうのに型を3回とって、3回共に入れ歯を入れたら、1時間と持たない間に歯茎とこすれて、出血した。こんな医者は信用できないので、ついにそれまでの治療費は捨てて、その医者にいく事をやめた。この場合医者が悪いのか、歯科技工士が悪いのかは分からないが、おそらく医者が、「歯科」ではなくて、「薮科」だったんだろうと思っている。
 ところで現代では、中国の歯科技工士が最先端だということだそうだ。中でも広東省の「歯科技工士」が最も優れているそうで、いまやブランド化しているとのことだ。 


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2018年10月5日金曜日

漢字「牙」の起源と成り立ち:犬歯からとった象形文字


漢字「牙」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P421、唐汉著,学林出版社)

「牙」の字の成り立ち」
「牙」は即ち牙歯である。金文の字は、まるで上下に交錯し、突出した犬歯の形をしている。人の犬歯は門歯と臼歯の間にあって、尖った円錐形の形状をしている。俗称「虎の牙」という。このために漢字の縦長で横幅の狭い特徴に適応されている。金文の第2款は将にその縦置きになっている。小篆はこの縁から「」と書かれる。金文と比べ字の形は均整が整えられ形からの意味は既に不明瞭になっている。

漢字「牙」の使われ方
 古文中の「牙」は、多くの象牙やその工作物を指している。「牙尺、 牙板、牙管」の如く。人の歯に用いる時は、「爪牙、牙口」のように、もっと曖昧なことが多い。昔売買の双方が利益を取り合う人に、「牙子(仲買人)、牙俭」のように用いられた。現在ではブローカーや仲介といわれる。
 草木は発芽する「芽」には草かんむりを加えて、草木の芽の形が犬歯と同じ様な状態であることを示している。 


後書き
 昔、中国では仲買人のことを「牙子」と言ったそうだ。双方利害関係が食い違う中に入って、犬歯をむき出しにして激しくやりあう様を、この「牙子」という言葉はひったりと表現している。すばらしい表現力ではないだろうか。そのれ引き換え「仲買人」と言う言葉は一見上品になっているが、活写されていないという点で、曖昧になっていると言えるだろう。日常普段に使う言葉にもこのような類のものが数多くあり、知らず知らずに為政者に慣らされてしまっていることも多いことに気をつけるべきだろう。
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2018年10月4日木曜日

漢字「芽」の起源と成り立ち:芽は牙のようであることから来ているのか


漢字「芽」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P134、唐汉著,学林出版社)

「芽」の字の成り立ち」
 芽は植物の種子の新芽を指す。または植物の葉や花が蕾を含みほころびを待つ最初の状態を指している。小篆の芽の字は草冠の字の頭と牙が組み合わさった字で明らかに形声字である。
 芽の字にどうして「牙」が用いて、その声符となしたのだろう。小篆、楷書の「芽」の字は構造は「互」によく似ているしLと¬が交錯した構造になっている。
 双葉がかみ合っていることから、草かんむりに音符の「牙」をとったという。因みのこの説明は「漢字源」、「字統」でも同じで、会意+形声文字という。


古人は「芽」と「牙」に何を見たか
 「芽」の字の声符は動物の牙をとっており、双葉の柔らかい新芽を表している。花の蕾もいわゆる固い形状も一緒に芽という。人々は常に芽胞というがこれは最初に出てくる葉や花の芽が牙のような形状をしていることからそういう。芽は通常植物の種子、葉、花の蕾の最初の状態を言う。また拡張して、事物のはじめの状態を「萌芽」という。

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2018年10月3日水曜日

漢字「杏」の起源:今ブレイク中の女優は「杏」さん。杏はアンズの杏。生命力溢れた植物


漢字「杏」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P158、唐汉著,学林出版社)

「杏」の字の成り立ち」
 杏の原本は象形字である。甲骨文字の「杏」の字は杏の核から芽が萌芽した形をしている。杏は生命力のある果樹で杏子の棋盤に埋め込んでも発芽し枝を出すという。又土地がどんなに貧弱でも、山の谷あいのいたるところで杏の木はあり、砂漠でも杏の木はあるのは生命力の強い証拠だ。「杏子」の字の下部は断裂があり、木と口とに変化している。楷書ではこの関係からこの字になった。


古人は「杏」を如何に考えたか
 杏は中国原産の植物である。昔から香りのいい食物として珍重され、また咳止めの漢方薬としても重宝されていた。
 ある人は杏の発音から、その芳香が人を気持ちよくさせるものと認識している。この種の話はある道理も持っている。
杏仁(果実とその種)は香りがよく、杏仁の中の白色の部分を取り出し粉末にして杏仁粉とする。もし水と糖を加えると杏仁乳が製造され、清涼飲料になる。我々は杏仁豆腐として馴染みがある。但し杏の発音は古音ではHengと読み"亨、行と同じ音である。

「杏」にまつわるちょっといい話
 杏に関していえば、いい話がある。三国時代の名医呉董奉という人は、廬山に住んでいたが、人の病気を治しても金は取らなかった。しかし、病気が重いものは杏5株、軽いものは杏1株を植えさせ、それを治療費とした。数年後杏は10万株にもなり、董仙を称して杏林といった。なくなって以後杏林は医療を讃える言葉となった。このほか、学術界のことを、杏壇と人々はいうが、これは孔子がかつて、杏壇(現在の山東省曲阜)で教えていたからである。



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2018年10月1日月曜日

「姻」の起源と成り立ち:父権制の確立後に生まれた文字、新婦の寝る場所を示す


漢字「姻」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P505、唐汉著,学林出版社)

「姻」の字の成り立ち」
「姻」は会意文字であり、形声文字でもある。小篆の字形の左辺は「女」の字で、右辺の「因」は甲骨文字の原本は筵の上で寝ることを表示している。拠り所のあるという意味である。父権制の確立後、中国の婚姻風俗は一般には皆女子は男の家即ち新郎の家に出かける。それゆえ新婦の拠り所となる場所となる。また直視的な解釈で新婦が寝る場所という意味である。  いわゆる姻は女と因の組み合わせである。その中で因は又表音を表わす。姻は婚と同じく会意と形声文字である。

古人は婚姻を如何に考えたか
 「姻」は説文では「姻、婚家なり」と解釈され、それゆえ拡張され、姻親と関係する。《尔雅•释亲》の説くごとく、「婚これ父曰く、婦の父を婚となす。このことは「親家の間、女性の父親を婚と呼び、男の父親を姻と呼ぶ。


現代の日本の法律上の「親族」「姻族」の定義
親族の定義
 一般的には,親族というと,親戚の方全般を指すものとして使われています。  法律上の「親族」は,すべての親戚を指すわけではない。すなわち,法律上の親族とは,6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族のことを指します。
姻族の定義
 姻族(いんぞく)とは,一方の配偶者と,他方の配偶者の血族との間の関係のことをいいます。例えば,妻と夫の父母などは姻族となる。  姻族関係は,あくまで配偶者双方の問題です。したがって,配偶者以外の者同士が姻族関係になるというわけではないことを知っておいても損はない。   


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華:民族主義の原点、中華の「華」の語源と由来


漢字「華」の起源と由来
 「華」と「花」は同じではない。花」、「華」は機能が分かれ、「華」は多くは抽象的意味を受け持ち、中華民族の仮借を指している。一方、開花の華は即ち「花」と書く。

 一方現在、中国では小学校では、「華夏」という言葉の意味について教育が徹底されているという。この華夏というのは、「中華」の華であり、夏商周の三代の最古の王朝「夏」のことである。中国の子供たちには自分たちが世界最古の文明を維持して持つ、中華民族であり、これまた最古の王朝である夏王朝の末裔であることが徹底されているという。 実際の中身が分からないが、民族教育としても、「社会主義を目指す国」の民族教育としては、もう少し、現代的な、世界の中の中華民族ということに重きを置くべきと考えるが・・。


 さて、今回この「華」という字に焦点を当てる。この「華夏」ということについては、NHKが今年の10月18日の総合テレビで、中井貴一さんがレポート役とした、番組を組んでいた。中国では「二里頭村」というところで、「夏王朝」の宮殿が発掘され、今まで伝説上の話として伝えられていたものが、実在したことが確実になったと伝えている。

引用 「汉字密码」(P136, 唐汉,学林出版社)


 「華」は植物の有性繁殖器官であり、古代には華と書いていた。
华は「華」の簡体字である。図に示すが如く、甲骨文字の「華」の字は、まるで木の上の花が咲き誇っている様子である。華は象形文字である。金文と小篆は大きく変化しているが、その趣旨は変わっていない。上は花や葉が茂っている状態で、下は茎や幹枝が伸びているようである。
 古代、木の上の開いた華を称して「華」となし、地上の植物の花が開くことを「栄」とした。


 先に華があり、後で花が出来た。花はいつごろ出来たのだろうか。南北朝以前の書の中には見られないが、晋代の詩の中に、「一岁再三花」の句が見られ、花の字は晋朝に出現したと云われている。 「花」という字の出現后も、多くの成語の中に華の字を用いる習慣が残った。



 「花」、「華」は機能が分かれ、「華」は多くは抽象的意味を受け持ち、華彩、華麗の様に使われている、又
「華夏、華裔」など、中華民族の仮借を指している。一方、開花の華は即ち「花」と書く。
 花の字は草かんむりと化けると書く。これは会意形声字である。化けの字は甲骨文字中では一人が正立、一人は倒立した二人の人間を表現し、人の生と死の変化を示す。花は開いて落ちる、盛んなること敗れることがある。 花は化けるの音符を用い音と意味を表す。
 
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2018年9月29日土曜日

漢字「不」の起源と成り立ち:花のガクの象形という見方と月経を表現したという見方・・いずれが正しい??


漢字「不」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P489、唐汉著,学林出版社)

「不」の字の成り立ち」
 甲骨文字の中で「不」の字の、上部は逆三角形で、まるで女性の陰卓の形状である。このことから女性の生殖器を表わすようになった。実際上、世界の多くの民族は両性の符号を陰卓部位の陰毛の形状で表わしている。 たとえばインド教では。等辺三角形は性の表示を示し、上向きにとがったものは男性、即ち男陰部、下向きに尖っているのは女性、即ち女陰部を示す。
 このことから「不」の上部の▽は女陰の象形のデッサンである。下部の縦線の流れのような線は女性の月経を表している。だから「不」の本義は女性の月経であり、この短い一時期は性交を拒絶することを示している。


なぜこのような解釈が可能になったのか
 原始社会の末期、上古先民は既に月経期の性交が不衛生であることを認識していた。さらに鮮血の忌み嫌う文化により、心理的に定着し、月経時期の性交は絶対禁止と見られるようになった。「不」は女性の拒絶を表示し、女性が嫌だといえることを表示し、この権利の拡張である。以来「不」は一般的に否定の意味に用いられるようになった。

現代の「不」の用例
 [不刊之论、不可救药、不一而足]の成語中不の字は全て否定の意味である。不の字を動詞の前面に用いた時、ある種の願望的否定で、たとえば「我不子、我不去」等。

白川博士の解釈
 「不」はもとは象形で、花のガクの形であるが、この字が本義で用いられることはない。しかし、現実は仮借である、否定の意味に用いられていると説いている。

後書き
 「不」の字を見て、花のガクと見るか、女性の陰部と見るかにより、その後の展開は当然大きく異なる。
唐漢氏の解釈は、これは本当かなと思う台詞である。あまりにもうがった見方ではないだろうかと思ってしまう部分はある。少し露骨過ぎて品がないように思う。学問の世界に品などというものを持ち込むことは許されないかもしれないがこの部分は少し腰が引けるところでもある。翻って見ると、古今東西、逆三角形は、器とみなされ、女性の象徴のように捉えられ、逆に三角形は男性の象徴のように見られてきたのは事実である。


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2018年9月28日金曜日

漢字「也」の起源と成り立ち:太古の生殖崇拝の現れ


漢字「也」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P493 、唐汉著,学林出版社)

「也」の字の成り立ち」

「也」説文では、「也は女陰なり、象形文字」と解釈している。秦刻石の”也”の字である。これがいうには、女性の生殖器の象形であるとし、小篆で




と書く。昔からいろいろの解釈があり、反対者もはなはだ多かった。


甲骨文字では育の字は左のように描く。嬰児の出生の一般的状況下で頭が先に出てくる。このため倒置すると、女陰を示す甲骨文字の也という字から嬰児が出てくる模様を完全に表現したものと考えられる。

也の本義は既に消失しているが、今日では多く使われ、漢語の虚詞を作る。
 又漢語の多くの構成要件にもなっている。「地」が生殖の土とで、地は土と也からなる。池は水中で万物が繁殖するところで、水と也からなる。
 也の仮借は虚詞も作り、主要には判断の語気の言葉に用いられる。也の字は又副詞にも用いられる。

 これに対し白川静博士は、説文にあげるのは秦漢の時の字形で、也の初形ではないとしており、也の匜という水器の形だと主張する。


古人は如何に考えたか
 古人にとっては、子孫の反映のため、今以上にセックスは重要なことであった。そのため生殖崇拝が広く信仰され、世界のいたるところで、男根、女真を奉ることが行われていた。今でこそ、ある意味卑猥なこととして見られているが、古人にとってはそれは切実なことだったと考えられる。
 そのことからしても、漢字の中にこういったシンボルが使われていたと考えるのは、ごく自然のことだと判断される。


漢字源の解説
 漢字源では、「也」は平らに伸びたサソリを描いたものという。ここでサソリが出てこようとは思わなかった。
 

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2018年9月26日水曜日

漢字「妥」の起源と成立ち:手と女からなり、慰撫するという意味から発展し、安定を表わす。今日では適当という意味に使うことが多い


漢字「妥」の由来
 手と女からなり、慰撫するという意味から発展し、安定を表わす。漢字の成り立ちからいうと、男尊女卑の概念を色濃く残した漢字です。女の頭をナデナデすることを表現している。しかし、最近では、女の頭を撫ぜてうまくいくことは殆どない。むしろ、男の頭を撫ぜて、その後ろに控える奥さんに納得してもらうことで旨くいくようなことが多いようである。

引用:「汉字密码」(P502、唐汉著,学林出版社)
「妥」の字の成り立ち」
「妥」は会意文字である。甲骨文字の「妥」の字の左辺は手(爪)で右辺は背筋を伸ばして膝まづいている女の人の形である。金文形体は基本的に甲骨文字と同じである。小篆の妥は手が女の人の頭の上に置かれている。
 これは構造が合理的であるばかりではなく、さらに文字の表意・・意味するところを顕示するものとなっている――手を用いて女性を慰めたり抑えたりすることを示している。それは安定を表わしている。
  「妥」の字の構造は女子を安撫させ、それを安定させる。妥の字は安定する。このため妥の字は安穏・安定の常用を示す。稳妥、妥帖(穏当であるや妥当)であるのごとく、「妥」は制限する、抑えつけるの意味がある。
 解釈としては、「字統」(白川静著、平凡社)にもほぼ同様の解釈をしている。

古人は「妥」を如何に用いたか
 杜甫の《故司徒李光粥》 にあるように「兵を抑え、河やぬかるみを抑えて、千里が始めて穏当になる。ここの妥帖は武力が安定するの意味である。また拡張され、適当、適合を指し、人々が常に口にするように、「不妥」(不適当である)もまた適切でないという意味である。「妥善、妥为安排、欠妥」の中の「妥」の字は全て、適当、適合の意味である。

 話し合いで対立していた双方が、適当なところで折り合いを付けることを妥協、妥結といい、適当であることを妥当という。  

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